聖光学院中学校 入試対策
2019年度「聖光学院中学校の社会」
攻略のための学習方法
スライド式学習
「地理」「歴史」「公民」全単元と「時事問題」の「知識」を確実に定着させておくこと。「基本的事項」は当然だが、細部にわたる「知識」や「深い理解」も必要なので、テキストの「注」や「囲み説明」等のチェックも重要だ。
聖光では特に「地理」からの掘り下げた出題が多い。前述したような全分野での「知識定着」(「地形図」は念入りに)が欠かせない。だが、悲しいことに人は忘れるものだ。時が経てば経つ程忘れる。ここに落とし穴がある。
基本的に「暗記」が最重要となる「社会」では、各単元をいつ学習し、定着させたのか、その時期が問題となる。塾では通常、本格的な受験勉強が始まる5年生になってから、「地理」⇒「歴史」⇒「公民」と単元消化していき、6年生の夏休み前には終える。
その後は「復習」となるが、メインは圧倒的に定着すべき事項の多い「歴史」にならざるを得ない。そのまま、秋から冬となり「過去問演習」と続いていく。6年生で学習した「公民」はまだしも、「地理」はどうだろうか? 実質的に1年以上の空白が生じてしまう。それはまずい。聖光ではなおさらだ。
そこで、独自の「復習」が必要となる。塾での学習とはずらして(スライドさせて)、まだ時間的に若干の余裕がある5年生の冬休みやその後の春休みを利用して徹底的に「地理」の「復習」をしておくことがポイントだ。「重要事項チェック問題集」のようなものを活用するといい。
さらに、その後も定期的に「地理」の理解を深めるような学習を続けておくことで、ライバルに差をつけたい。
いもづる式学習
「暗記事項」はそれぞれ単独(要は「一問一答方式」)に定着させても無意味だ。バラバラに覚えているだけでは、自分が覚えた通りに問われなければ結びつかないし、関連問題にも答えられない。ましてや、聖光攻略に必須の「多角的思考」など絶対に無理だからだ。そこで重要となるのが「いもづる式学習法」だ。
「点」で覚えているものを「線」で結び、さらには「面」をも理解するには不可欠の学習。
1つの「暗記事項」を確認する際、それに関連すると思われる「事項」を次から次へと思いつく限り引き出していく。単元も無視する。
もし「言葉」としては覚えていても「内容」があやふやになっているものがあれば、すぐに確認しておく(ここでも「復習」できる)。また、それらは「線」で結びついているはずなので、どのように結びつくのかを確認していく。その上で、それらが結びつく背景(=「面」)も理解するようにする。
このようにして改めて暗記し定着させた「事項」はどのような問われ方をしても「線」で結びつけて答えられることになる。
さらに、単元もまたいでいるので、「単元融合問題」にも対応できるようになる。無論、「多角的思考」にも「いもづる式学習法」は力を発揮する。
手づくり式学習
特に、「歴史」単元の「復習」で必要となる。
塾での「歴史」の学習は普通、「政治史」を軸とした「通史」として「時代別」「時代順」になっている。しかし、聖光に限らず入試問題ではそうした単純なものはほとんどない。特定の切り口での「分野史」が多いし、必ずしも「時代別」「時代順」ではなく様々な時間軸で出題される。それらに対応するために必要なのが「手づくり年表」だ。
「政治史」「社会経済史」「外交史」「文化史」「人物史」等の「分野史」別の「年表」を作成しながら復習する。その際、「原始」~「現代」という長い時間軸にする。当然、「重要事項」だけしか記入できないが、それでいい。「関連事項」を頭に思い浮かべるようにすれば、「いもづる式学習」にもなる。
さらに、その「年表」には「世紀」と「日本の時代名」「中国の王朝名」を対応させて記入しておきたい。「世紀」と「時代」がすぐに結びつかないと答えられない問題が多いからだ。また、「地理」単元で、様々な「地形図」から「地図」や「断面図」を作成するのもいい。聖光でよく出題される「書き込み問題」の練習に最適だ。
「年表づくり」や「地図づくり」を楽しみながらやってみよう。
細部へのこだわり式学習
聖光で必ず出題されるのが、「リード文」「設問文」「資料」「図表」等の「要素」と自らの「知識」を多角的に結びつけないと解けない問題だ。
