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渋谷教育学園渋谷中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2019年度「渋谷教育学園渋谷中学校の社会」
攻略のための学習方法

スライド式学習

「渋渋対策」では「地理」「歴史」「公民」全単元・全分野と「時事問題」の「知識」を確実に定着させることが最優先。

「基礎的事項」はもちろん、細部にわたる「知識」や「深い理解」も求められるので、テキストの「注」や「囲み説明」等のチェックも必須。

完璧な「知識定着」が欠かせないのだが、悲しいことに人は忘れるもの。時が経てば経つほど忘れる。ここに落とし穴がある。

基本的に「暗記」が最重要となる「社会」では、各単元をいつ学習し定着させたのか、その時期が問題となる。塾では通常、本格的な受験勉強が始まる5年になってから、「地理」⇒「歴史」⇒「公民」と単元消化していき、6年の夏休み前には終える。その後は「復習」となるが、メインは圧倒的に定着すべき事項の多い「歴史」にならざるを得ない。

そのまま、秋から冬となり「過去問演習」と続いていく。6年で学習した「公民」はまだしも、「地理」はどうだろうか? 実質的に1年以上の空白が生じてしまう。それはまずい。「地理」での「深い知識」が必要な渋渋では絶対に許されない。

そこで、独自の「復習」が必要となる。

塾での学習時期とはずらして(スライドさせて)、まだ時間的に若干の余裕がある5年の冬休みやその後の春休みを利用して徹底的に「地理」の「復習」をしておくことがポイントだ。「重要事項チェック問題集」のようなものを活用するといい。

さらに、その後も定期的に「地理」の理解を深めるような学習を密かにで続けておくことで、ライバルに差をつけておきたい。

いもづる式学習

全単元・全分野に共通だが、「暗記事項」はそれぞれ単独で(要は単なる「一問一答方式」)定着させていても無意味だ。バラバラに覚えているだけでは、自分が覚えた通りに問われなければ結びつかないし、関連問題にも答えられない。ましてや、渋渋攻略ポイントの「多角的思考」など絶対に無理だからだ。

そこで重要となるのが「いもづる式学習法」

「点」で覚えているものを「線」で結び、さらには「面」をも理解するには不可欠の学習法だ。1つの「暗記事項」を確認する際、それに関連すると思われる「事項」を次から次へと思いつく限り引き出していく。単元も無視する。

もし「言葉」としては覚えていても「内容」があいまいになっているものがあれば、すぐに確認しておく(ここでも「復習」できる)。また、それらは「線」で結びついているはずなので、どのように結びつくのかを確認していく。

その上で、それらが結びつく背景(=「面」)をも理解するようにする。このようにして改めて暗記し定着させた「事項」はどのような問われ方をしても、「線」で結びつけて答えられることになる。

さらに、単元もまたいでいるので、渋渋必出の「単元融合型設問」にも対応できる。無論、「多角的思考」にも「いもづる式学習法」は力を発揮する。

手づくり式学習

特に「歴史」単元の「復習」で必要となる。塾での「歴史」の学習は通常、「政治史」を軸とした「通史」として「時代別」「時代順」になっている。しかし、渋渋などの上位校ではそんな単純なものはない。特定の切り口での「分野史」が多いし、必ずしも「時代別」「時代順」ではなく様々な時間軸で出題される。

それらに対応するために必要なのが「手づくり年表」だ。「政治史」「社会経済史」「外交史」「文化史」「人物史」等の「分野史」別の「年表」を作成しながら復習する。その際、「原始」~「現代」という長い時間軸にする。当然、「重要事項」だけしか記入できないが、それでいい。「関連事項」を頭に思い浮かべるようにすれば、「いもづる式学習」にもなる。

さらに、その「年表」には「世紀」と「日本の時代名」「中国の王朝名」も対応させて記入しておきたい。「世紀」と「時代」がすぐに結びつかないと答えられない問題が多いからだ。「年表づくり」を楽しみながらやってみよう。

細部へのこだわり式学習

「問題解説」でも指摘したが、「渋渋対策」で欠かせないのが「細部へのこだわり」だ。「多角的思考」をするに当たっての前提は無論、それぞれの「要素」をいかに正確に読み取るかということ。そこから「考えるヒント」を見つけ出す。

