自分は平凡だと思っている｢私｣(津川麻子)が、中学、高校、大学、就職を通して４つの｢スコーレ｣(学校)と出会い、少女から女性へ変わっていく。そして、気づいた自分のいちばん大切なものとは――ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく描いた作品。本文では、就職をして｢ディスプレイの変更｣という重要な仕事を大成功させた｢私｣だったが、｢達成感｣はすぐに消え、次に何を目指せばいいのか分からず戸惑う様子が描かれている。分かりやすい文章で、設問も平易。一気呵成に得点を重ねたい大問だ。以下、少しだけ確認してみたい。

[問一]　｢空所補充の語句選択肢｣(全３問/３択)。｢総合的知識問題｣｡｢文脈｣からの｢語句の意味｣の判別だ。本文中の空所部【　Ａ　】～【　Ｃ　】を｢埋める適切な語句｣を答える。

各選択肢は副詞などで､(ア)｢ずっと｣･(イ)｢不意に｣･(ウ)｢もう｣｡各空所前後の｢文脈｣から｢答え｣を特定していきたい。

｢棚や台を見ていて【　Ａ　】思いついた｣

⇒｢思いついた様子｣なので、｢答え｣は形容動詞である(イ)の｢不意に｣で決定。

｢得策ではないと【　Ｂ　】思ってはいた｣

⇒｢思っていた｣のだから、｢答え｣は副詞である(ア)の｢ずっと｣しかない。

｢スタッフたちの意向がディスプレイに【　Ｃ　】少し反映されていてもいい｣

⇒当然、｢答え｣は副詞の(ウ)｢もう｣(→少し)になる。

本問は難易度が低かったが、｢副詞｣などの｢空所補充｣では紛らわしいものもあるので、｢意味｣を正確に捉えることが肝要だ。本校では必出だ。

＜時間配分目安：全問で１分強＞

[問二･三]　｢空所補充の漢字記述｣(全２問。ともに｢漢字１字｣指定)。｢総合的知識問題｣｡｢語句特定｣。傍線部(１)｢お調□者｣･(２)｢□かましい｣の空所を｢埋める適切な漢字一字｣をそれぞれ答える。

｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要｣という｢重要解法｣)で｢文脈｣を確認する。

(１)の前後は、｢店長に言われたことがこんなふうに作用しているのだとしたら、私はとんだお調□者だとなっている。であれば、｢お調子者｣⇒｢答え｣は｢子｣だと特定したい。

(２)の前後は、｢まだまだ裏方仕事の多い私がディスプレイに口を出すなんて、□かましいとも思う｣となっている。当然、｢ずうずうしい｣と思っていると分かるので｢厚かましい｣⇒｢答え｣は｢厚｣になる。

これらは、本校が求める｢語彙レベル｣の典型だ。もし定着していなかった諸君がいるならば、｢知識｣が不足していると認識し、精進せよ。

＜時間配分目安：全問で１分強＞

[問六]　｢様子説明選択肢｣(４択)。傍線部(５)｢ひとこともない｣について、｢このときの『私』の様子｣を答える。

｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここでは｢ひとこともない｣の｢原意｣と結びつかない｢様子｣を｢消去｣することになる。各選択肢の｢文末｣と照合する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)。

(ア)｢悔やんでいる｣、

(イ)｢反省している｣、

(ウ)｢言い返せないでいる｣、

(エ)｢尻込みしている｣｡

さあ、どうか？ ｢ひとこともない｣＝｢何も言うことができない｣ので、｢言い返せない｣以外は｢消去｣だと誰でも判別できるはずだ。念のために、｢同一場面｣を確認する(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡他の部分の説明も特には誤っていない。したがって、｢答え｣は(ウ)になる。瞬時に｢一発消去｣できた。見事な｢神業｣ではないか。｢原意消去｣、完全習得して完璧に応用すべし。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問七]　｢理由説明選択肢｣(４択)。傍線部(６)｢一握りの塩というのはあながち比喩でもなかった｣について、｢ここで『あながち比喩でもなかった』と『私』が思ったのはなぜか｣を答える。

無論、｢原意消去｣からだ｡ここでは｢理由説明｣なので、｢あながち比喩でもなかった｣ことの｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣する。｢各選択肢の『文末』｣⇒｢だから｣⇒｢あながち比喩でもなかった｣と結びつくかどうかということになる｡確認する。

