聖光学院中学校 入試対策
2023年度「聖光学院中学校の社会」
攻略のための学習方法
スライド式学習
「地理」「歴史」「公民」全単元と「時事問題」の「知識」を確実に定着させておくこと。「基本的事項」は当然だが、細部にわたる「知識」や「深い理解」も必要なので、テキストの「注」や「囲み説明」等のチェックも重要だ。
聖光では特に「地理」からの掘り下げた出題が多い。前述したような全分野での「知識定着」(「地形図」は念入りに)が欠かせない。だが、悲しいことに人は忘れるものだ。時が経てば経つ程忘れる。ここに落とし穴がある。
基本的に「暗記」が最重要となる「社会」では、各単元をいつ学習し、定着させたのか、その時期が問題となる。塾では通常、本格的な受験勉強が始まる5年生になってから、「地理」⇒「歴史」⇒「公民」と単元消化していき、6年生の夏休み前には終える。
その後は「復習」となるが、メインは圧倒的に定着すべき事項の多い「歴史」にならざるを得ない。そのまま、秋から冬となり「過去問演習」と続いていく。6年生で学習した「公民」はまだしも、「地理」はどうだろうか? 実質的に1年以上の空白が生じてしまう。それはまずい。聖光ではなおさらだ。
そこで、独自の「復習」が必要となる。塾での学習とはずらして(スライドさせて)、まだ時間的に若干の余裕がある5年生の冬休みやその後の春休みを利用して徹底的に「地理」の「復習」をしておくことがポイントだ。「重要事項チェック問題集」のようなものを活用するといい。
さらに、その後も定期的に「地理」の理解を深めるような学習を続けておくことで、ライバルに差をつけたい。
いもづる式学習
「暗記事項」はそれぞれ単独(要は「一問一答方式」)に定着させても無意味だ。バラバラに覚えているだけでは、自分が覚えた通りに問われなければ結びつかないし、関連問題にも答えられない。ましてや、聖光攻略に必須の「多角的思考」など絶対に無理だからだ。そこで重要となるのが「いもづる式学習法」だ。
「点」で覚えているものを「線」で結び、さらには「面」をも理解するには不可欠の学習。
1つの「暗記事項」を確認する際、それに関連すると思われる「事項」を次から次へと思いつく限り引き出していく。単元も無視する。
もし「言葉」としては覚えていても「内容」があやふやになっているものがあれば、すぐに確認しておく(ここでも「復習」できる)。また、それらは「線」で結びついているはずなので、どのように結びつくのかを確認していく。その上で、それらが結びつく背景(=「面」)も理解するようにする。
このようにして改めて暗記し定着させた「事項」はどのような問われ方をしても「線」で結びつけて答えられることになる。
さらに、単元もまたいでいるので、「単元融合問題」にも対応できるようになる。無論、「多角的思考」にも「いもづる式学習法」は力を発揮する。
手づくり式学習
特に、「歴史」単元の「復習」で必要となる。
塾での「歴史」の学習は普通、「政治史」を軸とした「通史」として「時代別」「時代順」になっている。しかし、聖光に限らず入試問題ではそうした単純なものはほとんどない。特定の切り口での「分野史」が多いし、必ずしも「時代別」「時代順」ではなく様々な時間軸で出題される。それらに対応するために必要なのが「手づくり年表」だ。
「政治史」「社会経済史」「外交史」「文化史」「人物史」等の「分野史」別の「年表」を作成しながら復習する。その際、「原始」~「現代」という長い時間軸にする。当然、「重要事項」だけしか記入できないが、それでいい。「関連事項」を頭に思い浮かべるようにすれば、「いもづる式学習」にもなる。
さらに、その「年表」には「世紀」と「日本の時代名」「中国の王朝名」を対応させて記入しておきたい。「世紀」と「時代」がすぐに結びつかないと答えられない問題が多いからだ。また、「地理」単元で、様々な「地形図」から「地図」や「断面図」を作成するのもいい。聖光でよく出題される「書き込み問題」の練習に最適だ。
「年表づくり」や「地図づくり」を楽しみながらやってみよう。
細部へのこだわり式学習
聖光で必ず出題されるのが、「リード文」「設問文」「資料」「図表」等の「要素」と自らの「知識」を多角的に結びつけないと解けない問題だ。
考えるに当たって最も重要なことは、それぞれの「要素」をいかに正確に読み取るかということだ。そこから「考えるヒント」を見つけ出す。そのためには「細部」にこだわって読み取ることが必要となる。当然、トレーニングが欠かせない。
