桜蔭中学校 入試対策
2024年度「桜蔭中学校の理科」
攻略のための学習方法
桜蔭中の満点は60点、際立った難問はないものの、標準レベル以上の問題が並んでいる。問題の形式としては、リード文・実験や観察の結果をもとに答える問題が中心であり、計算問題も含まれる。また、知識については時事問題を含めてやや細かい事柄まで問われることがある。
本校受験者は、まずは速い段階で知識を確実に固めて欲しい。その上で、問題演習をしっかり積んで実戦力を伸ばすことが必要である。一問一答式の問題だけでなく、実験や観察の結果を分析して解答する形式の問題演習や、計算問題の練習をしっかり行って頂きたい。また、年度によっては、実験器具の使い方について出題されているので、念頭において学習して欲しい。
分野毎の学習法は以下の通り。
<分野毎の学習法>
生物分野 本年度は植物の成長と光の色について出題された。知識と表の読み取りがポイントとなる出題であった。ここ数年を見ると、植物のつくりと働き、昆虫、鳥の渡り、動物の分類、動物の体温など各単元から幅広く出題されている。この分野の学習法としては、ヒトのからだの働き、植物の分類・つくり・はたらき、昆虫や動物のからだのつくりや分類など基本知識を確実に覚えることが第一である。光合成を調べるための実験方法、顕微鏡の使い方などについても覚えておきたい。さらに、環境問題など日頃からニュースにも気を配って欲しい。
地学分野 本年度は地層に関する出題で櫻蔭中学校周辺の地形や地層の重なりがテーマであった。ここ数年では、天体・気象・地層・川の水の働きなどについて出題されている。ISS・太陽フレア・太陽の動きと不定時法などユニークなテーマの出題も見られる。この分野の学習方法としてまずは、風・雲・四季の天気の特徴、星の名前と動き、月の動き、岩石の分類、地層のでき方などテキストに書かれている基本事項は確実に理解し覚えよう。さらに、エルニーニョ・ラニーニャ・フェーン現象などニュースや天気予報でよく使われる用語については、その内容を理解しておきたい。地震・火山などについても、テキストの内容だけでなく、近年の地震・火山の噴火についても学習しておきたい。
物理分野 本年は音の伝わり方についての出題で、的に当たる球の運動からドップラー効果について考えるという注目すべき内容であった。ここ数年では、台ばかりの原理・物体の運動・物質の膨張と収縮・てこのつりあい・ばね・手回し発電機・LED・電磁石・光についてなどの出題があった。力のつりあいと電気に関する出題が多い。この分野の学習方法としては、ばね・てこ・滑車・振り子・浮力などの基本知識を身につけた上で、計算問題の練習をしっかり行おう。電気については、豆電球の明るさ、方位磁針の振れなど基本的なものだけでなく、LED回路での電気の流れ方、手回し発電機の使い方についても学習して欲しい。また、今年度出題された音や光の基本性質もしっかり押させておきたい。
化学分野 今年度はものの溶け方について出題された。近年では金属と水溶液の反応・燃焼・硫酸銅など物の溶け方・中和・燃焼・熱の伝わり方・水の三態変化などに関する出題があり、水溶液についての出題頻度が最も高い。この分野の学習方法としてまずは、水溶液や気体の性質、指示薬の色の変化など基本知識を固め、中和・溶解度・金属の燃焼などの計算問題演習をしっかり行って欲しい。実験器具の使い方、実験の進め方も確認しよう。
過去問演習は時間も意識して取り組んで欲しい。その上で、できなかった問題についてはしっかりその原因分析を行い、同じ間違いをしないように対策して欲しい。分析や対策については、プロの家庭教師を是非活用しよう。
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2024年度「桜蔭中学校の理科」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問数は4、小問数は30程度で60点満点。試験時間は30分で例年通りであった。適語を答える問題、記号選択問題、計算問題が中心。記述問題も見られた。際立った難問はないが、計算問題や思考力を必要とする問題が多く含まれている。また、問題数も少なくはないので、時間内で処理するためには、過去問等を使って時間を意識した問題演習をしっかり積んでおくことが不可欠である。
【大問Ⅰ】化学 ものの溶け方
- 難度：標準
- 時間配分：8分
- ★必答問題
問１ 砂糖の結晶の絵を選択する問題。砂糖・食塩・ホウ酸・ミョウバンについては、結晶の形をテキストや資料集で確認し、覚えておこう。
問２ 食塩は温度による溶解度の差がほとんどないので、冷やしていってもほとんど結晶を得ることはできない。
問３ 濃さの計算。39.3÷139.3 より、約71.8％。
問４ 粒の小さな粘土は層にすると水がしみこみにくくなる。
問５ 濃い塩水に含まれる水は100×0.873 より87.3kg。87.3÷0.97 より流し込んだ海水は90㎏。90－87.3より、海水に溶けていた塩は2.7㎏。砂の表面から海水に
とけこむ塩の量は12.7－2.7より10㎏。10÷0.03より、四捨五入して333.3㎏の海水が必要であることがわかる。
問６ 体積の計算をすると、80×80×3.14×30÷1000より、約600Lとなる。
