慶應義塾志木高等学校 入試対策
2024年度「慶應義塾志木高等学校の国語」
攻略のための学習方法
高校入試における頻出分野は論説文と小説である。この2分野の文章の攻略法について以下に述べてみたいと思う。
① 論説文を読み切るために
(1)「論説文は難しい」と受験生の多くは思っていないだろうか。なぜ、そのように受験生は思ってしまうのだろうか。理由は様々あるだろうが、本文に展開されている難解な論理や普段使い慣れていない用語などが、受験生の理解を阻んでいると思われる。「論説文は易しい」とまでは言わないが、入試問題として出題される論説文は、筆者の主張も明確で論理展開も整然としている。重要なことは、そのような特質のある文章を如何にしたら試験時間内に手際よく読み込むことができるかである。
(2)前項で確認したように、入試で扱う論説文は極めて論理性が高い。そのような文章を理解するためには、自分自身が論理的思考力を身につけなければならないということである。そのためには、日頃から物事を論理的に考える習慣を付けておくことが重要である。論理的思考力を付けるためには、「自分の頭で考える」ことが必須である。最近は、様々な情報伝達ツールが氾濫しており、必要な情報は手間暇掛けずに容易に手に入る。そのような利便性の高い環境の中で、物事を論理的に考えるためには安直にそのような便利なツールに頼らず、自力で試行錯誤を繰り返しながら結論を導き出すことである。
(3)上記のような作業を繰り返すことで、「論理の道筋」を自分で組み立てられるのである。それができるようになれば、自力でも論理的な文章を書けるようになり、入試問題で扱われる論説文に対する対策も効率よく習得できるだろう。そして、その結果としては単に論理的文章が読めるようになるだけではなく、そのような論理的思考に裏付けられた記述問題における力も高まるのである。
(4)論理性を高めるためには、論理性の高い文章を読むことが必要であると述べた。具体的には、岩波書店や筑摩書房などから出版されている「新書」を読むことが効果的である。中・高生向けの「ジュニア・新書」も発行されているので、自分の興味のある分野の新書を実際に手に取ってみて中身をぜひ見てもらいたい。
自然科学分野は言うまでもなく、社会科学系の内容もたくさん網羅されている。数冊で構わないので、気に入った新書を手に取り読了してもらいたい。さらに言えば、読書録のような文章(400語=原稿用紙1枚)にまとめ上げる訓練も必要である。その文章を他人(学校の国語の先生)に見てもらうと、自分の文章作成上の弱点補強にも役立つことは間違いない。
② 小説は心情把握を重点に
(1)高校入試で扱われる小説のポイントは「心情把握」である。登場人物の内面の心理状況がどのように変化してゆくのかを的確に押さえ、把握できるかが合否を分けると言える。その心情描写は、「そのとき太郎は、心から落胆したのである」という具合に「直接的」ではない。情景描写や他の登場人物との会話のやり取りを通じて推量するしかない。そのためにも自分の「感性」を研ぎ澄まさなければならない。
(2)「感性」を研ぎ澄ますためにはどうすればよいか。一口で言うならば「感動する心を失わない」ことである。物事を見て感動しない心では「感性」は磨かれない。小説の本文を読みながら、情景が浮かんできて登場人物の動きが手に取るように理解できるようになるためには「感動する心」が必要である。
(3)小説の文章を理解するためには、「比喩」の表現を活用したい。「比喩」には「直喩」と「暗喩」がある。文章中にあるこれ等の表現技法をしっかり理解し、内容が把握できるようになると小説の読解・理解力は格段に伸びる。日頃から文章を丁寧に読み込み、「比喩」、「擬人法」、「倒置」などの表現方法は意識して読むような習慣を付けることが重要である。
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2024年度「慶應義塾志木高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】小説に関する読解問題<24分>。人物の心情把握をしっかり行うこと。
【大問2】論説文に関する読解問題<20分>。教育・心理的分野(教育)に関する出題である。
【大問3】古文に関する読解問題<9分>。『井蛙抄』からの出題である。
【大問4】文学史に関する知識問題<7分>。作品と作家等に関する知識問題である。
【大問1】小説の総合読解問題
- 時間配分:24分
出典は、モーパッサン著/太田浩一訳『宝石/遺産』である。
問1は、慣用句に関する問題である<2分>。
Ⅰ 「目を血走らせる」とは、目が充血して真っ赤になることである。
Ⅱ 「顔をしかめる」とは、不満などがあり顔にしわを寄せることである。
Ⅲ 「喉が張り裂ける」とは、大きな声を出すことである。
問2は、内容把握選択問題である<2分>。
文脈を正確に把握して適切な会話文を選択する問題である。会話の内容を吟味して心情面の考察も行うことが重要である。
問3は、慣用句に関する問題である<2分>。
「身も世もない」という慣用句は、「我が身のことも、世間の手前も考えられないほど、ひどく取り乱した様」という意味である。
問4は、内容把握に関する問題である<3分>。
「神父は法衣の袖をまくりあげて、若い女性のそばへ戻った」及び「婦人はあいかわらず呻いて」いたのであるから、神父が赤ん坊を取り上げるための準備をするために時間がたったことを意味している。