過去問や練習問題等を用いて、各「要素」の細かな「意味」や「関連事項」等を全て材料として、そこから何が導き出せるのかを確認する訓練をしなくてはいけない。導き出せることについては、過去問や問題集の「解説」に示されているはずなので活用すること。
こうした「細部へのこだわり学習」をつづけることで、次第に様々な「要素」から着目すべき「手がかり」が自然と浮かび上がるようになる。後は自分の「知識」と結びつけて考えればいい。
意識継続式学習
常に何かを「意識」しながら学習することが重要。漠然と机に向っていても無駄なだけだ。その時々、何を目的としてどのような学習(たとえば、上記の「○○式学習」)をしているのか、具体的に「意識」し続けていることが大切。
そうして何かを「意識」することが継続できるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」しながら学習したい。聖光の入試本番では40分という制限時間の中で、様々な「要素」をクリアして答えなくてはいけない。
だからこそ、「設問」を正しく理解しているか? 「要素」は全て確認したか? 「他の設問」との関連は大丈夫か?「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」しながら学習する必要がある。
当然、「時間」も「意識」すること。入試では見直しの時間はないと思った方がいい。常にそれらの「意識」を継続しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2023年度「聖光学院中学校の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は「総合」(「公民」「時事」「考察問題」)。「時事ネタ」2問、そして、「公民」単元と「考察問題」から各1題という出題。小問は全4問(解答数4)。「選択肢」(「複数完全解答」あり)、「事項記述」(「空所補充」、「漢字指定」あり)、「説明記述」(1問。「20~40字以内」指定)。大問2は「歴史」(「考察問題」1問の混在あり)。「『日本人の人名』にまつわる歴史」についての「リード文」からの出題。小問は全9問(解答数13)。「選択肢」(「組み合わせ」、「整序」あり)、「空所補充の事項・人名記述」(漢字指定)、「説明記述」(1問。「字数指定」なし。「20字ほど」の解答欄)。大問3は「地理」。「里山」についての「リード文」からの出題。小問は全7問(解答数10)。「選択肢」(「不適切」、「組み合わせ」あり)、「語句・短文記述」。大問4は「考察問題」。「『交通事故』に関する4つの統計資料」からの出題。小問は全4問(解答数4)。「選択肢」(「不適切」、「複数完全解答」あり)、「説明記述」(2問。ともに「字数指定」なし。各「60字ほど」の解答欄)。時間配分としては、「説明記述」で10分ほど、それ以外は1問を1分弱のハイペース。
【大問1】「総合」(「公民」「時事」「考察問題」)
- 難度:やや難
- 時間配分:6分
「時事ネタ」2問、そして、「公民」単元の「政治」分野の問題、「考察問題」という出題で、本校が求めている能力が垣間見られる大問だ。2問を確認してみる。
[問1] 「アルファベット略語の選択肢設問」(5択)。「時事」単元。「脱炭素社会実現に向けた社会や産業構造の変革」を指す「言葉」を答える。典型的な「時事ネタ」だ。すぐに「答え」は選択肢(イ)の「GX」だと特定したい。「GX」=「グリーントランスフォーメーション」。2022年7月、政府は担当大臣の新規設置人事を発令している。尚、他の各選択派も確認しておく。(ア)「DX」=「デジタルトランスフォーメーション」(デジタル技術で社会や生活をより良く変革すること)。(ウ)「CSR」=「企業の社会的責任」。(エ)「ESG」=「Environment(環境)」・「Social(社会)」・「Governance(企業統治)」を考慮した投資活動や経営・事業活動。(オ)「LCA」=「ライフサイクルアセスメント」(製品やサービスに対する、環境影響評価の手法のこと)。未定着の事項があった諸君は復習しておきたい。「時事ネタ」では、過去数年前までさかのぼって定着させることが求められる。それも相当に「ディープな事項」までだ。
<時間配分目安:1分弱>
