慶應義塾女子高等学校 入試対策
2024年度「慶應義塾女子高等学校の国語」
攻略のための学習方法
全体的に言えることは、的確で迅速な「記述力」が必要であるということである。したがって、いかにして合格できる「記述力」を自分のものにできるか、さらにそのスキルを飛躍的に向上させることが可能になるのかを、一緒に考えてみたい。
① 合格のための読解力とは
いわゆる「読書」とは違って、入試における文章読解力は単に「読書量」を増やせばよいということではない。
設問として選ばれた文章は、入試問題のために選択された文章である。したがって、その文章とは初めから最後まで極めて「論理的」であり「説得力」のある文章である。
そのような文章を確実に読み解くための練習は、日頃の勉強の中で同様な文章を読む中で特に留意しなければならないポイントは「比喩」である。比喩には大別すると「直喩」と「暗喩」とがあり、合格答案作成するうえで暗喩に関して的確に把握することが重要であり不可欠な要素である。
また、「論理を正確に追う力」も必要である。設問の文章のジャンルが如何なるものであろうとも、入試問題に採用されるような文章は基本的には論理展開が明確な文章である。
したがって、文章を読み進めながら形式段落ごとの文頭にある接続詞(順接と逆接)を意識することが文章の流れを把握するうえで絶対に必要である。
さらには、キーワードを明確に押さえておくことである。キーワードの把握方法は、一つには何度も繰り返し使われている単語であること、筆者が主張したい内容を端的に表現している単語であることがそのポイントである。
② 合格のための文章作成力とは
設問の文章をしっかり把握できたとしても、問題は「合格できる適切な答案」作成である。筆者の主張は理解できても、その理解に基づく設問に対する記述答案作成力が必要であるからである。
ここで考えなければならないことは「合格可能な記述答案」とは、「第三者に対する説得力ある文章」ということである。答案は、基本的に他者である「採点者」が読むものである。せっかく本文の内容を正確に理解・把握していたとしても、設問に適合する答案を書くには「採点者」にしっかり自分の考え方を伝えなければ、合格は獲得できない。密度の濃い、無駄のない文章を書きあげなければならない。
具体的には、文章をより豊かな内容のあるものとするために自分の語彙力を向上させなければならない。語彙力はいかにして向上するのか。それは、日頃から日本語を意識することであり、深みのある言葉を自分の知識の中にしっかり蓄積していくことである。そのような練習を継続して行うことで、自身が書く文章が説得力のある魅力的なものになるのである。
③ 作文(小論文)を書く上で大切なこと
600字以内の作文(小論文)を課題として出題されている。小論文対策は、必ず行うこと。そのような対策を講じないで入試本番で対応しようとしても、合格答案は作成できない。
半年前くらいから、あるテーマに対する小論文(500~700字)を書く練習を始めなければならない。その際重要なことは、自分の主張を論理的に矛盾も飛躍もなく客観的に書けるか否かということである。自己満足の文章であっては合格答案とは言えない。
重要なことは、自分の主張をいかにして相手(採点者)に納得してもらうかということである。論理の展開、言葉の的確な選択、柔軟な発想力などを有機的に結合させる力が必要である。そのような文章を書けるようになるためにも、常に身の回りのことに問題意識をもって捉える「癖」をつけることである。これまでは、何気にやり過ごしてきた事象を自分の中で捉え、咀嚼したうえで「文章」という形で説得力をもってアウトプットするのである。友人の発言、先生との会話、社会で惹起する様々な事件・事故。自分の頭で考える素材は身の周りにあふれている。
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2024年度「慶應義塾女子高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
試験時間は60分。大問1は、随筆文の読解問題<31分>。大問2は、論説文の読解問題<29分>。
9割以上が記述問題である。各設問とも字数指定があるわけではなく「説明しなさい」という設問であるため、過不足ない記述を心掛けなければならない。
さらに、作文(小論文)として60分間で意見をまとめる課題(600字以内)が出題されている。
【大問1】 自伝的随筆文の読解問題
- 時間配分:31分
出典は、竹久夢二著『新方丈記』。
問一は、漢字の読み書き問題<3分>。
標準的な漢字である。「テッパイ=撤廃」、「趣(き)=おもむ(き)」、「俗吏=ぞくり」、「足袋=たび」、「カンショウ=感傷」、「イカク=威嚇」である。
