｢漢字の読み書き｣(｢書き取り｣８問と｢読み｣２問)
示されている例文の｢傍線部①～⑧のカタカナを漢字で、⑨･⑩の漢字をひらがな｣で答える。
昨年度と比較して、本年度は難易度が一気に下がった。本校志望者であれば｢全問正解｣といきたい。注意すべきものだけを確認する。
②｢新しい試みをするのがゼンエイ芸術だ｣＝｢前衛｣⇒馴染みが薄いか？ ｢既成の芸術概念や形式を否定し、革新的な表現をめざす芸術の総称｣で｢アバンギャルド｣とも称される。知らなかった諸君は覚えておきたい。
③｢フカをかけたトレーニング｣＝｢負荷｣⇒｢任務を負うこと｣、｢文脈｣を読み取りたい。
⑥｢トウセイのとれた隊列｣＝｢統制｣⇒ここはクリアできるはず⇒｢多くの物事を一つにまとめておさめる｣ことだ｡
⑦｢宝石を五つのトウキュウに分けて価格を調整｣＝｢等級｣⇒これは知っていて当然。
⑩｢あなたはその危うさに気づかない｣＝｢あや(うさ)｣⇒意外と抜け落ちていないか？ 要注意だ。
曖昧(あいまい)なものがあった諸君は、未だ本校の求める｢語彙レベル｣には達していないと心得て、精進せよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で２分＞

リハビリテーションは人生そのもの──リハビリ専門病院を舞台にして、現役医師が描くチーム医療とは何かを問う病院ストーリー。本文では、患者である中学３年の｢野呂悠馬(のろゆうま)｣の担当となった主治医の｢小塚太一(こづかたいち)｣を中心に、中堅看護師の｢南玲子(みなみれいこ)｣、作業療法士(手のリハビリを受け持つ)の｢深沢朱理(ふかざわあかり)｣と新しくやってきた経験豊富な｢大迫(おおさこ)まひろ｣というチームの間でのできごとを描いている。やや難解な言葉はあるが、｢注｣を活用して内容を理解したい。小問自体はオーソドックスなものがほとんどで難易度も標準的なので手際よく解き進めていきたい大問だ。以下、いくつかを検証してみたい。

[問三]　｢空所補充の語句記述｣(｢ひらがな３字｣指定)。｢総合的知識問題｣。｢慣用句｣だ。本文中の空所  Ａ  に入る｢ひらがな三字の言葉｣を答える。空所前後を確認する。｢一向に戻ってこない玲子に  Ａ  を切らして……｣。ここでは、｢文脈｣を読み取ることもなく即決できなくてはいけない。｢〇○○を切らして｣といえば｢しびれを切らして｣に決まっている。｢答え｣は｢しびれ｣だ。｢しびれを切らす｣＝｢あまりに長く待たされて、我慢できなくなる。待ちきれなくなる｣ことだ。こうした｢知識力｣が本校では不可欠だ。常日頃、｢語彙力｣を磨く努力を続けることが肝要。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問四]　｢理由説明選択肢｣(４択)。傍線部③｢そうするにはまひろの言葉は玲子にとって衝撃的過ぎた｣について、｢その理由｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここは｢理由説明｣なので、各選択肢の｢文末｣→｢だから｣→｢衝撃的過ぎた｣と、｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣していきたい。各選択肢の｢文末｣を確認する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)｡(ア)｢絶望的だと思ったから｣､(イ)｢あきれてしまったから｣､(ウ)｢ついていけなかったから｣､(エ)｢考えてもみなかったことだから｣｡さあ、どうだろうか？ 判別できるか？ ｢衝撃的｣＝｢心を強く動かされるさま｣だということを知らない諸君はいないはず。しかも、｢衝撃的過ぎた｣なのだから、｢考えてもみなかったことだから｣以外は｢消去｣できるはずだ。無論、傍線部に｢そうする｣と｢指示語｣があるので確認する。直前から、｢そうする｣＝｢早く戻る｣だと分かる。｢早く戻るには衝撃的過ぎた｣ことの｢理由｣としてふさわしいことも確認できる。念のために、｢同一場面｣を確認する。他の部分の説明も特に誤ってはいない(｢小説｣｢随筆｣は｢同一場面の直前直後に手がかり･ヒントあり｣が鉄則)。したがって、｢答え｣は(エ)でＯＫだ。見事に｢一発消去｣だ。｢原意消去｣、是非ともマスターして活用したい。

