日本女子大学附属高等学校 入試対策
2023年度「日本女子大学附属高等学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
前述のとおり「直接出題」も多いが、「本文読解」等でも必然的に問われることになる日女の「総合的知識問題」。いかなる「攻略法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。
過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。
要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されているし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。
特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
解法
「日女の国語」の「選択肢設問」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「日女の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。
そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。30~40字程度で書いてみる(日女の典型的な「記述」の練習にもなる)。
無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。
「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
速読
大学入試にも匹敵するボリュームの問題文を読まなくてはならない。全体で5000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。
やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。日女に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
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2023年度「日本女子大学附属高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は大嶋義実「演奏家が語る音楽の哲学」所収の「響かせること、響きを合わせること」(文字数約2600字)。小問は全7問(解答数12)。「選択肢」(「換言説明」「内容説明」「理由説明」、「総合的知識問題」)、「漢字の書きとり」(全6問)。問題文は3分程度で読み切り、設問を20分弱で解きたい。
大問二も「論説文」、出典は安田登「見えないものを探す旅――旅と能と古典」所収の「神々の非在」(文字数約2300字)。小問は全9問(解答数9)。「選択肢」(「換言説明」「内容説明」「理由説明」) 「説明記述」(「30字以内」指定1問)。問題文は3分弱で読み切り、設問を20分程度で解きたい。
大問三は「総合的知識問題」。小問は全2問(解答数10)。「副詞の用法判別」(5問)と「空所補充の語句記述」(5問)。5分ほどで解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
音楽は演奏家を抜きに現実化しない。人間によってしか血の通った音楽を、楽譜の向こう側にある音楽を蘇らせることはできない――第一線で活躍中のフルーティストが、瞬間、瞬間の現れとしての音楽を生み出す演奏という観点から音楽論を展開している。本文では、人々を魅了してやまないオーケストラの響きは、音楽観や美意識や正否の基準が違う奏者たちの多様な価値観から生まれていると論じている。内容は難なく理解できる。本校としてはオーソドックスな小問が並んでいるが、最後にとてつもなく長い説明が連なる「選択肢設問」が現れる。心してかかる必要がある。以下、いくつかを検証する。
[問一] 「漢字の書きとり」(全6問)
本文中の二重傍線部(A)~(F)の「カタカナ」を「漢字」に直す。難易度がとても高かった昨年度よりは易化したが、それでもなかなか厄介だ。ただし、本校志望者であれば何とか失点は避けたい。確認する。
(A)「各奏者にユダねられる」=「委(ねる)」⇒これは高校入試の「書きとり」の定番だ。
(B)「地球キボで広まり」=「規模」⇒問題ないはず。
(C)「シナンの業である」=「至難」⇒昨年度、全く同じ出題があった⇒やはり、「過去問演習」は必須⇒「至難の業」(=実現が極めて困難であること)という慣用表現として覚えておきたい。
(D)「シメイを果たす」=「使命」⇒「同音異義語」には注意すること。
(E)「エイビンな耳」=「鋭敏」⇒難問か? 「文脈」を的確に捉えること⇒意味は「感覚が鋭いこと。敏感」。
(F)「ずれをハイジョし」=「排除」⇒これは必須定着熟語だ。本校志望者はあらゆる難易度の「漢字」にも対応できることが求められている。
