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栄東中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2020年度「栄東中学校の国語」
攻略のための学習方法

知識

「栄東の国語」では、「総合知識問題」が最重要攻略ポイントのひとつ。さあどうするか?
当然、一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。

先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚える。
「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「敬語」「分かりづらい言葉の意味」等も押さえておきたい。

また、過去問や演習問題を実施する際、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあいまいなものがあったら、書き出して自分なりの「語彙ノート」を作成しておくといい。
そこには自分が分からない言葉が蓄積されていくので、折に触れ確認し定着させていく。
入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。
これらの「語彙」は様々な形式で出題されるし、「記述」の際にも重要だ。指定字数の中でいかに的確な「言葉」を用いるかが勝負となるからだ。
最終段階では、問題集等で何度も確認しておくこと。

そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。
栄東では必ず直接出題されるし、「記述」にも不可欠だ。
日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。
特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。なお、「語彙力」「文法力」強化用テキストとしては、「言葉力1200」「言葉力ドリル」(共に学研)「でる順過去問 ことわざ・語句・文法」(旺文社)等がオススメ。

速読

大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。全体で7000~8000字程度。解答時間は50分。
当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。

「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。

こうした手法によって、栄東定番の「紛らわしい選択肢設問」にも的確に対処できるようになる。
これらのコツは塾でも教えてくれるはずだ。教えてくれなければ、自分から聞いてみてほしい。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
栄東に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。
そして、最終的に分速650字以上(できれば700字近く)で「速読」できるようにしたい。

解法

前述したよう、栄東特有の「難問」に勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。
「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。
「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。
それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。

たとえば、塾での練習問題。答え合わせをして「解説」を聞いて納得した。以上終了ではダメ。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要。特に、間違った問題は宝の山だ。
「解き方の過程」のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。

さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方の過程」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。
解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。
繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

記述

「栄東の記述対策」は前述の通りだが、その前に前提としてなすべきことがある。
それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。
いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。
「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要がある。

では、何を「書く」か? 読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのもとてもいい方法だ。
40~50字程度で書いてみる(栄東の典型的な「記述」の練習にもなる)。
無論、内容は先生に確認してもらう。
「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一石二鳥。

次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。
書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。
だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。

「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要要素」を文末にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。

意識

いついかなる状況でも、常に何かを「意識」しながら学習することが重要だ。
ただなんとなくと机に向かっていても無駄だ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが必要。

そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」するようにして学習したい。
「設問」を正しく理解しているか? 「条件」に合致しているか? 「細部」は大丈夫か? 「必要な要素」は満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。

50分という時間で解き進めていかなくてはならない栄東では、ひとつのミスが致命的になる。
入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。

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2020年度「栄東中学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問は「漢字問題」。

小問なし(解答数5)。「同音異字判別選択肢」。2分ほどで終えたい。

 

大問は「総合的知識問題」。

小問なし(解答数10)。「熟語の空所補充」。2分半程度で解きたい。

 

大問も「総合的知識問題」。

小問なし(解答数8)。「語句の空所補充」。1分半程度で解きたい。

 

大問は「論説文」、出典は、【文章1】鴻上尚史(こうかみしょうじ)「『空気』を読んでも従わない――生き苦しさからラクになる」(文字数約1100字)/【文章2】梶谷真司(かじたにしんじ)「考えるとはどういうことか――0歳から100歳までの哲学入門」(文字数約3100字)。

小問は全10問(解答数13)。「選択肢」(「不適切」、「空所補充」あり)、「抜き出し」、「説明記述」(1問。「45~60字以内」指定)、「自由記述」(1問。「字数指定」なし、「90字ほど」の解答欄)。問題文は5分半程度で読み切り、設問を16~17分で解きたい。

 

大問は「小説」、出典は湊かなえ「ブロードキャスト」(文字数約6000字)。

小問は全8問(解答数11)。「選択肢」(「表現特徴」、「総合的知識問題」あり)、「説明記述」(1問。「50~70字以内」指定)。問題文は8分弱で読み、設問を15分弱で解きたい。

 

 

【大問一】「漢字問題」(全5問。同音異字判別)

