女子学院中学校 入試対策
2019年度「女子学院中学校の理科」
攻略のための学習方法
上述の通り、基本的には問題集に載っている問題が解ければ、大部分は正解できるようになっている。だが、要件が簡単だからと言って、その実現が簡単だとは限らない。
メダカの単元が好例だが、網羅的な演習は漫然と行っていると得手不得手などの主観が加わり、無意識のうちに単元ごとの取り組みに濃淡が出やすい。
手持ちの問題集を6年生の夏休みで一旦仕上げてしまえるのが理想だが、いずれにせよ、夏休みには全単元の復習を行い、チェックテストの点数や章末問題の正答率などで単元ごとの定着度を定量的に把握しておきたい。
夏休み以降は定着の弱かった単元の復習を進めると同時に、入試を見据えた実践面での対策に着手したい。
まず、選択肢問題への対応だが、昨年度入試から選択肢は当てはまるものを「すべて選べ」という指示になっている。
一般の問題集ではまだ当てはまるものを1つ選ぶ形式が標準なので、演習に際して工夫が必要となる。すなわち、選択肢に含まれる誤りを正しく指摘したり、ある選択肢が選べない理由を説明したりする練習を習慣化することである。
女子学院の入試では全選択肢について正誤の判断ができる必要があるため、問題集での演習において正解が特定できた際にも、他の選択肢がなぜ不適切なのかをその都度明らかにしながら学習を進めること。
女子学院の入試問題におけるもう1つの特徴が記述問題である。
記述問題は「①:解説文や問題の文脈から論理的に導ける結論を記述する」、「②:ある科学的現象を引き起こす既知の要因を説明する」、「③:ある結論や結果を導くのに適した実験処理を考える」という3タイプに大別される。
①のタイプはどちらかと言えば国語の問題であるが、女子学院を受験するレベルの学生であれば、あまり苦にならないであろう。本番での即応的対処が基本だが、不安があれば過去問演習のほか、国語の説明的文章で練習を積んでおくのも良い。
②のタイプはいわば知識問題である。科学的現象は用語だけでなく、その発生メカニズムまで含めて頭に入れておく必要があると理解しておこう。
難しいのが③のタイプである。科学的なセンスが要求される問題だが、センスの源はやはり「知っていること」にある。この種の感覚を磨くには、様々な科学的成果がどのような課題意識に基づき、どのような仮定や実験を経て得られてきたかを知るのが役に立つ。特に、時事的な話題に関する実験や科学史上重要な転換点となった実験については学んでおいて損はない。
また、本年度はあまり出題が見られなかったが、計算問題への習熟も不可欠である。
女子学院の入試では、どちらかと言えば選択肢問題や考察問題に厄介な出題が見られ、計算問題は標準的なレベルのものが多い。それだけに、確実に得点を稼ぎたい問題となる。
各分野を代表する定番の計算については問題集などで練習し、スムーズに処理できるようにしておこう。
以下、各分野の学習において特に注力すべき点を挙げておく。
【生物分野】
まずは知識面での穴を極力作らないのが基本である。本年度はメダカがターゲットになったが、他には昆虫の生態や植物の形態などが、いざ狙われると致命傷になりかねない単元である。単純暗記の色合いが濃いものほど受験勉強の後期には軽んじられやすくなるので、1か月に1度など、定期的に復習の機会を設けるようにしたい。
また、表やグラフの読み取りが多いのもこの分野の特徴である。基本的には読めば分かる問題だが、苦手な場合はグラフ問題に特化した問題集を購入し、集中的に対策しておくと良い。
【地学分野】
知識面に関しては、他の分野と比べると覚えるべきものが限られているので、学習はしやすいはずである。標準的な問題集の一問一答が頭に入っていれば不足はないだろう。
念入りな対策が必要なのが知識の運用である。特に天体分野では地球からの天体の見え方や星座早見盤の使い方についてスムーズに処理できるようにしておきたい。地質分野では地層の形成順序や柱状図の読み取り、気象分野では天気図の読み取りと気象変化の予測などが鍵になる。実戦演習を積んで、理解を深めておこう。
【物理分野】