[問4] 「理由説明の考察論述設問」(「20~40字以内」指定)。「考察問題」。「沖縄での辺野古新基地建設の議論の際、『反対』派と『容認』派と表現されることがある」が、「なぜ『賛成』派ではなく、『容認』派と表現するのか」を「自分なりに考えて」「20字以上40字以内」で説明する。ほとんど「国語」の問題だ。「賛成」と「容認」との「原意」の違いを捉(とら)えて「考察」する。「賛成」=「人の意見や行動をよいと認めて、それに同意すること」(対義語は「反対」)だが、「容認」とは「要求や提案などを認め、受け容れること」(対義語は「拒否」)。前者は「よし、それでいこう!」、後者は「まぁ、それでいいじゃん?」といった感じ。「積極的」か「消極的」かということになる。そうした違いを踏まえて、まとめていけばいい。たとえば、「積極的に賛成するわけではなく、諸事情から仕方なく受け容れようという考え方だから。」(40字)といった「答え」になる。意表を突く問題ではあるが、臨機応変に対処することが求められる。
<時間配分目安:2分強>
【大問2】「歴史」(「考察問題」1問の混在あり)
- 難度:標準
- 時間配分:15分
- ★必答問題
「さまざまな視点からの『日本人の人名』にまつわる歴史」についての「リード文」からの出題。「古墳時代」から「現代」までの多種多様な「歴史的事項」が問われている(「考察問題」1問の混在あり)。「リード文」中には「人名」についての未知のことがらがいくつもあるはずだが、ほとんどの小問自体は「基本的事項」なので、一気に得点を重ねたい大問だ。いくつかの設問を検討する。
[問3] 「下線部に関連する時期整序選択肢設問」(4択)。「リード文」中の下線部①の「中国などアジアの国々」との「貿易」に関連して示されている「4つの出来事」(ア)~(エ)について、「時期の早い順に並べかえた」場合、「3番目になるもの」を答える。それぞれの「出来事」の「キーワード」「要点」から「時期」を特定していく。(ア)「朱印船貿易」⇒これは「江戸時代初期」だと知っていて当然。(イ)「将軍が朝貢の形をとって中国と貿易」「銅銭や生糸を輸入」⇒「朝貢貿易」=「室町幕府3代将軍足利義満」による「勘合貿易」だと特定できるはず=「室町時代前半」。(ウ)「鎖国政策」「対馬藩を介して朝鮮から木綿を輸入」=無論、「江戸時代前半から後半」で決定。(エ)「大輪田泊」「中国から宋銭や生糸を輸入」⇒「平清盛」による「日宋貿易」に決まっている=「平安時代末期」。ゆえに、「順番」は(エ)→(イ)→(ア)→(ウ)。よって、「答え」は(ア)だ。尚、「年代整序」は「うろ覚えの年代」で整序するのではなく、「流れ」や「キーワード」を確認し、特定していくことが重要だ。
<時間配分目安:1分>
[問4] 「下線部についての選択肢設問」(4択)。「リード文」中の下線部②の「鎌倉幕府」の説明で「正しいもの」を答える。各選択肢の「キーワード」や「要点」で正誤判別していく。(ア)「将軍からの奉公」「御家人の御恩」⇒真逆だと即座に分かる=不適切。(イ)「主な政務は管領によっておこなわれた」⇒「管領」は「室町幕府」の役職、「鎌倉幕府」では「執権」=不適切。(ウ)「一揆防止や喧嘩両成敗」「武家法」⇒確かに最初の「武家法」である「御成敗式目(貞永式目)」が定められたが、その主な内容は「領地」に関するものだと知っているはず=不適切⇒ちなみに、「一揆防止」は「刀狩令」(安土桃山時代)、「喧嘩両成敗」は「分国法」の内容(戦国時代)。(エ)「困窮した御家人救済」「徳政令」⇒「永仁の徳政令」などは常識=適切。したがって、「答え」は(エ)だ。冷静に判別すれば、問題はないはず。
<時間配分目安:1分弱>
[問7] 「下線部についての正誤判別組み合わせ選択肢設問」(4択)。「リード文」中の下線部⑤「死後の諡号(しごう=おくりな)・追号」について、「『空海』の『弘法大師』、『最澄』の『伝教大使』も諡(おくりな)」だが、「この2人についての説明」で「正しいものの組み合わせ」を答える。各説明を確認して、「正誤判別」をする。(a)「極楽浄土への往生を説いた」⇒これは「浄土教」の教え⇒「空海」の「真言宗」、「最澄」の「天台宗」はともに「平安時代初期」に伝わった「密教」=不適切。(b)「空海は高野山に金剛峯寺」⇒必須定着事項=適切⇒ちなみに、「最澄」は「比叡山に延暦寺」。(c)「最澄は平安京内に教王護国寺」⇒前述のとおり=不適切⇒「教王護国寺」(東寺)は「空海」だ。(d)「2人がひらいた宗派は密教」⇒(a)で説明したとおり=適切。よって、「答え」は「b・d」の「組み合わせ」である選択肢(エ)になる。尚、「未知の事項」であっても「自らの知識」を結びつけて思考すれば、必ず道は開かれると心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問9] 「下線部に関連しての選択肢設問」(4択)。