考えるに当たって最も重要なことは、それぞれの「要素」をいかに正確に読み取るかということだ。そこから「考えるヒント」を見つけ出す。そのためには「細部」にこだわって読み取ることが必要となる。当然、トレーニングが欠かせない。
過去問や練習問題等を用いて、各「要素」の細かな「意味」や「関連事項」等を全て材料として、そこから何が導き出せるのかを確認する訓練をしなくてはいけない。導き出せることについては、過去問や問題集の「解説」に示されているはずなので活用すること。
こうした「細部へのこだわり学習」をつづけることで、次第に様々な「要素」から着目すべき「手がかり」が自然と浮かび上がるようになる。後は自分の「知識」と結びつけて考えればいい。
意識継続式学習
常に何かを「意識」しながら学習することが重要。漠然と机に向っていても無駄なだけだ。その時々、何を目的としてどのような学習(たとえば、上記の「○○式学習」)をしているのか、具体的に「意識」し続けていることが大切。
そうして何かを「意識」することが継続できるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」しながら学習したい。聖光の入試本番では40分という制限時間の中で、様々な「要素」をクリアして答えなくてはいけない。
だからこそ、「設問」を正しく理解しているか? 「要素」は全て確認したか? 「他の設問」との関連は大丈夫か?「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」しながら学習する必要がある。
当然、「時間」も「意識」すること。入試では見直しの時間はないと思った方がいい。常にそれらの「意識」を継続しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2019年度「聖光学院中学校の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は「歴史」。
「外国の『国名』の呼び方を切り口として、日本の対外関係の歴史についてのリード文」からの出題。小問は全10問(解答数15)。「選択肢」(「年代整序」、「不適切」あり)、「空所補充事項記述」(「漢字」「カタカナ」指定あり)、「説明記述」(1問、「字数指定」なし)。
大問2は「公民」(1問のみ「時事」)。
「議会選挙と女性議員に関する新聞記事」からの出題。小問は全5問(解答数7)。「選択肢」、「空所補充事項記述」(「漢字」指定あり)。
大問3も「公民」(「時事」「歴史」各1問あり)。
「『平和』という言葉を切り口として、国際紛争や貧困に関するリード文」からの出題。小問は全7問(解答数9)。「選択肢」(「不適切」、「地図上での位置特定」あり)、「事項記述」(2問、「空所補充」で「カタカナ」指定)。
大問4は「地理」。
「埼玉県秩父市に関連する『図』や『表』、『地形図』」などからの出題。小問は全6問(解答数17)。「選択肢」(「不適切」、「組み合わせ」、「表の読み取り」、「複数解答」あり)、「府県名記述」(「空所補充」、「漢字」指定)。時間配分としては、「説明記述」は5分ほど、それ以外は3問で2分強のペース。
【大問1】「歴史」(「説明記述」「年代整序」あり)
- 難度:やや難
- 時間配分:15分
- ★必答問題
「歴史」単元。「外国の『国名』の呼び方はどのように決められたのかということを切り口として、日本とさまざまな国々との古代~明治時代までの歴史的関係についてのリード文」からの出題。
「政治分野」から「文化分野」まで、さまざまな「歴史的事項」が問われている。「空所補充事項記述」は「基礎的知識」で答えられるが、「選択肢設問」(特に「年代整序」)は判別が厄介で悩ましく、最後には長文の「説明記述」が控えている。以下、いくつか確認してみる。
[問2] 「下線部についての選択肢設問」(4択)。
「リード文中」の下線部①「明治政府」について、「正しいもの」を答える。
各選択肢の「キーワード」で正誤判別していく。
(ア)「開国和親を宣言」「不平等条約改正が外交課題」⇒後者は問題ないが、前者は?かも知れない⇒「五箇条の御誓文」の5番目に「智識を世界に求め、大に皇基を振起すべし」とあり、1869年には「開国和親の布告」を発している=適切。
(イ)「廃藩置県」の後「版籍奉還」⇒無論、順序が逆=不適切、
