慶應義塾女子高等学校 入試対策
2021年度「慶應義塾女子高等学校の数学」
攻略のための学習方法
全体としては、いわゆる「難問・奇問」の類は出題されていない。受験生にとっても、初見の問題も少ないだろう。それゆえ、解答にあたっては確実にかつ迅速に問題を解く必要がある。しかも、解答は記述式である。そのような入試問題の対策について、以下に何点か対策としての学習法について述べてみたい。
① 出題傾向のある分野の問題を何度も繰り返し演習を行うこと
よく出る分野としては、計算問題(展開・因数分解の応用、式の値、平方根に関する計算、指数法則を用いた計算)、関数(直線(1次関数)と放物線(2次関数)の融合問題)、方程式の応用問題(方程式を用いた文章問題)、場合の数と確率、平面図形(円に関する各種定理、三平方の定理)、空間図形(立体の切口の形状・面積)は、繰り返し演習をしておく必要がある。特に、放物線に関する問題は関数に関する設問はいうまでもないが、y軸に関して対象移動した場合のグラフの式や回転させて出来上がる立体の体積を求める問題には十分慣れておく必要がある。さらには、xy座標面において、ある図形(三角形である場合が多い)と面積が等しい図形を考えるような問題(等積変形や相似・合同の考え方を駆使する)にも対応できるようにしておきたい。図形問題(幾何問題)については、参考書に掲載されているような定理や原理などを暗記するのではなく、根底から理解しておくこと。確かに、公式などは道具としてそのまま使い正解を求めるためには非常に便利である。しかし、暗記した公式は時間がたてば記憶も薄くなり、やがて忘れてしまうものである。そのような状況を回避するためには、定理・公式を暗記するのではなく、そのような定理などがどの様なプロセスを経て導き出されるかを自分の手を使って確かめることである。その中で大事なことは、定理・公式という「結果」がどのようにして得られたのかを理解することである。その理解こそが、あらゆる問題に適応可能な発想力を生み出すのであり、確実で柔軟なヒラメキを約束するものである。
② 解答における記述の内容とボリューム感が適正になるように十分な練習を積むこと
慶應女子の入試問題は記述式問題である。答えは分かるが、それをどの様にして(ボリュームと論理展開)解答用紙に表現していくかが合否を分けるといっても過言ではない。答案は、他人(採点者)に読んでもらう、ある意味では受験生からのメッセージである。であるならば、自分の考えが相手に正確に伝わらなくては意味がない。つまり、自分の考えが伝わらないのである。そのような事態を回避するために、普段の学習においてしっかりと解法の手順を書くことである。また、解法のボリュームの点でも留意が必要である。基本的には、スタートの発想(立式)を明確に書き、結論(解答)に至る論理展開を全て書くのではなく、途中の考え方は重要なターニングポイントの式だけ書き、最後に結論となる式を書くというのが原則である。いずれにしても、適度な記述式の解答を書くには十分な練習を積む必要があり、必要最低限の内容にする判断基準を確実に身につけたい。
③ 数学的発想力を確実に習得すること(新傾向問題に対する対策として)
数学的発想とは何か。いろいろと考え方・捉え方はあろうかと思うが、一口で言うならば「客観的な根拠に基づく判断」を下せることが数学的発想であるといえよう。特に、図形(幾何)の問題においては顕著に表れてくる。解答にたどり着くために障壁となっている三角形が、特に設問上の条件は全くない状態で、この三角形は設問上の設定条件は全くないが「なんとなく正三角形っぽいな~」という憶測に基づいて問題を解いてはいけないということである。この三角形が、どうして正三角形なのであるかを根拠づけなければならない。三辺がすべて等しいか角度がすべて等しいという事実が証明できない限り、この三角形は正三角形とは言えないのである。図形を見かけだけで判断するのではなく、しっかり根拠に基づく判断ができるようにしよう。
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2021年度「慶應義塾女子高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】は<6分>、連立方程式の応用問題である。
【大問2】は<12分>、2次関数と1次関数の融合問題である。事前に十分な演習が必要。
