桐光学園高等学校 入試対策
2018年度「桐光学園高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
「理由説明」にしても「記述」にしても、「桐光の国語」で勝利するための鍵は、「現代文」の「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「桐光の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提として為すべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる(桐光の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。
その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく(その際はマス目のない用紙を使うこと)。
速読
「現代文」全体で8000字程度を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
桐光に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「桐光の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。
「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。
今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からスタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。
が、桐光などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」をする他ない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は「敬語」も含めて理解しておかなくてはならない。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。また、「漢文」でも同様に「基本的事項」は定着させておくこと。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2018年度「桐光学園高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は加藤典洋「日の沈む国から――政治・社会論集」(文字数約3800字)。小問は全7問(解答数11)。「選択肢」(「本文内容合致」あり)、「漢字の書きとり」(5問)。問題文は5分ほどで読み切り、設問を10数分で解きたい。
大問二は「小説」、出典は三島由紀夫「白鳥」(文字数約3100字)。小問は全8問(解答数8)。「選択肢」(「本文合致」「表現説明」あり)、「説明記述」(「字数指定なし」1問)。問題文は4分強で読み切り、設問を20分弱で解きたい。
大問三は「古典」、出典は「古文」が作者未詳「今昔物語集」(文字数約560字)、「漢文」は唐の李瀚著の「蒙求」所収の「孟宗寄鮓」(文字数35字)。小問は全6問(解答数7)。「選択肢」(「内容解釈」「理由説明」、「書き下し文」あり)、「抜き出し」、「短文記述」(書き下し文)。10分ほどで解きたい。
【大問一】論説文
- 時間配分:
「3.11」(東日本大震災)がこの国にもたらした課題、そして、国内で問われる「戦後の日本」と国際的に問われる「日本の戦後」のあり方のズレがもたらす問題――「災後」と「戦後」という2つの異なる根本的な課題を考察している。
本文では、「アトム」は「原子力の平和利用」という「明るさ」、「ゴジラ」は「核災害の恐怖」という「暗さ」の象徴として定着してきたが、2011年の東日本大震災による「福島第一原発事故」を体験した現在、両者は日本の原子力政策の矛盾を指摘するシンボルとして立ち上がってきたと論じている。
「社会学」や「政治」に関する論考だが、「※注」を十分に活用して、内容を的確に理解したい。
例年とは異なり、「漢字の書きとり」以外は全て「選択肢設問」という出題構成だ。しかし、だからといって決して平易になったわけではない。判別が難しいものもある。心してかかること。
