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慶應義塾高等学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2024年度「慶應義塾高等学校の国語」
攻略のための学習方法

 出題されているような論理的な文章を短時間内に理解する読解力を身につけるためには、日頃から物事を自分の頭で考える習慣が不可欠である。自分の頭で考えるということは、ある事象に対する判断の基準を「その場で思いついたひらめき」や「自分の好き嫌い」に求めるのではなく、自分が導く結論に対して「説得力ある論理展開」を行っているかどうかの要素が不可欠である。

 それでは「説得力」とは何か。一言でいうならば、誰が聞いても「納得できる」ということである。ある主張に対して自分の結論は、「賛成」でも「反対」でも構わない。
 大事なことは結論がどうであれ、その結論に至る「論理プロセス」の成熟度である。このようなスキルは、試験の2週間前位に一夜漬け的に知識を詰め込んでも、合格点には届かないだろう。

 まずは自分の頭で考える。そして、次の段階では「頭で考えたこと」を「自分の言葉で書き出す」訓練である。
 人間は、頭で考えたことが100だとすると、それが発言すると10になり、文章で表現するとわずか1になってしまうと言われている。それだけ、自分の考えを言葉として文章表現することの難しさを端的に表しているのだろう。
 各出版社が発行している新書を読むのも論理的文章に親しむには効果的である。
大きく分類すれば、自然科学系、社会科学系と分れるが、どの分野の新書を読むかは、基本的には「自分の好み」に基づいて選択すればいいだろう。
 ただ、文字だけを表面上で読むのではなく、じっくり筆者の論理展開を辿っていく姿勢が大事である。余裕があれば、要旨を紙に書き出してみるということも効果的である。
そのように、自分の考えをまとめあげる作業を行えば、必ず自身の論理的思考力を着実に高めてゆくことが可能となるだろう。

 慶應義塾高校入試問題では、かなりの割合で知識問題が出題される。漢字の書き取り・読み、国文法(動詞の活用形、助詞)、文学史などである。現古融合問題の場合は、古文に対する現代評論文が出題される。古典文法の知識は欠かせないのは言うまでもないが、その古典作品に関する現代評論を読み解く力は現代文の読解力である。
 特に、現代文、現古融合の問題で扱っている話題が、言語論や芸術論の場合には性質上書かれている内容が抽象的にならざるを得ない。そのような抽象的文章を読み慣れていないと、試験当日に初見でそのような文章を読み解くことは不可能であろう。
 ただし、そのような文章でも攻略するための手掛かりは必ずあるものである。
例えば「キーワード」。何度も繰り返されている単語や表現があるかどうか。そのような単語があればチェックを入れ、本文全体の流れの中でその「キーワード」がどのような役割を担って使用されているかを考察すれば、論理の組み立てを正確に把握することができる。
 また「接続詞」も大事である。接続詞を丁寧に辿ることにより、段落ごとの筆者の主張の流れの概略を理解することができる

 いずれにしても、論理性の高い文章の内容把握を正確に行うために、日頃から「自分の頭で考える」ことを念頭に置き、考えたことを「文章にまとめてみる」という学習習慣を身につけて欲しい。そのような作業を通じて、自分の理解力と表現力のレベルが認識できるものである。

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2024年度「慶應義塾高等学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問1は、文化に関する文化人類学的分野の読解問題<29分>。
内容把握問題や記述問題(20~50字)、漢字書取り(5題)が出題されている。正確な文章読解力・的確な記述力が求められる。
大問2は、文学に関する論説文の読解問題<31分>。
内容把握、漢字書取り(5題)、四字熟語などへの事前準備をしっかり行うこと。特に、知識問題の比重も高いので文学史や慣用句なども習得しておくように。

【大問1】文化に関する文化人類学的分野からの論説文の読解問題

  • 時間配分:29分

出典は、伊藤雄馬著『ムラブリ 文字も暦も持たない狩猟採集民から言語学者が教わったこと』。

問1は、内容把握問題である<3分>。
(x)前後の関連を考えると「まるで」や「あたかも」が適切である。
(y)「男性」はゆっくりと静かに近づいてきたのである。

問2は、語句内容問題である<1分>。
「迂言」とは「回りくどい表現、言葉」のことである。直接的ではなく比喩表現であるので「回りくどく」なるのである。

問3は、内容把握問題である<2分>。
「こころ」には様々な意味があるが、「具体的な意味」として「心臓」も意味している。

問4は、内容把握問題である<2分>。
「動的悪」と「静的悪」である。

問5は、内容把握問題である<3分>。
「動的に好」であるので「興奮」である。
「静的に好」であるので「弛緩」である。
「動的に悪」であるので「不安」である。
「静的に悪」であるので「陰鬱」である。

