藤田医科大学 化学
入試対策と勉強法
特徴と時間配分
出題範囲(分野)
最新3年間の出題傾向として大問5題の内訳は、理論3題、有機2題で無機は独立の大問がなく、理論、有機の大問の中に融合されています。理論、その次に有機重視といえます。理論は、平衡₍弱酸の電離、緩衝液、圧平衡定数、溶解度₎、電気分解、電池、熱化学方程式、気体の法則、コロイドなどの溶液が目立ちますが、本学の受験生としては、苦手分野を作ることなく全範囲をカバーしましょう。有機は光学異性体や幾何異性体を含む定番の構造決定に加え、グルコースやアミノ酸・タンパク質、油脂などの天然高分子、ベンゼンを中心とした芳香族の相関図、不純物を除去するための芳香族の系統分析など、得意不得意で差がつく内容かもしれません。無機はアルミニウムや銅などメジャーな錯イオンのイオン式、化学反応式は書けるようにしておきましょう。
出題量と時間配分
理科の試験時間は、2科目で120分です。大問5題で小問は合計30~35問です。ペア科目にもよりますが、化学に平均60分と考えると、時間的にはかなり忙しいでしょう。難易度は基本から標準レベルが大半ですが、2010年代後半、大問が6または7題だった頃に比べると典型題が少ないです。本学は英語・数学が記述式問題の採点も甘くなく手ごわいです。その点理科は自己採点が50%を切る受験生もいれば80%と体感している受験生もいます。時間配分と標絵の対応力が合格のカギとなるでしょう。易しいときは80%、難しいときは60%を目標としましょう。
出題形式と解答形式
理科は全問記述式で、求められた結果だけ記述する形です。しかし出題形式としては多彩で、組合せ選択形式、数値を用いた計算問題、文字式の計算、異性体の個数、官能基や化合物の名前や色を穴埋め形式で問うものに加えて、グラフの描図問題があるのが特徴といえます。また生物のような論述問題(ただし1行程度のもの)もあり、ベンゼン環も含むやや複雑な構造式を書かされる場合もあります。糖やアミノ酸の構造式も書けるようにしておきましょう。
攻略のポイント
第1段階:まずは教科書レベルの定着が基本かつ重要
言うまでもないことですが、教科書の内容の定着が基本かつ重要です。医学部受験生たるもの、教科書は初めから最後まで、すみからすみまで熟読してすべての例題や問を解くことは当然のことと考えましょう。「入試問題の出典」は原則教科書なのですから。教科書にある公式や法則などは単位を含めてスラスラと出てくることが必要です。既卒生は手元に無い場合も考えられますが、入試の出題の基本枠・原点の確認のために必ず教科書は入手しましょう。さらに、図表や口絵、写真に至るまで目を通せば、力のある受験生も思わぬ発見や収穫があるでしょう。教科書の例題を見た瞬間、解法が浮かび、すらすらと解けるのがこの基準です。また、ダブルチェックの意味で、教科書傍用の問題集として定番の『セミナー化学基礎・化学(いわゆるセミナー化学)』(第一学習社)または『エクセル化学・総合版』(実教出版)の基本例題・基本問題を演習しストレス無く解ける基準を固めましょう。(ここで言う教科書とは「化学基礎」「化学」の両方のこと)
第2段階:次は入試物理の「標準」レベルの問題集を一または二冊マスターすること
『セミナー化学』(第一学習社)または『エクセル化学・総合版』(実教出版)の発展例題・発展問題がこのレベルに相当します。最低でも一冊を2周、できれば受験期も含めて3周以上して、大問の中盤くらいまでは、すらすら解けることを目指しましょう。
第3段階:次は何と言っても過去演習
「習うより慣れよ」です。本学が受験生に求めているものを研究しましょう。満点を取る必要はありません。また、全問解く時間もありません。6割以上、8割前後を想定目標にして、今の自分自身との距離感を把握しましょう。繰り返しになりますが、本学の2科目で120分という制限時間は私立医大としては標準的ですが、問題をすべて解く時間はないと考えなければなりません。だからこそ本学の過去問は可能な限り入手して時間演習で鍛えることが必要となります。医学部受験生は併願校も少なくないはずなので、他校の過去問から一部の問題をカットして時間演習に用いてもよいでしょう。また、旧センター試験は過去問も豊富で対策問題集も中古でよければいくらでもあります。これらの活用も一案です。過去問演習によって、一部の面倒な問題をスキップしても時間内に合格想定ラインを確保できる感覚を磨くことが、医学部合格の王道といえるでしょう。
推奨テキスト
(1)『教科書』(各出版社)
第1段階用です
教科書は、なければ合格できないというものでもありませんが、これさえマスターすれば合格というものでもありません。しかし、教科書が入試の出典の原点であることは強調し過ぎということもありません。各種公式・法則の導出やさまざまなカラーの図式・写真などだけでも相当の価値があるでしょう。
(2)『セミナー化学基礎・化学(セミナー化学)』(第一学習社)
(3)『エクセル化学・総合版(エクセル化学)』(実教出版)
第1段階用です
セミナー化学、エクセル化学は、定番の教科書傍用の問題集です。教科書の例題とともにこの基本例題、基本問題をマスターするのが第1の段階です。セミナー化学はとても良い問題集ですが市販されていないのが難点です。入手が困難ならエクセル化学で十分です。重問も大定番の市販問題集です。セミナーやエクセルの発展例題、発展問題が大丈夫なら、重問にトライしましょう。少しずつ入試問題も更新されていて、しっかりとした内容です。
(4)『化学(化学基礎・化学)基礎問題精講(基礎精講)』(旺文社)
(5)『化学重要問題集−化学基礎・化学(重問)』(数研出版)
(6)『化学の新標準演習 改訂版』(三省堂)
(7)『鎌田の理論化学の講義(大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
(8)『鎌田の無機化学の講義(大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
(9)『鎌田の有機科学の講義(大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
第2段階用です
『基礎精講』、『重問』は長年受験生の愛用問題集として風雪に耐えた定番の良問題集です。ボリュームがかなり違うので、どちらにするか手に取って選びましょう。『重問』はA、Bの問題ランクがありますが、本学の場合Aだけで十分です。『化学の新標準演習 改訂版』も優れた問題集です。書店で気に入ればこちらでもよいでしょう。また、理論、無機、有機の大学受験『Doシリーズ』三部作も必須といえます。仕組みや受験で出やすいポイントが整理されているので、教科書を読んで生じる、“なぜそうなのか”や“どこを覚えるのか”という疑問が解決できます。
<番外編>
(1)『化学図録』(数研出版)
無機化学のさまざまな「色」の暗記には誰しもが苦労します。また、化学は本来なら実験によって学ぶべきものですが、受験科学に登場する有名実験といえども実際に経験した者は少ないでしょう。追体験的な意味でビジュアル的要素の本書は必須です。
(2)『化学の新研究 改訂版』(三省堂)
これは文字通り「大学入試化学のバイブル」と言えます。本学突破のためには必ずしも必要とはいえませんが、医学部受験生として辞書代わりに1冊買っておいても後悔はしないでしょう。
(3)『インターネット上のサイトの語呂合わせ』
下ネタも多いので、特にどこのサイトがおすすめというわけではありませんが、探せば語呂合わせも相当あります。化学は数学や物理に比べて暗記分野が多いです。はっきり言って覚えたもの勝ちです。逆に暗記を避けていると医学部合格は遠いといえます。受験もまた情報戦です。活用しない手はありません。
テキストは相性があります。できれば書店で手にとって選びましょう。
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