｢漢字の書きとり｣(全５問)
示されている各文の二重傍線部の｢ひらがな｣を｢漢字｣に直す。例年より難易度が上がった昨年度に比べると、格段に平易だ。本校志望者は｢全問正解｣が必須。それぞれの｢答え｣を確認する。
(１)｢かぜをひかないようにようじんする｣＝｢用心｣⇒間違いようがない。

(２)｢新しいきょうぎ場が完成する｣＝｢競技｣⇒丁寧に記したい。

(３)｢温度をちょうせつする｣＝｢調節｣⇒書けて当然。

(４)｢地方活性化のためのさいてんをもよおす｣＝｢祭典｣⇒｢文脈｣を正しく読み取ること。

(５)｢憲法の中のさんせい権を学ぶ＝｢参政｣⇒｢同音異義語｣に要注意。ひとつでも曖昧(あいまい)なものがあった諸君は相当ヤバい。必ず確認しておくこと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分弱＞

偏愛と孤独を友とし、取り繕(つくろ)うことができない人々がひたむきに歩み続ける――あなただけの｢友｣が必ず見つかる。奇跡と慈(いつく)しみが胸を打つ、静かで安らかで美しい傑作短編集全８話の１篇。本文では、主人公である｢僕｣が亡き｢従兄(いとこ)｣を思いながら｢伯母｣(｢従兄｣の母)とミュージカルを観た思い出を胸に、今度はひとりで同じ劇を観に行く姿が描かれている。本文全体の８割近くが｢回想シーン｣という特殊な構成になっているので、注意したい。本校の標準レベルの小問が並んでいる。以下、いくつかを確認してみたい。

[問一]　｢語句の意味の選択肢｣(全２問/各４択)　｢総合的知識問題｣
傍線部(ａ)｢生々しかった｣､(ｂ)｢慈しみ｣の｢本文における意味｣を答える。これらの｢原意｣(本来の意味)に忠実に判別すれば何の問題もないはずなのだが、｢本文における意味｣を意識し過ぎると間違ってしまう可能性があるので要注意だ。それぞれの｢答え｣を確認したい。

(ａ)｢生々しい｣＝｢今できたばかりのようである。真新しい感じがする｣という意味⇒｢答え｣は選択肢(ア)｢真新しかった｣⇒馴染みが薄いか？ 知らなかった諸君はこの機会に覚えておこう。
(ｂ)｢慈しみ｣＝｢いとしいと思う心情。 愛情｣のこと⇒｢答え｣は(イ)｢愛情｣⇒これは知っているはず。尚、こうした｢語句の意味｣では、｢設問｣に惑わされずに｢原意絶対優位の原則｣(｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)を徹底させること。

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[問二]　｢場面転換の抜き出し｣(｢一文｣の｢初めの５字｣指定)
｢本文の冒頭から始まる回想シーンは途中で終わっている｣が、｢場面が現在に戻った最初の一文｣を探し、｢初めの五字｣を抜き出して答える。｢回想｣→｢現在｣の｢場面転換｣の箇所を探すわけだ。｢回想シーン｣では、｢僕｣と｢伯母｣が｢一緒にミュージカルを観ている｣ことが分かる。どこまでか？ 読み進めていくと、５つ目の｢場面｣の３段落目に｢つい先週、叔母は亡くなった｣という記述がある(｢場面分け｣は１行空いているのですぐに分かる)。その場面は２段落前から始まっており、冒頭には｢あの日と同じように、客席のあちこちからすすり泣きが聞こえていた｡｣という｢一文｣がある。よって、｢答え｣は｢あの日と同｣になる。
尚、本問は｢場面転換｣の｢抜き出し｣だったが、通常の｢抜き出し設問｣では、｢抜き出すべき内容｣を正確に捉えた上で､｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいくことが鉄則だと心得よ。