  • 難度:標準
  • 時間配分:2分

「漢字の同音異字判別選択肢」(全5問/各5択)。(1)~(5)の傍線部の「漢字」と「同じ漢字を使っているもの」をそれぞれ答える。

「書きとり」ではなく「選択肢」なので恐るるに足らず、などと甘く見ることなかれ。より厳密に判別しないと間違う恐れがある。しかも、「各5択」ということは、合計で「30の漢字(熟語)」を正確に知らなくてはいけないわけだ。本校志望者であれば「全問正解」といきたいが、やや悩ましいものとしては、

 

(2)「イッ乱れぬ演技」(=一糸)⇒各選択肢は、

(ア)「敵の攻撃にイッ報いたい」(=一矢)・

(イ)「富岡セイ場」(=製糸)・

(ウ)タクを済ませる」(=支度/仕度)・

(エ)「新聞のメン」(=紙面)・

(オ)ヒッに練習」(=必死)

⇒「答え」は(イ)

 

(4)テイのいい断り方」(=体のいい)⇒

(ア)テイバンのメニュー」(=定番)・

(イ)「シテイの愛情」(=師弟)・

(ウ)テイチョウに応対」(=丁重)・

(エ)テイサイを整える」(=体裁)・

(オ)「あるテイド」(=程度)

⇒「答え」は(エ)

 

(5)「学芸会に関するフクアンを持っている」(=腹案)⇒

(ア)フクツウでつらい」(=腹痛)・

(イ)フクスウの人」(=複数)・

(ウ)「残り物にはフクがある」(=福)・

(エ)フクダイジンに任命」(=副大臣)・

(オ)「薬をフクヨウする」(=服用)

⇒「答え」は(ア)

 

さあ、どうか? 的確に判別できなかった諸君は、「知識のなさをジセイ」せよ。尚、それぞれの「熟語」の意味・用法も確認しておくこと。

<時間配分目安:2分>

 

【大問二】「総合的知識問題」(熟語の空所補充)

  • 難度:やや難
  • 時間配分:2分半

「総合的知識問題」。「空所補充の熟語の意味・用法判別選択肢」(全10問/10択)。示されている例文中の空所( 1 )~( 10 )に「当てはまる言葉」をそれぞれ答える。

馴染みの薄い「慣用的表現」があるはず。なかなかの難問だ。特に分かりづらいものを確認しておく。

 

「周りの友人に( 3 )されて読書するようになった」

⇒「答え」は(キ)の「感化」

⇒「考え方や行動に影響を与えて、自然にそれを変えさせること」だ。

 

「ミスをしてしまったことは( 4 )の極みだ」

⇒「答え」は(エ)の「痛恨」

⇒「これ以上ないほどに残念であること」=「痛恨の極み」としてよく用いられる。

 

「小説に描かれている( 8 )に気づかずに読み進めた」

⇒「答え」は(ウ)の「伏線」

⇒「小説や戯曲などで、後の展開に備えてそれに関連した事柄を前の方でほのめかしておくことこと」。

 

( 10 )を残すような終わり方」

⇒「答え」は(イ)の「禍根」

⇒「わざわいの起こるもとや原因を残す」=「禍根を残す」として覚えておきたい。

 

ひとつでも知らなかった「熟語」があった諸君は、確実に習得しておきたい。

<時間配分目安:2分半>

 

【大問三】「総合的知識問題」(語句の空所補充)

  • 難度:標準
  • 時間配分:1分半

「総合的知識問題」。「空所補充の語句の意味・用法判別選択肢」(全8問/8択)。示されている例文中の空所( 1 )~( 8 )に「当てはまる言葉」をそれぞれ答える。

よく見聞きする表現だが、「意味・用法」の判別となると意外と悩むかも。紛らわしいものだけをチェックする。

 

「練習に( 1 )

⇒「答え」は(カ)の「いそしむ」

⇒「勤しむ」で「熱心につとめ励む」こと。

 

「先生に意見するなどという( 3 )ことはしたくない」

⇒「答え」は(エ)の「おこがましい」

⇒これは知らなくても不思議がない。「身の程しらずだ。差し出がましい」という意味だ。

 

「下級生のがんばりを( 5 )

⇒「答え」は(イ)の「ねぎらう」

⇒「労う」で「同等以下の人の苦労・尽力などを慰め、感謝する」こと。

 

「情に( 8 )