以下、いくつか確認してみたい。
[問一] 「漢字の書きとり」(全5問)。
本年度は、本校としては標準的な難易度だ。「全問正解」といきたい。無論、「文脈」を確認しながらの特定は忘れぬこと。
確認する。二重傍線部
(あ)「象徴性を存分に「はっきしたあと」=「発揮」、
(い)「背後にひかえる」=「控(える)」、
(う)「事故をけいきに露頭した」=「契機」、
(え)「さまざまなむじゅんをそこに抱え」=「矛盾」、
(お)「しきち内に急造タンク」=「敷地」。
(う)の「契機」は「同音異義語」も押さえておきたい。
やはり、本校では「高度な語彙力」を磨いておくことが重要だ。
<時間配分目安:1分>
[問二] 「意義説明選択肢」(4択)。
傍線部(1)「アトムとゴジラ」について、「それらが登場してきた当初の意義」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。しかし、いかんせん傍線部だけでは全く「意義不明」だ(笑?)。
なので、その「意義」を「同一意味段落」で確認したい(「論説文」における「根拠・手がかり」は「同一意味段落」にある)。
最初に、「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)で「手がかり」を探す。直後に「ともに『原子力の平和利用』と『核災害の恐怖』(プラス『戦争の死者の再来』)という冷戦期=敗戦後の刻印を埋没させ、忘却させる方向で日本社会に定着、浸透してきた」とある。
つまり、「それら」の「当初の意義」は、「『原子力の平和利用』と『核災害の恐怖』(プラス『戦争の死者の再来』)という刻印」だと読み取れる。
そこで、各選択肢の「文末」で「消去」していきたい(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。「文末」は「ゴジラ」についての説明だ。
(ア)「原爆の危険性を忘れないための刻印」、
(イ)「戦争や原水爆に伴う感情を負わされたもの」、
(ウ)「人類の文明を否定してすべてを破壊しつくす恐怖の対象」、
(エ)「戦争の悲惨さや痛みを忘却していくことを戒めるもの」。
どうだろうか? 「原子力」と「核災害」、そして、「プラス『戦争』」なのだから、(イ)以外は「消去」できなくてはいけない。他の部分の説明も特に誤ってはいないので、「答え」は(イ)だ。結果として、「一発消去」。「選択肢設問」では、先ずは「原意消去」を試みること。
<時間配分目安:2分>
[問四] 「関連内容説明選択肢」(4択)。
傍線部(3)「アトムの後身として二人組のユニット、藤子不二雄による『ドラえもん』が登場してくる」に関連して、「『ドラえもん』についての説明」を答える。
この「設問」で注意したいのは、一見、傍線部について問われているようだが、それは単なる導入で、要は「ドラえもん」について筆者がどのように捉えているかを問われているわけだ。したがって、「ドラえもん」についての筆者の捉え方を「同一意味段落」で確認する。
傍線部の6行後に、以下のように述べられている。「ドラえもんは、……。原発の日本社会への深々とした着地との照応として受けとめることができる」。各選択肢の「文末」と照合し、「消去」していきたい。
(ア)「人間社会に違和感なく存在する科学のあり方を象徴」、
(イ)「原子力が社会の中に浸透して当たり前になっていることを示唆」、
(ウ)「(科学は)危険性を意識することなく社会をより理想へと導くもの」、
(エ)「(道具は)人間の欲望の深さや危険性を浮き彫りにするもの」。
筆者の捉え方の「キーワード」は「原発」だ。であれば、
(イ)以外は「消去」できるはずだ。他の部分の説明も特に誤ってはいない。「答え」は(イ)になる。ここも「一発消去」だ。
なるほど、「原意消去」は使える。尚、本問のように実は「傍線部分」を直接問われているのではないという「設問」は結構ある。そうした場合、あまりに「傍線部分」に引きずられると読み取り方がずれてしまうので注意したい。「設問原意」に忠実であれ、ということだ。
<時間配分目安:2分>
[問五] 「内容説明選択肢」(4択)。
傍線部(4)「その原初の象徴性を、みるみる剥落させていく」について、「その説明」を答える。要は「換言選択肢」だ、無論、「原意消去」から。各選択肢の「文末」をチェックし、「剥落」の「原意」と結びつかないものを「消去」する。
(ア)「象徴になった」、
(イ)「人気を得ていった」、