＜時間配分目安：１分強＞

[問七]　｢理由説明記述｣(｢30～40字以内｣指定)。傍線部⑥｢バツが悪そうに｣について、｢悠馬がこのようになった理由｣を｢三十字以上四十字以内｣で説明する。先ずは、｢バツが悪そうに｣とはどういう状態なのかをチェックしたい。｢バツが悪い｣＝｢きまりが悪い。ぐあいが悪い｣という意味だとは知っていなくてはいけない。次に、｢理由｣につながる｢きっかけ｣と｢結果｣を確認する。｢きっかけ｣は｢玲子｣の｢(リハビリを)練習していたの？｣という問いかけだ。｢結果｣として｢悠馬｣はすぐに｢ごめんなさい｣と謝っている。つまり、｢悠馬｣は、謝らなくてはいけないような練習をしているところを｢玲子｣に見られたから、｢バツが悪く｣なったことになる。これが｢直接的理由｣だ。さらに、｢補足説明｣のために｢状況｣を｢同一場面｣から読み取っていきたい。｢悠馬｣は｢玲子｣に指導された｢利き手交換｣の練習ではなく、｢右手を使う練習｣をしていたという｢状況｣が分かる。要は指導に逆らっていたわけだ。こうした内容を整理して｢指定字数｣に応じてまとめていけばいい。たとえば、｢玲子に指導された利き手交換ではなく右手を使う練習をしているところを見られたから｡｣(40字)といった｢答え｣だ。｢説明記述｣では、｢最重要ポイント｣(｢理由説明｣では｢直接的理由｣)を必ず｢文末｣にすることが求められる。

＜時間配分目安：２分半＞

[問八]　｢状況説明選択肢｣(４択)。傍線部⑦｢今まで信じてきたものがなくなってしまうような心細さ｣について、｢このときの玲子についての説明｣を答える。無論、｢原意消去｣から｡ここは｢状況説明｣なので、｢心細さ｣の｢原意｣と結びつかない｢状況｣を｢消去｣したい。各選択肢の｢文末｣と照合する｡(ア)｢わからなくなっている｣､(イ)｢思いこんでいる｣､(ウ)｢気づきはじめている｣､(エ)｢不安を抱いている｣｡｢心細さ｣とは｢不安や心配のあるさま、頼りない様子｣だと誰もが知っている。であれば、｢不安を抱いている｣以外は即｢消去｣できなくてはいけない。念のために｢同一場面｣を確認し、他の部分の説明も特に誤ってはいないと分かる。よって、｢答え｣は(エ)になる。再びの美しい｢一発消去｣。本問の各選択肢説明は｢80字ほど｣もある。全てを読み解いて照合していたら時間はいくらあっても足りないし、混乱するばかりだ。｢原意消去｣は徹底的に練習して、必須ツールにすることが本校合格へのパスポートだと心得よ。

＜時間配分目安：１分強＞

※尚、[問九]は｢本文内容合致選択肢｣の問題だ。｢論説文｣であれば｢論旨合致｣なので、｢序論部分｣および｢結論部分｣との照合で判別可能だ｡しかし、本問のような｢小説｣や｢説明文｣では｢本文全体｣と照合して判別する必要があるので、とても時間がかかる。しかも、本問は各選択肢の説明が｢80字ほど｣もある厄介者だ。｢戦術｣としては｢あとまわし｣にする方がいい。無論、｢捨て問｣でも構わない。

霊長類学の重鎮と宗教学･キリスト教学の研究者による、｢人類の誕生･発展と宗教との関わり｣を巨視的なスケールで語る対談の書籍化。文明以前の人類にも宗教的観念があったか、ゴリラやチンパンジーにも宗教に類するような思考は存在するのか……。最新の研究成果を踏まえつつ議論を戦わせている。本文では、ゴリラやチンパンジーと人間を比較しつつ、森を出た人間が想像力や共感力を増し、やがて言葉を持つようになったこと、その言葉がいま信頼を失っていることなどを論じている。専門用語が結構あるが、｢注｣を活用して内容を理解したい。｢連なる空所補充抜き出し｣や｢乱文整序｣、「要因説明選択肢」など、趣向を凝らした小問が並んでいる。何とか食らいついていきたい。いくつかを確認しよう。

[問一]　｢条件付き理由説明記述｣(｢70～80字以内｣指定)。傍線部①｢ゴリラもチンパンジーも、いったん集団を離れた個体は、その集団に二度と戻ることができません｣と②｢いったん集団を離れた仲間が再び集団に戻れるという特徴を身につけました｣について、｢なぜ『ゴリラやチンパンジー』と『人間』とではこのような違いが生じるのか｣を｢七十字以上八十字以内｣で説明する。｢条件｣は｢原因となる両者の特徴を対比する形で説明する｣こと。設問がやや分かりづらいので、整理したい。｢なぜ『ゴリラやチンパンジー』と『人間』とではこのような違いが生じるのか｣⇒｢このような違い｣＝｢ゴリラやチンパンジーは一度集団を離れると二度と戻ることができないが、人間は一度離れても再び集団に戻れるという違い｣だと理解できる。その｢理由｣を説明するわけだ。｢条件｣に｢原因となる両者の特徴｣とあるので、そのことを踏まえて｢同一意味段落｣を読み解いていく(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢手かがかり･根拠｣がある)。確認すると、傍線部①の３行後以降で｢両者の特徴｣が｢対比する形｣で説明されていることが分かるはずだ。いわく、｢ゴリラやチンパンジーにとって、集団の仲間であるという意識は、常に持続的に、視覚や聴覚でお互いの存在を認知し合ってことで生まれる｣が、｢人間は、ある程度会わなくても、仲間であるという認識を持てるようになった｣。こうした内容が｢理由｣だと判断できる。あとは、｢条件｣に即して｢過不足なく｣まとめていきたい。たとえば、｢ゴリラやチンパンジーの仲間意識は、持続的に視覚や聴覚でお互いの存在を認知し合うことが必要だが、人間はある程度会わなくても集団の仲間であるという認識を持てるから｡｣(80字)といった｢答え｣になる。尚、｢条件｣は｢手がかり･ヒント｣でもあると心得よ。