<時間配分目安:全問で2分>
[問三] 「理由説明選択肢」(4択)
傍線部(2)「互いが互いに対してちょっと迷惑なのだ」について、「それはなぜか」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは、「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「理由説明」なので、「迷惑」の「直接的理由」として、各選択肢の「文末」が結びつかないものを「消去」したい(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。確認する。
(ア)「徒労感を覚えてしまうから」、(イ)「不安感を覚えてしまうから」、(ウ)「反感を覚えてしまうから」、(エ)「違和感を覚えてしまうから」。
さあ、どうか? 「消去」できるか? 「迷惑」で、しかも「互いが互いに対して」なのだから、「違和感」以外はすぐに「消去」できなくてはいけない。「同一意味段落」を確認して、他の部分の説明もOKだ(「論説文」では「同一意味段落」に「根拠」「手がかり」がある)。したがって、「答え」は(エ)。見事な「一発消去」。「選択肢設問」での「原意消去」を完全に理解し定着させ、応用できるようにすることが肝要だと心得よ。
<時間配分目安:1分強>
[問四] 「内容説明選択肢」(4択)
「総合的知識問題」。「慣用句」だ。
傍線部(3)「砂をかむような響き」について、ここでは「どのような音楽のことか」を答える。「砂をかむよう」という「慣用句」は知っていて当然だ。「砂をかんだように味気ない」⇒「物の味わいがない、無味乾燥で味気ない」という意味で使われる。こうした「原意」と結びつかない「音楽」を「消去」したい。各選択肢の「文末」と照合する。
(ア)「面白みがない音楽」、(イ)「耳障りに感じる音楽」、(ウ)「不快になる音楽」、(エ)「聴きごたえがある音楽」。
「物の味わいがない」「無味乾燥で味気ない」⇒「面白みがない」以外は即座に「消去」でOK。「同一意味段落」から他の部分の説明も特に誤ってはいないことが分かる。よって、「答え」は(ア)だ。無論、この「慣用句」を知らなくても「文脈」を読み取って判別できるが、とても手間がかかる。「語彙力」はこうした局面でも重要だということだ。
<時間配分目安:30秒強>
[問六] 「換言説明選択肢」(4択)
傍線部(5)の「たがいに歩み寄ろうとしても埋めることのできない溝が、かけがえのない顔の象徴でもあった」とは「どういうことか」を答える。最優先は「原意消去」。 「換言説明」なので、「かけがえのない顔の象徴」の「原意」と結びつかないものを「消去」する。
各選択肢の「文末」の確認。
(ア)「己を追求していくことになるということ」
(イ)「個性をゆがめることにつながっていくということ」
(ウ)「各人が唯一無二の存在であることを示しているということ」
(エ)「新しい有り方を人々にもたらすということ」
本校志望者であれば、瞬時に判別できなくてはいけない。「かけがえのない顔」なのだから、「唯一無二の存在」以外はそのまま「消去」でいい。他の部分の説明も特に誤ってはいない。故に、「答え」は(ウ)だ。本問もまた「一発消去」だった。尚、「原意消去」では、「言葉の意味」の些細な相違にも敏感になる必要があると心得よ。
<時間配分目安:1分弱>
[問七] 「内容説明選択肢」(4択)
波線部①②「社会のあるべき姿」について、「筆者の考える『社会のあるべき姿』の説明」を答える。無論、「原意消去」からだが、流石(さすが)に波線部だけでは「内容」を判別しようもない。そこで、「傍(波)線部一文一部の法則」に「手がかり」を求める(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法)。それぞれの波線部の前後を確認していきたい。
「①社会のあるべき姿がそこに立ち現れる」。「そこ」がポイントだと分かる。「指示語」なので開く(「指示語」が出たら即開くこと)。直前から、「そこ」=「孤独を引き受けながらもなお、その音楽家たちが調和を希求するオーケストラ」だと分かる。そして、「そう考えると、ますますオーケストラは②社会のあるべき姿を映している」。ここでも「そう」という「指示語」がカギとなる。やはり、開く。直前から、「そう」=「オーケストラサウンドの魅力は、皆が一致することよりも、一致しないところに隠されているというふうに」だと読み取れる。ということは、両者ともに筆者は、「社会のあるべき姿」を「オーケストラ」になぞらえており、①では「孤独を引き受けながらも、調和を希求する」、②では「皆が一致することよりも、一致しないところに魅力が隠されている」が要点だと分かるはずだ。ここで、これらの「要点」の「原意」と各選択肢の「文末」とを照合していきたい。
(ア)「秩序のある社会こそ、我々が目指すべき社会なのだ」
(イ)「孤独な個人が集まった社会こそ、目指すべき社会なのだ」
