豊島岡女子学園中学校 入試対策
2019年度「豊島岡女子学園中学校の理科」
攻略のための学習方法
まず、本年度の理科は例年と比べて極端に簡単であったことを強調しておきたい。おそらく、学校側も次年度は意識して難度を上げてくると予想される。
計算問題の重要さは再三述べてきたところであるが、対策として問題演習を行う際には、本年度の問題よりももう一歩難度の高い問題に取り組んでおく必要がある。
また、標準的な計算問題の演習を行うのであれば、単に正解できるという段階で満足するのではなく、答えを導くまでの所要時間や解法にも留意したい。
問題集や過去問で頻繁に見られるような計算は、滞りなく考えの道筋が見えるレベルまで練度を高めておくこと。
知識問題に関しても、年度によっては細かい知識まで問われる場合がある。しかしながら、まずは本年度のように失点が致命的になり得る標準レベルの知識問題で取りこぼさないような学習から取り組みたい。
豊島岡女子の場合、難しい知識問題であったとしても、出題内容は概ね参考書に記載されているような事柄である。手持ちの問題集、あるいはメモリーチェックのような頻出知識定着用の教材を用いて、知識に漏れがないように仕上げておこう。
その上で、さらに細部まで詰めるとすれば、数値が関係する知識の整理である。
たとえば、本年度の問題では吸う息と吐く息に含まれる酸素の割合が問題文中に提示されていたが、こういった数値は単体の知識問題として尋ねられる可能性もある。
また、過去問演習に際しては解くべき問題を取捨選択し、限られた時間内での得点最大化を図る意識付けを行いたい。
本年度の入試では時間的制約がそれほど厳しくはなかったが、通常は時間内に問題を解き切れるかどうかが重要な問題となる。特に、「少し時間をかければ答えが分かりそうな問題」を見極め、「考えても分かりそうにない問題」を捨て置くような判断は普段の自宅学習であまり意識されないので、必ず時間を計りながら過去問を解くようにすること。
他方、豊島岡女子の過去問は良質な実戦問題の宝庫とも言える。解き終えた後はきちんと見返し、全ての問題を理解するように努めれば、実力の効果的な底上げに繋がるはずである。
以下、各分野の学習において特に注力すべき点を挙げておく。
【生物分野】
知識問題が落とし穴となりやすい分野である。用語単体の知識がポイントとなる場合もあるが、難関校の知識問題で押さえておきたいのが「分類」「役割」「図解」である。
分類については、たとえば植物の科や形態、昆虫の変態などが相当する。「トウモロコシが単子葉植物である」というレベルの知識はあまり実用的でなく、「単子葉植物と言えば…」など、諸分類群を代表する生物が挙げられるような方向で整理しておきたい。
役割については、臓器の問題のように器官のレベルで機能を訊くものから、生物の形態や生活様式が環境との相互作用において持ち得る意味を尋ねるものまで幅広い。「それは何の役に立っているのか?」という視点を常に持って学習すること。
また、基本的だが、図や写真といった視覚情報から生物の名前や器官を同定できることも大事である。
【地学分野】
気象や地質の問題では計算問題が出題されるとしても、極端に難しい問題の出題は考えにくい。本年度の湿度や高度に関する問題のように、定型的な出題が多くなりがちなので、問題演習を通じて計算の練度を高めておけば総じて問題は生じないだろう。
他方、天体分野が出題されると、計算もさることながら、天体の運動と見え方に関する理解が必要になってくる。基本的に天体の問題は図形の移動問題に帰着することが多い。
丁寧な作図を通して天体運動を模式化し、必要な計算を幾何的に行えるような学習を普段から心掛けて欲しい。
また、星の温度と色、星座早見盤の使い方などはしばしば落とし穴となる。知識面の学習にも抜かりがないように。
【物理分野】
連年、力学分野からの出題が続いている。力学では難しい計算を要する問題の出題は少ないが、物理現象の把握と理解が必要な問題は多い。その際に重要なのが、「基本原則の理解の徹底」である。
たとえば、本年度のように釣り合いがテーマとなった場合、モーメントが支点からの水平距離を問題とすることが理解できていると、問題を考える上で助けになる。
力学分野で覚えるべき原則は決して多くないので、問題演習に取り組む際には解法を丸ごと頭に入れるのではなく、「どの原則に帰着するのか」を考えながら学習を勧めて欲しい。
一方、電流や発熱の問題が出題されると思考過程や計算が煩雑化する。おそらく化学との兼ね合いで問題の設計は決まるのだろうが、電圧や抵抗、水量、通電時間といった諸変数の変化が結果に及ぼす影響についてはスムーズに換算できるように練習しておくこと。
また、いずれの分野でもグラフに基づく理解を要求されることが多いので、苦手な場合はグラフ問題に特化した問題集での演習を行っておくと良い。
【化学分野】