(ウ)「学制」「アメリカ式の教育制度」⇒「学制」は「フランスの制度」にならったもの=不適切⇒その後の「教育令」(1879年)では「アメリカ式の自由な教育制度」が採用されたが、翌年には中央集権的内容に変更された。
(エ)「江戸時代にあった身分の特権をすべて否定」「四民平等」⇒「四民平等」とはなったが、「華族」や「士族」という身分が設けられ「特権」も与えられた=不適切。
ということで、「答え」は(ア)。本校では、「歴史的事項」を単に「一問一答形式」で「事項暗記」するだけでは太刀打ち不可能。それぞれの「内容」や「背景」なども理解しておくことが求められる。
<時間配分目安:1分弱>
[問5] 「下線部についての年代整序選択肢設問」(4択)。
「リード文中」の下線部④の「室町時代」に起こった4つの出来事を「時期の早い順」に並べかえ、「3番目」になるものを答える。
各選択肢は、(ア)「応仁の乱始まる」(イ)「正長の徳政一揆起こる」(ウ)「金閣完成」(エ)「勘合貿易始まる」
それぞれの出来事の「背景」を考え、「流れ」で整序していく。「応仁の乱」は8代将軍「足利義政」、「金閣」と「勘合貿易」は3代「義満」と結びつくとすぐに分からなくてはいけない。そして、「応仁の乱」以降は「戦国時代」へと突入するので、「正長の徳政一揆」はその前になるはず。ということは、「金閣」→「勘合貿易」→「正長の徳政一揆」→「応仁の乱」といった「流れ」=(ウ)→(エ)→(イ)→(ア)の順となるので、「答え」は(イ)だ。「年代整序」では、覚えているであろう「年代」の「数字」で特定するのではなく(「数字」を取り違える可能性が大いにある)、「出来事」の「背景」や「流れ」で整序していくこと。尚、「鎌倉時代」「室町時代」「江戸時代」に関しては、「将軍」や「執権」と「出来事」を結びつけておくことも欠かせない。
<時間配分目安:1分>
[問6] 「下線部に関する空所補充記述設問」。
「リード文中」の下線部⑤「東南アジアの国々」に関して示されている「説明文中」の に「あてはまる現在の国名」を答える。
空所前後は「『かぼちゃ』はカンボジア、『シャム猫』や、鶏の一品種の『しゃも』は の古い国名に由来する」となっている。「かぼちゃ」⇒「カンボジア」は誰もが押さえているはず。「シャム猫」はどうか?ややディープな知識か?「シャム」=「タイ」が「答え」だ。
やはり、本校では「深知り知識」が求められているわけだ。
<時間配分目安:30秒>
[問8] 「下線部についての年代整序選択肢設問」(4択)。
「リード文中」の下線部⑦「ロシア」とは「ソ連時代を含めて明治以来多くの条約を日本は結んだ」が、示されている「条約」を、「結ばれた時期の早い順」に並べかえ、「3番目」になるものを答える。
各選択肢は、
(ア)「社会主義国と国交を結んだはじめてのケース」
(イ)「旅順・大連の租借権をゆずり受け、南樺太の割譲を受けた」
(ウ)「歯舞群島と色丹島は平和条約を結んだあとで返還」
(エ)「樺太をゆずって、千島列島を得る」
(イ)=「ポーツマス条約」、(ウ)=「日ソ共同宣言」、(エ)=「樺太千島交換条約」だということは即座に判断できなくてはいけない。問題は(ア)だ。ただ、「社会主義国」とあるので「ソ連」だと特定可能だ。「ソ連」の成立は「大正時代」の「1922年」。「ポーツマス条約」=「日露戦争」、「樺太千島交換条約」=「明治初期」、「日ソ共同宣言」→「国際連合加盟」ということを考えれば当然、 (エ)→(イ)→(ア)→(ウ)という「流れ」になるはず。したがって、「答え」は(ア)となる。ちなみに、(ア)は「1925年」に締結された「日ソ基本条約」だ。抜け落ちている諸君もいると思うので、改めて理解し定着させておきたい。
<時間配分目安:1分>
[問10] 「波線部についての条件付き説明記述設問」(「3行」指定、「150字ほど」の解答欄)。
波線部の「イギリス」について、「17世紀前半の日本とイギリスとの関係」を「3行」で説明する。