(ア)｢達成感を表すものでもあったから｣､

(イ)｢調味料のようなものを意味しているから｣､

(ウ)｢塩っぽさも表していると思ったから｣､

(エ)｢(好きなように)考えて並べたものだから｣｡

即｢一発消去｣可能だが、悩んでしまった諸君は｢語彙力不足｣かも知れない。｢あながち｣は｢呼応の副詞｣で、あとに｢打消し｣を伴って｢必ずしも～ない｣という意味だ。つまり、｢塩｣は必ずしも比喩ではない｣⇒本当に(現実としても)｢塩｣なのだから、(ウ)以外は｢消去｣だと判断できる。｢同一場面｣から、他の部分の説明も特に誤っていないと分かる。よって、｢答え｣は(ウ)だ。

｢あながち｣の｢原意｣さえ押さえていれば、本問も｢一発消去｣可能だ。やはり、｢語彙力｣は直接的な｢知識問題｣だけではなく、｢読解｣にとっても不可欠だと心得よ。

＜時間配分目安：１分強＞

３歳ともなると子どもは一見会話らしいやりとりができるようになるが、｢ことば｣で自分の意図をきちんと伝えて、｢ことば｣から相手の意図を正しく理解できているわけではない――発達途上の子どもの｢ことば｣を手がかりに｢伝わる理由･伝わらない理由｣を考察している。

本文では、子どもや外国人、初対面の人に対してはコミュニケーションの失敗を予測して気配りができるが、共感できる親しい友人や家族にはかえってできないと論じている。｢言語コミュニケーション論｣ではあるが、内容はとても分かりやすい。本校の真骨頂ともいえる｢空所補充設問｣が押し寄せてくる大問構成。着実に解き進めたい。いくつかの｢設問｣を検証してみる。

[問一]　｢空所補充の語句選択肢｣(全３問/３択)。本文中の空所【 Ａ 】～【 Ｃ 】を｢埋めるのに適切な語句｣を答える。

各選択肢は、｢接続詞｣と｢副詞｣だ。｢接続詞｣は本校に限らず定番の問題。中でも｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外だと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。順に｢答え｣を確認していきたい。

【 Ａ 】には｢重ねて。加えて。その上に｣という意味の｢副詞｣である(ア)｢さらに｣､

【 Ｂ 】には｢逆接｣の｢接続詞｣である(イ)｢しかし｣、

【 Ｃ 】には｢論じる必要のないほど、​はっきりしているさま｣を表す｢副詞｣である(ウ)｢もちろん｣がそれぞれ入ると分かるはずだ｡

｢接続詞｣の｢逆接｣以外では、いくつかの｢候補｣をしっかりと｢代入確認｣してから確定することが重要だ。  

＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問二]　｢空所補充の内容説明抜き出し｣(｢10字｣指定)。示されている、傍線部(１)｢ことばを客観的にとらえるメタ言語能力｣についての｢説明文｣の空所を｢埋めるのに適切な十字の言葉｣を抜き出して答える。｢説明文｣は｢言葉づかいや言葉そのものについて意識したり、□□□□□□□□□□考えたりする能力｡｣となっている。

｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んで探していくことがポイントだ。先ずは｢内容｣の把握。｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣で確認する。

｢私｣(筆者)は、｢息子｣が自分のことを｢ぼく｣ではなく｢おれ｣と言って｢私｣の反応を見たり、｢ウルトラマンは『おれ』じゃなくて『わたし』って言うのはどうして？｣と聞いたりするようになったことから、｢メタ言語能力が育ちつつある｣と感じていることが分かる。つまり、｢言葉｣についての｢そのような何かを考える能力｣というのが｢抜き出し内容｣になるわけだ。｢抜き出し範囲｣は｢同一意味段落｣(｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡ここでは、傍線部を含む２段落だと判断できるはず。丁寧に探していく。すると、次段落の中頃に｢(息子が)母親はものの言い方について話をしていると考えて｣という部分がある。｢言葉｣について｢息子｣が｢考えている｣内容だと読み取れるに違いない。｢指定字数｣と空所前後の｢文脈｣から、｢答え｣は｢ものの言い方について(考えたりする能力)｣になる。尚、｢抜き出し｣では｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず全ての｢範囲｣を確認することが肝要だ

＜時間配分目安：２分弱＞

[問七･八･九]　｢空所補充の漢字記述｣(全３問。全て｢漢字１字｣指定)。｢文脈｣を踏まえての｢総合的知識問題｣｡｢四字熟語｣などだ。傍線部(６)｢過□評価｣･(７)｢□差万別｣･(８)｢日常茶□事｣の空所を｢埋める適切な漢字一字｣をそれぞれ答える。

｢文脈｣とは無関係に、この時点で｢千差万別｣と｢日常茶飯事｣は決定。(６)は｢過大評価｣か｢過少評価｣だと判断でき、直後で｢自分も相手も全能ではない｣と述べられているので、｢過大｣だと特定できるはずだ。よって、｢答え｣は(６)＝｢大｣、(７)＝｢千｣、(８)＝｢飯｣だ。