一見複雑そうな問題であっても、単純化すれば定番の原理に帰着するというのが物理分野の特徴である。各種法則を踏まえた上で、各単元に特徴的な思考問題を押さえる意識で学習しよう。力学分野では釣り合いの問題にばねや浮力が加わると難度が高くなる。力やモーメントの方向を矢印で記入するなど、処理の定型化を図っておこう。電気分野では直列回路に並列回路が組み込まれた回路の処理を身につけておきたい。その上で、電熱線の発熱と水温上昇に関する演習を重ねておくと良い。
【化学分野】
どちらかと言えば知識問題で厄介な出題が多く、連年微妙な解釈の隙間を衝くような問題が見られる。ある程度の失点は覚悟する必要があるが、本年度の「せっけんを水に溶かしても水溶液にはならない」といったレベルの精度で理解が求められている点は意識しておいた方が良い。
本年度は出題が見られなかったが、計算問題も頻出である。溶解度や化学反応に関する定番の計算処理はスムーズに行えるまで練習しておこう。
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2019年度「女子学院中学校の理科」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
40分の試験時間に対し、解答箇所は51個。問題数の大幅な減少が見られた昨年度からさらに微減した。
化学分野の考察記述と生物分野のグラフ問題は熟考を要するだろうが、他の問題は知識や直線的思考に基づいて即答できるのが望ましい。
また、選択肢の問題では当てはまるものを「すべて」選ぶ必要があるため、見落としのないように注意しよう。
【大問1】化学分野:ペットボトル・物質の性質
- 難度:やや難
- 時間配分:11分
最後の記述2問を除けば基本問題ばかりに見えるが、注意すべき問題が幾つか混在している。記述問題は論理的に答えを導くことも可能だが、ある程度予備知識が無いと正解するのが難しいのではないか。
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(3) せっけん水が曲者である。せっけんは「水に溶かすとアルカリ性を示すもの」の代表例として参考書に掲載されている。一方、せっけん水は牛乳や泥水と同じく、「透明ではないので水溶液とは呼ばない」ものの例でもある。
問題は、理科の参考書や指導カリキュラムにおいて水溶液の定義と酸性・中性・アルカリ性が同時に扱われないこと、および「水に溶ける(分散する)が水溶液ではない」というコロイド溶液の存在について多くの注意が払われないことにある。
さらに、塾においても「水溶液ではないのになぜアルカリ性を示すか」についての解説に至ってはほとんど行われていないのではないか。
受験生にとってはやや酷な問題だと言えよう。
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原子力発電によって生じる放射性廃棄物の問題は有名だが、問題は火力発電を答えに含めるかどうかである。
化石燃料の燃焼によって生じる排出物として真っ先に想起されるのが二酸化炭素だが、二酸化炭素を有害物質と考えるかどうかは悩ましい。
まず、二酸化炭素自体は、通常濃度であれば人体にとって有害であると言い難い。温暖化を引き起こす温室効果にしても、現在の濃度が人間社会にとって許容し難いという相対的問題に過ぎず、二酸化炭素の持つ温室効果が無ければ、極寒の地球上でほとんどの生命は死滅してしまう。
したがって、この手の問題では二酸化炭素は有害物質として扱わないのが通例である。
一方、化石燃料の燃焼は石油などが含む硫黄や窒素の酸化物を生じ、酸性雨の原因となったり、四日市ぜんそくに代表される公害の原因となり得る。
むしろ、火力発電が排出する有害物質としては、これらを想定しておくのが良いだろう。
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PETというのはポリエチレンテレフタラートという物質の略称であり、エチレングリコールとテレフタル酸が交互に結合を繰り返す構造になっている。
ここに異なる物質が混入すると、結合の繰り返しが正常に行われず、リサイクルに支障をきたすことになる。
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重さや密度の違いが物体の動態に影響を与えるケースを考える。