(ウ)「忘却されていった」、
(エ)「受け入れられた」。
「剥落」は文字通り、「剥がれ落ちる」こと(当然、知らなくてはいけない熟語だ)。したがって、 (ウ)以外は「消去」できるはず。他の部分の説明も特に誤ってはいないので、「答え」は(ウ)。見事に「一発消去」できた。
尚、本問を解く上では必要なかったが、「傍線部」やその前後に「指示語」があった場合は、即開いておくことが肝要だ。
<時間配分目安:30秒>
[問六] 「意図内容説明選択肢」(4択)。
傍線部(5)「私にはゴジラとは――海からやってくるというよりは――原発の建屋を破って出てくるモンスターのようなものと感じられた」について、「筆者はここで『ゴジラ』を用いてどのようなことを述べようとしているか」を答える。「筆者の意図」が問われているので要注意。
もちろん、先ずは「原意消去」だ。「モンスターのようなもの」という「比喩表現」の「原意」と、各選択肢の「文末」とを照合する。
(ア)「(ゴジラの厄災は)制御できず噴出してきたもの」、
(イ)「(ゴジラの存在意義は)日本人の目を醒(さ)まさせるものもの」、
(ウ)「(ゴジラの襲来は)現代社会の破綻をもたらした」、
(エ) 「(ゴジラの出現は)一度破壊して作り直そうとするもの」。
「モンスターのようなもの」という「体言」の説明なのだから当然、(ウ)は即「消去」。また、「モンスター」が「一度破壊して作り直そう」ということもあり得ないので、(エ)も「消去」でいい。
ここで2択だが、これ以上の「消去」は困難だ。そこで、次に「原発の建屋を破って出てくる」という「表現」で確認する。
(ア)は「戦後の日本がこれまで内部に隠してきたものが(噴出)」、
(イ)は「経済的な豊かさに浮かれる(日本人の目)」となっている。
であれば当然、(イ)が「消去」できるはずだ。よって、「答え」は(ア)となる。本問のように、「段階的消去」が必要となる場合もあるが、あくまでも「原意消去」にこだわることが重要だ。
<時間配分目安:2分>
【大問二】小説
- 時間配分:
身がひきしまる雪の降りしきる朝、乗馬俱楽部(クラブ)の純白の馬である「白鳥」に乗馬することをきっかけとして出会った若い男女――「邦子」と「高原」がお互いに好感を持ちあい、わずかのあいだに親密になる様子がおもに女性の目を通し、心理を通して、余分なところをいっさい省いて簡潔に描かれている短編小説。
本文はその全文だ。70年ほど前の作品で、現在では分かりづらい描写や、作者特有の心情表現などもあり、なかなか厄介な大問だ。以下、いくつかの設問を検証する。
[問一] 「人物の状況説明選択肢」(4択)。
傍線部(1)「云いしれない意地悪さを自分勝手に感じとって」について、「この時の『邦子』の説明」を答える。「小説」でも無論、「原意消去」からが鉄則だ。「自分勝手に感じとって」の「原意」と結びつかないものを「消去」していきたい。
各選択肢の「文末」を確認する。
(ア)「許し難く思っている」、
(イ)「不愉快に感じている。」、
(ウ)「身勝手な怒りがこみ上げている」、
(エ)「一方的に嫌悪を抱いている」。
どうか? 「自分勝手」なのだから、(ウ)(エ)以外は「消去」できるはずだ。次に選択肢の「前半」をチェックする。
(ウ)「高原に出し抜かれて白鳥をとられたため落胆し、卑怯な高原に対する」、
(エ)「自分が望んでいたことを高原が先にかなえようとしていたことを知り」。
「落胆」に着目したい。傍線部には「云いしれない意地悪さ」を「感じとって」とあるだけだ。とても「落胆」という状況を読み取ることはできない。
よって、(ウ)は「消去」で、「答え」は(エ)ということになる。
「小説」では、細部にこだわらないと判別できない場合がある。くれぐれも見逃さぬこと。
<時間配分目安:1分半>
[問三] 「表現説明選択肢」(4択)。
傍線部(3)「雪を透かして彼の栗毛の馬は妙に艶めかしい美しさだ。習いたてらしいピアッフェ(「※注」=足踏みさせる乗馬法)を練習している一瞬の跳躍の姿勢が銅像の馬のような筋肉の躍動にあふれている。その馬の上から時々ちらとこちらを見る目が、木の中でもえている一点の火のようだった」について、「この表現の説明」を答える。
やたらに長い傍線部だが、「表現説明」なので、「技法」や「状況」などの事実関係で正誤判別していきたい。
(ア)「見事な手綱さばき」⇒「習いたてらしい」「練習」=不適切、
(イ)「白い雪が、高原の情熱を覆い隠そうとしている」⇒「雪を透かして彼の栗毛の馬は妙に艶めかしい美しさ」=不適切、
