開成高等学校 入試対策
2024年度「開成高等学校の国語」
攻略のための学習方法
現代文に関しては、かなり高度な文章が出題される。では、『高度な文章』とはどのような文章のことをいうのだろうか。結論から言えば、『抽象的で極めて論理的な文章』ということである。論理的文章であるので、しっかりと文脈を辿っていく文章読解力があれば、論点が何なのか、筆者の論証の進め方、つまり「筆者の考え方」の軌跡を明確にすることは、それほど困難ではないであろう。
その際には、何度も反復して使用されている『単語』が重要になってくる。特に、『名詞』は重要であり、抽象名詞は筆者の考え方を補完するうえでその有用性は極めて高い。本文を一読する過程の中で、「これは」と思う『言葉』はマルで囲んだり、傍線を引いたりしておく習慣を日頃の学習においても定着させるべきである。
また、各設問に解答する場合には、設問の対象となっている個所の前後をしっかり読み込むことが不可欠である。また、キーワードは何か、繰り返し使用されている「言葉」が、文章全体の中でいかなる役割と意味を持たされているのかを見抜く力が必要である。
その力を習得するためには、論理的文章に読み親しむことである。例えば、各出版社で販売している「新書」を読むことも論理的文章読解の力を養成するには最適であろう。「新書」はさまざまなジャンルを扱っているので、読む場合には「自分の興味のあるジャンル」を選択することが基本である。長期休暇とか土日など、時間に比較的余裕のある時期に読み込もう。
秋以降になって時間的に余裕がなくなってきた場合には、そのような「新書」を読むことは得策ではない。では、どうすれば論理的文章の読解力を向上させることができるのか。
その場合には、高度な論理的文章読解の演習を通じて、課題文である本文をじっくり読み込むことである。少なくとも、入試問題として出題される文章であるので、論理的分析に耐えられない文章ではないことだけは間違いないはずである。
したがって、入試までに時間的余裕のない状態で、論理的読解力を高めようとする場合には、演習の問題文を徹底的に分析することである。
また、小説問題への対策にもここで触れておきたい。ポイントは、登場人物の心情把握をいかに正確かつ迅速に行うかである。そのためには作者がその人物をどのように描写しているかを素早く見極めることである。
例えば、性格的に明朗なのか陰湿なのか、発言内容を通じてその人物の考え方や価値観などを把握するということである。そのような総合的な分析作業を経て、登場人物の人格やキャラクターを鮮明にすることが可能になるのである。
特に、小説の場合には、間接的な情景描写を通じて人物の心情描写を行なう手法を用いるのが一般的である。入試問題においても、そのような情景描写を把握し、そのような描写を通じて、作者が登場人物をどのような特性・人格として描こうと意図しているのかを理解することがカギとなる。
いずれにしても現代文については、本文の分量もかなり多く内容的にも高度(特に論説文)であり、設問内容も記述式であるため、正確な文章読解力は当然のこととして、その上で「高度な文章表現力」を高校側が求める『力』であるということを十分認識するべきである。
その様な要求に対応するためには、過不足なく簡潔にしかも説得力をもった文章を手際良く書き上げる練習を行わなければならない。そのような文章表現力を磨くには、自分が書いた文章を誰か他人に「添削」してもらうことである。他人の客観的評価が加わることで文章作成能力は飛躍的に向上する。
古文についても、設問はほとんどが内容把握に関する問題であるので、古典(当然ながら漢文も含む)文法などの知識だけではなく、内容把握(当然ながら人物描写や心情描写の把握と理解)をしっかり行えるように近世の古典作品を扱った問題演習をしっかり行うことである。
将来的な大学入試を考えた場合、大学側が、というより社会が求める人材像の要件は、『自分で考え、説得力ある自分の言葉でいかに相手に自分の考え方を伝えられるか』ということである。そのような意味では、現代文の問題文をじっくり読み込む作業を通じて自身の論理性を鍛えてもらいたい。
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2024年度「開成高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は、現代社会に関する社会学的分野に関する論説文読解問題である。