たとえば、落体に働く下向きの力、摩擦力、遠心力などは物体の質量に影響を受ける。混合物を落下させ、アルミニウムに働く力よりは小さいがペットボトル片に働く力よりは大きい力を送風によって与えれば、ペットボトル片のみ運動の方向を逆転させ、空中に留めることができる。
操作面でより簡単かつ確実なのは、アルミニウムとペットボトル片の中間の密度を持つ液体を調合し、混合物を投入する方法であろう。アルミニウムは沈む一方、ペットボトル片は液面に留まるので簡単に回収できる。
【大問2】地学分野:大気の状態と気流
- 難度:易
- 時間配分:7分
- ★必答問題
順を追って考えていけば容易に答えられる問題だが、冒頭に書かれている「周りよりもあたたかい空気は自然に上昇する」という情報を失念しないように。
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風船の中の空気は「周囲の空気の温度と関係なく100m持ち上げるたびに1℃ずつ温度が下がっていった」と書かれていることから、①は21.0−1×1000/100=11.0[℃]と計算される。
周囲の空気の温度は14.5℃であるから、風船内の空気は周囲の温度よりも低い。つまり、自然に落ちると考えられる。
以下、2と3も同様に考えれば良い。
なお、気温を解答する際の表記についてだが、図表では小数第1位まで表記されている一方、問題文では21℃と整数表記になっている。本来こういう表記の不統一は避けるべきであり、11℃と答えても誤りにはできないはずだが、11.0℃と書いておく方が無難である。
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2と3で考えた通り、地表と上空との気温差が大きいと、地表から上昇した空気の温度が下がり切らず、周囲の空気よりもあたたかいまま上昇を続けるという結論は自然に導けよう。
【大問3】生物分野:メダカとメナダの生態
- 難度:難
- 時間配分:10分
- ★必答問題
メダカの問題は軽視されがちだが、出題されると細かい点まで訊かれるのが特徴。覚えていなければ推測で失点を最小限に止め、メナダの問題での得点稼ぎに注力しよう。
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(1) ③は「食べ残しによる水の汚れを防ぐため、エサは少なめに与える」という基礎知識を問うものだが、「エサが少ないと、メダカどうしがエサを取り合うから(ウ)、エサは多めに与える」という考えはなぜ誤りなのだろうか。
冷酷な言い方にはなるが、エサの量が少ない場合、競争が起ころうが共食いが起ころうが、原則としてエサの量に見合った個体数は生存できる。他方、水質の悪化は全個体にとっての脅威である。
したがって、群集としてのメダカの生存維持を考えるうえでは、エサは少ないほうが多いよりもマシであると言える。
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(1) 実際の値を読み取って計算していけば分かるので、丁寧に解こう。
孵化時、20日後、50日後、70日後の全長はそれぞれ3mm、8mm、23mm、36mmぐらいだと読み取れる。
①は「何倍になったか」を考える問題であるから、8÷3と36÷23の計算結果を比較する。
②は20日間で「どのくらい増えたか」を考える問題であるから、8−3と36−23の計算結果を比較する。
日本語の正確な理解が問われる。
(2) うろこの大きさが記載されているのは図4であるが、表されているのは全長との関係である。よって、図3から孵化後の日数と全長を関連付け、図4で全長とうろこの大きさを結びつけることを考える。
まず、図3では孵化後50日の全長が23mmであるから、図4で全長23mmに対応するうろこの大きさを読み取れば良い。
(3) 図5を見ると、隆起線は全長が約7mm大きくなるごとに5本の割合で増加するというペースを保っている。また、図4ではうろこが0.2mm大きくなるごとに全長が約7mm大きくなっている。よって、うろこが0.2mm大きくなるごとに隆起線は5本ずつ増えていくと言える。