そのためには「細部」にこだわって読み取ることが必要となる。当然、トレーニングが欠かせない。過去問や練習問題等を用いて、各「要素」の細かな「意味」「資料の数字」や「関連事項」などを全て材料として、そこから何が導き出せるのかを確認する練習をしなくてはいけない。導き出せることについては、過去問や問題集の「解説」に示されているはずなので活用する。

こうした「細部へのこだわり学習」を続けることで、次第に様々な「要素」から着目すべき「手がかり」が自然と浮かび上がるようになる。後は自分の「知識」とつなげて考えればいい。

意識継続式学習

いつどのような場合であっても、常に何かを「意識」しながら学習することが重要だ。なんとなく机に向っていても無意味なだけ。その時々、何を目的としてどのような学習(たとえば、上記の「○○式学習」)をしているのか、具体的に「意識」し続けていることが大切。

そうして何かを「意識」することが継続できるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」しながら学習したい。渋渋の入試本番では30分という制限時間の中で、様々な「要素」を考え「条件」をクリアして答えなくてはならない。

だからこそ、「設問」を正しく理解しているか? 「要素」は全て確認したか? 「細部へのこだわり」や「他の設問」との関連は大丈夫か? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」しながら学習する必要がある。

当然、「時間」も「意識」すること。入試では見直しの時間はないと思った方がいい。常にそれらの「意識」を継続しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。

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2019年度「渋谷教育学園渋谷中学校の社会」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問 1 は「総合」(「公民」「時事」「歴史」)。「自由民主党の総裁選挙についてのリード文」からの出題。小問は全7問(解答数15)、「選択肢」(「複数完全解答」あり)、「事項記述」(「人名」「数字」あり)、「抜き出し」、「説明記述」(「字数指定なし」1問)。

大問 2 は「地理」(一部「歴史」「その他」あり)。「宿場町があった地域に関するリード文」からの出題。小問は全4問(解答数12)、「選択肢」、「事項記述」(「自然地名」あり)、「説明記述」(「字数指定なし」と「120字以内指定」各1問)。

大問 3 は「歴史」(1問のみ「世界地理」)。「メッセージを込めた芸術作品についてのリード文」からの出題。小問は全7問(解答数11)、「選択肢」(「位置特定」あり)、「事項記述」(「漢字」「字数」指定あり)、「説明記述」(「字数指定なし」1問)。時間配分は、「説明記述」に10分ほど、他は1問を30秒強という超ハイペース。無論、「捨て問」を含めたメリハリのある「戦術」が求められる。

【大問1】「総合(「公民」「時事」「歴史」)」(「複数完全解答」あり)

  • 難度:標準
  • 時間配分:9分
  • ★必答問題

「2018年9月に実施された自由民主党総裁選挙についてのリード文」からの出題。「総合問題」で、「公民」「時事」「歴史」、各単元のさまざまな内容が問われている。初代からの「自由民主党総裁一覧」(表1)、第23回以降の「衆議院議員総選挙一覧」(表2)、第196回国会(2018年)に提出された「法案と成立本数」(表3)、そして、改正された「法律の条文の一部」に関する問題が中心だ。決して難解ではないが、それらの「資料」を正確に読み取る必要がある。その点ではやや厄介な大問だ。いくつかの「設問」を確認してみる。

[問1] 「リード文に関する人名記述設問」。「公民」単元。

「リード文」に関して、「自民党の総裁として初めて衆議院議員総選挙に臨んだのは誰か、氏名」を答える。はあ?そんなこと誰も知るはずがない。だが、出題されているということは何らかの方法で解けるはずだ。そう、付されている「資料」に着目すればいい。先ずは「表2」、「自民党」は「1958年の第28回衆議院議員総選挙」で初登場している。次に、その時期の「自民党総裁」を「表1」で確認する。「1957年~60年」の第3代総裁「岸信介」だ。

よって、「答え」は「岸信介」。「私が知らない」⇒「誰も知らない」⇒「知らなくても解ける」と考え、「知っていること」と結びつけていくことが肝要。特に付されている「資料」等には要注目だ。