計算問題の重要度が最も高い分野であるが、化学の計算はほとんどが反応の過不足を考える問題なので、本質さえ掴めればワンパターンに感じられてくるはずである。
まずは、初歩的な比例計算がスムーズにこなせるように練習を積みたい。
化学の計算でもう一つ障害となるのが、多段階の処理情報が与えられ、状況把握が困難なことである。そのため、実験の理解に至らないまま問題が端から放置されてしまうケースが多いが、これは勿体無い。
必要なのは、拙くても構わないので、情報の流れを図式化する習慣である。処理過程を視覚化することで、与えられた数値から計算できるものの存在が発見しやすくなる。解き方が分からなくても、とりあえず図示するという練習は日頃から行っておこう。
また、化学の学習に際しては、物質の性質や実験器具・試薬の名称など、知識についても疎かにしないこと。
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2019年度「豊島岡女子学園中学校の理科」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
理科と社会の2科目合計で50分。本年度は物理分野が難しくなかったほか、生物・地学でも即答できる知識問題が多かったため、時間的には例年よりも余裕があったはず。
化学では若干考えさせられるであろう計算問題が出題されたものの、全般に標準的なレベルであったため、間違えないように慎重な解答が求められる。
【大問1】物理分野:物体の落下と回転運動
- 難度:易
- 時間配分:6分
基本的には問題文の説明や実験結果を見ていけば自然と答えが出せる問題ばかりである。知識や推測を要求する問題はほぼ存在しないので、無失点で突破したい。
(4) ① 原理が分かっていなくても、直感的に正解はできただろう。ただ、豊島岡女子を受験するレベルの受験生であれば、モーメントの釣り合いが「支点からの『水平距離』×重さ」によって決まることを理解した上で、判断できて欲しい。
「あ」から180°の位置にある「え」におもりを取り付ければ、どの位置に車輪を固定しても支点からの水平距離が同じになる。
② ①も同様だが、「どのような角度で止めても」という記述から3つのおもりが120°ずつ離れた位置にあれば良いと見当は付けられよう。ただ、おもりの1つが地面に対して垂直あるいは平行な位置にある場合は①のような検証は容易だが、中途半端にずれている場合、本当に3箇所で生じるモーメントの合計がゼロになるのかどうかの確認は難しい。
この程度なら直感で補ってしまっても構わないが、自宅で勉強する際には是非疑問を持って欲しいポイントである。
(5) 知識が無くても、アが空気抵抗の問題であるのに対し、イ・ウ・エが回転の中心からの距離の問題であることは容易に見当が付けられるはずである。
【大問2】化学分野:気体の発生と中和
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
- ★必答問題
(1)〜(3)までは即答が必須。(4)以降は多少考える必要があるが、結局のところ、「完全に中和する塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の体積比」と、「アルミニウム1gを完全に溶かし切る塩酸の体積」を明らかにするという王道の問題に過ぎない。
落ち着いて処理すること。
(2) 塩酸については100mL時点で見られる水素の最大発生量がちょうど50mL時点の2倍になっていることから、素直に塩酸100mLとアルミニウム1gが過不足なく反応し、1400mLの水素が発生すると定式化できる。
塩酸60mLとアルミニウム0.8gであれば塩酸の方が不足するため、水素の発生量は塩酸の量に比例する。
すなわち、1400×60/100=840[mL]である。
豊島岡女子レベルを受験するなら、基本問題。
(3) 水酸化ナトリウム水溶液の場合は、水溶液の量と気体の発生量の比例関係が100mL→150mLの区間で崩れていることから、アルミニウム1gと過不足なく反応する溶液の量がこの区間内にあると判断できなければならない。
比例関係が観察される間は溶液50mLを加えることで水素の発生量が525mLずつ増加していた。ところが、水酸化ナトリウム水溶液の量が100mLから150mLに増える間には350mLしか増加が見られない。ここから、50:525=□:350の比例式を解くことで、アルミニウム1gと過不足なく反応する水酸化ナトリウム水溶液の量は100+100/3≒133.3[mL]であると求められる。
答えが割り切れない程度で怯んではならない。
(2)の結果と合わせて考えれば、塩酸110mLはアルミニウム1gを全て溶かすことができる一方、水酸化ナトリウム水溶液110mLは溶かし切ることができないと判断できる。