(ウ)「発展の歩みを止めない社会こそ、我々が目指すべき社会の有り様なのだ」
(エ)「互いの存在意義を尊重し合える社会こそ、我々が目指すべき社会の有り様なのだ」
さあ、どうだろうか? 「消去」できるだろうか? 「孤独を引き受けながらも調和を希求し」、「皆が一致しないところに魅力」がある「社会」なのだから、当然、「互いの存在意義を尊重し合える社会」以外は「消去」できなくてはいけない。「同一意味段落」から他の部分の説明も誤っていないことが分かる。であれば、(エ)が「答え」だと判別できる。本問の選択肢説明はそれぞれ「250字以上」もある。全てを仔細に照合していては日が暮れてしまう(全体で「1000字以上」だ)。こうした「長文の選択肢説明」がある設問(本校では頻出)では「原意消去」は不可欠だと心得よ。
<時間配分目安:2分>
【大問二】
- 時間配分:
いつもの風景が、その姿を変える。単なる偶然、でも、それは意味ある偶然かもしれない――世界各地へ出かけ、また、夏目漱石の「夢十夜」や三島由紀夫の「豊饒の海」、「松尾芭蕉」などの文学の世界をそぞろ歩きながら、死者と生者が交わる地平、場所に隠された意味を、能楽師である筆者が時空を超えて論じている。本文では、「和歌」や「能」では「非在」の手法がよく用いられるが、「松尾芭蕉」の俳諧の世界では「非在と存在の差はなくなっている」と指摘している。「芸術論」でやや分かりづらいだろうが、「注」も活用して内容を理解したい。「換言説明」が中心で、8つの「選択肢設問」とひとつの「説明記述設問」からなる大問だ。難易度は本校としての「標準レベル」。以下、いくつか確認してみたい。
[問一] 「換言説明選択肢」(4択)
傍線部(1)の「首を回す筋肉が反応した」とは「どのようなことか」を答える。「原意消去」から試みる。本問は「換言説明」なので、「筋肉が反応した」の「原意」と、各選択肢の「文末」が結びつかないものを「消去」したい。チェックする。
(ア)「見つけ出したということ」、(イ)「思い返したということ」、(ウ)「疲労を覚えたということ」、(エ)「感覚に陥ったということ」。「筋肉」の「反応」なので、「思い返した」は「消去」可能だが、あとは……。ここは、「傍線部一文一部の法則」に「手がかり」を求めたい。直前に「(『見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮』という和歌に関して)まず『見渡せば』と詠じられれば、実際に見渡さなくても(首を回す筋肉が反応した)」とある。改めて、各選択肢と照合したい。本問は各選択肢がとても短いので全文を確認する。
(ア)「思いがけず自然の美しさを(見つけ出したということ)」
(イ)「過去の記憶の中にある景色を再び(思い返したということ)」
(ウ)「和歌への感動とともに肉体的な(疲労を覚えたということ)」
(エ)「おのずと周囲の風景を眺めている(感覚に陥ったということ)」
「実際に見渡さなくても」なのだから、「おのずと周囲の風景を眺めている」以外は「消去」可能だと判別できるはずだ。したがって、「答え」は(エ)。本問は「2段階消去」だったが、先ずは「原意消去」を試みることが鉄則。
<時間配分目安:2分弱>
[問二] 「条件付き換言説明記述」(「30字以内」指定)
傍線部(2)の「うっすらと、しかし厳然と残る」とは「どのようなことか」を「三十字以内」で説明する。「条件」は「『~ということ。』に続くように説明する」こと。「同一意味段落」から説明すべき要素を読み解いていく。傍線部前後から、「見渡せば……」の和歌からは、「満開の桜」を思い浮かべ、「全山を紅や黄に染める紅葉」を鮮明にイメージでき、「なかりけり」と否定されても、一度しっかりイメージされたものは「うっすらと、しかし厳然と残る」と読み解ける。そして、「霧の彼方の桜や紅葉を観るのは、感覚器官である「目」ではなく、「もうひとつの次元の意識」が有する「目」だということも読み取れる。こうした要素を「過不足なく」まとめていくことになる。その際、「うっすらと」・「厳然と」という表現の「原意」を表すことが不可欠だ。たとえば、「もうひとつの次元の意識により、かすかだが鮮明にイメージが残る(ということ。)」(30字)といった「答え」になる。「説明記述」では、正否のポイントとなる「最重要要素」を必ず「文末」としてまとめること。
<時間配分目安:3分>
[問四] 「理由説明選択肢」(4択)
傍線部(4)「定家はちょっと怖い」について、「それはなぜか」を答える。無論、「原意消去」から。ここは「理由説明」なので、「怖い」ことの「直接的理由」として結びつかない「理由」を「消去」していく。各選択肢の「文末」⇒「だから」⇒「怖い」とつながるかどうかだ。チェックしたい。
(ア)「事物を認識させてしまうから」
(イ)「事物の姿かたちを違和感なく見せるから」
(ウ)「思念を浸透させてしまうから」
(エ)「(イメージを)わかりやすく示してくれるから」