すべて記述式問題。本文の本質を読み取り、的確に答案をまとめ上げる記述力と論理性が求められる。<19分>
大問二は、ダイバーシティーを扱った小説に関する総合問題である。
漢字の書取り問題以外は全て心情把握記述式問題である。登場人物の会話や情景描写を丹念に読み込むことが重要である。<19分>
大問三は、古文(漢詩)読解総合問題である。
『遠思楼詩鈔』からの出題。返り点などの付け方もしっかり理解しておくこと。<12分>
【大問一】現代社会に関する社会学的分野の論説文読解問題
- 時間配分:19分
出典は、『目的への抵抗』(國分功一郎著)。
- (問一) 内容把握記述問題である。<5分>
アーレンは「目的という概念の本質は手段を正当化するところにある」と指摘している。
(問二) 内容把握記述問題である。<6分>
全体主義とは「あらゆることを何かのために行い、何かのためでない行為を認めない」のである。
(問三) 内容把握記述問題である。<8分>
「コロナ危機において実現されつつある状態」とは、「不要不急と名指しされた活動」を「制限しようとする傾向が現代社会のなかにあった」のであり、そのような状態と「全体主義」との共通点が一体なんであるかを考察する。その共通点が更に増長する点に危機感をいだくのである。
【大問二】ダイバーシティー(多様性)を扱った小説総合問題
- 時間配分:19分
出典は、『M日』(岩城けい著)。
(問一)漢字書き取り問題である。<3分>
「頂戴」「濁」「締」「潤」の書き取りである。
(問二)心情把握記述問題である。<5分>
アビーの「このあいだの打ち上げパーティー、どうして来なかったの?」という問いに対して、「僕」は「いや、なんとなく」や「ちょっと、いろいろ」と曖昧(本当の理由に触れられたくない)に答えても、アビーは「僕」の心情を察することをしないのである。
(問三)心情把握記述問題である。<5分>
傍線②にある「自分の弱点」とは何かを考える。また直前にあるアビーの「コソコソ隠しているのは、あなたの方よ―」という発言内容を踏まえて論点を整理する。隠そうとしていることは「日本人である」ということであり、理由は「日本人は白人に比較して劣っている」という「コンプレックス」を「僕」が抱いているからである。
(問四) 内容把握記述問題である。<6分>
最後の部分でアビーが声高に叫んだ「白人が一番偉いって、あなたこそ、偏見を持っているんじゃない?!」と叫んだアビーこそが「僕」=自分であることに気が付いたのである。二人の共通点は、世間では多様性と言いながらも、アビー(アルメニア人)と「僕」(日本人)は認められていない、という点である。
【大問三】漢詩の鑑賞に関する総合問題
- 時間配分:12分
出典は、『遠思楼詩鈔』(広瀬淡窓著)。
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(問一) 現代語訳問題である。<1分>
「出づれば」は現代語訳では「出ると」となる。
(問二) 漢文の訓読問題である。<2分>
返り点の処理のルールを確実に把握しておけば、確実に得点(満点)を取ることも可能である。
(問三) 漢詩の形式問題である。<1分>
四句からなり一句が七言であることを手掛かりに考える。
(問四) 内容構造理解問題である。<2分>
起承転結のそれぞれの文展開における役割を正確に把握すること。
(問五) 内容把握記述問題である。<6分>
故郷から遠く離れた場所にある塾で勉学に励むことは辛いかもしれない。だが、この塾には仲間がたくさんおり、仲間と力を合わせ助け合いながら生活しているのである。したがって、辛いなどと言わずに楽しく勉強に励もう、という内容である。
攻略のポイント
大問一は、現代社会の状況とこれからの将来的展望を考えた場合、全体主義と共通点を有しているのではないか、という著作者の「危機感」を読み取ること。また、「現代社会」と「全体主義」との共通点とは何かを正確に把握すること。
大問二は、日本人である「僕」とアルメニア人である「アビー」が抱く「ダイバーシティー(=多様性)」に対する違和感(反発心)は何か。
大問三は、漢詩の鑑賞である。返り点の付け方や現代語訳を正確に訳出できるようにしておくこと。漢詩全体の内容を把握することは極めて重要である。そのためにも、漢文における文法的事項は正確に理解・習得すること。