⇒「答え」は(キ)の「ほだされる」

⇒「絆される」で「情に引きつけられて、心や行動の自由が縛られる」ことだ。

「小説」などでよく用いられるので定着させておくこと。

 

「漢字」も含めてしっかりと確認しておくことが肝要。

<時間配分目安:1分半>

 

【大問四】「論説文の読解」(「2つの文章の相互関連問題」あり)

  • 難度:やや難
  • 時間配分:22分
  • ★必答問題

【文章1】は、息苦しいこの社会の中でもっと自分らしく伸び伸びと生きていきたい――「空気」に従わない生き方を論じている。本文では、相対的な「モノの見方」が心を自由にすると指摘している。

【文章2】は、対話を通して哲学的思考を体験する試みとしていま注目されている「哲学対話」――人に自由に問い、語り合うことで考えは広く深くなると論じている。本文では、他者との「哲学対話」によって新しい視点を獲得することで、束縛から解放されると指摘している。ともに内容は理解できるはずだ。2つの文章を相互に連関させるという新たな趣向の設問が登場している。それも含めて、いくつかの小問を検討しよう。

 

[問一] 「語句の空所補充選択肢」(全3問/4択)。本文中の空所  1   3  に「当てはまる言葉」を答える。

各選択肢は「接続詞」。本校に限らず、「接続詞」や「副詞」などの「空所補充問題」は定番だ。特に「接続詞」では、「逆接」以外に十分に注意すること。しっかりと確認しないと、どれもがあてはまってしまう可能性があるので、慎重さが求められるのだ。

では、それぞれの「答え」をチェックしたい。  1  には「添加」の(ウ)「さらに」、  2  には「逆接」の(ア)「しかし」、  3  には「選択」の(エ)「あるいは」がそれぞれあてはまる。

尚、こうした「空所補充問題」では「候補」がひとつとは限らないので、必ず全ての「候補」を「代入確認」すること。

<時間配分目安:1分>

 

[問二] 「空所補充の特殊抜き出し」(「言葉」指定)。【文章2】の空所  A  に「当てはまる言葉」を【文章1】から探し、抜き出して答える。

2つの文章の相互関連問題だ。しかし、「抜き出し問題の基本」は同じ。「抜き出し内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞り込んでいくことになる。

先ずは「内容」を捉えたい。「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)で空所前後を確認する。「それは抽象的な言葉で言えば、『  A  化』とか『対象化』ということだろう」となっている。「指示語」があるので開く(「指示語」が出たら即開くこと)。直前から、「それ」=「(哲学対話で)私たちはお互いを鏡にして、そこから翻(ひるがえ)って自らを振り返ること」だと分かる。こうしたことから、「抜き出し内容」は「相手を通して自分を振り返る」ことで、「対象化」と類義の「言葉」だと読み取れる。

「範囲」は【文章1】だ。特殊な「抜き出し」なので「範囲」を絞り込むことはできない。ただ、短い文章なので、さほど面倒ではない。丁寧に探していくと、「(中略)」の4行後に「他の文化を知ることで、相対的な見方ができるようになる」という部分がある。「相手を通して」≒「他の文化を知ることで」、結びつく。また、「相対的な見方」は「思考の対象として物事を認識する」という「対象化」ともつながる。OKだ。

したがって、「答え」は「相対(化)」になる。本問は特殊ではあったが、「基本」に忠実に、臨機応変に対応すればいい

。尚、「抜き出し」では「候補」はひとつとは限らないので、必ず「抜き出し範囲」の全てを確認すること。

<時間配分目安:2分>

 

[問五] 「理由説明選択肢」(5択)。【文章2】の傍線部(3)「なぜ考えることで、私たちは自由を感じるのか」について、「この問いに対する答え」を答える。

要は「理由説明」を答えるわけだ。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「理由説明」なので、各選択肢の「文末」を「直接的理由」として、「自由を感じる」に結びつくかどうかで「消去」したい(選択肢説明の「最重要要素」は「文末」に記されている)。確認する。

 

(ア)「他者であるということに気づくから」→「自由を感じる」、

(イ)「開放感につながるから」→「自由を感じる」、

(ウ)「譲歩や我慢の上に成り立つものだから」→「自由を感じる」、

(エ)「自由を感じていることを理解できないから」→「自由を感じる」、

(オ)「自由な発想が必要だから」→「自由を感じる」。

 

