アスリートの身体を取り巻く｢環境｣に焦点を当て、選手たちへのインタビューを通してスポーツを論じている。
本文では、｢環境｣が身体に新しい動きをもたらす生態心理学での｢アフォーダンス｣について論じている。馴染みの薄いテーマでやや内容が理解しづらいかもしれない。｢内容説明記述｣２問と｢内容説明空所補充｣１問という設問構成。以下、２問を検証する。

[問一]　｢内容説明の空所補充｣(全３問。｢抜き出し｣２問と｢説明記述｣１問)
傍線部(１)｢与える｣について、｢ここでのリハビリの話において、具体的に『何が何に何を与えるのか』｣を説明している。
｢説明文｣の中の空所①～③に入る｢適切な言葉｣を答える(①は｢五字｣、②は｢七字｣の｢抜き出し｣、③は｢10～15字程度｣の｢説明記述｣)。｢説明文｣は｢〔　①　〕にある性質が〔 　②　 〕に〔　　③　　〕という行動を与える｡｣となっている。
先ずは｢傍線部一文一部の法則｣に｢手がかり｣を求める(｢傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という読解の基本となる解法)。傍線部の直前直後は｢(『アフォーダンス』)は英語の動詞｢アフォード｣(与える)を名詞化した用語です｣となっている。つまり、｢何が何に何を与えるのか｣ということは｢アフォーダンス｣の内容説明だということになる。
そこで、｢同一意味段落｣を確認する(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手かがかり｣がある)。ここでの｢同一意味段落｣は、本文冒頭から傍線部の２つ後の形式段落までだとすぐに分かる。チェックしていくと、｢アフォーダンス｣とは｢周囲の環境のなか｣に存在する、人々の｢行動を可能にしているさまざまな性質｣だということが、｢膝から下を両脚とも切断した人｣の｢リハビリ｣として｢プールで泳ぐ｣ときの例を挙げて説明されている。そこから｢説明文｣に応じた内容を読み取っていくと、｢プールの水｣に備わった性質が、｢下脚のない全身｣に｢背と腰をひねらせる水平運動｣を｢与えている｣ことが分かるはずだ。
したがって、｢答え｣は①＝｢プールの水｣(５字)、②＝｢下脚のない全身｣(７字)、③はたとえば｢背と腰をひねらせる運動｣(11字)となる。
尚、｢抜き出し｣では｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず｢抜き出し範囲｣の全てを確認することが肝要だ｡

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で７分＞

[問二]　｢理由説明記述｣(｢60字以内｣指定)
傍線部(２)｢アフォーダンスがあるなと私が思えるようになった｣について、筆者が｢そう思えるようになった理由｣を｢六十字以内｣で説明する。
｢傍線部一文一部の法則｣で｢手がかり｣を確認すると、直後に｢(アフォーダンスがあるなと私が思えるようになった)一つのきっかけがあります｣とある。ということは、この後の｢同一意味段落｣で｢理由｣が説明されているはずだ。読み解いていきたい。
｢失明した男性の歩行訓練｣に同行した筆者の体験として、｢外の空気全体が唸(うな)るように、全身を包み、降りかかってくるような感じがして、街を歩くとはこういう音の中にいることなのだということをはじめて実感｣し、｢視覚障害者｣たちが屋外で｢空気中に満ちている多様な振動やその微細な変化｣を感じながら行動していることを体感できたと記している。つまり、こうした経験から筆者は｢アフォーダンスがあるなと思えるようになった｣ことが分かる。こうした内容を過不足なくまとめていきたい。
たとえば、｢失明した男性に同行し、屋外の空気中に満ちている多様な振動やその微細な変化を感じながら行動していることを体感できたから｡｣(59字)といった｢答え｣だ。
｢説明記述｣では｢最重要要素｣(｢理由説明｣では｢直接的理由｣)を必ず｢文末｣とすること。

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グリムとアンデルセンの童話をベースにして、話を現代の日本に置きかえた小説集の一篇。本篇は｢みにくいアヒルの子｣がベースで、小学生時のいじめられっ子２人が大人になって再会するお話。
本文では、山奥の小学校で転校生どうしだった｢翔也(しょうや)｣と｢僕｣(＝｢堤｣つつみ)が街で偶然出会い、｢僕｣は当時を回想し、｢堤｣が当時を語る様子が描かれている。文章は平易で内容は難なく理解できるはずだ。｢心情説明記述｣３問と｢内容説明記述｣１問、そして、｢漢字の書き取り｣という設問構成。以下、３問を確認したい。

