国際基督教大学高等学校 入試対策
2023年度「国際基督教大学高等学校の数学」
攻略のための学習方法
特に、何かのジャンルを集中して演習するということだけで本問の得点に結びつくかどうか。『数学的発想法』、つまり物事を論理的に考えて、結論へ向け矛盾のない整合性の取れた論理の道筋をつけられるかどうかである。数学におけるスキル演習(問題演習)だけでは、不十分な設問設定になっている。
ICUの入試問題は、単純なスキル演習力を見る問題ではない。初見の問題で、『数学的論理』をいかなる思考的プロセスを経て確立された論理へと昇華させてゆくのかということを自身で見つけ、理論として確立できる『力』がどれ程完成されているかを見る設問である。
出題形式も、初めて見る受験生も多いと考えられるが、決して慌てることなく落ち着いて設問内容をよく読んで、問題の解法の手掛かりが会話本文のどの分に該当するのかを、よく考えて問題の本質を見抜くことである。
したがって、資料文の中で、各々の『考え方』や『概念』について言及している部分をよく読み込んで、正確に落ちついて問題を考えるようにすること、これが本問のような問題に不可欠な解法へのアプローチである。
このような設問に対して、如何なる事前準備が有効であるかを一緒に考えてみよう。
通常、数学の試験に関しては、大量に問題(計算問題や求積〈面積・体積〉問題)を解くことが最優先として捉えられている。しかし、その様な事前準備においては『正解』を出すことが最大にして唯一の目標となり、公式を暗記している受験生は該当する公式に数値を当てはめて答えを出すという、ある意味では非常に『効率的』なアプローチに終始してしまうだろう。
そのような手法だけでは本問において合格点を取るのは難しいのであろう。なぜならば、公式などの原理・原則を根本から理解せず結果だけを『機械的』に導き出すことになれ切ってしまっているからである。
大切なことは、自分の『頭』で考え抜く、ということである。
例えば、ある公式があったとしたら、公式の初めから自分で計算し最終的には公式の形まで自力で導き出せるかどうかである。暗記したものはいずれ忘れてしまう。忘れてしまうことをネガティブに捉えてはいけない。人間はある意味では『物事を忘れる存在』なのである。覚えたばかりの知識を忘れてしまったら、再度繰り返して演習を繰り返せばいのである。
ここで述べたいことは、知識(特に数学)を暗記するのではなく理解することに重点を置くべきである、ということである。したがって、国際基督教大学高校の数学の入試問題に対応する学力は、数学的思考をしっかり身に付ける姿勢で普段の学習を行うべきである。
そのためにも、問題を解く上で使用した公式を自分で導き出す学習を励行して欲しい。
さらに、数学で使用する言葉や数字にはすべて『意味』があるということである。その意味をしっかり理解して、自由自在に操れる術をマスターしなければならない。
例えば、1次関数における切片とはどういう意味があるのかを考えるのである。単に、直線のグラフとy軸との交点のy座標である、としか覚えていないとしたら、その先の解法への広がりは限られたものになってしまう。切片であるb(y=ax+bのb)はx=0のときの(xに0を代入する)yの値である、という理解ができているかどうか。
このように考えていくことが、やがて自身の理論的思考力を鍛えることになり、結果的に解法の幅を広げることができるのである。大事なことは、単に問題を解き正解を導くことだけで満足せずに、どうしてそのような式を考えて解放するのかということを根本的な原理から考えるようなクセを付けることである。
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2023年度「国際基督教大学高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
ICUの入試問題は一般の高校入試のような演習形式ではない。初めて見た受験生はどのように対策を立てればよいのか見当もつかないのではないだろうか。「資料文」を読ませ、その原理的理解を深めさせ高度な数学的思考力を確認する出題形式になっている。このような入試問題に対する対策としては、結論的には「数学的思考力」を高める訓練をしっかり行うことである。そのためには単純なスキル演習での解答の正誤だけを意識するのではなく、設問の原理的構成にまで踏み込んで(問題の徹底した掘り下げ)解法の糸口を探る手法を磨く必要がある。また、「資料文」の特徴は、「資料文」の中のどの部分が原理の説明で、どの部分が求められている演習の答えを導くヒントなのかを見極め、前者は深く読み込んで理解し尽くすということのないようにすることである。なぜならば、そのうような「深い読み込み」は時間がかかり、結果後者にかける時間を失ってしまうからである。ICU対策は、とにかく過去問演習である。少なくとも8~10年分を2~3回は反復演習して欲しい。
