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豊島岡女子学園中学校 入試対策

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2019年度「豊島岡女子学園中学校の算数」
攻略のための学習方法

豊島岡の算数は他の女子校と一線を画した仕上がりになっている。

ほとんどの女子校においては,ある程度の「速さ」と「正確さ」があれば合格ラインを超えることは出来る。どちらかだけでも十分,という学校もたくさんある。中堅校の場合は「どれだけ出来るか」というよりは「どれだけ間違えないで進めるか」によって勝負が決まり,初めからミスの数も計算のうちに入っている。相手よりもミスを減らせばよいのであって,ノーミスは眼中にない。

しかし豊島岡の場合,この二つの要素に加えて「深さ」-難易度の高い問題に対処し,しかも正解できるという条件が加わってくる。受験勉強を真摯に続けていれば「速さ」や「正確さ」は身についてくる。本人の学力が落ちていくと言うことはあり得ないからだ。
しかし「深さ」だけは最後まで持てない可能性がある。指導の中で時間をかけて問題を解説してもらい理解したとしても,「自分で一から解く力」を身につけるのは非常に大変なことだ。ここが最後の関門となる。普通の学校であれば「ここまでできていれば必要十分」という範疇を超えて解いていかなければいけない。

豊島岡の過去問をやらせてみて,たとえばある生徒が60%くらいの得点を取ったとしよう。基本的にはほぼパーフェクトと言える。スピードも正確さも申し分ない。生徒としては勉強法をたしなめられたり,注意を受けたりする箇所はほぼないわけだ。しかしそれでも合格点には10点以上不足していることと思われる。

なぜか。豊島岡の受験生たちはそれを超えて解けてしまうからである。当たり前のことを言っているようだが,これは相当な厳しさと言える。問題作成者がたまたま手心を加え少しでも問題をやさしくしようものなら,平均点は優に80点を超えてしまう(第2回・第3回のテストを含めると今まで何度も起こっていることだ)。平均が80点と言うことは,90%を目指さなくてはいけないことになる。これはどこの学校にもあり得ないことなのだ。

ただ,算数のテストとしてみた場合,その難度というのはきわめて正統的なものだ。

奇をてらった問題もなければ,途方もなく時間のかかる作業を含む問題もない。算数の入試問題としてオーソドックスに発展した形がそこにある。中学年から真面目に問題演習を積み重ね,数え切れないほどの解法を身につけてきた生徒のみがその問題への解き方を頭に浮かべることができるだろう。たいていの問題は典型題の先にあるものであり,一部の男子上位校のように「センスがなければ解けない」とか「ひらめきが必要だ」と言うことはない。あくまでも受験算数の頂点の一つとして受験生たちの挑戦を待っているのである。

また,豊島岡の場合,その難易度は他の科目にも波及している。やはり「深さ」がどの科目でも必要となる。そんな中で,ある程度実力アップの道筋がわかりやすい算数はましな方かもしれない。

分野別に二つほど。

「立体図形」は豊島岡克服のための重要な分野である。
ここ数年は最期の大問として登場することが多く,そしてどの問題の難易度も高い。普通の学校であればいわゆる「捨て問」として処理してもいいレベルなのだ。しかし,この学校においては,「解くための」問題として存在している。

この分野の問題を手がける場合には,十分な時間をかけよう。「何分で解く」という答えだけを導く要領よりも「解くために必要な技術」を身につける時間を作りたい。
具体的に言うと,与えられた図以外の作図をこなせるようになっておきたい。本年度【大問6】においては,斜めから見た見取図が必要だった。これは,模範解答を見て納得したからと言って次に書けるものではない。フリーハンドで図が書けるように練習しなくてはいけない。立体図形の見取り図・展開図などをササっと書けるだろうか。作図できる能力をハイスペックで自分のものにしておきたい。

また,切断問題も多いことから,立体的視点もできれば養っておきたい。切断後に出来る立体のイメージを頭に浮かべて,それを手かがりに解法を考えつくということだ。これも容易ならないレベルの技術であるがいくつもの類似問題をこなしていきながらなんとか身につけてもらいたい。