＜時間配分目安：３分強＞

[問二]　｢要因説明選択肢｣(４択)。傍線部③｢想像を共有することによって、人間は活動範囲を広げ、恐らく人間の社会的なつながりに新しい変化をもたらした｣について、｢このような変化をもたらして要因｣を答える。｢原意消去｣が最優先。本問は｢要因説明｣なので、｢社会的なつながりに新しい変化をもたらした｣｢要因｣としてふさわしくないものを｢消去｣することになる。各選択肢の｢文末｣と照合したい｡(ア)｢飢えに苦しむようになったこと｣､(イ)｢ばらばらに暮らすようになったこと｣､(ウ)｢仲間が持ち帰った食料を食べざるを得なくなったこと｣､(エ)｢お互いの結束を強めたこと｣｡｢社会的なつながり｣が｢変化｣したのだから、｢飢えに苦しむ｣と｢ばらばらに暮らす｣は｢消去｣できるはずだ。｢２択｣になった。それぞれの前半部分で判別する。(ウ)は｢人間が行動範囲を広げたため｣となっており、(エ)には｢人間がゴリラやチンパンジーと違った場所で暮らすようになり｣とある。傍線部は｢人間は活動範囲を広げ｣となっているので、当然ながら(エ)は｢消去｣で、｢答え｣は(ウ)になる。本問は｢２段階消去｣だったが、先ずは｢原意消去｣は不変だ。

＜時間配分目安：２分強＞

[問四]　｢乱文整序選択肢｣(４択/複数完全解答)。本文中の空所   Ｘ　は、示されている(ア)～(エ)の｢四つの文｣から構成されているが、｢正しい順に並べかえ｣て答える。｢乱文整序｣では先ず、｢乱文｣どうしで｢順序｣が特定できる組み合わせを探すことで｢選択肢｣を減らしておきたい。その際は無論、｢接続詞｣や｢指示語｣が重要な｢手がかり｣になる。本問の各｢乱文｣の冒頭には全て｢接続詞｣があるので、比較的特定しやすいはずだ。確認する。(ア)は｢つまり、離乳食を食べさせる必要がある……｣となっている⇒｢つまり｣は｢換言説明｣⇒(イ)の文末が｢……大人と同じものが基本的には食べられません｡｣⇒(イ)→(ア)が確定。また、(イ)の冒頭は｢しかし、今では、人間の子供は乳歯のまま離乳します｣⇒それに対して(エ)の最後に｢……もともと人間はその頃(＝六歳頃)まで授乳していた｣とある⇒(エ)→(イ)だと分かる。そして、残りの(ウ)は｢また、ゴリラもチンパンジーも離乳する頃には永久歯が生えており……｣となっている。空所   Ｘ　の｢直前｣･｢直後｣を確認すれば、(ウ)は空所の冒頭だと判別できる。よって、｢答え｣は｢(ウ)→(エ)→(イ)→(ア)｣になる。｢乱文整序｣では、｢乱文｣どうしの｢順序特定｣が最大のカギとなると心得よ。

＜時間配分目安：２分＞

[問八]　｢理由説明選択肢｣(４択)。傍線部⑧｢言葉というものはそもそもすごく安っぽいもので、だから、本当は信用できないコミュニケーションなのではないか｣について、｢これはなぜか｣を答える。当然ながら、｢原意消去｣から｡ここは｢理由説明｣なので、｢言葉は、本当は信用できないコミュニケーションなのではないか｣の｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣することになる。本問の各選択肢の説明はとても短文なので、全文で確認する。 (ア)｢言葉を正確に用いて誤解なく他人に物事を伝えられる人は少ないから｣､(イ)｢言葉を用いて物事を正確に伝えることはできても思いは伝えられないから｣､(ウ)｢言葉は物事の要素の一部を取り出して伝えるものに過ぎないから｣､(エ)｢言葉は情報量の多さという点で映像には及ばないから｣｡さあ、どうだろうか？ 判別できるだろうか？ 瞬時に｢答え｣は(ウ)だと特定したい。(ア)｢伝えられる人は少ない｣･(イ)｢思いは伝えられない｣･(エ)｢映像には及ばない｣、これらは｢安っぽいもので｣｢信用できないコミュニケーション｣の｢理由｣としては全く結びつかないと分かるはずだ。

＜時間配分目安：１分＞

※尚、[問三]は｢空所補充抜き出し｣の小問だが(全５問)、傍線部④の｢理由説明｣として示されている｢文｣の｢空所補充｣だ。本文で理由が説明されている｢意味段落｣はすぐに判明し、その中の｢語句｣を答えればいいので難なく解けるはず。尚、通常の｢抜き出し｣では｢抜き出し内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいくのが鉄則で、｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず｢抜き出し範囲｣の全てを確認することを忘れないこと｡