【大問】資料文を読みながら各設問に答える
- 時間配分:70分
問1は、商と余りに関する問題である<2分>
四則演算のうちの除法に関する問題である。数字の除法であるのでケアレスミスのないように気をつけること。
問2は、2つの整数の和、差、積の余りに関する問題である<4分>
2つの整数a、bの積abを7で割った余りは、それぞれの余り同士の積で計算できることの証明問題である。ab=(7m+x)(7n+y)[x、yが7で割った余り]を展開し証明する。
問3は、単位元に関する問題である<3分>
資料文にある「単位元」に関する記述をしっかり読み込み、概念的理解を深めること。
問4は、剰余類に関する問題である<3分>
「剰余類」「逆元」に関する理解を深める。引き算は「逆元をたす」のであり、この考え方を与えられた式にあてはめる。
問5は、剰余類に関する問題である<5分>
前問でも使用した「剰余類」に関する問題であるので、原理的理解を深めたうえで3を乗じた数を7で割った余りを書き込んでいく。
問6は、剰余類に関する問題である<5分>
前問でも使用した「剰余類」に関する問題であるので、さらなる原理的理解を深めたうえで数を6で割った余りを書き込んでいく。
問7は、証明問題である<6分>
新たに「互いに素」(2つの正の整数a、bが1以外に公約数をもたない)という考え方を理解すること。「互いに素」は中学校の数学で履修済みであろう。互いに素であるa、bにおいてmを整数とするとamがbの倍数であればmはbの倍数である、という重要な性質も確実に理解し応用できるようにする。
問8は、逆元、割り算に関する問題である<3分>
これまでは四則演算の中のたし算、ひき算、かけ算を扱ってきたが、割り算に関する逆元の扱い方の問題である。
問9は、条件の選択問題である<3分>
再度、「剰余類」「零元」「逆元」の概念を確認すること。
問10は、数の性質に関する問題である<5分>
7で割ったときの余りの分類で考えをまとめ、かつこれでの原理(逆元など)をあてはめ、さらに新たに紹介された「中国の剰余定理」の原理的理解を確実に行う。「剰余定理」とは簡単に述べると「除法における余りの仕組み」のことである。
問11は、数の性質に関する問題である<5分>
「中国の剰余定理」を参考に9で割った余りの分類を考える。また、11で割って2余る整数は11m+2(mは整数)となり、次に7で割ったときの余りの分類を考える。
問12は、証明問題である<7分>
「中国の剰余定理」の証明問題である。これまでの概念を丁寧に思い起こし、かつ「中国の剰余定理」で述べられていることの理解を深め、空欄を適切な数値、式、語句を考える。
問13は、数の性質に関する問題である<6分>
3で割った余りの分類で考え、「中国の剰余定理」をあてはめる。
問14は、数の性質に関する問題である<7分>
5で割った余りの分類で考え、「中国の剰余定理」をあてはめる。
問15は、数の性質に関する問題である<6分>
題意の整数をMとすると、5で割って4余る整数はM=5t+4(tは整数)となる。Mを9で割った余りの分類で考える。
攻略のポイント
特殊な出題形式であるため、初めて過去問を目にして戸惑いを感じる受験生も多いのではないだろうか。
資料文で「用語」の「定義」を説明したうえで、問題を解いてゆくという出題形式。未知なる原理に関して一定の説明を与えかつ演習例も示し、実際に受験生に問題演習や論証問題をさせるという出題形式である。このような設問形式の目的は、受験生の持つ論理的思考力や推理力を試す問題であることは言うまでもない。単純なスキル演習(問題演習)だけでは、本問のような設問には太刀打ちできない。
事前に行う対策としては、公式の証明を自ら行うことが有効であろう。さらに、ハイレベル問題集(具体的には『日日の演習 高校への数学』など)において、高度な思考力を求められるような問題演習を数多くこなすことである。