問6は、内容把握選択問題である<2分>。
「心が下がる」は「うれしい」とか「楽しい」という意味を表す。

問7は、内容把握記述問題である<3分>。
ムラブリは「感情を表に出すことを慎む」のであり、感情を直接相手に伝えることは「好ましい行為」ではない。本文に紹介されているエピソードには、「『静かにしてほしい』と伝えようとして」いるのだが、「その言い方はとても繊細で、…遠回し過ぎてなにが言いたいのかわからないほど」であるという箇所を参考に考える。

問8は、内容把握記述問題である<4分>。
「現代人の感性として、…感性は外に出してこそ、誰かに知られてこそ、より幸福を感じられると信じている」のである。けれども、「それひとつの信仰でしかない」のである。

問9は、内容把握記述問題である<2分>。
「他の民族との接触」が多く「必然的に感情を表に出す」結果になるのである。

問10は、内容把握問題である<2分>。
「感情のあり方や表現の仕方に、絶対の正義はない。ぼくらが『幸福』だとありがたがるものは、…一時的な流行りに過ぎない」のである。

問11は、内容把握選択問題である<3分>。
筆者は現代人の感性にとらわれていたのであるが、ムラブリとの生活を通して彼らの感性を体得したのである。

問12は、漢字の書き取り問題である<2分>。
「座標」「体系」「事態」「総出」「仕草」である。

【大問2】文学に関する言語的分野の論説文読解問題

  • 時間配分:31分

出典は、出口智之著『森鴎外、自分を探す』。

問1は、漢字の書き取り問題である<2分>。
「階級」「収録」「風潮」「背景」「奏功」。標準的漢字であるので完答を目指したい。

問2は、西暦問題である<1分>。
西暦から年号を算出する場合、大正は西暦の年数より11を引いた結果のしも二けたの数字となる。

問3は、内容把握選択問題である<2分>。
 当時は「社会的」な規範が強く信奉されていたのである。
 世間の芳川鎌子に対する態度はからかうような調子であったのである。
 鴎外の「抑制と感情の葛藤が見え隠れ」しているのであり、まさに「示唆的」である。
 「抑制しない感情」を「爆発的」な吐露が文学性を産む場合もあるのである。
 森鴎外は「過ぎ去った時代の古くさい作家」ではなく、「現代的」な存在なのである。

問4は、語句問題である<2分>。
保護期間を過ぎた、という内容から判断すると「著作権」である。

問5は、内容把握問題である<2分>。
 鷗外は、「時間をかけて他者に向き」あうのであった。
 鷗外は、「自省と理知によってあるべき自分を探そうとした」のである。

問6は、語句問題である<3分>。
a 「戯画」とは、「おかしく、皮肉なとらえ方をすること」である。
b 「通底」とは、「見えないところで類似性があること」である。

問7は、内容把握問題である<2分>。
深い洞察力を持たない、つまり「物事の深層を看破する力に乏しい」ことである。

問8は、四字熟語問題である<1分>。
「観照」とは、「本質を見つめること」である。よって、「沈思黙考」がふさわしい。

問9は、内容把握記述問題である<4分>。
ポイントは「鎌子の心情をていねいに思いやりつつ、当時の社会通念や沸き立つ世間によって苦しめられた彼女の足跡を綴って」という箇所と、「目前の題材をすぐに書いてしまうのではなく、時間をかけて他者に向きあい、…その人間性と丹念に向きあってゆく」鷗外の態度である。

問10は、内容把握抜出し問題である<3分>。
前問とも関係するが、「目前の題材をすぐに書いてしまうのではなく、時間をかけて他者に向きあい、…その人間性と丹念に向きあってゆく」のである。

問11は、内容把握記述問題である<3分>。
本文から判断すると「使用人たちをとがめ『断罪』」したであろう。

問12は、内容把握記述問題である<6分>。
鷗外の人物像をしっかり把握理解すること。鷗外は作品を観照的(本質的な面を考察する)にしようと思っていたのである。したがって、鷗外は「時間をかけて他者に向きあい、…その人間性と丹念に向きあってゆく」態度を取ったのである。そこには「抑制」と「理知」があったのである。

攻略のポイント

 出題されている文章を正確かつ迅速に「読み込む力」がないと、正解にたどり着くことが難しいであろう。さらに、試験時間と問題数と内容密度の濃さを考えると、見直す時間的余裕はないものと思ってもらいたい。

 したがって、合格するためには極めて高い読解力と解答力(特に、記述・論述能力)が必要となる。20~40字、25字以内、70字の記述問題が出題されている。20~40字という字数で自分の考えをまとめるという作業は、高度な文章要約力が求められる。

 そのためには、論理的な文章の文脈を常に自分の頭で追いながら、論点は何か、筆者の主張の展開はどうなっているのか、ということを最高度に意識することである。そして、自分の頭で考えたことを次の段階で、文章に表現してみることである。頭で考えたことのたった1%しか文章として表現できないと言われている。常日頃、文章を書く習慣を身につけ論理の整った文章作成力を習得して欲しい。

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