国際基督教大学高等学校 入試対策
2019年度「国際基督教大学高等学校の数学」
攻略のための学習方法
特に、何かのジャンルを集中して演習するということだけで本問の得点に結びつくかどうか。『数学的発想法』、つまり物事を論理的に考えて、結論へ向け矛盾のない整合性の取れた論理の道筋をつけられるかどうかである。数学におけるスキル演習(問題演習)だけでは、不十分な設問設定になっている。
国際基督教大学高校の入試問題は、単純なスキル演習力を見る問題ではない。初見の問題で、『数学的論理』をいかなる思考的プロセスを経て確立された論理へと昇華してゆくのかということを自身で見つけ、理論として確立できる『力』がどれ程有しているかを見る設問である。
出題形式も、初めて見る受験生も多いと考えられるが、決して慌てることなく落ち着いて設問内容をよく読んで、問題の解法の手掛かりが会話本文のどの分に該当するのかを、よく考えて問題の本質を見抜くことである。
したがって、会話の中で、各々の『考え方』や『概念』について言及している部分をよく読み込んで、正確に落ちついて問題を考えるようにすること、これが本問のような問題に不可欠な解法へのアプローチである。
このような設問に対して、如何なる事前準備が有効であるかを一緒に考えてみよう。
通常、数学の試験に関しては、大量に問題(計算問題や求積〈面積・体積〉問題)を解くことが最優先として捉えられている。しかし、その様な事前準備においては『正解』を出すことが最大にして唯一の目標となり、公式を暗記している受験生は該当する公式に数値を当てはめて答えを出すという、ある意味では非常に『効率的』なアプローチに終始してしまうだろう。
そのような手法は、本問において合格点を取るのは難しいのであろう。なぜならば、公式などの原理・原則を根本から理解せず結果だけを『機械的』に導き出すことになれ切ってしまっているからである。
大切なことは、自分の『頭』で考え抜く、ということである。
例えば、ある公式があったとしたら、公式の初めから自分で計算し最終的には公式の形まで自力で導き出せるかどうかである。暗記したものはいずれ忘れてしまう。忘れてしまうことをネガティブに捉えてはいけない。人間はある意味では『物事を忘れる存在』なのである。覚えたばかりの知識を忘れてしまったら、再度繰り返して演習を繰り返せばいのである。
ここで述べたいことは、知識(特に数学)を暗記するのではなく理解することに重点を置くべきである、ということである。したがって、国際基督教大学高校の数学の入試問題に対応する学力は、数学的思考をしっかり身に付ける姿勢で普段の学習を行うべきである。
そのためにも、問題を解く上で使用した公式を自分で導き出す学習を励行して欲しい。
さらに、数学で使用する言葉や数字にはすべて『意味』があるということである。その意味をしっかり理解して、自由自在に操れる術をマスターしなければならない。
例えば、1次関数における切片とはどういう意味があるのかを考えるのである。単に、直線のグラフとy軸との交点のy座標である、としか覚えていないとしたら、その先の解法への広がりは限られたものになってしまう。切片であるb(y=ax+bのb)はx=0のときの(xに0を代入する)yの値である、という理解ができているかどうか。
このように考えていくことが、やがて自身の理論的思考力を鍛えることになり、結果的に解法の幅を広げることができるのである。大事なことは、単に問題を解き正解を導くことだけで満足せずに、どうしてそのような式を考えて解放するのかということを根本的な原理から考えるようなクセを付けることである。
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2019年度「国際基督教大学高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
中学校ではあまり詳しく学習しないであろう「資料の活用」関する2人の対話文形式という形を取り、「資料の活用」に関係する数学的論理思考を問う問題である。問題内容と試験時間(70分)とを考えると見直しの時間的余裕はなく、手際よく各設問に答えていかなければならない。資料の分析から偏差値求め方、そして「資料の活用」を通じ、「統計学」の基礎理解を深めさせる問題である。
【大問】資料文を読みながら各設問に答える
- 時間配分:70分
設問全体に言えることは、各設問ごとに新出の言葉に対する「数学的定義」が提示されており、その定義に従って各設問を解く、という形式であるので、第一義的に提示された「定義」の意味をしっかり押さえることである。
問題1 「ヒストグラム」、「平均値」、「中央値」、「相対度数」に関する定義を押さえたうえでの問題<6分>。各用語の定義を理解しミスをすることなく計算すれば完答できるレベルであろう。
問題2 サイコロを用いた確率を求める問題<5分>。
「統計的確率」と「数学的確率」を求めさせる問題であり。それぞれの定義を確実に理解すること。
問題3 割合を求める問題<5分>。
「正規分布」、つまりデータを並べたとき「人数が多いほど並べたときの中央を山の頂として、両側に減少していく形」をしっかり理解すること。
問題4 平均値、中央値に関する問題<4分>。
統計の指標となる「平均値」、「中央値」に関して、具体的に10人の国語・数学の点数を提示して、平均値や中央値を求める問題である。
問題5 偏差、分散、標準偏差に関する問題<6分>。
「偏差」、「分散」、「標準偏差」に関する定義をしっかり押さえて問題を考える。
問題6 標準化に関する問題<8分>。
平均値と標準偏差を用いてデータの「標準化」を行う問題である。
問題7 偏差値に関する問題<5分>。
模擬試験などでよく目にする「偏差値」の問題である。偏差値がどのような仕組みで導き出されるのかをしっかり理解しよう。
問題8 該当する階級の数量を求める問題<8分>。
例えば、1000人が受験した試験で、平均点、標準偏差が判明しており、さらに正規分布であるとわかっている場合に、特定の範囲にある人数を求める問題である。
問題9 割合を求める問題<7分>。
平均値(168㎝)、標準偏差(8㎝)であるとき、164㎝のデータを標準化するとどうなるかという問題である。しっかり、標準化の定義を理解すること。
問題10 漂本調査に関する問題<5分>。
標本調査の手法を用いることが適切である事例(世論調査、視聴率調査、人口調査など)を選択させる問題である。
問11 信頼区間に関する問題<5分>。
本文の会話より、「信頼区間」とは何かということについて理解することがポイントである。
問題12 信頼区間に関する応用問題<6分>。
前問で用いた「信頼区間」についての応用問題である。「信頼区間」を「設定」するということが、どのような手順で行うかをしっかり理解し、何を意味するかを把握すること。
攻略のポイント
特殊な出題形式であるため、初めて過去問を目にして戸惑いを感じる受験生も多いのではないだろうか。
資料文・説明文で「用語」の「定義」を説明したうえで、問題を解いてゆくという出題形式である。未知なる原理に関して一定の説明を与えかつ演習例も示し、実際に受験生に問題演習をさせるという出題形式である。このような設問形式の目的は、受験生の持つ論理的思考力や推理力を試す問題であることは言うまでもない。単純なスキル演習(問題演習)だけでは、本問のような設問には太刀打ちできない。
事前に行う対策としては、公式の証明を自ら行うことが有効であろう。さらに、ハイレベル問題集(具体的には『日々の演習 高校への数学』など)において、高度な思考力を求められるような問題演習を数多くこなすことである。