どうだろうか? 考える間もなく、(イ)以外は「消去」できなくてはいけない。他の部分の説明も特に誤っていないので、「答え」は(イ)でいい。なんと「一発消去」だ。

「原意消去」、十分に活用できるように練習することが肝要。

<時間配分目安:1分以内>

 

[問六]  「換言内容説明記述」(「45~60字以内」指定)。【文章2】の傍線部(4)「自分とは違う考え方、ものの見方を他の人から聞いたとき、新たな視界が開ける」について、「新たな視界が開ける」とは「【文章1】の校則を変えようとした話の中では具体的にどのような内容に当てはまるのか」を「四十五字以上六十字以内」で説明する。

2つの文章の相互関連問題。傍線部の「自分とは違う考え方、ものの見方」は、【文章1】の「校則を変えようとした話」では何に当たるのかを読み解いていきたい。

「無意味な校則」を変えようとした「僕」は、「他の学校の校則」を調べることから始めたことが分かる。その結果、「僕の高校は、女子のストッキングは肌色が禁止」だったが、「近くの高校では、肌色が許可されている」ことが判明している。ということは、「他の学校の校則」=「自分とは違う考え方、ものの見方」だと読み解ける。

そして、「(中略)」の直後に、「(僕は)急に心と体が楽になりました」とある。傍線部の「新たな視界が開ける」と結びついている。さらに、「校則は絶対的なものじゃない。隣の高校でさえ、正反対のルールなんだ。唯一絶対の正解があるものじゃないんだ」と続いている。これで、述べるべき「要素」はそろった。あとは、「指定字数」に応じてまとめていけばいい。

たとえば、「他の高校の校則を調べ正反対のルールがあると知って、唯一絶対の正解があるのではないと分かり、心と体が楽になったという内容。」(60字)といった「答え」になる。

尚、「換言説明記述」では、「元の部分」の「原意」をいかに的確に「換言」できるかがポイントになる。

<時間配分目安:2分半>

※尚、[問十]は「自由記述」で、本年度は「2つの文章の相互関連問題」となっており、とても手間ひまがかかる。記すべき内容がすぐに思いつかなければ、戦術的には「あとまわし」にすること(「捨て問」でも構わない)。

 

【大問五】「論説文の読解」(「2つの文章の相互関連問題」あり)

  • 難度:標準
  • 時間配分:22分

陸上の夢が潰(つい)えてしまった「僕(圭祐)」は、まさかの放送部へ。そこに居場所はあるのか?――夢と友情、嫉妬と後悔、大人への反発……、心ふるわす学園青春小説だ。

本文では、「陸上」の名門校・青海学院に入学した「僕」は「良太」と「陸上」をやるはずだったが、それがかなわず、「宮本」から「放送部」に誘われて高校生活を始めていく様子が描かれている。内容は難なく理解できるはずだ。ただ、微妙な「心情の機微」を読み取るのにやや苦心するかも知れない。いくつかを確認したい。

 

[問二] 「理由説明選択肢」(5択)。傍線部(1)「逃げ出したい」について、「圭祐がそのように思うのはなぜか」を答える。

当然、「原意消去」から、ここは「理由説明」、各選択肢の「文末」の「直接的理由」⇒「混乱した」に結びつくかどうかで「消去」する。確認したい。

 

(ア)「劣等感を抱いているから」、

(イ)「罪悪感を抱いているから」、

(ウ)「疎外感を抱いているから」、

(エ)「虚無感を抱いているから」、

(オ)「危機感を抱いているから」。

 

全て「○○感を抱いているから」となっている。要は、それぞれの「原意」を正確に押さえているかどうかだ。「逃げ出したい」のだから無論、「疎外感」以外は「消去」できるはずだ。念のために、「同一場面」で他の部分を確認する(「小説」では「同一場面の直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。特に誤ってはいない。よって、「答え」は(ウ)だ。「一発消去」できた。「選択肢説明」が長いものが多い本校では、やはり、「原意消去」が不可欠だと心得よ。

<時間配分目安:1分弱>

 