さらに立体図形の問題にもかかわらず,図が書かれていないものもある。この場合は,一から自分で図を書いて問題を整理することになる。そのとき,最も適切な図を選択できるかどうか。立体図形の場合は,普通は見取り図から書くことが多いが問題によっては断面図で問題が解決するときもある。これも模範解答を見て納得,ではなくて自分自身がその図を選んで書けるよう訓練しておきたい。

繰り返すことになるが,ここでいう最後の大問「立体図形」は通常であれば「捨て問」といえる水準のものなのだ。しかしここを落とすと,他の問題をほぼ正解しない限り合格ラインに届かなくなる。では,他の分野が簡単かというとそんなことはないわけで,最後の設問ひとつに至るまでしっかり目を通して解き方またそのための技術を確認しておきたい。

「しらべる問題(場合の数ふくむ)」ではそつのない手順を繰り出せるかどうか。
しかし一昨年度2017年度【大問5】では,すべての場合において調べておくという作業が必要とされ、ただただそつなく問題をこなしさえすればよいというものでもない。ときには愚直とも思える作業も必要となり、まさに臨機応変,その場での対応力が合否を分ける結果となる。

他にも「速さの問題」「割合と比」など重要な分野ではあるが,十分に解ける範囲であると言うことで割愛したい。

豊島岡の算数ではこれ以外にも,標準的難易度をもつ前半の一行問題を2・3分で完璧にこなしていかなくてはならないというスピード養成が必要となる。問題を解く速さに関しては,自覚的にスピードを上げるよう心がけることだ。マイペース,という耳あたりのよい言葉は捨ててもらいたい。鉛筆を動かす筋肉さえ早く動かすよう脳に伝達し,無駄のない思考で正解に到達できるよう鍛えていくしかない。姿勢を正して問題に相対し,問題文を読み終わったときにはもう正解までの道筋がたっていて,すでに手は作図や立式に入っているくらいに,イメージで言えば陸上の短距離の選手のような切れ味で問題にあたっていってもらいたい。

豊島岡の算数は確かに難しいものである。しかし受験生の相手は大学生や大人ではない。同じ小学6年生の女子なのだ。小学6年生として成熟した学力を持てるよう,残された時間を有効に使っていけば必ず合格までの道が見えてくる。

こころざしを高く持ち,豊島岡の校門をくぐる日を夢見て,難問に挑戦してもらいたい。

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2019年度「豊島岡女子学園中学校の算数」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

50分で大問が6,小問が18。この分量は本年度もまた不変。
テスト形式は前半の小問(大問1・2)は基礎的なものまたは標準レベルまでのもの、中盤(大問3・4)は標準からやや難しめの問題、後半(大問5・6)は難易度の高い勝負問題と整然とした構成になっている。分量も時間に対して適切である。
【大問3】以降の応用問題は設問によって難易度が大きく異なり、最後の【大問6】に至るまで(1)は着実に正解しておきたい。合格へのポイントは(2)以降に見られる高水準の設問にいくつ対応できるか、である。算数で勝負したい生徒は一つでも多く挑戦してものにしたい。

【大問1】計算・場合の数・割合と比・数の性質

  • 難度:
  • 時間配分:8分
  • ★必答問題

(1)は分数の約分を使えば計算が簡単になる、ていどのアドバイスしか与えられない基礎レベル。

(2)では順列の「積の法則」を使って計算で解こう。

(3)はよく「水と氷の体積」の問題としてよく出される頻出問題。

(4)は公倍数の応用で、共通するはじめの数までは書き出し、あとは最小公倍数を用いるというこれまたおなじみの問題。ただ、正しく解いても少しだけ時間がかかるので、ここは全問正解を8分としておいた。

【大問2】差集め算・仕事算・消去算・平面図形の求積

  • 難度:標準
  • 時間配分:12分
  • ★必答問題

昨年度と比較すると、本年度はこの【大問2】が若干難しくなっており、それが受験生の平均点や合格点の低下に影響しているように思う。とはいえ、合格するためには全問正解もしくは悪くても1問不正解にとどめたい。

