本はどう読んだらいいのか？　速読は本当に効果があるのか？――情報が氾濫(はんらん)している現代社会だからこそ、｢量｣より｢質｣を重視した｢スロー･リーディング｣による読書経験こそが人生を豊かにしてくれると論じている。

本文では、一冊の本をゆっくりと読んで楽しむ｢スロー･リーディング｣について、｢速読｣と比べつつ、その意義を指摘している。難解な語句には｢注釈｣が付されており、内容は理解できるはず。｢空所補充｣｢抜き出し｣｢説明記述｣｢正誤判別｣……､｢総合的知識問題｣も含め実に多種多様な小問が並ぶ。以下、いくつかを確認してみたい。

[問一]　｢内容説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢60字ほど｣の解答欄)。傍線部①｢読書もまた同じである｣について、｢筆者は読書のどのような点が『見知らぬ土地を訪れる』時と同じだと考えているのか｣を説明する。

｢読書もまた同じ｣とあるので、｢見知らぬ土地を訪れる時｣のことはこの｢前｣のはずだ。確認すると、傍線部は形式段落冒頭で、直前の段落で述べられていることが分かる。そして、｢読書｣については直後だ。ということは、前後の２段落を読み解いていくことになる。確認する。｢前段落｣では｢見知らぬ土地を訪れる時、短時間でザッと見て回るのと、長期間滞在して念入りに歩いて回るのでは、その理解の深さや印象の強さ、得られた知識の量には大きな違いがある｣と指摘しており、｢後段落｣からは｢本を速読すると、ゆっくりと読む『スロー･リーディング』で楽しむことができたはずの様々な仕掛けや、意味深い一節、絶妙な表現などを見落としてしまう｣といった内容が読み取れるはずだ。こうしたことを、｢読書｣の視点で両者に共通する表現を用いてまとめていくことになる。よって、たとえば、｢本は速読よりもゆっくりとスロー･リーディングする方が、意味を深く理解でき、印象の強さや得られる知識の量も多くなるという点｡｣(61字)といった｢答え｣になる。尚、助詞の｢も｣は｢文脈｣の読み取りに際してとても重要な要素となるので、｢ひらがな１文字｣だからといって決して無視してはならないと心得よ。

＜時間配分目安：２分半＞

[問三]　｢空所補充の語句選択肢｣(全４問/７択)。｢総合的知識問題｣｡｢語句の意味の判別｣だ。本文中にある空所｢ Ａ ｣･｢ Ｂ ｣に｢入る最適な言葉｣を答える。

空所前後は｢丁寧(ねい)に本を読むという意味では、昔から、『　Ａ　』、『　Ｂ　』といった言葉があるが、……｣となっている。ということは、空所はいずれも｢丁寧に本を読む｣という意味の言葉だ。各選択肢は、(ア)｢通読｣･(イ)｢素読｣･(ウ)｢熟読｣･(エ)｢多読｣･(オ)｢黙読｣･(カ)｢精読｣･(キ)｢乱読｣。本校志望者であればこの時点で、瞬時に｢熟読｣(＝文章の意味を考えてよく読むこと)と｢精読｣(＝細かい所までよく注意して読むこと)がふさわしいと判別できなくてはいけない。よって、｢答え｣は｢　Ａ　｣＝(ウ)、｢ Ｂ ｣＝(カ)となる。尚、他の選択肢の語句の中に万一、曖昧(あいまい)なものがある諸君は確実に復習をしておくこと。

＜時間配分目安：全問で30秒強＞

[問四]　｢空所補充の言葉抜き出し｣(｢９字｣指定)。本文中の空所 Ｃ に｢入る最適な言葉｣を｢九字｣で抜き出して答える。

｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。｢内容｣を捉(とら)えるために空所前後の｢文脈｣を確認したい。｢実は作家の多くは、他人の本を読むときにも、やはり　　Ｃ　　、という作業を行っている｣となっている。つまり、｢作家の多くが他人の本を読むとき行っている作業｣が抜き出し内容｣だと読み取れるはずだ。｢範囲｣は｢同一意味段落｣になる(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢手がかり･ヒント｣がある)｡ここでは、空所部の形式段落までの３段落と判断できる。丁寧に探していきたい。すると、空所部の前段落の最後に｢たとえば本書では、書き手の視点で読む、書き手になったつもりで読む、という読み方を紹介している｣という部分がある。｢書き手｣＝｢作家｣だ。｢内容｣も空所部の｢文脈｣も問題ない。そして、同じ｢範囲｣を確認しても、他に候補となる｢言葉｣はない。したがって、｢指定字数｣に従うと、｢答え｣は｢書き手の視点で読む｣(９字)となる。尚、｢抜き出し｣では｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず｢抜き出し範囲｣の全てを確認すること｡

＜時間配分目安：１分半＞

[問七]　｢内容説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢80字ほど｣の解答欄)。傍線部⑤｢かつての人間たちは、要するにみんな、スロー･リーダーであり、スロー･リスナーだった｣について、｢かつての人間たちは、どのようなことができたのか｣を説明する。

