人が嘘をついていることが匂いでわかってしまう主人公。仲良くなった珠紀に合わせようと嘘をついてしまったことで珠紀から友達にはなれないと言われてしまう。

問１　可愛いものが好きな小学六年生の主人公にとって、その店で売られている物は「宝石のごとく輝き、気持ちを昂らせ」るほど可愛いものばかりで、強く主人公を魅了した。そのことを「甘い魔法がかけられた」ようだと表現したのである。

問２　直前の場面で、主人公はうさぎがかたどられたヘアピンを二つ買っている。学校で飼っているウサギに似ており、一つは珠紀にあげるつもりなのである。そこに珠紀からおやつでも食べて一休みしようという提案があったので、ヘアピンを渡すのによい機会だと考えて意気込んでいるのであろう。

問３　ヘアピンのこともそうだが、少し後で書かれているように、主人公が考える「仲良し」とは、香りつき消しゴムを交換するなど、目に見えてわかりやすく近い距離でいることのようである。その一つとして、互いの食べている物を交換してちょっとずつ食べようとしたのだが、思いがけず珠紀から断られてしまい、がっかりして気落ちしているのが傍線部③の場面なのである。

問４　後半で明らかにされているが、この時の主人公の答えは今話題にしている漫画をちゃんと読んでいないことを示すものだった。そのことに珠紀が気づいて傍線部④のような表情になったわけである。そして次の発言で噓をついてわなを仕掛け、主人公を試すことへとつながるのである。

問５「珠紀の目に、いつもと違う光が点っている・挑戦的とも思える眼差し・何かがおかしい」などと主人公は感じ取っているのだが、珠紀には「やましい感情がなかった」ので、匂いではっきりと気づくことができなかった。そして主人公は、珠紀と仲良くなりたいがために不安を感じながらも、話を合わせて嘘をつくことを決めたのである。

問６　嘘をついた瞬間、自分から発せられる悪臭に気づき、狼狽している。人が嘘をついた時の匂いは知っていたが、自分の匂いを嗅ぐのは初めてだったようである。ついた嘘は取り消すことはできないし、ぎこちない関係になってしまっている仁美と香奈恵に見せつけてやりたいという自分の不純な気持ちにも気づいてしまい、さらに困惑している。

問７　オレンジ色の明るい感じに、珠紀に対する主人公の感情が表れていると考えられる。時には嘘をついてまで相手に合わせてベタベタとくっつき、物を交換するなど目に見えてわかりやすい仲の良さが「真の友情」だと思っていた主人公に対して、互いに本当の気持ちで向き合い、違っている部分もそのまま含めて付き合うのが友達だと珠紀は考えている。去っていく珠紀の後ろ姿が、安い友情観を持っている自分とは違って見えたのである。

問８　主人公は、互いの意見や好きなものに共感し、時には嘘をついてでも相手に合わせること、プレゼント交換など目に見える形で周囲からもわかるように仲良くすることが友達だと思っている。珠紀は、無理して相手に合わせるのではなく、本当の気持ちを伝え合い、それぞれの違いを認めて尊重できる関係でいたいと思っている。

問９　閉じ込められているわけではないのに、「それでも」感じてしまう息苦しさとは何か。嘘をついてしまったことで珠紀が自分から離れていってしまった悲しさ。珠紀から指摘されて気づいた、嘘をついてまで仲よくしようとした自分のいやらしさ。同じ価値観を共有し確認し合うことが真の友情だと思っていた自分の友達観の薄っぺらさ。そうした自分の愚かさに気づいたことが、この息苦しさの原因となっているのであろう。

①　冬至　　②　式典　　③　在宅　　④　所属　　⑤　定期券

⑥　給付　　⑦　加担　　⑧　局面　⑨　政党　　⑩　洗練

⑪　支障　　⑫　敵対 　　⑬　備(える)　　⑭　忘(れる)　　⑮　導(く)

⑯　げんいん　　⑰　ふせき　　⑱　いと　　⑲　かざあな　　⑳　は(ぶく)