渋谷教育学園幕張高校 入試対策
2023年度「渋谷教育学園幕張高校の国語」
攻略のための学習方法
論理的な思考力を付けて、本問のような論説文の入試問題で高得点を取るにはどうしたらよいか。いくつかのポイントをあげておこう。
第一に『文章を書く』ということである。何も考えなしに闇雲に文章を書いてみても、入試問題における論説文対策にはあまり効果が期待できないだろう。おすすめは「論説文の要旨をまとめる」ということである。受験生にとって一冊の論説文〈岩波新書など〉を読んで要旨をまとめると言っても、その様なことを行う時間的余裕はないはずである。そこで提案したいのは、論説問題の文章をまとめてみよう、ということである。それも、文章でまとめるのではなく、『箇条書き』で『単語』としてまとめていくということである。そうすれば、文章を書くという時間的な負荷も軽減され、なおかつコンパクトに論説文の内容、論旨の流れなどが手に取るように理解できるはずである。
第二に『論点を明確にする』ということである。『論点』を『筆者の主張』と置き換えてもよい。つまり、筆者は何がいいたいのかということを明確に把握するということである。具体的には、本文中で筆者が繰り返している部分や、「つまり」や「したがって」という接続詞でつないでいるような箇所は要注意である。
また、筆者の考えを丁寧に辿ることである。「丁寧」といっても時間をかければよい、というわけではない。いうまでもなく試験時間は限られており、その時間的制限の中で的確に筆者の考えや論理展開を把握しなければならない。そのためにも、文章を読むスピード、内容を把握する力、把握した内容をまとめる要約力など、求められる「力」は相当なレベルである。これをしっかり満足のいく程度にブラッシュアップさせるためには、日頃から自分の言葉でしっかり考え、文章を書くということである。
次に、小説に関する設問についてのアプローチを考えてみよう。まずは、心情の読み取りである。直截的に「私は……と思う」とは描写されない。人物の心の中は、情景描写であったり、その人物の一挙手一投足に現われる。そのような表現をしている部分を選び出し、人物と人物の間の精神的葛藤や同調する部分をしっかり理解しよう。そのような作業を行うことなく、小説に描かれている『人物』の内面の本質的な部分を理解するのには時間がかかるであろう。さらに、注目すべきは『会話』である。会話のやり取りを読み進めるうちに、人物同士が相手に対してどのように感じているか、心理的駆け引きは行われているのか、といった事柄も見えてくる。全体的な内容をしっかり理解するには、そのような面の理解と分析が不可欠である。いずれにしても、学校で扱う小説や過去問で挑戦する小説の問題に対して、人物の心情を中心に読み進める癖をつけるように心掛けること。これをうまくマスターすれば合格点は取れる筈である。
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2023年度「渋谷教育学園幕張高校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】哲学的分野(哲学)の論説文に関する読解総合問題<20分>。
漢字の書き取り問題、記述問題(字数指定はなし)と選択肢問題である。
【大問2】小説の読解問題<22分>。
漢字の書き取り、心情把握(選択肢問題・記述式問題)、内容理解問題である。
【大問3】古文読解総合問題<18分>。
基本的な文法事項や古語知識は不可欠である。文学史も押さえておくこと。
【大問1】 哲学的分野(哲学)に関する論説文の読解問題
- 時間配分:20分
出典:『<トラブル>としてのフェミニズム「とり乱させない抑圧」に抗して』(藤高和輝著)
(問一)漢字の書取り・読取り問題<2分>
漢字の書き取りは「忌避」、漢字の読みは「(喝破)=かっぱ」、「(示唆)=ばんじゃく」である。どれも標準レベルの問題であるので完答を目指そう。
(問二)四字熟語問題<2分>
事象の定義をその内容の言葉そのものをそのまま使用することを意味する四字熟語は「同語反復」である。
(問三)内容把握記述問題<4分>
バトラーの主張は「ジェンダー―すなわち『外側』にあるとされる『行為』―の積み重ね、その反復によって、『内側』にあるとされる『本質』は事後的に構築される」という内容である。
(問四)内容把握選択問題<3分>
文脈からア、ウは排除されるだろう。イとエを考えると「女の生きがいとは男に向けて尻尾をふっていく中にあるという訳なのだ」を参考に判断する。
