学習院女子中等科 入試対策
2019年度「学習院女子中等科の社会」
攻略のための学習方法
学習院女子中等科の社会の入試問題は、例年大問3~4つに総解答数40前後で構成されている。歴史・地理・政治経済がほぼ等分で出題されており、およそ各20点ずつバランスよく配点されているようである。
記号選択と用語記入、そして本校の特徴でもある1行記述が4~5問という解答形式で、全体の文章量は多くないので読むのに時間はかからないが、問題数は多いので30分で解くにはかなりのスピードが要る。
設問には大別して、
(1) 中学入試の基本的な知識を問われる問題
(2) 知識についての理解(事件の背景や理由など)をもとに答える記述問題
がある。
(1) 中学入試の基本的な知識を問われる問題
まず、(1)については確実に答えられるよう基本を押さえることである。
【地理】は、地勢と各地の産業といった分野がよく出されているので、基本事項に加えて、白地図・資料集で位置やデータの特徴も合わせて覚えてしまう。
【歴史】は、古代から現代まで広い範囲から出題されている。細かい年号までは訊かれないが、全体の流れをつかみ同時期に起こった出来事など関連づけておきたいので、年表などで整理しておく事。ここでも白地図で位置を確認しておきたい。また、歴史的に日本と関係のある地域・国についての質問もあるので、韓国・中国や南蛮とよばれた国々、アメリカやイギリスなどについて、世界地図も合わせて見ておくと良い。
【政治経済】は日本国憲法と政治のしくみを中心として習熟しておく。法律や選挙に関係した時事問題などの出題もあるので、普段から関心を持ってニュース等、見ておきたい。
いずれの分野もいわゆる難問奇問ではないので、基本をがっちり固めるという意識で日々の学習に取り組めばよいだろう。
(2) 知識についての理解(事件の背景や理由など)をもとに答える記述問題
(2)については、学習院女子の特長ともいえる問題で、得点に差が付く部分かも知れない。他校では見られないユニークな問いもあり、博物館の照明が暗くなっている理由〈H23年度〉や北海道の特ちょうにあった行政サービスの提案(H30年度)などの出題例がある。
このような問題に答えるためには、学校や塾で学ぶことだけでなく、普段から身の回りの出来事にも好奇心を持ち、「なぜそうなったのか」「そのことが他にどのような影響をおよぼすのか」というように考えを発展させられる思考力を養うことが大切である。
本校の短文記述には字数制限がないが、長文を書くスペースは無い(せいぜい20~30字程度)ので、解答欄に合わせて自分の考えをまとめられるよう練習しておこう。
そして、上記(1)(2)に対しての心構えとして、
「経済・国際・環境などの社会的な出来事に関心を持つ」ことが大事であることを付け加えておく。
学習院女子の問題は選択式にしろ記述式にしろ、上記のようなテーマに沿って出されることが多い。教科書やテキストの「勉強」だけでなく、「社会そのもの」にどれだけ関心を持って接しているかをテストを通じて問われているようである。
前年の出来事についてのやや難しい質問が出されたりするため、普段からニュースや新聞に目を通し、家庭でもわからないことを話し合ったり先生に質問したり・・・・・・そういった環境があれば大きなアドバンテージとなる。
言い換えると、そのような環境で育った女子を学習院は望んでいる。それが、学習院という伝統校の考えなのであろう。
基礎的事項は教材を最大限に活用して確実なものにしておく。その知識をもとに、社会で話題になった出来事について自分なりに少し深く考え、理解を深める。その繰り返しが本校の試験に求められる「思考力」を培うことになるのである。
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2019年度「学習院女子中等科の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1が歴史、大問2と3が地理、大問4と5が政治経済・現代社会という構成で、広い範囲から問題が作られている。解答数が40問、短文とはいえ記述問題も6問ある。適語記入で書き込む問題も多く、時間に余裕はない。
記号選択・用語記入の問題はいわゆる難問ではないのでてきぱき解いてミスせずに得点源とし、記述問題は残りの時間でできるだけ答えるような心づもりで臨もう。
【大問1】歴史分野