「怖い」のだから、「違和感なく見せる」と「わかりやすく示してくれる」は結びつかないと判別できるはず。次に、「傍線部一文一部の法則」を確認すると、直前に「だから」とある。要は、その前が「理由」になっているわけだ。確認すると「『もうひとつの次元』の意識状態を引きずり出してしまう」とある。であれば、「思念を浸透させてしまう」は「消去」に決まっている。「同一意味段落」から他の部分の説明も誤っていないと判断できる。よって、「答え」は(ア)だ。「理由説明」でも「原意消去」は活用できるということだ。
<時間配分目安:2分強>
[問八] 「換言説明選択肢」(4択)
傍線部(8)の「芭蕉が池と一体化していた」とは「どのようなことか」を答える。先ずは「原意消去」。ここは「換言説明」なので、「芭蕉が池と一体化」という「比喩表現」の「原意」と、各選択肢の「文末」が結びつかないものを「消去」したい。照合する。
(ア)「池に生命の本質を見いだすことができたのである」
(イ)「世界の無限の広がりを自らの身体で理解することができたのである」
(ウ)「空間そのものをその身に感じ取ることができたのである」
(エ)「伝統的な美を眺望することができたのである」
「芭蕉」と「池」との「一体化」⇒「池に生命の本質を見いだす」と「伝統的な美を眺望する」は全く結びつかない。また、「池」なので「世界の無限の広がり」はふさわしくないと判別できるはずだ。それに対して、「空間そのもの」=「池」。「その身に感じ取る」=「一体化」と結びつく。「同一意味段落」を確認し、他の部分の説明も誤っていないことが分かる。したがって、「答え」は(ウ)でOK。ここは見事なる「一発消去」だった。やはり、「原意消去」は必須ツールだと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
【大問三】
- 時間配分:
例年【大問三】は「総合的知識問題」。3年前には、意表を突く「全6問/32択」の「文学史」のみの出題があったが(前代未聞。要注意)、本年度は昨年度に引き続きオーソドックスな問題で、「副詞の用法の正誤判別」(5問)と「空所補充の語句選択記述」(5問)。前者はとても平易で、後者は標準レベルの難易度だ。「全問正解」をしたいところだ。後者だけを確認してみよう。
[問二] 「空所補充の語句選択記述」(全5問。5択)
示されている(1)~(5)の文中の【 】に「入る語」を「語群」から選び「記述」する。「語群」は、「あいにく」・「いたって」・「いとも」・「皆目」・「さぞかし」。「答え」をチェックする。
(1)「コンクールの結果については【 】見当もつかない」⇒高校入試の定番⇒「答え」=「皆目」⇒「(あとに打消しの語を伴って)強く否定する気持ちを表す。まるっきり。全然」ということだ。
(2)「お褒めの言葉をいただき、妹も【 】喜ぶことでしょう」⇒やや悩むか?⇒「答え」=「さぞかし」⇒「さぞ」を強めていう語(「さぞや」)。
(3)「おかげさまで子どもたちは【 】元気です」⇒何ら問題はない⇒「答え」=「いたって」。
(4)「運動会は【 】の雨にたたられた」⇒これまたno problem⇒「答え」=「あいにく」。
(5)「彼は【 】簡単にマジックのトリックを見破った」⇒馴染みが薄いか?⇒「答え」=「いとも」⇒「非常に。きわめて」ということ。尚、本校ではこうした「副詞」などの語句の他に、「四字熟語」「故事成語」「ことわざ」「慣用句」等も完璧にしておくこと。
<時間配分目安:全問で2分強>
攻略ポイント
●「換言説明」「内容説明」「理由説明」などが連なる「選択肢設問」。同じような「設問」が続き、惰性で解いてしまう恐れがある。どう「攻略」するか? ポイントはいかに「解法」を的確に用いるかだ。「設問内容」の「細部」にまでこだわり、それぞれに応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが重要。基本的「解法」を完全に習得し適切に応用できるようにしておくこと。
●多種多様な「総合的知識問題」はどのように「対策」すべきか? 「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」、さらには、多彩な「副詞」の「意味」までも押さえておきたい(「オノマトペ」なども頻出)。当然、「敬語」も含め「文法」も完璧に。さらに、「文学史」などの「国語常識」も必須定着事項だ。「国語」の「合格ライン」は6割台半ば(2020年度までの3年間の「合格者平均得点率」は68.6%。21年度以降は非公表)、準備することが確実に得点に反映する「知識」での「高得点」は合格に大いに貢献する。
●「説明記述」にも対策は不可欠。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先順位を特定し、高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習すること。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は5000字程度(本年度は約4900字)。速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。