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[問四]　｢心情説明記述｣(｢60字以内｣指定)
傍線部(２)｢伯母は気づいているのだろうか｣について、｢ここでの『僕』の心情｣を｢六十字以内｣で説明する。先ずは、何に｢気づいている｣のかを｢同一場面｣で確認したい(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢根拠･手がかり｣がある)。直後に｢僕がしでかした失敗を恨んでいないのだろうか｣とあるので、｢僕がしでかした失敗｣だということが分かる。
次に、｢『僕』の心情｣に結びつく｢状況｣を読み取っていきたい。｢同一場面｣の前の部分から、｢かつて伯母の誕生日会で、僕が従兄の歌声を録音することに失敗した｣ことが読み取れ、｢失敗さえしなければ、伯母は今でも従兄の歌声を聴くことができた。あの声は、僕のせいで永遠に戻って来ない。もう取り返しがつかない｣と思っていることも分かる。こうした｢失敗｣を｢伯母｣は知っていて、｢僕｣を｢恨んでいるのではないか｣と、｢心配｣している⇒これが｢『僕』の心情｣だ。あとは、内容を整理して｢過不足なく｣まとめていく。たとえば、｢『僕』が従兄の歌声の録音を失敗しなかったら、伯母は今でも従兄の歌声を聴けたので、恨んでいるのではないかと心配する心情｡｣(59字)といった｢答え｣になる。
尚、｢小説｣では必ず｢心情｣が問われる。その際、｢セリフ｣⇔｢ト書き｣⇔｢動作｣⇔｢情景｣といった具合に多角的に読み取ることが肝要だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：３分＞

[問七]　｢内容説明選択肢｣(４択)　　
傍線部(５)｢バルジャンと同じだった｣について、｢誰のどのような点がバルジャンと同じなのか｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意絶対優位の原則｣に基づき｢原意消去｣をしたいが、流石(さすが)に本問では無理だ。そこで、｢同一場面｣に｢手がかり｣を求めたい。直前から、｢バルジャンと同じ｣なのは｢伯母｣だとすぐに分かる。
この段階で、｢僕の｣となっている選択肢(ア)と(イ)は｢消去｣で、｢叔母の｣とある(ウ)と(エ)が残ると判断できる。そして、｢(叔母が)一番帰りたかった場所へ無事にたどりついた｣ことが｢｢バルジャンと同じ｣だということも読み取れる。したがって、｢懸命に生きながら、突然亡くなってしまった点｣とある(ウ)は｢消去｣となり、｢一番帰りたかった場所へたどりついた｣となっている(エ)が｢答え｣だと判別できるはずだ。本問のような、｢原意消去｣以外の｢消去｣のオプションも確認しておきたい。

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[問八]　｢内容説明選択肢｣(４択)
傍線部(６)｢その無言の底で、同じ一つの歌を分け合っていた｣について、｢それはどのようなことか｣を答える。ここは無論、｢原意消去｣からだが、｢指示語｣があるので開いておく(｢指示語｣が出たら即開くこと)｡
直前から、｢その無言｣＝｢大事な何かを確かめ合う時に僕たちが送る無言(の合図)｣だと分かる。さて、｢原意消去｣、ここは｢内容説明｣なので、｢分け合っていた｣の｢原意｣と結びつかない｢説明｣を｢消去｣する。各選択肢の｢文末｣と照合したい(｢選択肢｣の｢説明｣では｢文末｣が最重要ポイント)。
(ア)｢感覚的に理解できていたということ｣､(イ)｢互いに他言はしなかったということ｣､(ウ)｢つながりを感じられていたということ｣､(エ)｢残っていたということ｣｡さあ、どうだろうか？　｢分け合っていた｣のだから、｢つながりを感じられていた｣以外は｢消去｣できなくてはいけない。念のために、｢同一場面｣で他の部分の説明も確認する。特には誤っていないと判断できる。したがって、｢答え｣は(ウ)になる。見事に｢一発消去｣だ。｢原意消去｣は必ず試みるべし。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分＞

｢言葉｣を誠実に紡(つむ)ぐことの意味とは？――巷で(ちまた)よく見かける｢現実をぼやかす言葉｣や｢責任を回避する言葉｣など、日常の中で文化の奥行きを反映する｢生きた言葉｣たちの｢面白さ｣、そして、｢危うさ｣を多様な観点から辿(たど)り、論じている。本文では、新型コロナウィルス対策としての｢新しい生活様式｣という言葉の使い方に異論を唱え、専門家と市民とのコミュニケーションには課題があると指摘している。｢哲学論｣であり難解な語句があるが、｢＊注｣を活用して内容を理解したい。ややひねりのきいた小問はあるが、全体としては本校の標準レベルの大問。以下、いくつかを考えてみたい。