<時間配分目安:1分弱>

 [問2] 「リード文に関する理由説明記述設問」(「字数指定」なし、「30字ほど」の解答欄)。「公民」単元。

「リード文」に関して、「自民党が衆議院で単独過半数の議席を獲得していなくても、自民党総裁が総理大臣に就任している場合がある」が、その「理由」を説明する。本校志望者であれば、ここですぐに「連立内閣」という言葉が思い浮かばなくてはならない。仮に自民党だけで過半数の議席がなくても、政策の近い政党と連立することで総理大臣を誕生させることはできるわけだ。したがって、たとえば、「他の政党と連立内閣を組み総理大臣に指名される場合があるから。」(30字)といった「答え」だ。問題文の「単独過半数」という言葉が「手がかり」だと気づきたい。ちなみに、現在(2019年12月)も「自民党」と「公明党」との「連立内閣」だが、「自民党」は「単独過半数」の議席を獲得しているので、その点は勘違いしないこと。

<時間配分目安:1分半>

 [問3(1)] 「リード文に関連する空所補充の数字・語句記述設問」(全2問)。「公民」単元。「リード文」に関連して示されている「日本国憲法第54条」の空所<    に入る「数字・語句」を答える。空所前後からそれぞれの「答え」を特定していきたい。「その選挙(衆議院議員総選挙)の日から  日以内に、国会を召集しなければならない」⇒定番の「衆議院解散」に関する「日程」の問題だ。正確に覚えているかが問われている。無論、「答え」は「三十(日)」(「条文」の「空所補充」なので、「30」としてはいけない)。「(衆議院が解散され、参議院が閉会しているとき)内閣には、国に緊急の必要があるときは、参議院の  を求めることができる」⇒これは何の問題もなく、「答え」は「緊急集会」と特定できるはず。尚、「衆議院解散」にまつわる「数字」としては、「10日」(以内に「内閣総辞職」か「解散」)→「解散」の場合、「40日」以内に「総選挙」→「30日」以内に「特別国会」召集となる。完璧に定着させておくこと。

<時間配分目安:全問で1分>

 [問6(3)] 「表についての人名記述設問」。「歴史」単元。

「表3」にある「改正祝日法」について、2020年に「スポーツの日」に改められる「体育の日」は、かつて開催された「東京オリンピック」の開会日を記念したものだが、「東京オリンピック」が開催された当時の「内閣総理大臣」の「氏名」を答える。前回の「東京オリンピック」は「1964年」だ。その当時の「総理大臣」、当然定着しているはず、そう、「答え」は「池田勇人」だ。仮に「氏名」をど忘れしていたとしても、「1964年」が定着していれば、「表1」から特定できる。ただし、本校志望者は確実に覚えておかなくてはいけない「人名」だ。

尚、「国民所得倍増計画」でも知られる「池田勇人」、来年度(2020年)は「東京オリンピック・パラリンピック」開催なので、改めて要注目だ。

<時間配分目安:30秒>

 [問7] 「リード文に関連する時期特定選択肢設問」(7択/複数完全解答)。「歴史」単元。

「リード文」に関連して、示されている「出来事」から「昭和二十二年から昭和二十五年」に起きたものをすべて答える。特定の時期指定が「元号」なので、戸惑う諸君が多いはずだ(普通は「出来事」を「西暦」で覚えているはず)。そこで「西暦」に直したいのだが、えっと、……⇒「昭和○○年」は「西暦19[○○+25]年」となる。つまり、「昭和二十二年」=「西暦19[22+25]年」=「西暦1947年」になる。当然、「西暦19○○年」は「昭和[○○-25]年」だ。なので、本問の期間指定は、「西暦1947年から1950年」ということだ。「1947年」ということは「太平洋戦争の終戦後」だということを意識して各選択肢を判別する。

(ア)「日独伊三国同盟」⇒無論、「戦前」(1940年)=不適切、
(イ)「自衛隊創設」⇒「警察予備隊」(1950年)→「保安隊」(1952年)→「自衛隊」(1954年)という流れは誰でも知っているはず=不適切、
(ウ)「広島に原子爆弾投下」⇒「1945年8月6日」は常識=不適切、
(エ)「日本国憲法公布」⇒「公布」は「1946年11月3日」=不適切(ただし、「施行」は「1947年5月3日」なので要注意)、(オ)「湯川秀樹ノーベル賞受賞」⇒日本初のノーベル賞、「戦後」は間違いないが……、曖昧(あいまい)か=保留、
(カ)「日本が独立」⇒「サンフランシスコ平和条約」(1951年)の後になる=不適切、(キ)「朝鮮戦争始まる」⇒これも誰も稼知っている「1950年」=適切。