本校ならではの｢漢字空所補充三連発祭り！｣だった。尚、｢四字熟語｣に限らず、｢故事成語｣｢慣用句｣｢ことわざ｣などについても完全習得しておくこと。

＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問十]　｢空所補充の内容説明記述｣(｢10字以内｣指定)。傍線部(９)の｢それらを使わない、使えないとき｣とは｢どのようなときか｣についての｢説明文｣の空所を｢埋めるのに適切な語句｣を｢十字以内｣で記述する。｢説明文｣は｢相手が【          】であるとき｣だ。

先ずは｢それら｣という｢指示語｣があるので開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から、｢それら｣＝｢コミュニケーションが成立するのに必要な予測能力、モニター能力、言い方や文脈を使い分けていく能力、誤解を認識して対応する能力｣だと分かる。

次に、｢それらを使わない、使えないとき｣を｢同一意味段落｣から読み解いていきたい。傍線部の少し前から、｢相手｣が｢子ども｣や｢外国人｣、｢初対面の人｣などだと、｢それらの能力｣を使うことができると読み取れる。したがって、説明すべきは｢相手がそういう人たち以外のとき｣になる。

では、｢どのような人｣なのか？ ｢同一意味段落｣を確認していくと、空所【 Ｂ 】がある段落で｢親しい友人や家族と話しているとき、予測能力などの気配りが機能せずにコミュニケーションが失敗する可能性が高まる｣と述べられている。もう分かったはずだ。たとえば、｢(相手が) 親しい友人や家族(であるとき)｣(８字)という｢答え｣だ。｢同一意味段落｣に着目して的確に読み解いていくことが肝要だ。

＜時間配分目安：２分強＞

｢あの人は性格がいいね｣｢もっと明るい性格だったらなあ｣――私たちがよく話題にする｢性格｣に潜む謎を最新の心理学により解明し、｢性格｣についてよく知ることで居心地よく暮らせる環境を作ることができると論じている。

本文では、日本人が｢日本はすごい｣と思いたい気持ちはなぜ生じるのかについて、｢性格｣の視点から考察している。短い文章で、内容も難なく理解できる。｢漢字問題｣と｢長文説明記述｣だけの大問構成。検討してみよう。

[問一]　｢漢字の書きとり｣(全５問)｡

昨年度同様に平易、本校志望者であれば｢全問正解｣が必須条件。｢答え｣だけをチェックしておく。

波線部(１)｢ひとつのゲンショウ｣＝｢現象｣、

(２)｢宗教やゲイジュツ｣＝｢芸術｣、

(３)｢(いつか死ぬという)ウンメイ｣＝｢運命｣、

(４)｢ジマンをする｣＝｢自慢｣、

(５)｢ケイザイ｣＝｢経済｣。

ひとつでも曖昧(あいまい)なものがあった諸君は本校が求める｢漢字レベル｣には達していないと自覚せよ。

＜時間配分目安：全問で２分弱＞

[問二]　｢条件付き内容説明記述｣(｢80～100字以内｣指定)｡二重傍線部｢『日本はすごい』と思いたい気持ち｣は｢どのようにして生じると考えられるか｣を｢八十字以上、百字以内｣で説明する。｢条件｣は、｢本文全体の内容を踏まえる｣ことと、｢『死』『自尊感情』『文化』の三語を入れる｣こと。

本校では避けて通ることのできない｢最後の関門｣であり｢鬼門｣。ここをクリアしなければ、本校の門はくぐれない。ただ、恐れることはない。｢設問｣と｢条件｣が｢手がかり｣｢ヒント｣だ。

｢条件｣の｢三語｣に着目しながら｢同一意味段落｣を確認していくと、二重傍線部の次段落からの３段落で｢説明すべき内容｣が述べられていると判断できるはず。ということは、｢死｣｢自尊感情｣｢文化｣に結びつく各段落の｢要点｣をつないでいけばいいことになる。あとは、｢指定字数｣に応じて｢過不足なく｣まとめていけばいい。たとえば、｢死を避けることができない脅威を和らげるために人は自尊感情を高めようとするが、日本人はポジティブな自己認識が高まらない文化に生きているので、より大きな枠組みで『日本はすごい』と思いたい気持ちが生じる｡｣(99字)といった｢答え｣になる。

定番の｢要約｣も含めた｢長文説明記述(論述)問題｣に対して、本校志望者は万全の対策をして臨んでくる。したがって、｢説明記述｣の基本を正しく習得し､｢記述(論述)方法｣の｢解法｣を応用できれば、｢鬼門｣は｢入学の門｣になるということだ。

＜時間配分目安：５分以内＞