2012年度 首都圏主要私大の入試結果から(2012.4)
2012年度 首都圏主要私大の入試結果から(2012.4)
−明治大が3年連続志願者数トップ、中央大は志願者の約半数がセンター利用−
志願者数だけでなく、センター依存率にも注意
2012 年度私大入試の志願者数は、明治大が113320 人でトップ、これで3 年連続1 位となった。この2 年間は2 位の早大とは、10 年が185 人、11 年が252 人という僅差だったが、12 年は早大が108527 人で、4793 人の差がついた。これからしばらくは、明治大のトップが続くだろう。ただ毎年同じことを言うので恐縮だが、両者の入試システムは大きく異なっている。明治大は全学部統一入試やセンター利用方式を多く導入しており、単純に数だけで比べることはできないところもある。
主要私大の志願者数はランク層別にグラフで示しているが、今年はセンター依存率のデータも併せて算出した。センター依存率というのは、総志願者数に占めるセンター利用の志願者数の割合である。依存率と呼ぶ理由は、私大のセンター利用というのは、見かけの志願者数を増やすための救済策に過ぎず、実質的な志願実態を反映していないと考えるからである。
このセンター依存率は、その大学の入試の健全度をはかるひとつの指標になるもので、依存率が高いほど、入試の実質性が薄いと言えるだろう。以下では、志願者数とともに、この依存率も考慮に入れて、2012 年の私大入試を総括してみる。
慶大はセンター利用を廃止、中央大のセンター依存率はほぼ5割
まず、最上位の早慶上智グループから見ていくと、この上位3大学のうち、上智大と慶大はセンター利用を行っていない。上智大はこれまで一貫して行ってこなかったし、慶大は前年度まで実施していた法学部と薬学部の利用を2012年度から廃止した。法学部は共通一次がセンター試験に変わった初年度からの導入だが、これはやむを得ない事情によるもので(説明すると長くなるので省略する)、むしろ今までよく続けていたという印象が強い。薬学部は共立薬科大と統合した際の継続的な要素があり、こちらの廃止も意外ではない。しかし、各大学がセンター利用で志願者を増やそうとしているなかで、今回の決定は慶大のブランド力を改めて見せつけたとも言える。今年の慶大の志願者数減は、ちょうど前年のセンター利用志願者数分に相当しているが、慶大法はセンター利用の代わりに、AO入試を導入している。
いずれにせよ、センター利用に依存しない慶大・上智大は入試が健全で、自信を持って行っていると言えるだろう。
これに対して早大は、1990年代半ばくらいまでは、私大のセンター利用に否定的だったが、2000年前後から方針を変えて積極的に導入し始めた。これによって、早大は志願者数が10万人の大台を維持し続けてきた。今年のセンター依存率は12.2%なので、それほど高い割合ではないが、10年前は5.4%だったから倍以上にはなっている。
次にMARCHクラスを見てみよう。志願者数の増減を見ると、プラスは青山学院大2001人増と立教大1615人増の2大学、マイナスは中央大が1215人減、明治大が585人減、法政大が7690人減で、法政大の落ち込みが大きい。ただし、これくらいのマイナスになると来年度の反動は確実だろう。青山学院大は渋谷キャンパスへの移転が震災の影響で1年延びて、来年からいよいよ新しいスタートになる。さらなる志願者数アップが予想される。なお、理工学部と社会情報学部は相模原キャンパスに残る。
MARCHのセンター依存率を見ると、中央大がほぼ50%に近くて断然多い。中央大は08年には依存率が50.9%と半分を超え、以後40%台の後半で推移している。この数字はどう考えても健常とは言えず、実際の入試は公表されている志願者数のほぼ半分で行われていると考えていい。これは大学の難易にも当然反映されているはずである。立教大が今年初めて40%台を記録したが、こちらはむしろ一過性と考えていいだろう。中央大を除くこのクラスは、例年30%前後~35%前後で推移している。入学難易度で言えば、立教が一番高いが、今年は立教合格・明治不合格という結果が結構聞かれる。やはり志願者数トップという背景が作用してきているのだろう。
中堅私大では、専修大の1679人増以外はマイナスだが、なかでも日大の8309人減が目立つ。ただし、これも無理に原因を探りだしてこじつけてみても、来年は反動で志願者数増に転じるのは間違いないから、かえってつじつまが合わなくなる。10万人レベルの入試になると、この程度は想定される範囲の増減である。このクラスのセンター依存率は例年、30%台の後半で各大学がそろっている。
情報提供:安田教育研究所