生きるために必要な｢知性｣にはどのように出会ったらよいのだろうか？――多数の著名人にインタビューを行い、ひとと人としてぶつかり合った著者が、ありふれた日常にある｢からだ｣と｢世界｣へ問いかけ続けるという新たな身体論を展開している。
本文では、客観的なものの見方について定義し、客観性に寄りかかりすぎて、｢自分が観る｣ことの大切さを忘れてしまう懸念について論じている。難解な語句はあるが、｢注｣を活用して内容を理解したい。本校としては珍しく多種多様な小問がある大問だ。いくつかの設問を検証してみたい。

[問一]　｢空所補充の語句選択肢｣(５択)　｢総合的知識問題｣
｢文脈に応じた語句判別｣だ。本文中の空所 ① に｢入る言葉｣を答える。
各選択肢は、(ア)｢一般性｣･(イ)｢厳密性｣･(ウ)｢消極性｣･(エ)｢独善性｣･(オ)｢楽観性｣。空所前後の｢文脈｣を正しく読み取り、｢入る言葉｣の意味内容を捉(とら)えて、それにふさわしい｢答え｣を特定していく。確認する。
｢『だから私は正しく、お前は悪いのだ』というために客観性を用いるようになりさえする｡つまり客観的事実から 　① 　が生じてしまう｣⇒｢私は正しく、お前は悪いのだ｣＝ 　① 　⇒｢答え｣は｢他人の利害や立場を考えず、自分だけが正しいとする考え方｣を表す((エ)の｢独善性｣だと判別できるはずだ。
尚、他の選択肢の語句も含め、曖昧(あいまい)なものがひとつでもある諸君は｢語彙力不足｣を猛省し、精進せよ。

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[問三]　｢内容説明記述｣(｢字数指定｣なし｡｢30字ほど｣の解答欄)
傍線部③｢でも、それは違うと気づいたのです｣について、｢筆者は、山口さんの体験をどのようなものとして受け止めたのか｣を説明する。
先ずは｢指示語｣を開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から、｢それ｣＝｢山口さんの被爆体験を客観的に捉えようと、実際の状況を検分し推論しようとすること｣だと分かる。筆者は、｢山口さんの体験｣がそのように｢客観的｣に捉えられるものではないと｢気づいた｣ことになる。では、筆者は｢山口さんの体験｣をどのようなものとして捉えたのか？ ｢同一意味段落｣から読み解いていきたい(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢手かがかり･根拠｣がある)。
ここでは、直後の６つの形式段落だ。チェックすると、｢その日の広島のその時その場にいたのは、世界中でたったひとり山口さんだけだった｣｢山口さんが見聞きした以外に世界はなかった｣｢客観的になど語りようのない出来事が本当に起きたのだと理解した｣｢そのときの体感を通じて手渡すしかない事実がそこにあった｣などといったことが述べられている。こうした内容を整理して｢過不足なく｣まとめていきたい。
たとえば、｢客観的に語りようがなく、実際の体感を通じて手渡すしかないもの｡｣(31字)といった｢答え｣だ｡
｢同一意味段落｣をいかに丁寧に読み取ることができるかがポイントになる。

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[問四]　｢理由説明抜き出し｣(｢一文｣の｢最初の５字｣指定)
傍線部④｢ひどく混乱した状況を冷静に考える上で客観性はとても重要です｣について、｢そう言えるのは筆者が『客観性』をどのようなものだと捉えているか｣が分かる｢一文｣の｢最初の五字｣を抜き出して答える。
｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んで探していくことがポイントだ。先ずは｢内容｣、設問のとおりだが、要は｢筆者が捉えている『客観性』の内容｣だ。次に｢抜き出し範囲｣、無論、｢同一意味段落｣だ｡ここでは、傍線部④からの４つの形式段落だと判断できるはず。丁寧に探していく。すると、最後の段落に｢おそらく客観性が大事なのは、それが広場のようなものだからで、そこに各人の思う『こういう事実があります』を置いて、その上で話し合える余裕をもたらすためにあるのではないかと思うのです｡｣という一文がある。筆者が｢客観性｣を｢広場のようなものだ｣と捉えていることが分かり、それは｢話し合える余裕をもたらすためにある｣のだからこそ、｢混乱した状況を冷静に考える上で重要｣ということになる。まさに、設問が求めている内容だ。｢抜き出し範囲｣には他に候補はない。
よって、｢指定字数｣を勘案して、｢答え｣は｢おそらく客｣(５字)になる。
尚、｢抜き出し｣では｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず全ての｢範囲｣を確認することが肝要だ