「条件」は、示されている文章「Ⅰ」~「Ⅲ」を参考にすること。先ずは「17世紀前半」=「江戸時代初期」だということを明確に意識する必要がある。次に、「条件」を「手がかり」としていきたい。文章「Ⅰ」では「1600年代にイギリス・オランダがともに東インド会社を設立、アジアの国々との貿易を本格的にはじめた」こと、「Ⅱ」では「幕府は、ポルトガル人やスペイン人の『南蛮人』よりも、『紅毛人』と呼ばれたイギリス人やオランダ人を貿易相手にふさわしいと考えるようになった」こと、「Ⅲ」では「1623年、イギリスはオランダに敗れ東アジアとの貿易から撤退した」ことなどが説明されている。つまり、「江戸時代初期の日本とイギリス・オランダとの貿易に関すること」を説明すればいいわけだ。「流れ」としては、「安土桃山時代のポルトガルやスペインとの南蛮貿易」→「江戸時代に入り、イギリスやオランダとの貿易に比重が移る」→「その後イギリスが撤退し、オランダと中国との長崎貿易」となると分かるはず。もちろん、当時のイギリスとの関係では「ウィリアム・アダムズ(=三浦按針)」を忘れてはならない。ということで、あとは「解答欄」を考慮して的確にまとめていけばいい。
たとえば、「安土桃山時代にはポルトガルやスペインとの南蛮貿易が盛んだったが、17世紀に入り江戸時代になると、紅毛人と呼ばれたイギリス人のウィリアム・アダムズが徳川家康に仕えたこともあり、イギリスやオランダとの貿易が中心となり、その後イギリスはオランダとの競争に敗れて撤退し、オランダ、中国との長崎貿易に移っていった。」(151字)といった「答え」になる。「条件」は「ヒント」と捉え、与えられた「情報」を「設問内容」に応じて的確に処理し、判断していくことが求められている。
<時間配分目安:5分>
【大問2】「公民」(「時事」1問あり)
- 難度:やや難
- 時間配分:6分
「公民」単元(1問のみ「時事」)。「『政治分野における男女共同参画推進法』成立という時事ネタを切り口とした、議会選挙と女性議員に関する2018年5月17日の朝日新聞の記事」からの出題。
「政治分野」中心で、一読すると何ということはない問題のようだが、その実、いざ解こうとすると悩むこと必至の小問が並ぶ。厄介な大問だ。いくつかの「設問」を検討する。
[問2] 「下線部についての選択肢設問」(4択)。
「時事」単元。「新聞記事中」の下線部①の「参議院」は2019年の通常選挙から定数が増えたが、その理由としての「政府の説明」と「合致しているもの」を答える。この問題の最大のポイントは「政府の説明」ということだ。確かに典型的な「時事問題」ではあるのだが、果たして「政府の説明」まで押さえているだろうか?悩ましいに相違ない。そこはとにかく、各選択肢を確認する他ない。
(ア)「選挙権年齢を引き下げたため」⇒事実ではあるが、「定数増」とは無関係のはず=不適切
(イ)「日本の総人口が増加したため」⇒無論、「人口」は減少している=不適切
(ウ)「選挙区を2つに分割したため」⇒2015年に「合区」はしたが、「分割」などしていない=不適切
(エ)「一票の格差を是正するため」⇒結局、残っている選択肢はこれしかない⇒政府は、今回の「定数増」によって「一票の格差」は最大でも3倍未満になると説明している=適切。
ということで、「答え」は(エ)。「合致しているもの」を答えるのだが、悩んだ場合は「消去法」も活用すべきということ。尚、今回の「定数増」で増えたのは「選挙区2名」「比例代表4名」で、定数は242名から248名となった。
<時間配分目安:1分以内>
[問3(a)] 「下線部についての選択肢設問」(4択)。
「新聞記事中」の下線部②「女性の議員」について、示されている「日本の女性議員の説明」で「正しいもの」を答える。どれだけの諸君が「女性議員」という視点で知識を定着させているか?甚(はなは)だ疑問、難問だ。
各選択肢を確認していく。
(ア)「衆議院議長を務めた女性議員がいる」⇒1993年、非自民政権の細川護熙(もりひろ)内閣誕生に伴い、当時衆議院議員で社会党党首だった「土井たか子」が衆議院議長に就任した=適切。
その他の(イ)「自民党総裁選挙に当選した女性議員がいる」、(ウ)「議員から最高裁長官になった女性がいる」、(エ)「総理大臣を務めた女性議員がいる」はいずれも不適切だ。
よって、「答え」は(ア)になる。本校では、こうしたエアポケットとでもいうべき出題があると心得よ。ただし、「性差別」や「ジェンダー」などについては、今後も出題が予想されるので、そうした視点での学習も欠かせない。
<時間配分目安:30秒>
※尚、[問3(b)]で「世界ではじめて女性に国政上の参政権を認めた国」が問われているが、流石(さすが)に誰も知っているはずもないので「捨て問」で構わない。ちなみに、「答え」は(イ)の「ニュージーランド」(1893年)。
