明治大学付属明治中学校 入試対策
2020年度「明治大学付属明治中学校の算数」
攻略のための学習方法
「正攻法で攻めよ」明明の算数対策を一言で表わすならば、これに尽きる。
とりたててスピードも要らないし、超難問を解きほぐせるひらめきも要らない。受験算数という枠組みの、真ん中の道を進んでいけば、おのずから合格への道は開けよう。
《オーソドックスな問題》
50分で大問5題、設問15・6題という分量はきわめてオーソドックスである。上位校としては、やや少なめかもしれない。普通に研鑽を積んでいけば、時間不足になって解けないと言うことは無い。持っている力を十分に出して問題にあたれるはずだ。
また、難易度について言えば、やはりオーソドックスな難問が並んでいるという感じである。易しいとは言えないが、決して解けないレベルではない。
他校に見られるような「捨て問」の類がきわめて少なく、0点から100点までで算数の力が競える。点差はつきやすくなるが、算数が得意な生徒は満点近くを狙えるし、なにより奇問・超難問によって生徒が悩むことがないのはきわめて評価できる点だ。どの問題にも既視感があり、生徒は安心して問題解法に進んでいけることだろう。
しかしながら、明明の壁は高く、そのハードルを越えるのは容易ではない。
つまり、自分から見て「簡単だ」と思えるものは他者がみても同じであり、自分から見て「やりやすい」と思えるものは、他者から見てもやりやすいからだ。ここは誤解しやすいところである。明明の競争率が高いのは、テスト問題へのとっつきやすさも影響している。
ある生徒が「やりやすい」と感じて選択するとき、他の生徒たちも同じ感想を持って明明を選択している。奇問・超難問を克服するよりは確かに対策は立てやすいが、いまわの際でライバルたちに差をつけなければならない困難さも理解しておこう。
《公式の応用》
では、実際の入試問題において、明明対策はどのようになされるべきか。
どの問題にも一貫して言えることは、手数のかかる問題が多いと言うことだ。大問【1】の計算問題から始まり、大問【5】最後の設問に至るまでそれは徹底している。
「公式」と言うものがある。「公式」に当てはめれば答えが出るという問題も数多く存在するが、明明ではあまり見かけない。(「公式が分れば解ける」これは簡単を意味しない。特異な公式を使えば一発で出来ても、知らないと解けないか解法に苦労するという問題はたくさん存在する)
代わりに多く登場するのが、「公式」は分っていても、それだけでは解けないという、公式の応用を試される問題である。
明明で頻出の内容に「速さ」と「割合」がある。
この2つの内容は、誤解を恐れずに言えば、公式は一つずつしかない。
よく「割合の3用法」とか「速さの3つの公式」とか言うが、1つの式の解く箇所を変えているだけである。だから、普通の受験生であれば「公式」を知らないから解けない、という分野ではない。
平成27年度の問題にも、この2つの分野から出題はいくつも見られる。「食塩水」と「速さの比」と形を変えてはいても、使うのは「割合」と「速さ」の公式である。しかし、解ききるのは容易ではない。公式を何度も駆使して、ようやく解答までこぎ着けるというスタイルを取っている。
つまり、明明の算数では「公式の暗記量」よりも「公式の応用」に完全に重点が置かれていることがわかる。「規則性」の問題が意外に少ないのは、「規則性」の場合、その周期や決まりが分れば「公式」にあてはめて一発、という問題が多いからではないか。その代わり、「場合の数」のように、究極的な解き方は「数え上げる」という手法になる内容は多く出されている。
さらに言えば、明明の場合、「公式」にあてはめてさらっと解ける問題を避け、非常に手数のかかる、作業中心の問題が多い。
大問【1】では、計算問題は分数や小数、整数の混合算であり、逆算を要求されることもある。ここでも、「計算の工夫」一発というよりは、泥臭く計算を積み上げていくという問題が多い。一行問題には「和と差」「割合と比」「平面図形」などが多く出題されるが、やはり「公式は知っている」という前提でそれを使いこなせるかどうかが試されている。
大問【1】は、式は不要で、答えだけを求めればよいという形式ではあるが、大問【2】以降とさして変わらぬ作図や式が必要となる。多少難易度が低く設定されているだけである。
大問【2】以降では、より手作業が必要な問題が増えてくる。
「割合と比」、「速さの問題」、「場合の数」などである。
これらの内容は、大問【1】よりも難易度が高めに設定されているがやることはさして変わらない。よく知っている、よく使ってきた「公式」や「考え方」を用いて、丹念に作業を積み重ね、正解まで持って行くという地道な努力があるだけだ。