【大問3】は<14分>、空間図形(四角柱)に関する問題である。
【大問4】は<15分>、平面図形(円)に関する問題である。
【大問5】は<13分>、2次方程式と確率に関する問題(新傾向問題)である。
【大問1】 連立方程式の応用問題
- 時間配分:6分
(1)<3分>問題文が少々長く、迅速に理解する力が必要である。問題文を正確に理解したうえで、立式を試みること。1日目に支払った金額、2日目に支払った金額をx、yの方程式で表わす。
(2)<3分>。前問で求めた方程式にさらなる条件が加えられ、最終的にはx、yの値を求める。
【大問2】2次関数と1次関数の融合問題
- 時間配分:12分
(1)<3分>。点Bの座標を求める問題である。点Bが放物線と直線の交点であることより、連立方程式を解いてx座標、y座標を求める。
(2)<3分>。直線ACの式を求める問題である。点Aは、y=√3/3x+(10√3)/3 上にありx座標が-16
であることより点Aの座標を求める。また、点Cは、y=√3x2にあり、かつx座標は点Bのx座標と同じである。これにより、2点A,Cの座標が判明し求めたい直線ACの式も導き出せる。
(3)<3分>。△ABCの面積Sを求める問題である。点Aより辺BCへ垂線AHを引き、△ABCの辺BCを底辺、辺AHを高さと考えてSを求める。
(4)<3分>。△ABCの内接円の半径を求める問題である。求める半径をrとすると、△ABCの面積Sは、内接円の中心と点A、点B、点Cをそれぞれ結んでできる3つの三角形の面積の合計になる。その際、rはできた3つの三角形の高さになっていることに気づくこと。また、解法には三平方の定理を用いる。
【大問3】四角柱に関する空間図形の問題
- 時間配分:14分
(1)<4分>。与えられた四角柱において、CP=AQ=xとしたときのxの値を求める問題である初めに三角錐CGPRと三角錐DHPQの体積比を求める。
(2)<2分>。三角錐CGPRにおいて、△CPRにおいて底辺をRCとしたときの高さが判明すれば三角錐CGPRの体積を求めることができる。
(3)<4分>。線分PRの長さを求める問題である。与えられた図形の中に、三平方の定理を使える三角形を確実に迅速に見つけ出さなければならない。
(4)<4分>。頂点Cから△GPRに垂線を下ろしたときの垂線の長さを求める問題である。三角錐CGPRの体積は判明しているので、三角錐CGPRの底面を△PRGとして点Cから△PRGへの垂線CSを引き、CSを三角錐の高さとして長さhを求める。
【大問4】円に関する平面図形の問題
- 時間配分:15分
(1)<2分>。円周角に関する考え方をあてはめること。
(2)<3分>。線分GDの長さを求める問題である。GD=PD−PGであるから、PD、PGの長さを求めてみよう。
(3)<3分>。△DBGも各辺の比が1:2:√3 の直角三角形である。また、△BEPで三平方の定理を活用する。
(4)<3分>。円周角に関する定理をしっかりあてはめること。
(5)<4分>。△ADPは直角二等辺三角形であるので、AP=√2PDである。さらに、点A、D、P、Fは同一円周上にあることがわかる。これらをもとに解法を進めること。
【大問5】2次方程式と確率に関する問題
- 時間配分:13分
(1)<4分>。x2+ax+b=0の解の一つがx=−3なので、xに代入してaとbの関係式を求める。かつa、bはそれぞれ1、3、4、s、t、uであるのでa、bの組み合わせは全部で36通りと求められる。
(2)<3分>。前問(1)より、t=3s−9となる。u=3t−9なので、これらの式よりuとsの関係式も求められる。
(3)<6分>。条件2より①の2次方程式の解の一つがx=−10のとき、bをaの式で表わす。a、bの組み合わせは全部で36通りである。a、bが自然数であることなどの条件を取り込んで考えを進めること。
攻略のポイント
解答は、途中の計算式を書かせる方式である。記述式の解法において何をどの程度まで書くかが重要なポイントである。あまり詳しすぎても答案用紙のスペースの関係で書ききれなくなってしまうし、短すぎても採点者へ自分の考えを正確に伝えることができなくなってしまう。その意味でも、日頃から時間を決め記述答案の作成に関する準備をしっかり行っておくべきである。また、図形の問題も出題されるので、作図に関してもさまざまなバリエーションの問題を事前に経験しておくことが大切である。