「リード文」中の下線部⑦「韓国」に関連して、「近現代の日韓・日朝関係」についての説明で「正しいもの」を答える。各選択肢の「キーワード」「要点」で正誤判別する。(ア)「江華島事件」「日本は朝鮮半島への進出を断念」⇒「江華島事件」(1875年)をきっかけに日本は朝鮮に開国を迫り、翌年、不平等な「日朝修好条規」を結ばせたという流れは定着しているはず=不適切。(イ)「日清戦争後に韓国併合」⇒「韓国併合」は「日露戦争後」の「1910年」のことは周知=不適切。(ウ)「太平洋戦争後、韓国は社会主義国として独立」⇒南北に分断され南の「韓国」は「資本主義国」、北の「北朝鮮」が「社会主義国」として独立したのは常識=不適切。(エ)「日本と韓国は日韓基本条約で国交回復」⇒「1965年」のことだと知っているはず=適切⇒「サンフランシスコ講和条約」のときには「韓国」は招かれていなかったことを知っておきたい。したがって、「答え」は(エ)だ。細部にこだわって落ち着いて判別することが肝要だ。
<時間配分目安:1分強>
※尚、[問3]の「考察説明記述設問」と[問6]の「表の読み取り選択肢設問」は丁寧に読み取っていけば決して難問ではないのだが、とても時間を要する。よって、「戦術的」には「あとまわし」にすること。無論、「捨て問」でも構わない。
【大問3】「地理」(「語句・短文記述」あり)
- 難度:やや難
- 時間配分:10分
「山林・人里と隣り合っており、樹林や農地などが含まれた場所のことである『里山』」についての「リード文」からの出題。本校の真骨頂発揮といった小問が並んでいる。「地形図」や「都道府県別分布図」、「統計資料」等の読み取りなどを通じての、「地理」単元の各分野からの出題だ。厄介なものもあるが、冷静に解き進めていきたい大問。2問だけを検証しよう。
[問3] 「下線部についての具体例不適切選択肢設問」(4択)。「リード文」中の下線部②「『里山』における樹林や農地は、人里における人間生活とのかかわり合いをもつ」について、「この具体的なことがら」として「ふさわしくないもの」を答える。それぞれの「具体例」をチェックしていく。(ア)「『里山』の樹林は伐採され、人里におけるエネルギー資源の一部をまかなっている」⇒「薪(たきぎ・まき)」としての活用は誰もが知っている=適切。(イ)「『里山』の樹林は降雨時に、土砂が流出するのを防ぐ」⇒「森林」の重要な機能のひとつとして周知=適切。(ウ)「『里山』の樹林は降雨時に、一時的な大量流出による洪水を防ぐ」⇒これもまた「森林」の重要な機能のひとつだと知っているはず=適切。(エ)「『里山』の樹林は主に常緑樹で、それを使って肥料の一部をまかなっている」⇒いわゆる「堆肥」のことで正しそうだが、用いるのは「常緑樹」ではなく「落葉樹」だと判別できなくてはいけない=不適切。したがって、「答え」は(エ)になる。細部を見逃すと判別不能になってしまうので注意すること。
<時間配分目安:1分強>
[問7] 「説明文中の空所補充語句記述設問」(全3問。「漢字2字指定」あり)。「リード文」に関連して、「近年、山林にいるサルやイノシシ、シカなどの野生動物が人里に立ち入る報告が多くなっており、その1つの要因として『里山』における変化」があるが、示されている説明文中の空所 1 ~ 3 に「あてはまる言葉や語句」を「リード文」や「図1」(山林と『里山』、人里との位置関係を表す模式図)を参考にしながら答える。ただし、 2 は「『図1』にある漢字2字の語句」が入る。説明文は「近年、『里山』が 1 ため、山林と同じ自然環境に近づいたり、経済的な発展により 2 の範囲が『里山』へ拡大したりという変化によって、野生動物の行動範囲が結果として 3 ことが、1つの要因とされている。」となっている。空所前後の「文脈」と「リード文」を正確に照合させて、「言葉や語句」を特定していく。 1 ⇒「リード文」に「『里山』の自然環境は、人間の手によって管理されることで保持され続けて」とある⇒それが「山林と同じ自然環境に近づいている」ということは、「里山」ではなくなっている⇒つまり、「人間の手によって管理されることがない」わけだ。 2 の範囲が『里山』へ拡大⇒「図1」にある「語句」であれば、当然、「人里」が「拡大している」ことになる。 3 ⇒「野生動物が人里に立ち入る」のは、「行動範囲」が「せまくなった」ことの「結果」だと判断できる。改めて整理すると、 1 =「人間の手によって管理されなくなった」、 2 =「人里」、そして、 3 =「せまくなった」、以上が「答え」だと判断できる。「空所補充」は「国語」同様に前後の「文脈」を正確に読み取ることがカギとなる。