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
- ★必答問題
貨幣・紙幣の歴史を題材として、各時代の人物や出来事について訊かれている。
問1 (1) 富本銭はあまり流通しなかった。
(2) 平清盛による日宋貿易は大輪田泊(神戸)で行われた。
(4) 九州・沖縄サミットを記念して2千円札が発行されたが、使い勝手があまりよくないようで、現在はほとんど見かけない。
問2 イ. 聖武天皇は奈良時代の人物で、平安京遷都を行ったのは桓武天皇である。
問3 ウ. 鶴岡八幡宮は2019年現在では、世界遺産に登録されていない。
問4 島原・天草一揆(1637~38年)・享保の改革(1716~45年)・田沼意次の政治(1767~86年)・大塩平八郎の乱(1837年)の順。
問5 「掛け値」とは代金は後払いでその分金利を上乗せする形である。「現金掛け値なし」は値段を安くして値段通りに現金で販売する方式である。
問6 貨幣はそれ自体に価値があるが、取引が大きくなると不便である。そこで、それ自体は価値がない紙幣に、金と兌換できることで信用を与えたのである。
問7 イ. 衆議院と貴族院である。
【大問2】地理分野
- 難度:標準
- 時間配分:5分
- ★必答問題
都道府県別の統計を使った問題。
問1 ① いずれも果実栽培が盛んな県である。
② 岩手・福島は面積の2位・3位である。
③ 東京・神奈川、埼玉も5位に入っているので人口の多さであろう。
④ 福井・岡山・石川では、絹織物や綿製品の製造が盛んである。
⑤ 面積1位のBが北海道と予測されるので、茨城とも合わせて野菜の出荷と考えられる。
問2 A. 果物の生産と面積の広さから、長野県。
C. 人口・工業生産額・繊維工業で大阪府。
D. 工業出荷額1位で名古屋を有する愛知県。
E. 鉄鋼・野菜がともに3位なのは千葉県。
【大問3】地理分野
- 難度:標準
- 時間配分:3分
- ★必答問題
雨温図を使った気候の問題。
アとエは気温の低さからともに北海道。日本海側のBの方が冬に雪が多いので、アがAでエがBとなる。イは冬の降雪量の多さからD,ウは冬の気温の低さから中央高地のE,オは気温も高くなく雨も多くはないのでCと考えられる。
【大問4】現代社会分野
- 難度:やや難
- 時間配分:3分
在留外国人の数を題材にした問題。
大都市圏に特に多いという特徴がみられる。これは都市部に人口が集中し、地方には少ないという、もともとの傾向に比例したものと考えられる。見方を変えると、都市部は人手不足で外国人の雇用が多くなっているともいえる。
【大問5】政治経済分野
- 難度:やや難
- 時間配分:11分
日本の政治について。
問2 い. 近年は自民党と公明党による連立内閣が長く続いている。
う. 政権を担当する自民党・公明党が与党、その他の政党は野党である。
お. 政党の長である党首。現状では自民党の党首がそのまま総理大臣になる運びである。
問3 初の本格的な政党内閣・原敬内閣。
問4 もともと政治に興味がなく政党を選ぶだけの十分な政治知識がない、今ある政党が魅力に乏しく選びたくないなどが主な理由と考えられる。
問5 長期政権は腐敗しやすいとはよく言われることである。賄賂で私的な利益を得る代わりに便宜を図るなど特定の勢力との癒着が起こったり、議会で多数を占めると強行採決で与党の独善的な政治が行われたりなど、民意とかけ離れた政治が行われる恐れがある。また、強い者の驕りから、態度が傲慢になる傾向もある。
問6 野党は与党の行いに目を光らせ、暴走を食い止める役割がある。また、結果として選挙では負けたが、自分たちに投票してくれた支持者の意見を国会で示すことも大事な仕事である。
攻略のポイント
30分という時間に対して、書き込みが多い40問の問題数はやはり多い。幸い、問題の難易度自体は難問というほどではない。通常、漢字指定されるような問題もひらがなでもよいとされている。まずは記述以外の問題をてきぱき解き進めて点を稼ごう。
60点という配点から考えても記述問題の配点は低めである。とはいえ五分の一ほどは記述問題の配点であるし、知識だけで答えられる問題も多いので、記述問題もひととおり手をつけられるよう、スピードは十分につけておきたい。
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