(ウ)「高原がわざと邦子がいる馬場に入って来ようとしない」⇒「ピアッフェ(「※注」=足踏みさせる乗馬法)を練習している」=不適切ということになる。
それらに対して、(エ)の「雪景色の中で栗毛の馬が躍動」「静と動」「色彩の対照」「情熱をこめた視線」などといった説明が、傍線部の「表現」と合致していると分かるはずだ。したがって、「答え」は(エ)だ。「表現説明選択肢」は「小説」では定番だ。「表現技法」などの「知識」の定着は不可欠だ。
<時間配分目安:2分>
[問六] 「条件付き心情変化説明記述」(「字数指定」なし。「100字ほど」の解答欄)。
波線部(Ⅰ)「邦子は一人でぐるぐるまわっている馬場のひろさが、かえって高原の投げた輪のなかをどうどうめぐりしているようなふしぎな狭さに感じられて、時には彼の厚い掌の上をかけめぐっているにすぎないのではないかと、妙な空想がわくのさえもどかしい」と、
(Ⅱ)「ふと高原の馬もこの白キッド(「※注」=子ヤギなどの皮)の手袋の上をさっきからどうどうめぐりしていたのだと邦子は今気がついて」について、「ⅠからⅡに至る『邦子』の気持ちの変化」を説明する。「条件」は、「『Ⅰでは~、Ⅱでは~』のようにわかりやすく説明する」こと。
(Ⅰ)の「心情」から読み解いていく。「傍線部(空所部)一文一部の法則」で確認すると、直前に「どうしてもこちらの馬場へは入って来ない高原を感じると」とある。これが「きっかけ」だ。
ということは、「高原は近づこうとしていないにもかかわらず、邦子が一方的に高原の意図しているとおりに思いを募らせて、やきもきしている」ということが分かる。
一方、(Ⅱ)では「高原の馬もこの白キッドの手袋の上をさっきからどうどうめぐりしていた」と「邦子」は気づき、さらに、直後に「手綱を高原の手にまかせながら、自分の手から何か大事なものを彼にあずけてしまったような甘い虚しさを感じた」とあることから、「高原の方も邦子に近しさを感じ、それに気づいた邦子はますます高原に気持ちをゆだね、愛おしさをも抱いている」ことが分かるはずだ。
あとは、「条件」に則して「過不足なく」まとめていきたい。たとえば、「[Ⅰでは]邦子が一方的に高原の意図どおりに思いを募らせて、やきもきしているが、[Ⅱでは]高原の方も邦子に親近感を抱いていることに気づいた邦子はますます高原に身をゆだね、愛おしさをも抱いている。」といった「答え」になる。尚、「心情変化説明」では、「A→B」といった具合に「変化」を明確に記述することがポイントだ。
<時間配分目安:3分半>
[問七] 「換言説明選択肢」(4択)。
傍線部(6)「恋人同士というものはいつでも栗毛の馬の存在を忘れてしまうものなのである」について、「これについての説明」を答える。
先ずは、「原意消去」。「忘れてしまう」の「原意」と、各選択肢の「文末」とを照合し、結びつかないものを「消去」する。
各選択肢は、
(ア)「耳を貸さなくなりがちである」、
(イ)「思いこんでしまう」、
(ウ)「見抜くことができなくなってしまう」、
(エ)「見えなくなっている」。
「忘れてしまう」のだから、(エ)以外は「消去」可能だ。
他の部分の説明も特には誤ってはいない。したがって、「答え」は(エ)だ。本問は余裕の「一発消去」。やはり、「原意消去」は活用すべし。
<時間配分目安:30秒>
【大問三】古典
- 時間配分:
「問題文〈甲〉」(古文)は平安時代後期成立の日本最大の説話集。全31巻で、「天竺(インド)」、「震旦(中国)」、「本朝仏法」、「本朝世俗」の4部に分けられ1040話が収められている。
本文は、「巻第九」の「震旦孟宗」。「問題文〈乙〉」(漢文)は中国唐の児童用教科書で、「堯」「舜」の伝説上の時代から「六朝時代」までの著名人の伝記、逸話596句を収めている。本文は、「孟宗竹」の由来となった逸話で、「親孝行の功徳」を説いている。
尚、「問題文〈甲〉」はこの「問題文〈乙〉」を原典としていて同じ逸話だ。近年、難化傾向にある本校の「古典」、本年度は「語句解釈」で紛らわしいものが出題された。要注意だ。いくつか検討してみよう。
[問一] [古文]「語句解釈選択肢」(全2問/各4択)。傍線部(a)「おろかなる事なし」・(b)「としごろの間」について、それぞれの「解釈」を答える。