しかし、学校側はまさにそこを要求しているわけで、コツコツと作業をしていく問題が得意な生徒には向いていると言えるだろう。
その代わり、男子によく見られる例で、ひらめきにかけては自信があるが、ノートに式を書いて求めていくのはイヤ(何が書いてあるのかさっぱりわからない~)という生徒、または苦手な生徒はこれから自分自身のやり方を方向転換しなければならない。この学校の姿勢がそうである以上、それに合わせて自分のスタイルを変えていくのが賢明な受験生である。
今までのことをまとめると、この学校では作業を要求される問題を多く出題するので、生徒はそれに対応できるように努力するべし、と言うことになる。
《実践問題演習》
では、どのように普段の勉強を積んでいけばよいか。
まず、大問【1】レベルの、基本ではあるが、基本の中では最上級クラスの問題の解き方を身につけることが先決だ。ここでの5問は、明明合格への競争に参加できるかどうか、という資格が問われるところだ。このレベルで苦戦しているようでは、まだ後半の問題に取りかかるのは早計である。まずは一行問題を極めよう。手元によい問題集なり参考書があるはずだ。
そして大問【1】を突破し、大問【2】~【5】の問題に挑むにあたっては、過去問も含め、解く問題の分量はどうしても限られてくるので、要領よく時間を使って“合格の力”をつけたい。
大切なことは、問題の難易度に注意するということ。問題が易しすぎては話にならないが、超難問に時間を費やしても「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」である。自信もなくしかねない。過去問と同じ難易度を持つ他校の問題、たとえば「芝中」や「城北中」のような、男子進学校の問題を選んで解けばよいだろう。後半にある「捨て問」覚悟の難問ではなく、中盤の問題で十分だ。
また、出題範囲は限られているので、その分野の問題に絞って作業のコツなどを身につけながら力を蓄えていくのもよい。
特に、「動く点」の問題や「場合の数」の場合は、式ではなくて、表などに数値をまとめていくことが多い。ていねいに数値を数えていけるよう、普段から気をつけて作業に臨みたいものだ。
はじめのうちは時間を気にしなくてよい。納得いくまで時間をかけて問題の深みを味わおう。明明の難易度が体感できるはずだ。
秋が深まってくる頃には、大問1つを8分以内にこなせるスピードを会得し、算数で高得点が取れるよう仕上げていきたい。
算数の基本的な力を持つ生徒であれば、誰もが挑戦可能な難易度で「おもてなし」をしてくれる学校である。自分なりにテーマを持って挑戦し、合格を目指してもらいたい。
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2020年度「明治大学付属明治中学校の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が5題、小問が15題。
はじめに計算問題を含む小問が5題あり、そのあと大問が4問という並びは例年通りである。
【大問1】は答えのみ、【大問2】以降は、式や考え方も解答用紙に書き込むという形式で、重要な分野もはっきりしており、過去問を踏まえた上で対策しやすい学校といえる。
時間と問題数がマッチした学校であり、良問が多く受験生は時間に追われることなく自分の力を十分出せる分量になっている。
【大問1】小問(計算・仕事算・速さと比・割合と比・平面図形)
- 難度:標準
- 時間配分:15分
- ★必答問題
(1)はじめの計算問題は6年連続で□が中ほどにある逆算の問題。ここは確実に正解しておきたい。
(2)からは「逆比」を考えの中心におく小問が3問連続して出された。
1つめは「仕事算」だが、これはかなり平易なレベルなのでなんなく解けたものと思われる。A,B,Cの仕事量を整数比として表すと計算がしやすくなる。
(3)2つめは「速さと比」で、距離一定とかかった時間から速さの比を求めることが出来る。あとはそれを使って旅人算として処理すればよい。
(4)3つめは「割合と比」で、みかん・バナナ・りんごの金額の比を求め、96円が比いくつに当たるかを出していくという典型的な問題。これもさほど苦戦しないだろう。