[問一]　｢内容説明記述｣(｢字数指定｣なし。｢50～60字｣程度の解答欄)
傍線部(１)｢ただ、僕には一つ安心があった｣について、｢ここでいう『安心』とはどのようなことか｣を説明する。
傍線部は｢一文全部｣なので｢傍線部一文一部の法則｣は活用できない。そこで、先ずは｢同一場面｣に｢手がかり｣を求める(｢同一場面の直前直後に根拠あり｣が｢小説｣の｢解法｣の大原則だ)。直後に｢それが、同じクラスの翔也だった｣とある。つまり、｢それ｣＝｢一つ｣の｢安心｣＝｢翔也｣ということになる。｢同一場面｣は本文冒頭からの傍線部も含めた９つの形式段落なので、さらに内容を読み取っていきたい。
｢一度異物だとみなされたら｣徹底した排除されそうな｢田舎の空気｣の中で、｢転校生である僕｣はすぐにでも｢苛(いじ)め｣られそうで慎重にふるまっていたが、同じ｢転校生｣である｢翔也｣がいかにも｢苛めてください｣と言っているように立ち回っていて、｢僕｣は｢確実な標的が他にあれば、こちらに矢が飛んでくることはない｣と｢ほっと息をついていた｣ことが分かる。こうしたことを整理してまとめていけばいい。
たとえば、｢同じクラスに立ち回り方がいかにも苛めの標的となりそうな翔也がいるので、自分が的になる心配はないだろうということ｡｣(56字)といった｢答え｣になる。
｢小説｣では｢同一場面｣を的確に読み解くことが肝要だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：５分＞

[問二]　｢心情説明記述｣(｢字数指定｣なし。｢50～60字｣程度の解答欄)
傍線部(２)｢どうして人って水に入るとあんなに声が高くなるのだろう｣について、｢ここでの『僕』の気持ち｣を説明する。
傍線部での｢心情｣なので、先ずはその｢原意｣からつかんでいきたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここでは｢どうして～だろう｣と｢理解できずに冷静になっている｣といった｢心情｣が読み取れるはずだ。次に、このときの｢状況｣を｢同一場面｣から捉えていく。直前から、｢水に入って、声が高くなっている｣のは、｢プールの中ではしゃいでいるクラスメイト｣だと分かる。そんな彼らに対して、｢転校生｣である｢僕｣と｢翔也｣は｢完全に融け込むことはできない｣と感じていることも読み取れる。こうした｢状況｣を含めて、｢理解できずに冷静になっている｣という｢心情｣を的確にまとめればいい。
たとえば、｢周囲に融け込むことができない自分や翔也とは異なり、プールの中ではしゃいでいるクラスメイトを理解できない冷静な気持ち｡｣(58字)といった｢答え｣だ。
尚、｢小説｣では必ず｢心情｣が問われる。その際、｢セリフ｣⇔｢ト書き｣⇔｢動作｣⇔｢情景｣といった具合に多角的に読み取ることが肝要だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：５分＞

[問五]　｢漢字の書きとり｣(全５問)
本校の｢漢字問題｣は2005年以降４～５問(ただし、｢７問｣や｢３問｣の年度もあった。近年は難易度も含めて揺れ動いているので注意すること)。また、４年前までは問題文に｢ハネ･トメなど丁寧でない場合は減点されることもあります｣と｢注意｣が添えられていた。以降その注意書きはないが、配慮することは当然だ。｢答え｣を確認していく。
① ｢イッキョイチドウは人の目にさらされていた｣＝｢一挙一動｣⇒｢四字熟語｣の定番。正解できて当然。
② ｢コキュウが浅くなった｣＝｢呼吸｣⇒何ら問題なし。
③ ｢タイジされた｣＝｢退治｣⇒これまた平易だ。
④ ｢シンセイな儀式｣＝｢神聖｣⇒｢同音異義語｣に要注意。知っているに決まっているが、丁寧に記したい。
⑤ ｢昼間の光とはイシツ｣＝｢異質｣⇒やや難解か？ ｢性質の違うさま｣のことだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で２分＞