開成高等学校 入試対策
2020年度「開成高等学校の国語」
攻略のための学習方法
現代文に関しては、かなり高度な文章が出題される。では、『高度な文章』とはどのような文章のことをいうのだろうか。
結論から言えば、『抽象的で極めて論理的な文章』ということである。論理的文章であるので、しっかりと文脈を辿っていく文章読解力があれば、論点が何なのか、筆者の論証の進め方、つまり「筆者の考え方」の軌跡を明確にすることは、それほど困難ではないであろう。
その際には、何度も反復して使用されている『単語』が重要になってくる。
特に、『名詞』は重要であり、抽象名詞は筆者の考え方を補完するうえでその有用性は極めて高い。本文を一読する過程の中で、「これはっ…」と思う『言葉』はマルで囲んだり、傍線を引いたりしておく習慣を日頃の学習においても定着させるべきである。
また、各設問に解答する場合には、設問の対象となっている個所の前後をしっかり読み込むことが不可欠である。また、キーワードは何か、繰り返し使用されている「言葉」が、文章全体の中でいかなる役割と意味を持たされているのかを見抜く力が必要である。
その力を習得するためには、論理的文章に読み親しむことである。例えば、各出版社で販売している「新書」を読むことも論理的文章読解の力を養成するには最適であろう。「新書」はさまざまなジャンルを扱っているので、読む場合には「自分の興味のあるジャンル」を選択することが基本である。長期休暇とか土日など、時間に比較的余裕のある時期に読み込もう。
秋以降になって時間的に余裕がなくなってきた場合には、そのような「新書」を読むことは得策ではない。では、どうすれば論理的文章の読解力を向上させることができるのか。
その場合には、高度な論理的文章読解の演習を通じて、課題文である本文をじっくり読み込むことである。少なくとも、入試問題として出題される文章であるので、論理的分析に耐えられない文章ではないことだけは間違いないはずである。
したがって、入試までに時間的余裕のない状態で、論理的読解力を高めようとする場合には、演習の問題文を徹底的に分析することである。
小説問題に対する対策としては、登場人物の心情把握をいかに正確かつ迅速に行うかである。そのためには作者がその人物をどのように描写しているかを素早く見極めることである。
例えば、性格的に明朗なのか陰湿なのか、発言内容を通じてその人物の考え方や価値観などを把握するということである。そのような総合的な分析作業を経て、登場人物の人格やキャラクターを鮮明にすることが可能になるのである。
特に、小説の場合には、間接的な情景描写を通じて人物の心情描写を行なう手法を用いるのが一般的である。入試問題においても、そのような情景描写を把握し、そのような描写を通じて、作者が登場人物をどのような特性・人格として描こうと意図しているのかを理解することがカギとなる。
いずれにしても現代文については、本文の分量もかなり多く内容的にも高度(特に論説文)であり、設問内容も記述式であるため、正確な文章読解力は当然のこととして、その上で「高度な文章表現力」を高校側が求める『力』であるということを十分認識するべきである。
その様な要求に対応するためには、過不足なく簡潔にしかも説得力をもった文章を手際良く書き上げる練習を行わなければならない。そのような文章表現力を磨くには、自分が書いた文章を誰か他人に「添削」してもらうことである。他人の客観的評価が加わることで文章作成能力は飛躍的に向上する。
古文についても、設問はほとんどが内容把握に関する問題であるので、古典(当然ながら漢文も含む)文法などの知識だけではなく、内容把握(当然ながら人物描写や心情描写の把握と理解)をしっかり行えるように近世の古典作品を扱った問題演習をしっかり行うことである。
将来的な大学入試を考えた場合、大学側が、というより社会が求める人材像の要件は、『自分で考え、説得力ある自分の言葉でいかに相手に自分の考え方を伝えるか』ということである。そのような意味では、現代文の問題文をじっくり読み込む作業を通じて自身の論理力を鍛えて貰いたい。