(4) 「溶液⑤に3gのアルミニウムを加えましたが、アルミニウムは溶けず」という記述から、溶液⑤の混合比率(塩酸:水酸化ナトリウム水溶液=1:4)で完全な中和反応が生じていると読み取れる。
溶液②は塩酸過多であるから、BTB溶液は黄色に呈色する。
(5)(6) いずれも、中和に使われる塩酸の体積が水酸化ナトリウム水溶液の1/4であり、残りの塩酸がアルミニウムと反応する状況を考えれば良いだけの問題。
(7) 一見面倒そうだが、「3g中1.5gのアルミニウムが残る」ということは「1.5gのアルミニウムと反応する」塩酸の量を考えれば良いということ。(5)(6)と同様に考えると、溶液②が塩酸150mLに相当する。
(2)より、塩酸100mLとアルミニウム1gが過不足なく反応することから、塩酸150mLが溶かせるアルミニウムの最大量は1.5gと分かり、条件に合致する。
【大問3】生物分野:ヒトの体内のつくり
- 難度:標準
- 時間配分:5分
- ★必答問題
細かい知識を尋ねる問題は無いが、臓器の位置や役割に対する正確な知識が要求される。
特に、「すべて選べ」問題は差がつくポイントとなり得る。
(5) 臓器の中でも肝臓、じん臓、すい臓の役割は幅広く、かつイメージしにくいものが多い。位置、個数はもちろんのこと、それぞれの働きをまとめておくと良い。
(6) 豊島岡女子お得意の換算問題。慌てることなく、「(A:1時間に吸う息が含む酸素の体積)−(B:1時間に吐く息が含む酸素の体積)」の計算を考えてから処理に着手しよう。
Aについては、1分間に吸う息が3L=3000mL、含まれる酸素の割合が21%であるから、取り込まれる酸素の体積(mL)は3000×0.21×60で計算できる。
また、Bについては、吐く息200mL中に含まれる酸素の体積が36mLであることから、体積の割合は36÷200×100=18[%]である。
1分間に吐く息が3L=3000mLであるから、1時間で放出される酸素の体積(mL)は3000×0.18×60で計算できる。よって、差し引き3000×0.21×60−3000×0.18×60=3000×60×(0.21−0.18)=5400[mL]と計算される。
吸う息と吐く息の体積が同じであることに注目し、双方に含まれる酸素を割合で捉えられるかどうかが、計算の手際の肝となる。
【大問4】地学分野:気象と湿度
- 難度:標準
- 時間配分:5分
- ★必答問題
出題頻度はあまり高くないが、知識問題はいずれも基礎レベル。(5)(6)の計算問題は正解できないと苦しい。
(5) 現在の水蒸気量を計算してから、それが飽和水蒸気量と等しくなる温度を考える方向の問題。
まず、35℃での飽和水蒸気量が40g/m3であるから、湿度40%の状態では40×0.4=16[g/m3]の水蒸気が含まれていると分かる。
表を見ると、温度が20℃から15℃まで低下する間に飽和水蒸気量が16g/m3を下回っているので、この水準まで温度が下がるには、空気が何m上昇すれば良いかを考える。
標高0mで35℃の空気が20℃まで冷却される、すなわち温度が15℃下がるには、100:0.1=□:15の比例式から空気が1500m上昇すれば良いと計算される。
同様に、15℃まで冷却される、すなわち温度が20℃下がるには2000mの上昇が必要だと求められるので、雲ができ始めるのは標高1500m〜2000mの間であると判断できる。
(6) (5)と同様、現在含まれる水蒸気の量を考える。
40℃での飽和水蒸気量が51g/m3、湿度が90%、部屋の空気の体積が10m3であることから、現存する水蒸気量(g)は51×10×0.9で計算される。
一方、室温が5℃まで低下した際に含むことができる水蒸気量(g)は、6.8×10で計算される。
よって、含むことができなくなる水蒸気量(g)は51×10×0.9−6.8×10=(51×0.9−6.8)×10=391(g)であると求められる。
本来は、1m3の空気について凝結する水蒸気の量を求めてから、部屋の空気の体積を掛ける処理ができるのが望ましい。
攻略のポイント
本年度は驚くほど「難問」が見当たらなかった。計算問題はいずれも落ち着いて必要な情報を求めていけば答えが出せるものであり、テキストの標準的な問題が一通り習得されていれば、理解する上で躓くポイントはほとんど無いだろう。
ただ、標準レベルの計算問題で苦手意識を抱いているようだと、短い制限時間とプレッシャーの中でこの手の問題を正確に解き切るのが難しくなる。とにかく、豊島岡女子の理科においては計算問題の攻略が必須であると心しておくこと。
また、本年度のように計算問題が比較的簡単で受験者の得点水準が高い場合、知識問題での失点が命取りになり得る。特に細かい知識も問われていないことから、満点を目指して当然の問題であると考えて取り組もう。
志望校への最短距離を
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