さあ、問題は「保留」にした(オ)だ。何年なのかははっきりしなくても、問題文に「すべて」とあるのだから、ひとつじゃない?そう、「1949年」のことだ。したがって、「答え」は(オ)(キ)となる。「時期特定」では「流れ」を考慮して正確に判別することが肝要だ。

<時間配分目安:1分>

【大問2】[大問2]「地理」(一部「歴史」、「その他」、「長文説明記述」あり)

  • 難度:
  • 時間配分:15分

「江戸時代に宿駅から発展した宿場町、「北国路」「中山道」「東海道」の宿場町があった地域に関するリード文」からの出題。「地理」単元に、一部「歴史」単元が混在している。

「地図」「地形図」「図版」「統計資料」の厄介な読み取りが求められる問題があり、難解で一筋縄ではいかない本校らしい大問だ。以下、いくつかを検討する。

[問2(1)] 「リード文についての自然地名記述設問」。「地理」単元。

「リード文」中の「北国路の市振宿と糸魚川宿」の間には「親不知子不知」と呼ばれる通行に危険が伴う場所がある。それは、山脈が海岸まで迫ることでできた絶壁のためだが、この「山脈名」を答える。「北国路」と言われてもピンとこないだろうが、「リード文」には「地図」が付されているので確認する。両宿場町ともに「新潟県」「富山県」の県境辺りで日本海に面していることが分かる。その位置にある「山脈」、そう、「答え」は「飛彈山脈」だとすぐに判断できるはずだ。本州中央部には、北西から「飛彈山脈」(北アルプス)・「木曽山脈」(中央アルプス)・「赤石山脈」(南アルプス)という「日本アルプス」が連なっていることは周知の事実。尚、本問は「漢字指定」ではなかったが、「飛彈」はしっかりと「漢字」で記せるようにしておきたい。本校ではさまざまな「自然地名」が頻出なので、確実に押さえておくこと。

<時間配分目安:30秒>

 [問2(2)] 「リード文に関連する選択肢設問」(4択)。「歴史」単元。

上記[問2(1)]で触れられていた「親不知子不知」の海岸を、「参勤交代時に最も多くの人数で通ったと考えられる大名家」を答える。

[問2(1)]で確認したように、「親不知子不知」の海岸は「新潟県」「富山県」の県境の日本海に面している。そのことから判別していきたい。

各選択肢をチェックする。
(ア)「松代藩真田家」⇒「松代藩」は知らずとも、「真田家」の「真田幸村」は知っているはず=「長野県」だ。
(イ)「彦根藩井伊家」⇒「彦根」は当然「滋賀県」。
(ウ)「加賀藩前田家」⇒「加賀藩」といえば「石川県」。
(エ)「米沢藩上杉家」⇒「米沢」であれば「山形県」で決定。

ということは、「答え」は(ウ)だと判別できる。ちなみに、問題文の「最も多くの人数」⇒「加賀百万石」=江戸時代最大の石高と結びつけても分かるはずだ。「問題文」など、あらゆるところに「手がかり・ヒント」があると心得よ。

<時間配分目安:30秒>

 [問3(1)] 「リード文に関連する統計資料読み取り説明記述設問」(「字数指定」なし、「60字ほど」の解答欄)。「地理」単元。

「リード文」中の「中山道の馬籠宿と妻籠宿」の間の峠道を歩く外国人が近年増えてきているが、示されている「資料1・2」を参考に「日本に入国した外国人の特徴をふまえた上で、この峠道を歩く外国人の特徴」を説明する。

