模試により第一志望校は驚くほど違う(2012.4)
012年度入試が終わったところで、振り返りのひとつとして、今年度の受験生はどこを第一志望にしていたのか、見てみよう。12月の四谷大塚、サピックス、首都圏模試各模試において第一志望者が多い学校を表にしてみた。
下の表は、第一志望者が多い学校を男女別に15位まで挙げたものである。
首都圏模試は他2社と大きく異なる
パッと見て気づくことは、四谷大塚とサピックスはかなり共通しているが、首都圏模試はまるで違うということである。
・3社すべてに登場しているのは、芝と浅野の2校のみ。芝と浅野は受験者数自体が多いが、第一志望者も多い(浅野は3日にもかかわらず第一志望者が多い)。また学力幅も広いこともうかがえる。
・四谷大塚にありサピックスにないのは、早稲田実業、城北、桐朋、明大中野の4校。
・サピックスにあり四谷大塚にないのは、筑波大駒場、栄光学園、慶應中等部、聖光学院と、難度の高い学校4校。
・四谷大塚と首都圏模試に共通しているのは、3社共通の芝と浅野以外に城北、明大中野の4校。
・サピックスと首都圏模試に共通しているのは、3社共通の芝と浅野以外にはない。
・四谷大塚は15校中13校が2月1日校なのに対し、サピックスと首都圏模試は5校が2月1日以外。首都圏模試には千葉の市川、東邦大東邦も入っている。
・千葉の学校は登場するが、埼玉の学校は1校もない。私立中学の歴史の違いが第一志望者の多寡に影響しているのだろう。
・付属校(半数以上が併設大学に進学)の数は、四谷大塚が5校、サピックスが4校、首都圏模試が6校と、首都圏模試受験生の付属校志向の強さがわかる。首都圏模試のベスト4がすべて付属校であることがそのことを象徴している。
・共学校も、四谷大塚が早稲田実業1校、サピックスが慶應中等部1校とごく少ないのに対し、首都圏模試は7校もある。四谷大塚とサピックスは早慶だったが、首都圏模試は付属校だけでなく進学校もある。
女子は3社とも付属校志望者が多い
男子同様、四谷大塚とサピックスはかなり共通しているが、首都圏模試はまるで異なっている。
・3社すべてに登場しているのは、わずかに青山学院1校のみ。
・四谷大塚にありサピックスにないのは、吉祥女子、共立女子、香蘭女学校、洗足学園、明大明治、早稲田実業の6校。
・サピックスにあり四谷大塚にないのは、フェリス女学院、慶應湘南藤沢、渋谷教育渋谷、横浜共立学園、東洋英和女学院、横浜雙葉の6校。男子でも栄光学園、聖光学院がこのパターンだったが、四谷大塚は神奈川生が少ないのか、神奈川の難度の高い学校を第一志望とする者が少ない。
・四谷大塚と首都圏模試に共通しているのは、3社共通の青山学院以外に共立女子と香蘭女学校の3校。
・サピックスと首都圏模試に共通しているのは、3社共通の青山学院以外にはない。
・四谷大塚は3校が、サピックスは4校が2月1日以外なのに対し、首都圏模試は青山学院以外すべて2月1日校と集中している。こうしたことも女子の受験が短期決戦になっていることの要因なのだろうか。
・3社のいずれにも千葉、埼玉の学校は1校もない。男子で登場していた市川は男女別定員で、男子の180名に対し、女子は100名しかないことが影響している(東邦大東邦は男女合計定員)。
・付属校(卒業生の半数以上が併設大学に進む学校をカウント)の数は、四谷大塚が5校、サピックスが5校、首都圏模試が4校と、学校は違うが3社とも付属校を第一志望にする人数が多い。男子では首都圏模試が6校といちばん多かったが、女子では4校と最も少ない。
・共学校も、四谷大塚が3校、サピックスが4校、首都圏模試が4校と、学校こそ違うがほぼ同様。ただし第一志望にしている共学校のほとんどが付属校。進学校タイプは渋谷教育渋谷と日大第二しかない。
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第一志望としている学校について見てきたが、入試の全体状況とは違う様相も見えてくる。当然のことながら各模試とも偏差値の高い学校が第一志望者も多くなっている。サピックスは文字通り高偏差値の学校ばかりである。
この表にはないが、30位まで見ていくと、四谷大塚では55未満の学校が数校ある。男子では法政第二、高輪、女子では品川女子学院、富士見、普連土学園、跡見学園などがそうである。
首都圏模試の表にある女子美術大付、桐朋女子、玉川聖学院は首都圏模試でも偏差値40台の学校。が、3校とも私学ならではの「個性派」の学校であり、偏差値が低くても固定ファンがいるのである。
市場が縮小している今、私学にしか出せない学校独自の色を出すことが生き残る必要条件ではないだろうか。
情報提供:安田教育研究所