(5)つまるところ相似形の問題なのだが、「PR+QBの長さが最も短くなる」点Rを辺BC上に打てるかどうかがすべてのカギを握る。辺BCを対称の軸として、三角形ABCと線対称な三角形A’BCを作図し(点Qの対象の位置に点Q’も作成する)、三角形ABCの点Pと三角形A’BCの点Q’を結べばよい。あとは三角形の相似を用いてBR:RCを決める。明大明治を志望する生徒であれば出来て欲しい問題である。
本年度は全問正解を課したい。
【大問2】速さ
- 難度:標準
- 時間配分:8分
- ★必答問題
こちらの速さの問題は比を用いることはなく、「旅人算」として解答することが出来る。
(1)AとBの秒速をそれぞれ出し、12秒後のAB間の距離を速さの差で割るだけである。
(2)はもう少し複雑で、Aが18周走り終えたときのBの位置を求め、そのときのBA間の距離を速さの差で割ればよい。ただし、Aは19周目から速さを変えているので注意する。答えを出すときに計算ミスをしなければ両問とも解けるはずだ。
【大問3】数列
- 難度:標準
- 時間配分:8分
- ★必答問題
1から4つずつ同じ数字が並ぶ数列を、前から3つずつ組に分けていって、周期算も併用して答えを出していく問題である。新鮮味はない。
(1)100までは数が4つずつあり、101ははじめの2つだけなので数の総数は402、それを3つずつ組にしているので3で割ればよい。
(2)2020番目の組までにある数の総数は2020×3=6060なのでこれを4で割る。1515が4つ並んで終わりなのではじめの数も同じである。
(3)3つの数の組は(a,a,a)(a,b,b)(a,a,b)の3種類に分類される。1805は3の倍数ではないので(a,a,a)型ではない。(a,b,b)型だとすると、1805に1をたせば(b,b,b)になるので3で割ってみるとこれが割れる。あとは(1)と同じような処理が待っているだけである。
数列・周期算が苦手な生徒も多いと思うが、ここも正解しておきたい。
【大問4】ニュートン算
- 難度:標準
- 時間配分:10分
- ★必答問題
明大明治名物「ニュートン算」、本年度も【大問4】に登場。難易度は昨年度と変わらない。過去問対策をばっちり行ってきた生徒にはちょうどよい湯加減の問題である。
(1)機械の種類が3種類といっても箱詰めする個数の比・台数ともに問題文にあるので、一定の速さで運ばれてくるメロンの数を出せばよい。さらにはじめに箱詰めされていないメロンの個数を求め、ようやく答えにたどり着く式を立てられるという作業の多いつくりになっているものの解いていく手順は典型的なニュートン算のそれである。
(2)は8分後に残っているメロンの個数を求め、そのあとは(1)のやり方を踏襲すればよい。
難易度は低くないものの、例年お目見えするニュートン算対策の真価を発揮するところだ。点差がつきやすい問題なので、ここまで無傷で終えられた生徒には合格の2文字が目の前だ。
【大問5】立体図形の切断
- 難度:難
- 時間配分:9分
各々切断の設問、(1)は「易」、(2)は「やや難」、(3)は「難」の評価である。ここまでほぼ正解できた生徒は(1)をしっかり解き、少しでも算数で貯金したい生徒は(2)までは点数を増やせるようにがんばり、自分で自分をほめたい生徒は(3)まで手を伸ばせばよかろう。
(1)は切り口正三角形の三角すいになる。
(2)は切り口正六角形の立体となるが、辺を延長して大きな三角すいを作った上で余分な小さい三角すいの体積をひくという技術を持てているかどうかだ。
(3)は切り口四角形の四角すいの体積と言うことになるが、正○角形ではない分だけ難度が高くなる。よもや(2)の立体の比較になろうとは思いもつかぬ事である。本年度最大の難問、あたら時間をかけるのではなくはじめに戻ってやり直しをしていこう。
攻略のポイント
テスト時間は50分で100点満点。受験者平均が54.5,合格者平均が70.7と2018年度並みの高い平均点に戻った。難問らしいのは【大問5】だけなのでさもありなんというところ。
【大問1】~【大問4】・【大問5】(1)まではすべて正解して欲しいところ。その中では【大問4】のニュートン算が解けたかどうかが大きなポイントになる。ニュートン算は頻出の内容なのでぜひ腕を磨いておきたい。
明大明治特有の、条件の複雑な大問群に立ち向かうには、基本問題の徹底履修だけでは難しく、基本的な公式や解き方を身につけたら、設問が2つ以上ある,条件の複雑な問題にもトライしてみることがおすすめだ。また、「割合と比にかたよった出題」は変わらないものの、新たに「立体図形の切断」という難敵を迎えている。こちらも十分に手を尽くしておきたい。
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