早稲田大学高等学院中学部 入試対策
2020年度「早稲田大学高等学院中学部の算数」
攻略のための学習方法
難易度の変化
高校入試において、かつてより難関校として名を馳せていた早稲田大学高等学院。その中等部として、大きな期待を持って開校したのが2010年。
以来、高い倍率と入試問題の質で受験生に「狭き門」「高い壁」を抱かせてきた同校。
問題の質に上下動はあるものの、多くの受験生の憧れの的となっている。
まず、テスト自体は量より質の学校であること。これを頭に置きたい。
要求されることは、早く問題を解くような機械的な作業というよりは、条件の複雑な問題に対応できるような柔軟な頭である。
難度の低い年度の問題にもその傾向は見られる。
基本は計算力
学院の問題ではじめに目に飛び込んでくるのは計算問題である。
塾や家庭教師での勉強が説明を要する問題中心となり、学校の勉強は役に立たない水準なので、受験生たちはその問題適応力(応用力)に比べると計算力が貧弱で あることが少なくない。模擬試験でも覚えがあるだろう。後ろの方の問題は正解なのに、はじめの計算問題でミスをしてしまい点数がまとまらなかったことが…
このような場合、先生や保護者は「計算問題で間違えるな」「計算でミスするな」と注意はするものの、「算数の力がないわけではないから…」と浅く反省するだけで次の「文章題」に進んでしまったりする。
もし学院の過去問において計算問題の失点があったようなら、改めて計算についてチェックをしてみる必要がある。間違えるからには必ず理由があるはず。
1つは、分数や小数が混合されている場合、「小数→分数」や「分数→小数」の変換がおぼつかない可能性がある。またはその方法に無駄がある。
もう1つは、特殊な計算問題における、解くためのテクニック不足である。
割合や速さ同様に、計算問題もしっかりチェックしておかないと「ほっといても、いつか出来るようになるだろう」というものでもない。いい機会だと思ってしっかり点検しておこう。本年度の「繁分数」出題は意表をつかれた感がある。
次に頻出分野の「平面図形」や「割合と比」・「文章題」・「速さ」などであるが、こちらは学院ならではの問題の出され方に注意したい。普通の場合、過去問をたくさん解けば慣れが生じてくるのだがご存じの通り、過去問は少ない上にレベルが一定ではない。
学院も含め同じ系統の早実や、併願校となるだろう立教新座・明大明治(併願校にはならないかもしれないが)早稲田・海城など少し手強い問題を出す学校の過去問にあたっておくとよいだろう。
基本マスター
これから算数の基礎を固めていこうとする生徒は、過去問対策は秋になってからでも十分間に合う。
まずは、早い時期に解き方のベースとなるテキスト(「四科のまとめ」「ベーシック」など)に出題されている例題・典型的問題の解法に用いられる公式や解き方はすべてマスターしてしまおう。学院レベルになると、誰でも解ける問題は本当に誰でも解いてしまう。ここで差をつけられるのは致命傷となる。
この3年ほどは、手が付けられないほど難しい出題ではなくなった。平成26年度以前の問題をみるとどうにもならない問題がいくつも存在する。そういった問題が解ける力というのは必ずしも努力によって身につくものでもない。
やはり、得手不得手の領域に達しているレベルである。だから、多少言い回しにクセがあっても、そこを乗り切りさえすれば解きほぐしていける問題に変わったのは合格への可能性を高めてくれる、大切なポイントになる。
ただ、合格点の上昇は予想できるので学校自体の難易度が低くなると言うものではない。
まとめ
以上のことから、合格するための学習法をまとめると
・「計算問題」を軽視せずに、日々の問題演習の中に取り入れ、早く確実に解けるよう仕上げていくこと。少なくとも「計算問題は得意である」という言い切れるくらいになりたい。
・平面図形はじめ、頻出の単元に関しては、標準的な典型題はもちろんのこと、少しクセのある学校の過去問も含めて十分に問題演習を積むこと。
・高いレベルでの競争になるので、簡単な問題が解けるようになったくらいで慢心せずに引き続き難問に挑戦する精神をもって多くの問題にあたること。
早大学院の算数がいつまたかつての水準を復活させるかどうかは分らないが、少なくともここ数年のレベルであれば標準的な学力でも十分に対応できる。あとはその精度を上げるだけだ。最後まで悔いのない勉強を続けよう。
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2020年度「早稲田大学高等学院中学部の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が4、小問が18と昨年度よりも若干増えた。しかし複雑な計算を伴うわけではないので時間不足になることはない。
本年度は【大問1】が「易」レベル、【大問2】~【大問4】は「標準」設問によっては「やや難」レベルで、まったく解けそうもないという設問はほぼ存在しない。
ただし、問題文の指示がわかりにくく、内容をよく理解してからでないと解きにくいという「早大学院」らしい問題が並んでいる。よって、早大学院対策が例年以上に効果があっただろう。