要は、「古文単語」の「原意」を押さえているかが問われている。「おろか」=「愚か」、「としごろ」=「年頃」などと、単純に「口語単語」と置き換えてはいけない。「文語単語」の形容動詞「おろかなり」の主たる「意味」は「粗略だ。いい加減だ」(=「疎かなり」)で、「愚かなり」は主に中世以降だ。
よって、(a)の「答え」は選択肢(ウ)の「至らないことはなかった」となる。また、「文語」の「としごろ」は第一義的に、「長年の間。長年。数年間。数年来」ということだ。なので、(ア)「何年にもわたって」が(b)の「答え」だ。必要最低限の「古文単語」の定着は本校では必須で、特に「口語」でも同じ「語句」が使用される場合には、その「意味の変化」に細心の注意を払う必要がある。
<時間配分目安:2問で1分半>
[問三] [古文]「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部(2)「泣き悲しむ事限りなし」について、「その理由」を答える。「傍線部(空所部)一文一部の法則」で「手がかり」を探す。直前に「悲しいかなや、今日の笋を備えざる事といひて(=悲しいことではないか。今日、たけのこを準備できないことはと言って)」とある。
さらに、その前に「悲しいことではないか」と思った「きっかけ」として、「(母は)老乱の身に飲食せずは既に死なむとす(=母親は老いた身で食事をしないので、今にも死にそうである)」と説明されている。これが「理由」だ。
したがって、「できるだけ母に長生きしてほしいのに、望みを叶えてやれないから」となっている選択肢(エ)が「答え」だと判別できるはずだ。「古文」でも「現代文」同様に、的確に「解法」を活用することが肝要となる。
<時間配分目安:1分半>
[問四] [漢文]「書き下し文記述」。傍線部(3)「未レ 生」(*「レ」は「返り点」)を「書き下し文」に改める。前後を含め本文を確認する。「時二 筍 尚な(ホ) 未(ダ)レ 生ゼ。」(*「レ」は「返り点」。「平仮名」は「読み」、「カタカナ」は「送り仮名」)となっている。
ここでの最大のポイントは、「未」が「再読文字」だということだ((ダ)という「送り仮名」と、レという「返り点」とが右左に振られていることからも分かる)。無論、「未だ~ず」と読む。したがって、「答え」は「未だ生ぜず」となる。「返り点」「書き下し文」は「基本のキ」で、当然ながら「再読文字」や「置き字」などについてもしっかりと習得しておくことが肝要。
尚、「書き下し文」では「付属語(助動詞・助詞)」を「平仮名」とし、当然、「歴史的仮名遣い」で表記すること。
<時間配分目安:1分>
攻略ポイント
●「多種多様な設問内容」。どう対処するか?無論、「設問内容」に応じた「解法」の適用だ。基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておくことが重要。それによって、「得点力」を安定させたい。本校の「合格ライン」は56%ほど(過去6年間の「Aコース」「SAコース」、男女合計の「合格最低得点率」の平均。本年度は56.8%)。「解法」の応用で、「失点」「減点」を防いでいきたい。
●「字数指定なし」の「説明記述」。いかに「過不足なく」まとめ、「攻略」するか? 「裏ワザ」などないので、愚直に「記述」の「練習」を続ける他ない。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターし、「内容」の優先度が高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習する。本校では「50~100字程度」の「解答欄」が多いので、2~4つ程度の「要素」でまとめることに慣れること。
●「古文」「漢文」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着は勿論だが、「内容解釈」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。また、「古典常識」も「日本史」を含めてなじんでおくことが必要になる。「漢文」でも、「返り点」「訓点」「書き下し文」「基礎的句法」などの基本的知識は押さえておくこと。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は「現代文」で8000字程度(本年度は昨年度よりさらに減少して約6900字だったが、油断は禁物)。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。