問７ 液面の水が蒸発しことにより、結晶ができたと考えられる。
ものの溶け方に関する出題で、揚浜式製塩を中心とした長めのリード文を読んだ上で解答するという内容。結晶の形などについての知識・問題を読み取る力・濃さを中心とした計算力が必要となる。際立って難しい問題ではないが、基本が確実に身につき、それを運用できるかどうかで明暗が分かれる内容。
【大問Ⅱ】生物 植物の成長と光の色
- 難度：標準
- 時間配分：6分
- ★必答問題
問１ 野菜を植物工場で育てる利点についての記述問題。季節・天候に左右されることなく、いつでも収穫できる。
問２ 発光ダイオードは略称で「LED」。
問３ 2012年に日本人の3人が青色発光ダイオードの発明・実用化でノーベル物理学賞
を受賞した。
問４ 表の読み取りと考察問題。
①表より、効果が最も小さいのは緑光であることは明らか。
②全体の重さ÷葉の枚数 で比較すると、青色光の効果が最も大きい。
③表より、茎の長さが最も長くなっているのは赤色光である。
問５ 気孔についての説明文の空欄補充問題
ａ：水や栄養の吸収が盛んになるという説明より、「蒸散」
ｂ：取り入れてでんぷんを作るより、「二酸化炭素」
植物の成長と光の色についての出題。前半は知識問題で時事的な内容も含まれている。後半は表の読み取りと考察問題で、表のどの数値を使って比較すればよいのかの判断がポイント。
【大問Ⅲ】地学 地層
- 難度：やや難
- 時間配分：7分
問１ 水平器の中の空気の玉は高さの高い方に移動する。
Ｏ小学校とＮ小学校を比較すると、午後の日当たりはＮ小学校の方がよい。地面の粒はＯ小学校の方が大きく水はけがよいと考えられる。運動場の傾斜は、Ｏ小学校では校庭の北と南の側溝に向かって傾いており、Ｎ小学校では校庭の中央に向かって傾いている。
問２ ⅰ ａ：噴火によって飛ばされたより「火山灰」、
ｂ：流水によって運ばれてきたより「たい積」、
ｃ：②の粘土質ローム層より①の関東ローム層の方は粒が大きく水はけがよい、
ｄ：古い層の方がより押し固められていると考えられる。
ⅱ 直径が2㎜以上でレキ、0.06㎜～2㎜で砂、0.06㎜以下では粘土と呼ぶ。
ⅲ ③の層のれきは川の流れで運ばれてきたので、丸みを帯びている。
ⅳ ③の層はれき、④の層は粘土の層なので、粒の小さな粘土の層の方が深かったと考えられる。
ⅴ 問題文より、⑤の層は④の層ができてからかなり経ってからできたことがわかる。また⑤の層ができた時は海であったと考えられる。
問３ 地下水が採取できる場所は、水はけの悪い粘土層の上である。
地層に関する出題。櫻蔭中学校周辺の地形や地層の重なっている様子を示した図と説明文を手掛かりに時進めていくという内容が中心。持っている知識の運用力が試される内容になっている。
【大問Ⅳ】物理 音の伝わり方
- 難度：やや難
- 時間配分：9分
問１ 振動が大きくなることにより、ビーズの動きも大きくなると考えられる。
問２ ⅰ 0.002秒間で1回振動しているので、1÷0.002より1秒間の振動数は500回。
ⅱ 音を高くするので振動数が多くなる。振幅とは関係ないことに注意。
問３ ⅰ 球は秒速8mなので、0.2秒で1.6mずつ進む。的は秒速2mなので、0.2秒で0.4mずつ近づいてくる。
ⅱ 出会いの旅人算と同様の計算をすればよい。18÷（8＋2）より球が的に当たるのは1.8秒後。その時の位置は8×1.8 より、14.4m。
ⅲ 2番目の球を発射したとき、球と的の間は16ｍなので、16÷（8＋2）＋1より球が的に当たるのは2.6秒後。3秒後についても同様に計算すればよい。
また、球が的にあたる時間の間隔は0.8秒となり、発射している1秒間隔より短くなっていることがわかる。
問４ 計算結果より、発射装置と的が近づいているときは、発射の1秒間隔に対して球が的に当たる時間の間隔は短くなり、発射装置と的が遠ざかっているときは、1秒よりも長くなる。
問５ 問４までの内容を音に結び付けて考える問題。音源が近づいているときは本来の音よりも高く、音源が遠ざかっているときは本来の音よりも低く聞こえる。これをドップラー効果と呼ぶ。
前半は音の振動数と振幅について、後半はドップラー効果を球と的の間の距離の変化を使って考えさせる問題。問題文がかなり長いが、丁寧に読み、誘導に従って解き進めること。
攻略のポイント
本校理科の入試問題の特徴として、どの分野の出題であっても実験や観察の結果・表やグラフをもとに考察させるタイプの問題が多いという点があげられる。問題文・データを読み取る力が必要となる。また、細かい知識が必要な問題や、やや難度の高い計算問題が出題されることがある。
攻略ポイントとして、まずはかたよりなく幅広い知識を身につけることが必要となる。その上で、計算問題や実験・観察問題の練習にも時間をかけたい。ここ何年かの出題を見ると力学や化学だけでなく、地学・生物分野でも計算問題が出題されることがあるので、しっかり練習しよう。
30分という試験時間に対して問題数が多く、問題文の読み取りに時間を要する出題も多い。できる問題から解答欄を埋めていくといった作戦をしっかり立てて欲しい。そのためにも、過去問などの実戦的な演習か必要不可欠である。
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