「資料1」は「日本に入国した外国人の国・地域別人数と割合(2014年)」、「資料2」は「馬籠宿と妻籠宿を結ぶ馬籠峠を訪れる外国人観光客の地域別割合(2013~14年)」。つまり、問題文にある「外国人の特徴」は、両資料で表されている「外国人の国・地域別割合」だと判断できる。「資料」を正確に読み解いていきたい。「資料1」からは、「日本に入国した外国人の国・地域別割合」の上位は「台湾」「韓国」「中国」「香港」となっており、これらの国や地域だけで全体の7割近くを占めていることが分かる。一方で、「資料2」の「馬籠峠を訪れる外国人観光客の地域別割合」では、「ヨーロッパ」が「61%」、次いで「北アメリカ」の「19%」となっており、「アジア」はたった「3%」に過ぎないということが分かる。こうした内容を「過不足なく」まとめていけばいい。たとえば、「日本に入国した外国人はアジアからの人々が7割近くを占めているが、峠道を歩く外国人の8割が欧米からの人たちという特徴。」(58字)といった「答え」になる。「統計資料」の読み取りでは「大きな特徴」に着目して、「数字」などを正確に捉えることが重要だ。

<時間配分目安:1分強>

 [問4] 「リード文に関連する語句記述設問」(全2問)。「その他」。「リード文」中の「東海道の金谷宿」は「大井川右岸」に位置しており、江戸時代、通行人は川を渡ることを助けてくれる「川越人足」の力を借りていた。示されている「表」はその「渡し賃」をまとめたものだが、「表中の項目(ア)・(イ)にあてはまる言葉」をそれぞれ答える。

(ア)は縦軸で、「240間」~「40間」と下にいくほど数字が小さくなっており、「渡し賃」は「94文」~「48文」と安くなっている。
(イ)は横軸で、左から「脇通~乳通」・「乳通~帯上通」・「帯上通~股(また)上通」・「股通~膝上通」となっており、「渡し賃」は右にいくほど安くなる。

さあ、一体これらの項目は何か?(ア)の方は「○○間」という単位から「長さ」だと特定できなくてはいけない。「川を渡る」のだから「長さ」といえば当然、「答え」は「川幅」だ。
(イ)はなかなか厄介だが、「脇」・「乳」・「帯上」・「股」・「膝」などは「体の一部」を示しているので、これらの位置まで「川の深さ」があるのでないかと類推できるはずだ。よって、「答え」は「水深」になる。そもそもこのような「資料」の内容について誰も知識はない。しかし、すぐに諦めるのではなく、与えられている情報を「考察」し「類推」することが必要だ。

<時間配分目安:全問2分弱>

 ※尚、本大問の[問3(3)]は「長文説明記述」(120字以内)で、「地図」「地形図」「年表」の読み取りが求められている。とても短時間では処理できないものなので「捨て問」で構わない。そこで時間をとられて、得点できる問題を外してしまっては元も子もないからだ。本校では、こうした「捨て問」にすべき問題があると心得よ。

【大問3】「歴史(「世界地理」1問あり)」(「漢字指定」あり)

  • 難度:
  • 時間配分:6分

「アルファンス=ミュシャという芸術家の強いメッセージを込めた作品を切り口として、統治する側とされる側が利用した芸術作品に関するリード文」からの出題。

「政治史」を中心とした「歴史」が主に問われているが、1問だけ「世界地理」が混在している。「写真」「地図」「史料」が合わせて8点も付されていて一見難解そうだが、実はそうではない。「キーワード」に着目すればすぐに解ける小問が多いので、一気呵成に解き進め、得点を重ねたい大問だ。いくつか考えてみる。

[問1] 「リード文についての位置特定選択肢設問」(4択)。「世界地理」単元。

「リード文」中の下線部[A]の「チェコ」の「位置」を、示されている「地図」中の(ア)~(エ)で答える。「地図」は「ヨーロッパ」の国境線が表されたもの。

(ア)は「フランス」で、その東隣の(イ)は「ドイツ」、地中海に突き出ている(エ)が「イタリア」だと誰でも分かる。

したがって、「ドイツ」の南東に位置する(ウ)が「答え」だと特定できる。本問はとても平易だったが、「ヨーロッパ」の小国の「位置関係」は判別が難しいものが多いので(特に東ヨーロッパ)、しっかりと確認しておくことが求められる。