[問5] 「関連出題としての選択肢設問」(5択)。
「新聞記事」に関連して、「2006年に改正された男女雇用機会均等法では、従業員の雇用に関して直接的な性差別だけでなく間接差別も禁止する規定が設けられた。この間接差別は、単に女性であることや男性であることを理由とした差別ではなく、さまざまな要件を設けて性差別を行うことを意味する」が、示されているある企業の「求人表」の(ア)~(オ)の下線部のうち、「女性に対する間接差別に該当(がいとう)すると考えられるもの」を答える。「間接差別」の定義が記されているので、それを踏まえて判別していく。
各選択肢は以下のとおり。
「募集職種:(ア)事務職」、「定年:(イ)男性65歳・女性55歳」、「応募資格:(ウ)普通自動車免許保有者・(エ)平成元年4月2日以降に出生した者・(オ)身長180㎝、体重80㎏以上の者」。
(イ)は明白に「直接的な性差別」だと分かる。他ではどうか?「応募資格」の(オ)は、直接は「男性」とは示していないが、この条件では「女性」はほとんど該当しないと考えられるはずだ。したがって、「答え」は(オ)だ。「直接的知識」がなくとも、与えられた「条件」から考察していくことが求められているわけだ。
<時間配分目安:1分強>
【大問3】「公民」(「国際」中心、「時事」「歴史」各1問あり)
- 難度:やや難
- 時間配分:7分
「公民」単元(「時事」「歴史」各1問あり)。「『争いごとのない状態』である『平和』という言葉を切り口として、2001年以降の戦争や地域紛争、そして、『貧困』と『差別』の現状に関するリード文」からの出題。
主に「国際分野」が問われている。「公民」主体の大問が2題ということも稀有だが、その1つが「国際分野」というパターンは、本校としては初めてに違いない(来年度以降も注意を要する)。そして、出題内容が「近年の事項」というのも辛いところだ。テキストにはまだ掲載されていないが、かといって「時事問題」としては数年前の事項は、まさに狭間(はざま)となり未習のこともあるはずだ。なかなか厄介な大問かも知れない。
以下、いくつかの「設問」を検証したい。
[問1] 「下線部に関連しての空所補充国名記述および位置特定選択肢設問」(「カタカナ」指定/4択)。「世界地理」の要素あり。
「リード文中」の下線部①「2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件」に関連して、アメリカは「2003年には『テロ支援国家』とみなした に対し、『大量破壊兵器を所持している』との理由で戦争を起こした」が、この空所 に「入る国名」を「カタカナ」で答え、その国の場所を示されている「地図」(アフリカ北東部・地中海沿岸・中東を表している)の中の(ア)~(エ)から選ぶ。
2003年といえば「フセイン政権」を倒した「イラク戦争」なので、空所の「答え」は「イラク」だと即答したい。さて、その位置は意外と判別しづらい。「サウジアラビア」の北東にある(ウ)が「答え」だ。その西隣の(イ)は「シリア」(「内戦」で悲惨な状況となっている)、アフリカ北部の大国である(ア)は「リビア」(2011年のカダフィ政権崩壊以降、混乱が続いている)、「イラク」の東国(エ)が「イラン」(2019年9月現在、「核合意」をめぐって、アメリカと対立している)。尚、中東やヨーロッパの国々の「位置特定」は頻出だ。しっかりとその場所を確認しておくこと。
<時間配分目安:1分>
[問6(a)] 「下線部に関連しての空所補充事項記述設問」(「カタカナ5字」指定)。「時事」単元。
「リード文中」の下線部⑥「差別」に関連して、示されているのは「2013年7月12日に国連本部にてマララ・ユスフザイさんがおこなったスピーチの一部」だが、その中の空所に入る『社会的性差』を意味する語句」を「カタカナ5字」で答える。空所前後は「……カースト・信条・宗派・肌の色・宗教・ に基づく偏見を拒絶する……」となっている。典型的な「時事用語」を問われているので、「文脈」および「社会的性差」という意味から即座に、「答え」は「ジェンダー」だと判断できなくてはいけない。
