私たちは日々、五感、特に視覚からたくさんの情報を得て生きているが、最も頼っているこの感覚を取り除いてみると、身体は、そして、世界の捉え方はどうなるのか？―――視覚障害者の空間認識、感覚の使い方、体の使い方などを分析し、目の見えない人の｢見方｣に迫りながら｢見る｣ことそのものについて論じている。本文では、｢見えない人が『見て』いる空間と、見える人が目で捉えている空間｣がどのように異なるのかを分析している。難解な語句が多く分かりづらいが、｢注｣を活用してなんとか内容を理解してほしい(ただ、｢注13｣まであるが)。しかし、設問自体は比較的平易なので、手際よく解き進めていきたい大問だ。以下、２問だけ検証してみたい。

[問三]　｢条件付き換言説明抜き出し｣(｢30字以内｣の｢最初と最後の５字｣指定)。傍線部③の｢環境に振り付けられながら行動している｣とは｢どういうことか｣を｢三十字以内｣で抜き出し、｢最初と最後の五文字｣を答える。｢条件｣は｢解答欄に合うように抜き出す｣こと。｢解答欄｣は｢～ということ｡｣となっている。｢抜き出し設問｣では､｢抜き出すべき内容｣を正確に捉えた上で､｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。先ずは｢内容｣を確定したい。傍線部だけでは、誰が｢行動している｣のかが不明だ。｢傍線部(空所部)一文一部の原則｣で確認する(｢傍線部(空所部)｣が｢一文の一部分｣の場合、｢傍線部以外｣が重要な｢手がかり･ヒント｣だ)。直前に｢いわば、人は多かれ少なかれ｣とある。つまり、｢人｣が｢環境に振り付けられながら行動している｣という｢比喩表現｣の換言が｢抜き出し内容｣だ。次に、｢範囲｣は｢同一意味段落｣だ(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落に根拠･手がかり｣がある)。そして、直前に｢いわば｣とあることから｢傍線部以前｣に絞り込めるはず。丁寧に探していくと、２段落前に｢知らず知らずのうちにまわりの環境に影響されながら行動している｣という部分がある。｢環境に振り付けられながら｣＝｢環境に影響されながら｣、見事な｢換言｣になっている。｢字数｣もＯＫだ。念のために他の｢範囲｣を探しても、これ以上に適切な部分はない。したがって、｢答え｣は｢知らず知ら～動している(ということ)｣になる｡｢抜き出し設問｣ではいかに｢範囲｣を絞り込めるかがポイントだ。また、｢抜き出し候補｣はひとつとは限らないので、必ず｢範囲全て｣を隈なく探すこと。
＜時間配分目安：２分＞

[問四]　｢条件付き換言説明記述｣(｢40字以内｣指定)。傍線部④｢私たちがこの振り付け装置に踊らされがちなのは事実です｣について、｢『この振り付け装置に踊らされ』るとは、どういうことか｣を説明する。｢条件｣は｢解答欄に合うように説明する｣こと。｢解答欄｣は｢コーラの看板や『本日三割引き』ののぼりといった視覚刺激によって｣が｢文頭｣にあり、｢文末｣が｢～ということ｡｣になっている。｢指示語｣があるので開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。ちょくせんから、｢この｣＝｢過剰な視覚刺激(の)｣だと判断できる。次に、｢同一意味段落｣に｢手がかり｣を求める。前段落で、｢条件｣である｢コーラの看板｣と｢『本日三割引き』ののぼり｣が具体例として挙げられていることが分かる。そして、｢視覚的な刺激によって人の中に欲望がつくられていき、気がつけば『そのような欲望を抱えた人』になっている｣と述べられている。説明すべき｢要素｣がそろったと判断できるはず。あとは、｢振り付け装置に踊らされる｣という｢比喩表現｣の換言を適切に行っていけばいい。たとえば、｢(コーラの看板や『本日三割引き』ののぼりといった視覚刺激によって)私たちの中に欲望がつくられていき、気がつけばその欲望に支配された行動をしている(ということ)｡｣(39字)といった｢答え｣だ｡尚、｢条件｣は大いなる｢手がかり･ヒント｣だと考えよ。
＜時間配分目安：２分半＞

1939年、14歳の｢ローズ｣は家族のために図書館バスのドライバーとして働き始めるが、作家になる夢はずっと忘れなかった――｢ローズの物語｣から続く、息子･孫･ひ孫と４人の十代の姿を生き生きと描く、本への愛がこめられた、少女の成長と家族の物語。本文では、不注意から犬の｢ブルー｣をわなにかけ大けがをさせてしまったことに傷つき、自責の念に苦しむ｢マール･ヘンリー｣という少年の姿が描かれている。海外の小説なので｢人物関係｣がやや分かりづらいが、｢前説｣や｢注｣を確認してしっかりと内容を理解したい。【大問一】が全て｢換言説明｣だったのに対し、本大問は｢理由説明｣が主だ(｢心情説明｣１問あり)。以下、いくつかの｢設問｣を確認してみたい。

