日本を代表する探検家である筆者が、｢半径１メートルの世界観｣と｢極北の数千キロの世界観｣を考察し、｢旅｣とは｢『判断』と『成り行き』の連動作業｣だと論じている。本文では、｢登山がスポーツなのかどうか｣について考察している。専門的でやや難解な語句はあるが、｢※注｣を活用すれば内容は理解できるはずだ。｢漢字問題｣は昨年度同様に標準的難易度。本年度の｢総合的知識問題｣となっている[問一]｢四字熟語の空所補充｣(｢漢数字｣指定)は平易だ(｢ア変イ化｣⇒無論、ア＝｢千｣･イ＝｢万｣)｡

｢説明記述問題｣では、課されている｢条件｣を的確に満たすことに、てこずるかも知れない。以下、いくつかの｢設問｣を考えてみる。

[問二]　｢漢字の読み書き｣(全５問/｢書きとり｣４問･｢読み｣１問)。

本文中の二重傍線部①～⑤の｢カタカナを漢字に直し、漢字は読み｣を答える。確認したい。

①｢自己カンケツ型の行為｣⇒｢完結｣⇒｢同音異義語｣に要注意。｢自分自身の中だけで納得したり決着したりすること｣の｢自己完結｣は覚えておくこと｡

②｢数キロのゴサ｣⇒｢誤差｣⇒これは知っていて当然｡

③｢作業がカンタンになる｣⇒｢簡単｣⇒｢物事が大ざっぱで単純、時間や手数がかからないこと｣だ。｢易しい｣という意味ではないので注意。

④｢大海原｣⇒｢おおうなばら｣⇒こうした｢熟字訓｣は他にもあるので確認しておくこと。

⑤｢リョウイキが広がり｣⇒｢領域｣⇒誰もが定着させているはず。本校志望者であれば｢全問正解｣が必須だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で２分以内＞

[問四]　｢条件付き換言説明記述｣(字数指定なし、｢120字ほど｣の解答欄)。

傍線部Ａの｢コペルニクス的転回｣とは｢どういうことか｣を説明する。｢条件｣は｢この表現で筆者が言おうとしていることを具体的に説明する｣こと。典型的な｢換言説明｣。この表現自体は知らなくても、｢コペルニクス｣が｢天動説｣にかわって｢地動説｣を唱えた天文学者だということは常識だ。そこから、｢考え方を百八十度かえるような大胆な発想の転換｣のたとえだと類推できる。では、ここでの｢大胆な発想の転換｣とは何か？｢手がかり｣を｢傍線部一文一部の法則｣(｢傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という読解の基本となる｢解法｣)で確認したい。傍線部の一文は｢それは〈前よりも便利になった〉という次元をはるかに超える、人間はなぜ冒険をするのかという本質を侵しかねないコペルニクス的転回だ｡｣となっている。｢指示語｣があるので開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。前文から、｢それ｣＝｢ＧＰＳを使うことで発生する、旅において最も難しいはずの作業が最も簡単になるという逆転現象｣だと読み取れる。つまり、｢筆者が言おうとしていること｣は、｢ＧＰＳを使うことで発生するのは、〈前よりも便利になった〉という次元をはるかに超える、人間はなぜ冒険をするのかという本質を侵しかねない、旅において最も難しいはずの作業が最も簡単になるという逆転現象｣ということになる。これが説明すべきポイントだ。あとは、｢同一意味段落｣を読み解き、補足説明を加えてまとめていけばいい(｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。たとえば、｢ＧＰＳを使うことで発生するのは、前よりも便利になったという次元をはるかに超える、自然との関わり方のプロセスに秘密がある探検や冒険の本質を侵しかねない、旅において最も難しいはずの位置情報を取得するという作業が最も簡単になるという逆転現象｡｣(118字)といった｢答え｣になる。尚、｢説明記述｣では、｢最重要要素｣を必ず｢文末｣とすること。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：４分＞

[問五]　｢条件付き換言説明記述｣(字数指定なし、｢150字ほど｣の解答欄)。

傍線部Ｂ｢妙なもどかしさ｣とは｢どのようなことか｣を説明する。｢条件｣は｢なぜもどかしいのかがわかるように説明する｣こと。先ずは、｢もどかしい｣の｢原意｣を正確に押さえたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡｢物事が思うように進まずいらいらする｣という意味だと知っているはず。
次に、｢傍線部一文一部の法則｣を確認すると、｢ＧＰＳを使いながら北極の荒野を歩いていたとき｣に｢妙なもどかしさ｣を感じていたことが分かる。では、どのような｢もどかしさ｣なのか？｢同一意味段落｣の直後に｢寒さや風には苦しめられたし、極限的な空腹にも苛(さいな)まれたが、それでも私は自分は北極という土地を爪で引っ掻(か)いているだけなんじゃないかという奇妙な隔靴掻痒感(かっかそうよう＝｢かゆいところに手が届かないようにもどかしいこと｣と｢※注｣にある)を取り除くことができなかった｣とある。そして、続けて｢肉体的には追いつめられているのに、なぜか？｣と問い、｢条件｣でもあるその｢理由｣について、｢明らかにＧＰＳを使っていることにあった｣と説明している。
さらに、｢『航法(ナビゲーション)』という極地探検において最も基本的な作業を機械(＝ＧＰＳ)に外部委託したせいで、自分が北極の自然とがっちりかみ合っているという感覚を最後まで得ることができなかった｣と詳述している。説明すべき要素はそろった。｢条件｣を踏まえた上で、｢過不足なく｣まとめていきたい。たとえば、｢北極の荒野を歩いていたとき、寒さや風に苦しめられた上に極限的な空腹にも苛まれたが、極地探検において最も基本的な作業である自分が進むべき方向を定めるということをＧＰＳに任せてしまったことによって、自分が北極の自然とがっちりかみ合っているという感覚を最後まで得ることができなかった奇妙なじれったさ｡｣(147字)といった｢答え｣だ。｢解法｣に則して、｢文脈｣を正しく読み解いて述べるべき｢要素｣をつかむことが肝要だ。