<時間配分目安:30秒>

 [問4(2)] 「写真に関する条件付き説明記述設問」(「字数指定」なし、「30字ほど」の解答欄)。「歴史」単元。

「リード文」に付されている写真の「図3」(「プロパガンダ・ポスターにみる日本の戦争」とのキャプションが記されている)に関して、「ポスター」の標題にある「補助貨」とは「硬貨」のことだが、「なぜ政府は『補助貨』の回収を呼びかけたのか」を説明する。「条件」は「当時の日本の状況を考えて説明する」こと。確かに「ポスター」には「第二回補助貨回収」と大書されている。政府が「補助貨幣」の回収を呼びかけた「ポスター」、果たしていつのものなのか?「キャプション」の「日本の戦争」や、右下に記されている「社団法人中央物資活用協會(会)」に着目したい。「戦争中」に「物資」として回収されたわけだ。ここで、「鍋・釜・鐘・銅像」などの「金属類」が兵器等の軍需物資として回収された「金属類回収令」(1941年)に結びつくはずだ。よって、たとえば、「太平洋戦争中で、兵器などの材料となる金属が不足していたから。」(30字)といった「答え」だ。「硬貨」=「金属」に気づくことがポイントとなる。

<時間配分目安:1分弱>

 [問5(2)] 「下線部に関する資料の空所補充語句記述設問」。「歴史」単元。

「リード文」中の下線部[C]「(言葉のメッセージは)様々な形で、様々な人々を対象に出されてきました」に関して示されている「資料2」は、「困窮し奉公がままならない人々がいることで出されたもの」だが、「資料2」の中の空所( い )に「あてはまる語句」を答える。この問題文だけで「キーワード」が見つけられ、「答え」が特定できる諸君は本校合格の道は近いぞ。「キーワード」はもちろん、「奉公」だ。「奉公」といえば「御恩⇔奉公」=「将軍⇔御家人」と結びつくはずだ。したがって、「奉公がままならない人々」=「奉公する人々」=「御家人」となる。念のために「資料2」を確認する。「質入れや売買された土地」と題されており、「地頭や( い )の買い取った土地について、貞永式目の規定通り、……」となっている。「貞永式目」=「御成敗式目」⇒「鎌倉時代」なので、「答え」は「御家人」で間違いない。ちなみに、「資料2」は無論、「永仁の徳政令」だ。あらゆる「言葉」に着目して「キーワード」を見つけ出すことが肝要だ。

<時間配分目安:30秒>

[問7] 「下線部に関する事項記述設問」(「漢字4字」指定)。「歴史」単元(「時事的要素」あり)。
「リード文」中の下線部[E]「権力を持つ人が暴走しないように」に関して、「政府の統治を憲法にもとづいて行う」という「考え方」を「漢字4字」で答える。「キーワード」は当然、「憲法にもとづいて」。「国家権力を規制する働きをするのが憲法だ」という「考え方」=「立憲主義」が「答え」だ。「大正デモクラシー」における「護憲運動」、そして、昨今の「安倍晋三内閣」に対する「憲法を守れ!」という多くの国民による主張も、「立憲主義」に基づくものだということは認識しておきたい。

<時間配分目安:30秒>

攻略のポイント

  • 「多角的思考」と「細部へのこだわり」が最大のポイントだ。

前者は、「リード文」「問題文」「統計資料」「歴史史料」などの「要素」と自分の「知識」を多角的に結びつけての考察。そのために欠かせない「条件」が「細部へのこだわり」。いかに「要素」を正しく「読解」するかが重要になる。

過去問演習等を通じて、「細部」にこだわった「要素」の「読み取り」を繰り返し練習し、どのような「要素」を組み合わせて考えていくのかを「解説」で必ず確認する。自分でも「多角的思考」ができるよう、十分に訓練しておきたい。

●無論、難易度は高い。合格ラインは約7割弱(昨年度までの過去4年間の合格者平均得点率は71.6%。本年度の4科合計の合格最低得点率は64.5%)。

「試験時間」も考えれば「戦術」は必要。極端に難易度が高いものと平易なものが混在しているので、基本は「取れる問題を確実に押さえる」ことだ。逆にいえば「取れそうにない問題は潔く捨てる」という覚悟も必要。もちろん「単純ミス」は絶対にしてはいけない。 

●「地理」では「地図」「地形図」「統計資料」「写真」等、「歴史」では「歴史史料(「図版」「写真」含む)」などが頻出なので、確実に覚え、繰り返し確認しておくこと。

もちろん、「統計資料」は必ず最新版を使いたい。テキストとしては「日本のすがた」(矢野恒太記念会編集)が分かりやすくてオススメだ。また、「時事問題」も定番なので抜かりなく。

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