(問五)内容把握選択問題<3分>
「ジェンダーの構築」が「異性愛規範によって可能」になるのであり、それは「女性が感じる自分の『女らしさ』」を「『他者』である男性」に接することにより、より強く感じるのである。つまり、その男性のもつ「異性愛規範」に触れることなのである。
(問六)内容把握選択問題<3分>
傍線直後に「私たちはどれだけ懸命にジェンダー規範を体現しようとしても、その『完璧な例』になることはできない」という箇所が手掛かりになる。つまり「ジェンダーは理念上のフィクション」であるので「現実の人間がそれに完全に同一化することは、いくら繰り返し試みても…不可能であり、必ず失敗」するのである。
(問七)主題に関する選択問題<3分>
傍線の「このような権力の巧妙な策略」とは直前にある「現行の法がトラブルを厄介払いするためにひとをトラブルで脅し、ひとをトラブルに陥らせさえしている」ことである。つまり「社会の中で…その人自身が厄介者扱いされたりするかもしれぬ恐怖を与えることで無言の服従」を強いることになるのである。
【大問2】 小説の読解総合問題
- 時間配分:22分
出典:『くるまの娘』(宇佐美りん著)
(問一)漢字の書取り問題<3分>
漢字の書き取りは「輪郭」「雄弁」「潮時」である。
(問二)語句問題<2分>
「両成敗」である。使用例としては「喧嘩両成敗」などがある。
(問三)文章把握選択問題<4分>
傍線直前に「声と言葉がまざる」とある。つまり傍線の「まざる」とは「互いの言葉を聞き終わる前に反射的に声」をあげることであり、「燃え上がる」とは「感情が昂ぶる」ということである。
(問四)心情把握選択問題<4分>
身内同士が「丁寧語」を使う状況とその心理を考えると、ある程度の「距離感」を取ろうとしているのである。
(問五)心情把握記述問題<6分>
家族が互いに傷つけあっている状況中で、かんこが「たったひとりで、逃げ出さなくてはいけない」という状況は、「このどうしようもない状況のまま家の者を置き去りにすること」になってしまのであり、「まだ、みんな、助けを求めている」のである。
(問六)内容把握選択問題<3分>
家族4人が乗った車の中の状況を誰の視点で描いているかを考えると理解できるであろう。
【大問3】 古文読解総合問題
- 時間配分:18分
出典は『醒睡笑』
(問一)内容理解問題<2分>
「…をきき理非を決断せらるる」のであり、「事案の是非を決める」ことであり「裁許を下す」ことである。つまり「訟」である。
(問二)内容理解問題<3分>
「上下万民」とは「身分や財力に関係なくすべての民」という意味である。つまり、裁許を下す際に、裕福な人に対して媚びへつらうこともなく、また貧しい相手に関しても見くだすことなくどのような人に対しても訴えを「公平」に対応し公正に裁許(判断)したということである。
(問三)内容把握記述問題<2分>
傍線部分の意味は「僅かなことから全体の知る」といことである。ここでの「全体」とは、「京都所司代の裁決の見事さ」のことである。
(問四)現代語訳問題<3分>
「さらさら」は「決して~ない」という否定の意味である。「かえすまじき」とは「借りた刀を返さない」という意味である。
(問五)内容把握記述問題<4分>
「大相国」とは「徳川家康」のことであり、京都所司代の裁許(判断)はまさに理不尽な相手の理屈を逆手に取った見事なもの(=当意即妙)であったという意味である。
(問六)内容把握選択問題<3分>
漢文の書き下し文であり、「正理の薬を以って訴詔の病を治す、憲法の灯を挑げて愁嘆の闇を照らす」となる。意味は「正しい道理という薬をもって訴訟(争い)の病を治し、憲法という灯(希望)を掲げて筋の通らない無法の闇(犯罪)を照らす(正す)」ということである。
(問七)文学史問題<1分>
『醒睡笑』は江戸時代の作品である。『宇治拾遺物語』以外は江戸時代の作品である。
攻略ポイント
全体的に、現代文(論説文・小説)の読解、古文読解が中心である。この出題傾向は例年変わらない。設問内容としては内容把握・心情把握が問われている。
また、漢字、文学史、語句、古典文法などの知識問題は確実に得点できるように事前準備を怠らないように。
さらに、字数指定はない(説明しなさいという設問形式)の記述問題も全得点に占める比重が高いので、短時間で自分の考えを本文に沿って文章に纏め上げるスキルも身に付けなければならない。対策としては、とにかく記述式問題で徹底的に文章を書くことである。この対策を怠ると、本番で徒に時間だけが過ぎてしまい、満足のゆく答案に仕上げることができないであろう。