[問一]　｢空所補充の四字熟語の意味判別および漢字記述｣(４択)　｢総合的知識問題｣
本文中の空所 　Ｘ 　に入れるべき｢わずかな期間｣という意味の｢四字熟語｣を、示されている｢カタカナ｣の中から選び、｢漢字に直して｣答える。候補としては、｢イチゴイチエ｣･｢イッチョウイッセキ｣･｢イチジツセンシュウ｣･｢イチボウセンリ｣だ。無論、誰もがすぐに｢イッチョウイッセキ｣がふさわしいと判別できるはずだ。したがって、｢答え｣は｢一朝一夕｣になる。ちなみに、他の｢四字熟語｣も基礎的レベルなので、全ての｢漢字｣と｢意味｣が定着していなければならないので確認せよ。
尚、本校志望者は｢四字熟語｣以外にも｢故事成語｣｢慣用句｣｢ことわざ｣なども完璧にしておくこと。

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[問二]　｢空所補充の語句記述｣(｢カタカナ７字｣指定)
｢総合的知識問題｣？ というよりも｢社会｣の｢時事問題｣だ｡本文中の空所 　Ｙ　 に入る｢カタカナの言葉｣を｢七字｣で答える。空所前後の｢文脈｣を確認する。｢運輸･物流、通信･インフラ(＝経済活動のもとになるもの)、医療、福祉、保育等々、いわゆる『 　Ｙ 　 ワーク(人々の生活に不可欠な仕事)』に従事する人々……｣となっている。典型的な｢時事ネタ｣だ。｢答え｣は当然、｢エッセンシャル(ワーク)｣だ。本校ではこういった問題もあり得るということだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分弱＞

[問四]　｢内容説明選択肢｣(４択)
傍線部(２)｢この意図は成功を収めた｣について、｢ここで言う『成功』についての説明｣を答える。無論、先ずは｢原意消去｣を試みる。本問は｢内容説明｣で、｢この意図｣の｢原意｣と結びつかない｢説明｣を｢消去｣していく。｢指示語｣なので開く。直前から、｢この意図｣＝｢『新しい生活様式』という言葉を使うことによって、市民の大規模な行動変容につながることを期待する意図｣だと読み取れる。各選択肢の｢文末｣と照合する。
(ア)｢専門家の言葉を素直に受け入れ、その指示を守るようになったこと｣､(イ)｢社会に新しい行動様式が広がったこと｣､(ウ)｢専門家の言う通りに行動するようになったこと｣､(エ)｢行動様式の変容を促(うなが)すほどの強い印象を、人々に与えたこと｣｡｢市民の大規模な行動変容につながることを期待｣していて｢成功｣したのだから、(エ)以外は｢消去｣でいいと判断できるはずだ。念のために、他の部分の説明を｢同一意味段落｣で確認する(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠｣｢手がかり｣がある)。特に誤ってはいない。したがって、｢答え｣は(エ)になる。やはり｢一発消去｣だった。畏るべし！｢原意消去｣、本校合格のためには必ずマスターせよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分半＞

[問八]　｢条件付き内容説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢90字ほど｣の解答欄)
傍線部(６)｢市民は、自分の生活の一部をよそよそしい言葉とその主人とに明け渡すことになる｣について、｢これはどのようなことか｣を説明する。｢条件｣は｢『よそよそしい』『明け渡す』という表現に注意しながら、ていねいに説明する｣こと。先ずは、｢その主人｣＝｢専門家｣だということを直前から押さえておく。その上で、｢条件｣に即して｢よそよそしい｣･｢明け渡す｣という表現を念頭に置いて、｢同一意味段落｣を読み解いていきたい。｢新しい生活様式｣に関する論及だ。｢私たちが進んで取り入れたいと望んでいるものではなく、仕方なく受け入れざるをえないもの｣｢私たちの多くがこれまでずっと大切にしてきた生活のかたちに合わない｣と論じている⇒｢よそよそしい｣につながる。
また、｢市民が専門家の発信する言葉の意味を掴(つか)みきれないまま、専門家の言うがままに新しい規範に従い、生活の一部を変えざるをえない｣と指摘している⇒｢明け渡す｣に結びつく。こうした内容を整理して、｢文脈｣を整え分かりやすくまとめていきたい。たとえば、｢私たち市民の多くがこれまでずっと大切にしてきた生活の一部を、専門家の発信する意味の掴めない言葉に従って、新しい規範を仕方なく受け入れ、望まないままに変えざるをえなくなるということ｡｣(90字)といった｢答え｣だ。
尚、｢条件｣は｢手がかり･ヒント｣でもあると心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：３分半＞