(1)は切手の枚数をそろえて全体の差を整理するという「差集め算」。これは凡庸。

(2)の「仕事算」ではAとBの仕事量の比を2:3とおいて、40分あたりの比の大きさを求めるところがカギとなる。問題を解き進めてきて、ここではじめて得点差がつくと予想される。

(3)は式を2つ立てての「消去算」。問題の条件から式を立てられさえすれば解けることだろう。

(4)は既視感のある問題ながら牛が複数いるので作業が面倒になりそうな予感、と思いきやていねいに作図してみると3つの半円と3つの三角形に動ける範囲がまとめられるのでホッとするところ。計算はそう面倒でもない。

【大問3】規則性

  • 難度:標準
  • 時間配分:6分
  • ★必答問題

(1)は何も申し上げることはない。

(2)では5の倍数による数列を(5,10,15,…,30,35)で区切ってそれぞれ7で割ったときの商を求め、次のグループとの規則性を見いだし等差数列の和の公式を使って正解を導く。
この問題、どこにも7で割ったときの商が「整数値」とは書いていないが大丈夫か?

【大問4】点の移動

  • 難度:やや難
  • 時間配分:8分

(1)はまさに基本的な問いだが、(2)は変化の仕方が「1,4,9,16,…」倍と増えていくので小学生には難しいかもしれない。

(1)で求めた12cm²という差が2点が1秒動くごとにどれだけ縮まっていくかを考える。そうすると、分母の3は省くとして「1,4,9,16,25,36」cm²と差がつまっていくので答えが求まる。ここの(2)、失点はやむを得ないか。

【大問5】条件整理

  • 難度:やや難
  • 時間配分:8分

問題文をよく読み、内容を咀嚼したら1つずつ設問にあたっていこう。時間は十分に残っているはずだ。

(1)は花子さんの手の出し方がわかれば簡単。

(2)もまた手の出し方を想像して問題にあたる。ここもそう難しくはないだろう。

点差がつくとしたら(3)だ。(1)のあと同じ点になる場合になるケースを考えなければならない。(2)もヒントになっている点が面白く、もっとも豊島岡らしい良質な設問となっている。

【大問6】立体図形(立体の切断)

  • 難度:
  • 時間配分:8分

問題の質としては「難」をつけたが、厳密には(1)は「易」、(2)は「やや難」、(3)は「難」という水準だろう。
よって、(1)は必答として、(2)ができれば合格有望、(3)ができれば算数100点という可能性も出てくる。

よって(2)の出来が結果を大きく分けることになるが、切断面が正三角形になる、ということがわかれば体積の計算は容易なので、立体の切断に強い生徒には手の届いた問題だったかもしれない。

攻略のポイント

テスト時間は50分で100点満点。
受験者平均は57.66%(昨年度は61.3%),合格者平均は66.90%(昨年度は74.8%)と問題の質から見れば大変に高い数字である。
この平均点から合格にはやはり60点台の得点が必要とされる。しかし,これをクリアするのは容易ではない。

1問5点ないし6点の点数配分から見て,18問中10~12問の正解が必要となる。
【大問1】【大問2】はできるだけ速く正確に解いて全問正解を目指したい。
【大問3】【大問6】は設問によって難易度が異なり、(1)はどの大問でも「易」または「標準」に属するレベルなのでこれはすべて正解しておきたい。
(2)(3)で比較的得点しやすいのは【大問3】【大問5】だろうか。
【大問4】(2)【大問6】(2)(3)は特に難度が高くそれ以外を正解できていれば捨て問として処理しても合否には関係ないだろう。

豊島岡の入試問題を攻略するための方法としては、

・女子校全体に必要とされる「速読即解」の力は当然身につけた上で、標準問題まではつねに100%の正解率を目指し、実現すること。
・さらに余裕の持てる生徒は質の高い設問に対応できるよう、「立体図形」の難問にも果敢に挑戦してみること。
・また勉強量は算数だけに偏らず,どの科目にもまんべんなく時間を注いで苦手科目を作らないことである。

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