中国の湖南省で文字を習うことのできなかった女性たちが、想いを伝えるために伝承してきた｢女書(ニュウシュ)｣をテーマにした児童文学。文字をつくってでも伝えたい気持ちが人にはあるということ、そして苦労して習得した言葉で最初に表現するのは、人を思いやる気持ちや幸せを祈る気持ちなのだということが切々とつづられた物語だ。本文では、｢女書｣を習った｢チャオミン｣が書ける喜びを爆発させる姿や、｢お母さん｣が｢文字と歌は苦しみを救ってくれる｣と｢シューイン｣に伝える様子などが描かれている。馴染みのない題材で、人物関係もやや分かりづらい。｢※注｣を使ってしっかりと内容を理解したい。｢総合的知識問題｣は紛らわしいものがある。以下、いくつかの｢設問｣を検討してみたい。

[問一]　｢語句の空所補充選択肢｣(全２問/５択)。

｢総合的知識問題｣。｢語句の意味の判別｣だ。

本文中の空所　　1　　･　　2　　に｢あてはまる言葉｣をそれぞれ答える。空所部分はともに、｢チャオミンは目を　　　　　た｡｣で同じだ。しかも、各選択肢の語句は形式的には全てあてはまる。したがって、｢文脈｣を正確に読み取って判別する必要がある。相当に手強い。｢答え｣を確認する。

　　1　　では、これから習う｢女書｣の美しさに｢チャオミン｣は思わず｢きれい｣と声をあげている⇒｢喜びや希望、また興味をもったようすが表情に出る。目をきらきらさせる｣という意味の｢目を輝かせる｣⇒｢答え｣は(ア)｢輝かせ｣。

　　2　　では、読み書きができないと思っていた｢お母さん｣が手紙を書いたと聞き、｢チャオミン｣は驚いている⇒｢驚いて目を見張る｣という意味の｢目を丸くする｣⇒｢答え｣は(オ)｢丸くし｣。ちなみに、他の選択肢は、(イ)｢目をそらした｣･(ウ)｢目をしばたたかせた｣･(エ)｢目をむいた｣だ。ひとつでも｢原意｣分からないものがあった諸君は｢知識不足｣だと自覚せよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で２分＞

[問二]　｢条件付き語句の空所補充記述｣。｢総合的知識問題｣。｢語句の意味｣と｢文法｣だ。本文中の空所[ ☆ ]に、｢小鳥がしきりに鳴く様子を表す言葉｣を入れて答える。｢条件｣は｢文中にあてはまるように入れる｣こと。空所前後は｢小鳥の[ ☆ ]みたい｣となっている。ということは、｢文法的｣には｢名詞｣が入るわけだ。｢小鳥がしきりに鳴く様子｣を表す｢名詞｣といえば、そう、｢答え｣は｢さえずり｣だ。特に難解な語句ではないが、すぐに思いつくかどうか。｢語彙｣をどれほどインプットしていても、アウトプットできなければ仕方がない。自らの｢語彙力｣を臨機応変に適用できる練習をしておくことが肝要。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で１分以内＞

[問四]　｢換言説明記述｣(字数指定なし、｢30字ほど｣の解答欄)。

傍線部Ｂの｢愛おしい重さ｣とは｢どういうことか｣を説明する。先ずは、何の｢重さ｣なのかを｢同一場面｣から特定したい(｢小説｣では｢同一場面｣に｢手がかり･ヒント｣がある)｡直前に｢入っていた三朝書を胸に抱く｣とある。｢三朝書｣の｢重さ｣だと分かる。さらに、｢状況｣を読み取っていく。前の４行から、｢三朝書｣は、結婚して遠くへ行く｢シューイン｣が受け取った荷物の中に入っていた｢自分の愛しい人たちにつながる物｣だと理解できるはず。そして、｢三朝書｣には、そうした｢自分の愛しい人たち｣の｢思いのこもった励ましの言葉｣が記されていたことも分かる。こうした要素を簡潔にまとめていけばいい。その際、｢換言説明｣だということを意識して、｢重さ｣をどう｢換言｣するか、言葉を選びたい。たとえば、｢愛しい人たちからの三朝書の言葉にこめられた思いの深さということ｡｣(32字)といった｢答え｣になる。｢小説｣では｢同一場面｣からしっかりと｢状況｣を読み解いていくことがポイントとなる。　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分＞