｢同一意味段落｣で｢かつての人間たち｣のことを読み解きたい。直前の段落が｢では、現代はどうだろうか？｣と始まっている。であれば、その｢前｣で述べられているはずだ。前段落の冒頭には｢本に限らず、たとえば、音楽の世界でも同じことが言える｣とある。｢音楽の世界でも｣とあるので、さらにその前の段落では｢本｣のことに論及されていることが分かる。つまり、これら２つの段落で、｢本｣と｢音楽｣に関して、｢かつての人間たち｣が｢スロー･リーダー、スロー･リスナーとして、何ができたのか｣を論じていることになる。チェックする。｢本｣については｢手書きでほとんど流通しておらず、貴重だった書物の少ない情報だけを手がかりにして、今日にも通じるような深い思索(さく)を行って｣おり、｢音楽｣でも｢生涯に聴くことができた曲の数はごくごく限られていた｣が、｢同じことが言える｣といった内容が読み取れる。あとは、｢解答欄｣に応じて｢過不足なく｣まとめていきたい。たとえば、｢手書きでほとんど流通せずに貴重だった書物や、生涯で聴くことがごく限られていた曲といった少ない情報だけを手がかりにして、今日にも通じるような深い思索を行うこと｡｣(79字)といった｢答え｣になる。｢形式段落の冒頭｣に着目して、｢段落相互関係｣を読み取ることがとても肝要だ。

＜時間配分目安：２分半＞

[問十⑧]　｢指示語換言説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢20字ほど｣の解答欄)。傍線部⑧｢それ｣の｢指示内容｣を説明する。

｢指示語換言｣はどこの学校でも定番｡｢指示語｣なので当然、前に戻りながら開いていく(｢指示語が出たら前を見よ｣が鉄則)。確認すると、この｢指示語｣は形式段落の｢冒頭｣ではないか。｢指示語は形式段落をまたがない｣というのも重要な｢解法｣だ。どうする？ ここで思い出したい。｢段落冒頭の指示語は前段落全ての内容を指し示す｣のだ。前段落の｢要点｣を読み取ると、｢速読とは『明日のための読書』である｣ということになる。よって、あとは｢それに対して、スロー･リーディングは｣に｢代入｣できるように注意しながらまとめたい。たとえば、｢『明日のための読書』である速読｡｣(16字)といった｢答え｣だ。尚、｢指示語｣自体が直接問われていない場合でも、｢指示語｣が傍線部などにあったらすぐに開くこと。

＜時間配分目安：１分以内＞

※尚、[問十]には本問を含めて４つの枝問があるが、全てが本校の定番である｢指示語換言説明記述｣だ。｢指示語｣に関しては、全ての｢解法｣を習得して熟知していることが必須だと心得よ。

[問十二]　｢空所補充の語句選択肢｣(全３問/５択)。｢総合的知識問題｣｡｢接続詞｣だ。本文中の空所 Ⅰ ～ Ⅲ に｢入る最適なつなぎ言葉｣を答える。

本校に限らず定番の問題。｢接続詞｣では｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外だと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。順に空所の｢答え｣をチェックしていく。　Ⅰ　には｢転換｣の選択肢(オ)｢では｣､　Ⅱ　には｢逆接｣の(エ)｢しかし｣､　Ⅲ　には｢選択｣の(イ)｢あるいは｣がそれぞれ入る｡｢候補｣はいくつかあるので、しっかりと｢代入確認｣してから確定することが重要だ。

＜時間配分目安：全問で１分強＞

[問十五]　｢空所補充の漢字記述および同一漢字判別選択肢｣(全３問/｢記述｣は｢漢字１字｣指定/｢選択肢｣は10択/複数回答)。｢総合的知識問題｣｡｢慣用句｣。本文中の空所 Ｆ に｢あてはまる漢字一字｣を答えた上で、｢これと同じ漢字が入る慣用句｣を｢二つ｣答える。空所前後は｢……細部にこそ Ｆ を凝(こ)らすべき……｣となっている。

本校志望者であれば、ここで即座に｢ 目 を凝らす｣だと断定できなくてはいけない。よって、｢漢字記述｣の｢答え｣は｢目｣。

次に、｢目｣が入る｢慣用句｣、各選択肢を確認すれば、｢答え｣は(イ)の｢ 目 を疑う｣(＝実際に見ても信じられないほど不思議に思う)と(キ)の｢ 目 をぬすむ｣(＝人に見つからないように、こっそりする)だと分かるはずだ。

尚、他の選択肢についても、｢意味｣を含めて｢慣用句｣として完全習得しておく必要がある。

＜時間配分目安：全問で１分半＞

｢漢字の書きとり｣(全10問)。示されている(１)～(10)の｢文中の(カタカナ)を漢字｣で書く。

難易度は例年並み、本校としての｢標準レベル｣だ。本校志望者としては何としても｢全問正解｣をしたい｡特に注意すべきものを確認する。

(１)｢(トトウ)を組む｣＝｢徒党｣⇒やや難解か？ ｢仲間、団体、一味｣のことで、｢徒党を組む｣(｢よからぬ目的のために集結｣という意味で用いる)は覚えておきたい。

(４)｢いくつかの問題が(ハセイ)する｣＝｢派生｣⇒この短文から｢文脈｣が読み取れるかがポイント、｢ある源から別の物事が分かれ出ること｣だ。

(５)｢(フッキュウ)作業が進む｣＝｢復旧｣⇒｢もとの状態にすること｣、｢復興｣(衰えた物事を再び盛んにすること)と混同しないこと。

(10)｢本を(タバ)ねる｣＝｢束(ねる)｣⇒平易だからこそ、勘違いしないこと。

尚、｢画数やバランスの乱れがあった場合は不正解｣(本校ＨＰ)なので，一画一画の｢トメ･ハネ･ハライ｣を丁寧に記すこと。  

＜時間配分目安：全問で２分強＞