(4) 図5から、隆起線15本のメナダの全長は30mmであると読み取れる。図3からは全長30mmが孵化後日数60日に対応すると読み取れる。よって、隆起線15本と孵化後日数60日が対応する。
【大問4】物理分野:さおばかり
- 難度:やや難
- 時間配分:12分
- ★必答問題
「さおばかり」はてこの釣り合いを学習する際に必ず登場するが、頻繁に登場するわけではなく、原理を覚えているかどうかが解きやすさを左右する面はある。また、皿の重さが与えられていないため、皿の位置を移動させた際の状況変化が具体的に掴みにくい。こうした場合には、適当に皿の重さを150gなどと決めてシミュレーションしてみると良い。
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(1) 導入部分で「皿をAにつるすと、おもりをつるさなくても棒は水平になった」と書かれていることから、皿が生む反時計回りのモーメントと棒の重心で生じる時計回りのモーメントが釣り合っていると分からなければならない。また、均質な棒であれば重心は棒の中心に存在する。
設問にはなっていないが、皿と重心の支点からの距離がそれぞれ10cm、20cmであることから、皿と棒の重さの比が2:1であることまで理解して欲しい。
(2) 皿に何も乗せていない状態でおもりをつるし、棒が水平になる場所が0gとなる。皿の位置がAである時、すでに棒は水平であるから、水平を保ったまま100gのおもりをつるすとなると、支点の真下につるさなければならない。よって、支点の位置の目盛りが0gである。
一方、支点から40cmの場所に100gのおもりをつるすと、新たに40×100=4000のモーメントが時計回りに発生することになる。これと釣り合うモーメントをAに加えるためには、4000÷10=400[g]の物体を皿に乗せなければならない。
逆に言えば、支点から40cmの位置に100gのおもりをつるすと棒が釣り合うことから、皿に乗せた物体の重さが400gであると知ることができる。
よって、支点から40cmの位置の目盛りは400gである。
(3) 皿の位置をAから10cm左のBに動かすことで、反時計回りのモーメントは10×(皿の重さ)分だけ増加する。したがって、棒を水平に保つためには時計回りのモーメントを同じだけ加えなければならない。
そこで、皿がAにつるされていたときには支点の真下にあったおもりを10×(皿の重さ)=(おもりの支点からの距離)×100となるように右へ動かすことになる。このことから、皿の位置がBにある場合の0gの目盛りは、Aの場合よりも右にずれることが分かる。
また、Bの位置にある皿に物体を乗せた際に追加される反時計回りのモーメントは、支点からの距離が2倍になっていることから、Aの場合の2倍である。
このことは、同じ重さの物体を皿に乗せ、おもりを右へ動かしてモーメントの釣り合いを維持するにあたり、おもりを動かす距離が2倍になることを意味している。よって、目盛りの間隔は広くなる。
(4) (3)の結果から、皿の位置がAにある時の方が目盛りの間隔が狭い分、刻める目盛りの範囲は広くなることが分かる。また、同じ間隔で比較した場合、Bの目盛りの変化はAの半分に相当する。
このため、Bの方が軽い物体の重さを量るのに適していると言える。
攻略のポイント
本年度の入試問題は問題集の標準〜発展レベルで見かけるような問題が大半を占めており、実験や観察に基づく問題も順序立てて情報を追っていけば正解にたどり着けるので、全体的には解きやすい印象である。
その中にやや難度の高い記述問題が含まれているが、正答率や予想配点の低さを考えるとあまり大きな差がつくポイントにはならないだろう。
どちらかと言えば、問題集で解いたことがあるような問題での取りこぼしをどれだけ少なくできるかが重要になる。中でも、メダカの問題は本当に「覚えるだけ」の問題なので、学習の徹底度合いが如実に結果を左右し得る。
後はメナダの成長に関するグラフ問題、さおばかりの問題の出来が差のつくポイントになる。
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