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引っ込み思案で自信のない小学６年生の｢玉田(たまだ)アオイ｣が、｢子ども食堂｣に通う転校生の｢八神(やがみ)カンナ｣などの周囲の人々と関わるうちに少しずつ行動したり、考えたりすることができるように成長していく物語。
本文では、仲のよかった｢カンナ｣から引っ越しをすると告げられる｢アオイ｣の姿が描かれている。内容は難なく理解できる。｢説明記述｣が４問続き、最後に｢選択肢｣という大問構成だ。手際よく解き進めていきたい。いくつかを確認してみたい。

[問一]　｢心情説明記述｣(｢字数指定｣なし｡｢60字ほど｣の解答欄)
傍線部①｢あーあ、あーあ｣について、｢このときアオイはどのような気持ちか｣を説明する。
｢あーあ、あーあ｣と表現される｢心情｣、何かを｢嘆いている｣ことが読み取れるはずだ。どのような｢状況｣なのかを｢同一場面｣から読み取りたい(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。直前から、仲のよい｢カンナ｣の引っ越しが明日に迫り、｢アオイ｣は｢もしかして、もう会えないかもしれない｡会いたいけど家を知らない｡それに、自分のさびしさなど知らずに、引っ越して貧しさから抜け出せると、いきいきとはりきっているカンナなんて……｣などと｢嘆いている状況｣だと分かる。｢もどかしさ｣や｢さびしさ｣と｢不満｣や｢なげき｣といった複雑な｢気持ち｣だ。以上のような説明すべき要素を的確にまとめていく。
たとえば、｢引っ越すカンナに会いたいけど会えないもどかしさや、自分のさびしさなど知らずにいきいきしていることへの不満といった気持ち｡｣(60字)といった｢答え｣になる。
尚、｢説明記述｣では、必ず｢最重要要素｣(｢理由説明｣では｢直接的理由｣)を｢文末｣とすること。

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[問二]　｢理由説明記述｣(｢字数指定｣なし｡｢30字ほど｣の解答欄)
傍線部②｢気まずくて｣について、｢アオイが『気まずく』感じたのはなぜか｣を説明する。
先ずは｢傍線部一文一部の法則｣に｢手がかり｣を求めたい(｢傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という読解の基本となる解法)。｢一文｣の直後に｢(気まずくて)小さくなった｣とある｡何に対してか？ 直前から｢わたし(＝アオイ)をちらりと見たカンナ｣に対してだと分かる。では、｢カンナ｣に対して｢気まずく｣感じたのはなぜか？ ｢同一場面｣から読み取っていく。直前直後から、｢アオイ｣の父の店である｢玉田カレー｣はすでに休業していたのに、｢休むかも｣と｢見栄をはって｣隠していたことがばれて、｢カンナ｣から冷ややかに思われていることを後ろめたく感じて｢気まずくて小さくなった｣という｢状況｣が分かる。以上のようなことを｢理由説明｣として簡潔にまとめていけばいい。
たとえば、｢見栄で店の休業を隠したことがカンナにばれて後ろめたかったから｡｣(31字)といった｢答え｣だ。
｢理由｣としての｢心情｣を的確に読み取りたい。