尚、自ら武装勢力に襲撃されながらも子どもたちが教育を受ける権利を訴え続け、2014年に史上最年少(当時17歳)でノーベル平和賞を受賞した、パキスタン出身のフェミニスト・人権運動家である「マララ・ユスフザイさん」のこともしっかりと押さえておくこと。
<時間配分目安:1分弱>
[問7] 「下線部についての不適切選択肢設問」(4択)。
「リード文中」の下線部⑦「平和のための活動」について、示されている「20世紀にそうした活動をした人物」に関する説明で、「誤っているもの」を答える。
各選択肢の「人物」とその「キーワード」で正誤判別する。
(ア)「アインシュタイン」=「物理学者」「(広島・長崎への原爆投下後)核兵器の廃絶を訴えた」⇒確かに、アインシュタインは自らの「特殊相対性理論」を基に開発された原爆に対して自責の念を抱き、「核兵器廃絶・科学技術の平和利用」を訴えた「ラッセル=アインシュタイン宣言」を発した=適切。
(イ)「ガンディー」=「非暴力」「インド独立の父」⇒これは誰でも知っているはず=適切。
(ウ)「マザー・テレサ」=「修道女」「インドで、宗教を問わず貧しい人や苦しむ人たちのために奉仕」⇒1979年にノーベル平和賞を受賞した「マザー・テレサ」の名は知っていなくてはいけない=適切。
(エ)「ネルソン・マンデラ」=「国家反逆罪の名目で逮捕される」「アメリカに住む黒人の人権を守る公民権運動を指導」⇒「マンデラ」は逮捕されながらも「南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)」に反対した人物=不適切⇒アメリカで公民権運動を指導したのは「キング牧師」だ。
万一、これらの中で一人でも知らない人物がいた場合、徹底した復習が必要だ。
<時間配分目安:1分>
※尚、[問7]で「ステレオタイプなものの見方の例」が問われているが(不適切選択肢)、「大学入試レベル」の問題なので「捨て問」で構わない。ちなみに、「ステレオタイプ」=「多くの人に浸透している固定観念、先入観、思い込み」で、「答え」は(エ)「神社では参拝する前に手や口を水で清める」だ(これは一種の「作法」)。
【大問4】「地理」(「統計資料読み取り」中心)
- 難度:難
- 時間配分:12分
「地理」単元。「埼玉県や秩父市に関連する地形、気候、観光について調べた『図』や『表』、『地形図』」などからの出題。
例年の多様さとは異なり、「統計資料」中心の小問となっている。しかも馴染みの薄いものが多い。また、定番の「地形図」も例年以上に細部の正確な読み取りが求められている。ハードな「地理」単元の大問で、難問ぞろいだ。いくつかの「設問」を検討する。
[問2] 「統計資料読み取り選択肢設問」(全3問/5択の2問と3択の1問)。
示されている「日本のいくつかの都市の年間平均気温と気温の年較差」を表した「グラフ」について、「グラフ中」の(ア)~(オ)の●は、「旭川市」「熊谷市」「銚子市」「長野市」「那覇市」のいずれかだが、「熊谷市」と「那覇市」に「あてはまるもの」を、(カ)~(ク)の◆のうち「京都市」に「あてはまるもの」をそれぞれ答える。「グラフ」自体は見慣れないものだが、都市の「年間平均気温」と「気温の年較差」は知らなくてはいけない事項だ。それぞれ確認したい。
先ず(ア)~(オ)では、「平均気温」が最も高い(ア)=「那覇市」、最も低い(オ)=「旭川市」だと特定できる。残りでは、「平均気温」が低く「年較差」が大きい(エ)は中央高地の「長野市」、「平均気温」はほぼ同じだが、「年較差」がより大きい(ウ)が内陸に位置する「熊谷市」で、最後の(イ)=「銚子市」だと判断できるはずだ。次に(カ)~(ク)だが、「京都市」は盆地にあり夏の気温が高いことから、「平均気温」が比較的高く「年較差」も大きい(キ)だと判別したい。したがって「答え」は、「熊谷市」=(ウ)・「那覇市」=(ア)・「京都市」=(キ)となる。たとえ見知らぬ「統計資料」であっても、「知っていること」を組み合わせて類推すれば「答え」は出ると考えよ。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問4(a)] 「統計資料読み取り組み合わせ選択肢設問」(4択)。