問二は、文章内容把握問題<2分>。
「生活を質素」であるので「衣食住」は「質実」である。
問三は、ことわざに関する問題<2分>。
「私達にとって欧州戦争」をまったく関係のないこととして感じることを「対岸の火事」という。
問四は、内容把握記述問題<3分>。
関東大震災直後の状況を考える。震災によって東京の様子は一変したのである。すべてが失われた中で、人々はとても辛い思いをしているのであり、そのような状況の中で虫さえも何か遠慮がちに鳴いているように筆者には感じられたのである。
問五は、内容把握選択問題<2分>。
筆者は「上野公園、芝公園、……これ等の森の木が、どんなに猛火と戦ったか」を「感ぜずにはいられない」のである。
問六は、内容把握記述問題<3分>。
本文に「商業主義、唯物主義」に基づく「文化」であり、「自然の風景を無視して利殖」のための文化である。
問七は、内容把握記述問題<3分>。
「人畜の損傷が多かったのは、電気、瓦斯、水道、油等」の機械文明が、関東大震災の被害をさらに大きくしたということである。
問八は、内容把握記述問題<3分>。
「商業主義」とは何かを考える。「金の高いものを身につけなければ」「肩身を狭くおもって」しまう考え方である。
問九は、内容把握記述問題<3分>。
本文直後に「相扶け相励まして、……一つの火を中心に幾家族かが、生活することは、やがて来る時代を暗示」しているのである。
問十は、文学史の問題<1分>。
三大随筆とは「枕草子」「方丈記」「徒然草」である。
問十一は、内容把握記述問題<3分>。
「宝」とは「金品、財産」のことである。「恐れ多く」とは「(財産を失ってしまうことに対する)心配する気持ちが募る」ということである。
問十二は現代語訳選択問題<3分>。
「しめ」は「占め」であり、「業」とは「生業」のことである。また、「やどす」は「宿す」であり「とどめる」という意味である。
【大問2】論説文の読解問題
- 時間配分:29分
出典は、長谷川眞理子著『進化的人間考』である。
問一は、漢字の読み書き問題<2分>。
「シンエン=深遠」、「カイム=皆無」、「乏(しい)=とぼ(しい)」、「素振(り)=そぶ(り)」である。
問二は、内容把握選択問題<2分>。
「一頭一頭のチンパンジーは世界に対してかなりの程度の理解をもっている」が、その理解を「共有しようと」しないのである。つまり「互いに勝手に動いている」のである。
問三は、内容把握記述問題<3分>。
「三項表象」について理解しよう。「『私』と『あなた』と『外界』という三つ」があり「『私』が『外界』を見ていて『あなた』も同じその『外界』」を見ているのであり、「私」と「あなた」が「『外界』に関する心的表象を共有していることを理解し合う」ことである。
問四は、語句問題<2分>。
「任意」の対義語を選択する問題である。自由な意思に基づくことであるので対義後は「強制」である。
問五は、内容把握記述問題<5分>。
「……このため」とあるが、この内容は「一頭一頭のチンパンジーは世界に対してかなりの程度の理解をもっている」が、その理解を「共有しようと」しないからである。
問六は、内容把握記述問題<4分>。
「最大公約数」とは複数の人間において共通してみられる事象、特性のこと。
問七は、内容把握記述問題<4分>。
「共同幻想」とは何かについて理解する。つまり、集団の中で共通する「認識」を共有することであり、共同で思い込むことである。
問八は、内容把握問題である<4分>。
3(○) 「対称を指し示す記号で意味を見出すこと」ができる動物は、「ヒト以外にはいない」のである。
4(○) 文法によって「様々な記号を結びつけて、さらなる意味を生み出す」のは、ヒト以外の動物にはできないのである。
問九は、品詞分解問題<3分>。
この設問形式は例年出題されている。動詞の活用、助動詞、助詞など基本的な文法知識をしっかり押さえておくこと。
攻略のポイント
高度な記述力が必要である。設問の殆どが記述問題であるため、本文の内容をしっかり把握することはいうまでもないが、そのうえで自分の考えを的確にまとめ上げる文章力が必要である。字数指定がないため、適度な解答のボリューム感が必要であり、短かすぎず長すぎない解答を心掛けなければならない。そのためにも、日頃から自分の考えを「文章化」する習慣をつけておくことが必要となる。
わずかな時間を利用して、その日のことを50~70字程度でまとめる練習を行うと、確実に文章を書くスキルを高めることが可能になる。
また、漢字の書き取り読み取り問題も必ず出題されるため、ことわざなどの知識問題は得点源として確実にしておきたい。
さらに、600字の作文(小論文)も出題されているので、小論文を書く練習をしておくこと。書き上げた小論文は、誰かに添削してもらうのが良いであろう。