【大問1】計算のくふう・約束記号・場合の数・平面図形
- 難度:易
- 時間配分:12分
- ★必答問題
計算問題をふくむ小問集となっている。例年に比べると解きやすい問題群なのでここは全問正解しておきたい。
(1)もし全問正解を阻むものがあるとすればこの(1)ではないだろうか。右辺にある「2」を左辺に移す(移項という)などして、□×□にあてはまる平方数を見つけたい。
(2)は約束記号の問題と分類したが、(1)同様、計算のくふうが必要である。分母はある数からの積になるがここを計算しないでじょうずに分母を通分すると答えが見えてくる。通分して巨大な分母にしてしまうと時間がかかった上に答えも見えてこない。普段から考えることなくむやみやたらに通分して解く、というくせをなくすよう努力したい。
(3)はかなり基本的な問題で逆に何かあるのでは、と考えてしまう。が、何もないので素直に場合分けして答えを出せばよい。
(4)も(3)と同じく早大学院の図形にしては素直すぎる問題。相似比と面積比を標準レベルで用いれば答えはすんなり求まる。「ただし、図は正確とは限りません」とあるように与えられた図形は不正確なのでまちがった長さにこだわると解けなくなってしまう。
前半の計算問題に手こずると思われるが、なんとか全問正解として先に進みたい。
【大問2】平面図形(整数問題)
- 難度:標準
- 時間配分:8分
- ★必答問題
与えられた長方形から正方形を切り取っていく、という問題自体は珍しいものではないが、(手順1)で「xの値を0にする。」で「はぁ?」となってしまう。これが「長方形から正方形を切り取った回数を0から始める」なとど書いてあればかなり平易な設問群となる。
それを(手順)という条件を並べることで解きにくくしているあたり、いかにも早大学院の算数という感じがする。
問題文を理解できたかどうかで(1)から点差が開きやすいこわい大問である。
(1)は与えられた長方形がすでに「正方形」なのでxは0である。しかしそう答えるには結構勇気が要る。
(2)(3)ともおおよその長方形を書いて正方形を切り取っていけばよい。ここでは、問題を解く技術よりも問題文の正しい理解が必要とされている。
(4)はこれまでの設問とは逆に、まず正方形を書いて、それに切り取った「正方形」をくっつけていけばよい。x=3なので、回数を間違えないようにしたい。
問題文が理解できれば設問を解くのは簡単だ。しかしこういう問題こそ大きく合否を分けることになる。
【大問3】条件整理
- 難度:やや難
- 時間配分:15分
この大問もまた【大問2】同様、問題文の正しい理解が必要で、それがわかれば(1)の3問はかなり平易な問いになるだろう。特に「例えば、…」と与えられている具体例を大切に読んでおきたい。
(1)では①から③になるにつれて与えられた距離が単数から複数に複雑になっているものの、問題の意図が理解できていれば簡単な計算だけで答えが求まるようになっている。
(2)はそれをさらに複雑にしたもの、(3)はさらに複雑にしたものであり、解くために使う技術は大きく変わらない。
しかし(2)以降のあやまちはあまり責める気にはならない。(1)だけはしっかりと正解しておきたい。
【大問4】平面図形(図形の回転移動)
- 難度:やや難
- 時間配分:15分
最後の問題もまた、問題文の言わんとしていることをつかむ、というのが最大のポイントになっていて、ここをミスなく理解できていればさほど難しい問題ではない。
前半の「回転移動」は得点できるようにしておきたい。作図力も問われる問題だ。
(1)は作図してみると半円の弧の長さになるのでこれは正解しておきたい。
(2)は作図してみると「30度・60度・90度」の直角三角形の辺比を使う問題になっていることがわかる。
(3)(4)は回転移動の問題ではなく規則性の問題になっている。
中でも(4)は本年度最大の難問である。
(3)もまた問題文の意図がわかりにくいのだが、三角形が動くのに要する時間を表などにしてまとめていけば解ける問題なので、できれば正解を望みたい。
攻略のポイント
テスト時間は50分で100点満点。
本年度の問題は、まさしくこれぞ「早大学院中等部の算数」といったおもむきのテストであり、学校対策を中心に一生懸命受験勉強してきた生徒がアドバンテージを得る内容になっていて、とても面白い問題群だった。
【大問1】【大問2】をしっかり正解した上で【大問2】【大問4】の設問を半分くらい解ければ、おのずと合格を手にできたことと思う。
本年度はさほどではないものの、この学校を制するには作図力が欠かせないのでその対策は怠らないことが大切だ。
受験に際し、当校の算数に対応するためには標準的な問題を数多くこなす一方で高難度の問題もこなしておく必要がある。併願する可能性が高い大学付属中の過去問でも、算数の難度が高い「立教新座」「明大明治」「早稲田実業」の問題は要チェックだ。
また、学院らしい算数が2年続いたのでくれぐれも早大学院の「過去問」対策には重点を置いて勉強したい。
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