示されている「各都道府県の農業産出額に占める米、野菜、果実、畜産の生産額割合のうち2つの品目について、その割合が高い10都道府県」を表す図「A」・「B」(「都道府県境」を示した「日本地図」)について説明した文「Ⅰ」・「Ⅱ」の「正誤の組み合わせ」として「正しいもの」を答える。当然、図「A」・「B」が表している「品目」の特定から始める。「A」には「北海道」「鹿児島県」「宮崎県」等が示されていることから、4つの「品目」の中ではすぐに「畜産」だと確定できなくてはいけない。「B」では「東北地方」「北陸地方」の県が主に示されている。であれば無論、「米」だと分かる。で、「説明文」だ。「Ⅰ」は「畜産」、「Ⅱ」は「果実」についてだ。よって、「答え」は、「Ⅰ:正 Ⅱ:誤」となっている(イ)で決定だ。
本問は4択だったので即正答にたどり着けたが、「組み合わせ選択肢」では何かひとつを特定して、選択肢を一気に絞り込んでしまうことが鉄則だ。
<時間配分目安:30秒>
[問6(a)] 「統計資料読み取り組み合わせ選択肢設問」(6択)。
示されている「埼玉県、愛知県、山梨県における日帰り旅行客の旅行目的別割合」を表す円グラフ中の「A」~「C」は、「観光レクリエーション」、「帰省・知人訪問」、「出張・業務」のいずれかだが、その「組み合わせ」として「正しいもの」を答える。
3つのグラフでは、「山梨県」の「A」の割合が他県と比べて圧倒的に大きいことがすぐに分かる。「山梨県」といえば、「富士山」「富士五湖」「南アルプス」などといった観光地が多いので、「A」=「観光レクリエーション」だと決めていい。この時点で、選択肢は(ア)(イ)に絞られた。次に、「C」は「愛知県」が「埼玉県」の倍近いことが読み取れる。「愛知県」には中部地方の中心都市である「名古屋市」があることを考えれば、「C」=「出張・業務」だと特定できるはずだ。したがって、その「組み合わせ」となっている(ア)が「答え」だ。「統計資料読み取り」では特徴的な事項に着目することが肝要だ。
<時間配分目安:1分>
[問6(b)] 「統計資料読み取り不適切選択肢設問」(5択/複数解答)。
示されている「8カ国・地域の外国人宿泊者数の上位10都道府県」を表す「表」から「読み取れること」として、「誤っているもの」を「2つ」答える。「8カ国・地域」それぞれの「宿泊者数上位10都道府県」を正確に捉え、各選択肢の説明を細かに照合していく。
すると、(イ)「千葉県が上位10位以内にすべて入り」⇒「韓国」では「千葉県」が入っていない、(エ)「ヨーロッパやアメリカからの旅行客の宿泊先は、京都府や岐阜県が上位10位以内にすべて入り」⇒「アメリカ」では「岐阜県」が入っていないということが判明する。
よって、「答え」は(イ)(エ)だ。尚、「資料読み取り」の「正誤判別」では、「資料」だけを正確に読み取り、定着している知識などに基づいて勝手な類推はしてはいけないと心得よ。
<時間配分目安:1分以内>
※尚、[問3]は「地形図読み取り問題」になっている。「地図記号」や「等高線」などを正確に捉えた上で、「縮尺」にも留意しながら子細に観察して読み取ることが求められる。
攻略のポイント
●最大の特色は、「リード文」「設問」「統計資料」「地図」「地形図」「図表」「写真」などの「要素」と「自らの知識」を多角的に結びつけて考察しないと解けない問題が多いということだ。設問どうしの連関にも注意する必要がある。出題傾向は一貫しているので、最低でも10年分以上の過去問練習をしておきたい。「解説」をしっかりと読んで、どのような「要素」を組み合わせて考えていくのかを確認し、「多角的思考」ができるように訓練すること。
●合格ラインは高い(過去6年間の「合格者平均得点率」は70.0%、ただし、本年度は一気に下がって65.3%)。7割は確実に得点したい。時間を考えれば「戦術」が不可欠。基本は「取れる問題を確実に押さえる」ということ。「取れそうにない問題は潔く捨てる」というメリハリも必要だ。「基礎的知識」で基礎点(7割程度)は獲得可能。無論、「単純ミス」は絶対にしないこと。
●「地理」では、「地図」「地形図」「統計資料」「写真」「図版」等が必ず出題されるので、練習を重ねること。また、「神奈川御三家」の一校として「神奈川の御当地問題」もしばしば出題されるので、個別の学習が不可欠。ただし、テキストにはないので、要注意。
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