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2020年度「開成高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は、人生に関する論説文の読解問題である<18分>。漢字の書き取り問題以外はすべて記述式問題。現代の若者が「悟りの世代」と呼ばれていることに関する論説文である。
大問二は、小説を題材とした読解問題である<16分>。宮沢賢治が童話の世界に深く関わっていく中での人間模様を描写している。
大問三は、古文読解問題である<16分>。松尾芭蕉の紀行文である。
【大問一】人生に関する論説文の読解問題
- 時間配分:18分
哲学的分野からの論説文読解総合問題である。テーマは「人生」。出典は、三谷尚澄著『哲学してもいいですか?』。
(問一)漢字書き取り問題である。設問にもあるように「一画ずつ丁寧に書く」ことを心掛けること。完答を目指したい。<2分>
(問二)内容把握記述問題である。「現状の居心地のよさ」とは、「波風のない平和な暮らし」であり、「『ほとんど』を約束してくれる輪の中の世界こそが最高」とする生活環境である。<5分>
(問三)内容把握記述問題である。日本での暮らしが「非常に快適」であるのは自分の要求が簡単に満たされてしまうからであり、気の合う仲間たちだけから成り立つ居心地のよい社交空間が広がっているからである。<5分>
(問四)内容把握記述問題である。本文より「悟り世代」の特性を読み取り、「悟り世代」の論理をしっかり把握することが必要である。<6分>
【大問二】小説を題材とした読解問題
- 時間配分:16分
小説に関する総合記述問題である。出典は、門井慶喜著『銀河鉄道の父』。宮沢賢治をモデルにした小説である。『銀河鉄道の夜』は、宮沢賢治の代表的童話作品である。
(問一)宮沢賢治が、なぜ『童話』という表現方法を選択したのか。本文の内容を丁寧に追跡してゆけば、その答えはおのずと導かれるであろう。賢治が小学生の頃に、担任の先生が『家なき子』を六か月かけて朗読してくれたことに、その淵源をたどることができる。<7分>
(問二)心情把握問題である。「そのこと」とは、何を指しているのか。賢治は、「政次郎のような父親」になれるのは童話を書いているときであることを明確に自覚しているのである。ゆえに、政次郎のようになるために、賢治は童話という世界を選択したのである。<9分>
【大問三】古文読解問題
- 時間配分:16分
古文の読解問題である。出典は、松尾芭蕉著『鹿島詣』。松尾芭蕉の紀行文である。
(問一)現代語訳の問題である。「べくもあらず」は、「出来そうにない」という意味であるので選択肢のウになる。<2分>
- 内容把握問題である。芭蕉が「不本意」と感じたのは、句を詠むことができなかったことである。本文に「いふべき言の葉もなし」とある。<3分>
- 古文内容把握問題である。芭蕉も清少納言も共通しているのは、ここぞという場面で歌を詠めなかった、ということである。<5分>
- 俳句の内容把握問題である。情景としては雨上がりであり、雲の流れが速いので、月も相対的に速く動いているように見える。木の梢は雨上がりで水を一杯含んでいるのでありそこから雫として地上に落ちてくる。そのような情景が「梢は雨を持ちながら」と詠んでいる。<6分>
攻略のポイント
大問一の論説文は、現代の満ち足りた社会の中で生活する「世代」にとって、まさに現代社会は「ほどほど」の世界であり、最適な生活環境なのである。そこに最大の安心を感じ、最大の快適さ享受しているのである。
大問二は小説の読解問題である。宮沢賢治がいかなる理由で、童話というジャンルを選択したのか。小学校時代の先生が行っていた童話の読み聞かせが大きな要因ではあったが、父の存在がどのような影響を与えたかを考えながら答案をまとめ上げる。
大問三の古文問題は、現代語訳および古語文法の知識が必須であることは言うまでもないが、標準的な古典問題を普段から丁寧に演習することが重要である。また、解答形式は記述であるので、考えを的確にまとめ上げる練習もしっかり行うこと。