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[問四]　｢空所補充の条件付き理由説明記述｣(｢70字以内｣指定｣)
傍線部④｢あわてるカンナ｣について、｢なぜカンナは『あわてた』のか｣を｢七十字以内｣で説明する。
｢条件｣は｢解答欄の空所に合うように｣説明すること。
解答欄は｢ 七十字以内 ことによって、思いもよらず、アオイからとげのある反応を示されたから｡｣となっている。無論、先ずは｢カンナ｣が何に｢あわてたのか｣を確認する。｢カンナ｣が｢ごめん、こんな気持ち、アオイにはわかんないよね｣と言ったことに対して、｢アオイ｣が｢ふうん｡そんなふうに、わたしのことを思ってたんだ｣と反応したことだと分かるはずだ。つまり、自分の言葉が思いがけず、｢アオイ｣を突き放したように誤解されてしまったことに、｢カンナ｣は｢あわてた｣ということになる。
次に、｢カンナ｣の言った｢こんな気持ち｣を含めて、｢同一場面｣から｢状況｣を読み取りたい。引っ越しで会えなくなるさびしさで｢暗い顔｣をしていた｢アオイ｣に、｢カンナ｣はわざと｢はずんだ声｣で｢わたしね、ワクワクしてんだ｡じいちゃんちに行ったら、ふつうの暮らしができるんだよ……｣と夢中になって自分のことばかりを話していたことを謝るつもりで｢ごめん、こんな気持ち……｣と言ったことを｢誤解された｣と読み取れる。あとは、解答欄の｢文脈｣を考慮して空所にあてはまるように｢指定字数｣に応じて｢過不足なく｣まとめていく。
たとえば、｢暗い顔のアオイにわざとはずんだ声で、引っ越せばふつうの暮らしができると自分のことだけを話していたことを謝るつもりで『わかんないよね』と言った(ことによって、思いもよらず、アオイからとげのある反応を示されたから｡)｣(70字)といった｢答え｣になる。
尚、｢条件｣は｢手がかり･ヒント｣でもあると捉えよ。

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[問五]　｢心情説明選択肢｣(５択)
傍線部⑤｢テーブルの上に百円玉をコトリと置く｣について、｢このときのカンナの気持ち｣を答える。
｢選択肢問題｣は｢消去法｣が大原則｡先ずは、｢原意消去｣を試みたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡本問は｢心情説明｣なので、｢テーブルの上に百円玉を置く｣という動作の｢原意｣と直接結びつかない｢心情説明｣を｢消去｣することになる。各選択肢の｢文末｣と照合する(｢選択肢｣の｢説明｣では｢文末｣が｢最重要要素｣)｡
(ア)｢仲直りはできないという思いがある｣､(イ)｢お金を払(はら)いたいという思いがある｣､(ウ)｢一方的にごちそうされるわけにはいかないという思いがある｣､(エ)｢お礼をさせてほしいという思いがある｣､(オ)｢わからせてやりたいという思いがある｣｡
さあ、どうか？　｢テーブルの上｣に｢百円玉を置く｣のだから、｢お金を払いたい｣と｢一方的にごちそうされるわけにはいかない｣以外は｢消去｣できるはずだ。２択になった。次に｢同一場面｣をチェックすると、直後に｢こんだけしかないけど、タダで食べるのは気をつかうから｣という｢カンナ｣の言葉がある。よって、｢お金を払いたい｣は｢消去｣可能だと分かる。念のために、他の部分の説明を｢同一場面｣で確認したい｡特に誤ってはいないと判断できる。
したがって、｢答え｣は(ウ)になる。見事で華麗なる｢一発消去｣だった。｢原意消去｣を完全にマスターして、大いに活用すべし。
尚、｢小説｣では必ず｢心情｣が問われる。その際、｢セリフ｣⇔｢ト書き｣⇔｢動作｣⇔｢情景｣といった具合に多角的に読み取ることが必須だと心得よ。

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｢漢字の書きとり｣(全10問)
本年度は本校としての｢平易なレベル｣だ｡本校志望者は｢全問正解｣が必須。示されている｢例文｣の｢カタカナ｣の部分を｢漢字｣に直す。やや分かりづらいものだけをチェックしてみたい。
(２)｢力士がドヒョウ入りをする｣＝｢土俵｣⇒未定着の諸君は、｢土｣の｢俵(たわら)｣と覚えておこう。
(４)｢土地の争いをチョウテイする｣＝｢調停｣⇒｢話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続｣のこと｡
(６)｢都市がフッコウする｣＝｢復興｣⇒これは問題ないはず｡
(８)｢紙のウラに書く｣＝｢裏｣⇒｢13画｣、一画一画を丁寧に示すこと。
ひとつでも不安なものがある諸君は、未だ｢本校レベル｣に達していないと認識し、精進すること。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で３分＞