[問四] 「心情説明選択肢」(5択)。傍線部(3)「良太から椅子(いす)を奪い取るため、手をかけようとした」について、「この時の圭祐についての説明」を答える。

もちろん、最優先は「原意消去」。ここは「心情説明」なので、「椅子を奪い取る」という「動作」の「原意」と、各選択肢説明の「文末」の「心情」とが結びつかないものを「消去」していくことになる。それぞれ確認していく。

 

(ア)「がっかりしている」、

(イ)「理解してほしいと思っている」、

(ウ)「自分でやりたいと考えている」、

(エ)「強がっている」、

(オ)「うとましいと感じている」。

 

「良太」に対する「奪い取る」という荒々しい「動作」なのだから、「強がっている」と「うとましいと感じている」以外は「消去」できるはずだ。

次に、このような「動作」をする「きっかけ」を「手がかり」にしたい。「同一場面」の直前を確認する。「良太の顔が少し曇った。それが、ムカつく」とある。「ムカつく」なので、「強がっている」は「消去」でいい。他の部分の説明も特に誤っていないので、「答え」は(オ)になる。

本問は「2段階消去」だったが、「動作」でも「心情」でも「選択肢設問」では「原意消去」が基本になる。

<時間配分目安:2分>

 

[問八] 「表現特徴の選択肢」(5択)。「本文の表現に関する説明」を答える。

「表現技法」などの特徴について、「事実関係」で正誤判別していくことになる。それぞれチェックする。

 

(ア)「(圭祐と良太の)心情が常に対照的なものとして描かれ」

⇒傍線部(6)(7)から、「二人」は互いに気づかっていることが分かる=不適切。

 

(イ)「たくさんの登場人物」

⇒「圭祐」「良太」「宮本」の3人だけが主な登場人物=不適切。

 

(ウ)「主に会話の積み重ねで物語が展開」

⇒前半は「会話」より「地の文」が多い=不適切。

 

(エ)「カタカナを多く用いることによって重々しい雰囲気が緩和され」

⇒確かに、「ラク」「ヤツ」「ケガ」「ゴメン」「ダメ」などの「カタカナ」が多用されているが、いずれも「重々しい雰囲気」の場面ではない=不適切。

 

(オ)「全体を通して良太の心中が細かく描かれている」

⇒誤ってはいない=適切。

 

したがって、「答え」は(オ)となる。

尚、本問のような「本文合致設問」、「論説文」では「序論部分」と「結論部分」とを照合すれば済むが、「小説」や「説明文」では本文全てをチェックする必要がある。時間がかかるので、戦術的には「あとまわし」にすること(もっとも、たいていの場合「大問」の最終設問になっているが)。

<時間配分目安:3分>

攻略のポイント

●本校の特徴のひとつである「紛らわしい選択肢設問」をどう攻略するか? 残念ながら「裏ワザ」はない。「設問内容」に対応した「解法」を的確に用いて、段階を踏んで「消去」する他ない。従って、「基本的解法」を完全に習得して適切に応用できるようにしておくことが重要だ。特に、「原意消去」は完璧にマスターすること。それによって「得点力」も安定する。合格ラインは60%台半ば(過去6年間の「受験者平均得点率」は60.1%。本年度はやや高く63.1%)。「得点力の安定」は、近年難化が著しい「合格」への近道となる。

●「総合的知識問題」にはどう対処するか? 特に「落とし穴」となりそうなのが頻出の「文法問題」だ。全分野から、細部にわたって出題される。塾での学習だけでは全く不十分なので、独自に完全習得し定着させること。昨年度は「文学史」なども出題されたので、無論、「文法」以外も抜かりなく。

●「説明記述対策」も肝要。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要な要素」を積み上げていく手法をマスターすること。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習する。本校では「指定字数」の幅が狭いので、細かな「字数調整」ができるようにもしておく必要がある。

●昨年度に引き続き本年度も、新傾向の「自由記述」の出題があった。「思考力・判断力・表現力」が徹底して重視されるようになる新たな大学入試制度を意識していることは間違いない。当然、来年度以降もこうした出題が予想されるので、入念な準備が求められる。ただし、本年度のような「ひねくれた設問内容」だった場合、「あとまわし」や「捨て問」にする判断も求められる。

●試験時間は50分。問題文のボリュームは全体で7000~8000字程度(ここ数年は増加傾向で、本年度は約10200字)。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。

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