問5は、内容把握に関する選択問題である<2分>。
3人の少年たちは神父の言いつけを破ってしまったのであり、更なる罰を神父は少年たちに与えたのである。
問6は、心情把握に関する選択問題である<2分>。
神父の「赤ん坊を取り上げた」ことに対する心情を考える問題である。このときの神父の心情は安堵・歓喜であり、「おろおろしながら」より困憊・狼狽となる。
問7は、内容把握に関する選択問題である<3分>。
神父は少年たちの母親たちに、赤ん坊を取り上げたことに対してどのように説明すればよいかわからなかったのである。
問8は、心情把握に関する選択問題である<3分>。
「訊くのはあとにして」という発言内容から、「時間を稼ごう」としている母親の心情が読み取ることができる。
問9は、内容把握に関する記述問題である<3分>。
ブリドワは最年少であり、出産の仕組みなど全く理解していないのである。母親は「(赤ちゃんは)キャベツから生まれるの」などの発言、つまりはぐらかすような発言をしているのである。
問10は、内容把握に関する問題である<2分>。
赤ちゃんを取り上げたのは「神父」である。
【大問2】教育・心理学的分野である教育に関する論説文読解問題
- 時間配分:20分
出典は、森博嗣著『科学的とはどういう意味か』である。
問1は、漢字の書き取り問題である<2分>。
「潰」「偏」「促」「魅了」「抽象」である。
問2は、語句に関する問題である<1分>。
「まことしやかに」とは、あたかも言動が真実であるかのように感じられるさまのことである。
問3は、内容把握に関する抜出し問題<2分>。
大人は「歳を取れば、経験を積むことで、ある程度は非科学的なものを信じない、いわゆる免疫みたいなものがでてくる」のである。
問4は、語句に関する問題である<1分>。
「方法」とは「方便」のことである。
問5は、内容把選に関する問題である<2分>。
B 文脈から判断すると、親が子どものしつけについて神様にその責任を「転嫁」しているのである。
C 子どもは大人に質問した答えを「ますます知りたく」なり、「一生懸命」に考えるのである。
問6は、内容把握に関する問題である<2分>。
親は子どもに対してしっかりしつけを行うべきであり、その結果、子どもは「悪いことをすれば不利益が自分自身に訪れる」ということを自覚するのである。
問7は、内容把握に関する問題である<2分>。
D「数字をよく認識」するということは、存在する「法則」性を見出すことである。
E「全員が一緒になって行動」するということは、「社会」性を身につけることである。
F「科学を推進させるため」には、「独創」性が必要である。
問8は、内容把握に関する問題である<2分>。
挿入する文の「しかし」と「そこ」を手掛かりとして考える。「そこ」とは、「全員が一緒になって行動する連帯感を育てること」である。
問9は、内容把握に関する選択問題である<1分>。
「子どもたちを非科学的人間にしない」ために、「親は責任を持って説明」しなければならないのである。
問10は、内容把握に関する問題である<3分>。
「正しい科学」とは、「生活のすべてが科学の上に成り立っていることを知ることが重要」なのであり、子どもには「法則性を見出し…正しい情報を選択するという基本的な仕組み」を教え、「人間の幸せ」を目指すものなのである。
問11は、内容把握に関する問題である<2分>。
「言葉」の効用は、「全員が一緒になって行動する連帯感を育てること」である。
【大問3】古文の読解に関する問題
- 時間配分:9分
出典は、噸阿『井蛙抄』である。
問1は、内容把握に関する問題<2分>。
弟子たちは上人が西行に決して気付かないようにしようとしたのである。
問2は、内容把握に関する問題<2分>。
文覚上人は西行に出会った際に、どのようなことを行うつもりでいたのかを考える。頭をたたき割ることを考えていたのである。
問3は、古語の意味に関する問題である<2分>。
「つとめて」とは「早朝」のことである。
問4は、内容把握に関する記述問題である<1分>。
文覚上人は、西行が自分(文覚)を打つ者であると思ったのである。
問5は、内容把握に関する問題である<2分>。
西行は憎むべき法師ではなく、優れた立派な人物であると文覚上人は感じたのである。
【大問4】文学史に関する問題
- 時間配分:7分
問1は、作家名に関する問題である<2分>。
B 『花火』の作者は、永井荷風である。
C 『侏儒の言葉』の作者は、芥川龍之介である。
D 『高野の聖』の作者は、泉鏡花である。
問2は、作品名に関する問題である<2分>。
E 『沈黙』は、遠藤周作の作品である。
G 『ハンチバック』は、市川沙央の作品である。
問3は、作家名・作品名に関する問題である<3分>。
A 『こころ』の作者は、夏目漱石である。
F 2023年3月に亡くなったノーベル賞作家は、大江健三郎である。
H 『月に吠える』には、『竹』に関する詩が収められている。
攻略のポイント
小説、論説文、古文、文学史から各大問1題ずつの出題である。
記述問題が多いので的確に過不足なくまとめ上げる記述力を高めることがポイントである。本文の文章を読み、内容を把握するだけではなく、設問の意図をしっかり理解したうえで自分の考えをまとめ上げなければならない。設問の答えが自分で理解できたとしても、それを如何に手際よく的確にまとめ上げるかは、日頃から記述力向上の練習を積み上げておく必要がある。
また、漢字の読み書き・語句・慣用表現・文学史なども怠りなくしっかり押さえておきたい。