<時間配分目安:全問で3分半>
※尚、[問4]は2つの「地形図」からの設問。「地形図読み取り」は本校に限らず「地理単元」での定番なので、「地図記号」「等高線」「方位」「縮尺」等の「地形図」に関連する基礎的事項を完全に定着させておくことが肝要だ。
【大問4】「考察問題」(「説明記述」2問あり)
- 難度:標準
- 時間配分:9分
ひとつの大問の全てが「考察問題」という、本校としては前代未聞の構成だ。「日本全国の交通事故発生件数と死者数」、そして、「死者数の多かった都道府県」という2つの「統計資料」に関連して、さらなる「統計資料」および「図版」を踏まえての設問が並んでいる。「統計資料」そのものを正確に読み取った上での「考察」が求められている。ただ、それほどの難問ではないので、確実に解いていきたい。1問だけ考察する。
[問3] 「図表に関する理由説明の条件付き考察論述設問」(「2行以内」指定。「60字ほど」の解答欄)。「図表2を見ると、2012~18年にかけて、愛知県の交通事故死者数が全国で最も多かったことがわかり、愛知県が特に運転マナーの悪い都道府県なのかと思ってしまうかも知れない」が、「そうした想像が必ずしも正しくないこと」を「2行以内」で説明する。「条件」は「図表3と図表4を参照して説明する」こと。3つの「図表」を読み取ることが求められていることになる。無論、それらの「図表」の確認からだ。「図表2」は「2012~21年の年ごとの都道府県別交通事故死者数ワースト5」、「図表3」が「2018年の都道府県別車両保有数」、「図表4」は「2018年の車両10万台あたりの都道府県別交通事故死者数」となっている。設問の観点で資料を読み解いていきたい。「図表2」から、たとえば「2018年」の「交通事故死者数」で、「1位」の「愛知県」(189人)と「2位」の「千葉県」(186人)はほぼ同数だと分かる。また、「図表4」からは、「車両10万台あたりの死者数」は、「14位」の「千葉県」が「40位」の「愛知県」の約1.4倍だと読み取れる。そして、「図表3」から、「愛知県」の「車両保有数」は「全国最多」で、「7位」の「千葉県」の約1.5倍だと判断できる。こうしたことから、「愛知県の交通事故死者数が全国で最も多かった」のは「車両保有数」が多いからだと推測できる。以上のような内容を「過不足なく」まとめていけばいい。たとえば、「死者数が最多なのは運転マナーというより車両保有数が全国最多のためだと考えられ、10万台あたりの死者数では40位と少ないから。」(60字)といった「答え」だ。尚、参照すべきいくつかの「統計資料」は有機的に結びつけて「考察」することが肝要だと心得よ。
攻略のポイント
●最大の特色は、「リード文」「設問」「統計資料」「地図」「地形図」「図表」「写真」などの「情報」と「自らの知識」を多角的に結びつけて考察しないと解けない問題が多いということだ。設問どうしの連関にも注意する必要がある。出題傾向は一貫しているので、最低でも10年分以上の過去問練習をしておきたい。「解説」をしっかりと読んで、どのような「情報」を組み合わせて考えていくのかを確認し、「多角的思考」ができるように訓練すること。
●合格ラインは高い(過去10年間の「合格者平均得点率」は74.9%、本年度はさらに上がって76.8%)。7割以上は確実に得点したい。時間を考えれば「戦術」が不可欠。基本は「取れる問題を確実に押さえる」ということ。「取れそうにない問題は潔く捨てる」というメリハリも必要だ。「基礎的知識」で基礎点(6割程度)は獲得可能。あとは、本校対策でゲットする。無論、「単純ミス」は絶対にしないこと。
●「地理」では、「地図」「地形図」「統計資料」「写真」「図版」等が頻出なので、練習を重ねること。また、「神奈川御三家」の一校として「神奈川の御当地問題」もしばしば出題されるので、個別の学習が不可欠。ただし、テキストにはないので、要注意。
●尚、3年連続で「考察問題」の出題が目立っている(特に本年度は配点の「2割半」を占める)。明確に、新たな大学入試制度で求められている「思考力・判断力・表現力」を意識した出題傾向になってきたということ。無論、来年度以降に向けても準備は不可欠だ。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
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