[問一]　｢語句の意味の選択肢｣(全２問/各５択)。｢総合的知識問題｣｡傍線部(ａ)｢うなだれた｣と(ｂ)｢くたびれた｣の｢意味｣をそれぞれ答える。無論、誰もが知っている言葉のはずだ。｢答え｣を確認していこう。｢うなだれる｣＝｢心配、落胆、悲しみ、恥ずかしさなどのために気持ちが沈み込んで、頭を前に低く垂れる｣ことなので、(ａ)の｢答え｣は選択肢(イ)｢力なく下を向いた｣になる。そして、｢くたびれる｣＝｢疲れて元気がなくなる｣ことなのだが、それに相当する選択肢がない。どうする？ 本文では｢くたびれた靴(くつ)｣と使われている。ここで、この言葉には｢衣服などが長く使われたため、古くみすぼらしくなる｣という意味もあることに気づきたい。したがって、(ｂ)の｢答え｣は(オ)｢使い古した｣だと判別できなくてはいけない。｢多義語｣の場合、文中の前後の｢文脈｣から判別する必要もあると心得よ。
＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問三]　｢心情説明記述｣(｢字数指定｣なし｡｢30字ほど｣の解答欄)。傍線部②｢ガンボが煮えてるの。おいしいわよ｣について、このとき｢『母さん』はどのような気持ちで言ったのか｣を説明する。｢ガンボ｣＝｢とろみのあるスープ｣と｢注｣にある。傍線部は｢セリフ｣なので直前直後の｢ト書き｣から｢状況｣を確認したい(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。直前に｢母さんはマール･ヘンリーの背中をぽんぽんとやさしくたたき、言ってくれた｣とあり、直後は｢だが、マール･ヘンリーはまったく食べられなかった。罪の意識が体じゅうに巣くっていたからだ｣となっている。であれば、｢母さん｣の｢心情｣は｢背中をぽんぽんとやさしくたたき｣という動作に表れており、それは｢マール･ヘンリー｣の｢罪の意識｣を少しでも軽くさせようとしたことだと分かるはず。あとは、簡潔にまとめていけばいい。たとえば、｢息子の罪の意識を少しでも軽くさせようとやさしくいたわる気持ち｡｣(31字)といった｢答え｣だ。｢小説｣では、｢セリフ｣⇔｢ト書き｣の読み取りが非常に重要だと心得よ。
＜時間配分目安：２分＞

[問四]　｢理由説明記述｣(｢字数指定｣なし｡｢60字ほど｣の解答欄)。傍線部③｢なんだかほっとした｣について、それは｢なぜか｣を説明する。｢傍線部(空所部)一文一部の原則｣で、｢ほっとした｣ことの｢理由｣につながる｢きっかけ｣を確認する。直前に｢マール･ヘンリーは、父さんがバーンズ先生のことでかっかしているのを見て｣とある。ということは、｢マール･ヘンリー｣は、｢父さん｣が自分に対して怒っているのではないと分かり、｢ほっとした｣と読み取れるはずだ。では、彼は何を怒られると思っていたのか？ ｢状況｣を｢同一場面｣から読み解く。傍線部②からそのままつながっており、[問三]で確認したように｢マール･ヘンリー｣には｢罪の意識｣があった。つまり、彼は自分が犯した罪を｢父さん｣に怒られると思っていたのだ。説明すべき｢要素｣はそろった。あとは、｢直接的理由｣を｢文末｣として｢過不足なく｣まとめていく。たとえば、｢マール･ヘンリーは、父さんがバーンズ先生のことでかっかしていることが分かり、自分の犯した罪では怒られないと思ったから｡｣(59字)といった｢答え｣になる。｢説明記述｣では、｢最重要要素｣(｢理由説明｣では｢直接的理由｣)を必ず｢文末｣にすること｡
＜時間配分目安：３分半＞

｢漢字の書きとり｣(全15問)。昨年度よりやや難化したが、本校としては｢標準レベル｣｡｢カタカナ｣の部分を｢漢字｣に直す。若干紛らわしいものだけをチェックしてみたい。(１)｢面会シャゼツ｣＝｢謝絶｣⇒｢相手の申し入れを断る｣という意味も押さえておくこと｡(２)｢ショウフクしかねる条件｣＝｢承服｣⇒｢服｣には｢したがう。受け入れる｣という意味がある｡ (５)｢さじカゲンが分からない｣＝｢加減｣⇒｢さじ加減｣という用法を覚えておくこと｡(７)｢キンセイのとれた体つき｣＝｢均整｣⇒｢語彙｣として知らなくてはいけない熟語。(９)｢コウゴウ陛下｣＝｢皇后｣⇒｢后(きさき)｣、意外と抜け落ちている諸君が多いので、要注意。(14)｢大学で学問をオサめる｣＝｢修(める)｣⇒｢同訓異字｣を確認しておきたい。本校志望者は無論､｢全問正解｣が必須だ。ひとつでも不安なものがある諸君は、未だ｢本校レベル｣に達していないと認識し、精進すること。
＜時間配分目安：全問で３分＞