青山学院高等部 入試対策
2024年度「青山学院高等部の国語」
攻略のための学習方法
〇長文読解
文章量の多さが、やはり本校の特徴といえるだろう
例年、現代文2題で合わせて9000字ほど、これに古文を加えておよそ10000字の文章に目を通す必要があったが、2019~2021年度では10000字ほど、2022年度では約6600字、2023年ではまた約12000字で2024年度は約9000時と年度により文量にばらつきがある。
設問は書き抜き・穴埋め・選択肢と一般的な国語の試験で見慣れた形式であるが、これだけの長文だと正解や手がかりを探すのに手間がかかる。読むスピードとともに要点を整理する手際の良さが求められる。
まずは長文読解の基本に忠実に。
説明的文章であれば、形式段落→意味段落の整理。段落の最初と最後に注意しながら要点のチェック。それらをまとめて要約し、要旨・結論を把握。本文を読み進めながら印や下線を用いて上記のようなポイントを目立つようにしておく。
文学的文章であれば場面・段落の変わり目をマーク。登場人物・筆者の気持ちや意見とその変化に最大の注意を払いながら、重要な発言や行動をチェック。そこからテーマとそれに対する人物や筆者の考えを読み取る。印・下線を使ってすぐ探せるようにしておくことはもちろん有効である。
長文の問題では、部分的に戻って確認する程度はできても、全体を読み返す時間はおそらく無い。1回の読みで上記のプロセスを終えなければならないので集中力と慣れが必要である。同程度の文量の問題でしつこく練習しておくこと。
と、理想を言えばそうなのだが、現実にはなかなかそうはいかない。本校のような長文の試験で全ての設問に時間をかけるのはやはり無理がある。全問に正解しようと気張らないことである。設問を見てピンと来ないものは後回し。できる問題をまずは拾って最後まで目を通すこと。
合格最低点は6割5分ほどである。
〇古文
他の中高一貫の高校にも言えることだが、試験を受けるのはまだ中学生なのに、出された問題はすでに高校レベルであるという点がなんとも厄介である。しかも本校の問題はなかなかに難しく、低レベルの大学ならこれくらいの問題は出してもおかしくない難易度である。
当然、中学で軽くなぞった程度の古文学習では足りないので、本校の古文に本格的に対策する場合は、いっそ高校古文の基本レベルの教材を使ってしまおう。
難しいとは言っても、難解な助詞・助動詞の区別や複雑な文法まで問われるわけではない。
おおよそは文章の内容理解が主で、あらすじが理解できれば答えられる問題が多い。最重要単語100~200や、基本的な文法だけ覚えて、なるべく多く文章にあたって古文に慣れておくことである。
また、問題構成を見ると現代文の長文読解23問・漢字10問・古文読解11問という割合(2024年度)で、現代文読解に比重がある点を考え、前半で点を稼げる自信があるなら古文は3~5割の正解でよしとするのもひとつの考えではある。
〇漢字・その他
漢字の読み・書きは毎年出題されている。手を抜かなければ得点できる分野なので、全問正解を望みたい。言葉の意味など、言語事項も数問出される。
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2024年度「青山学院高等部の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問は4つ。2024年度は論説文と随筆文の2題で約8000字・古文1000字で約9000字になり、昨年度よりやや減った。
やはり比重の大きい現代文2問をなるべく急いで、答えられる問題をしっかりこなし、残りを古文に当てるのが順当だろう。
漢字は10問出題され、できれば失点無しですませたいが、中学で習う漢字の中でもやや難しいものが見られるのでしっかり覚えておきたい。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:17分
アンドロイドに持たせる意識について、前半では自己意識を「自分をみる自分がいる」ことと定義して、意識と記憶は現実の時間から切り離されているとし、後半では人は時間概念を捨てることで普遍性(記憶)と自己意識を獲得しているが、時間を克服する=モデル化することで三次元世界を克服し、その過程で人工的な意識の生成があるかもしれないと述べている。
問一 自己意識とは「自分を自分であると認識している意識」であり、頭の中で「自己言及的な声を」を発している。「自己言及」とは「自分で自分について語ったり考えたりする」ことであり、選択肢2の「自分で自身に問いかける」が合う。
問二 「どんな現実が起ころうと自己意識は存在し続ける」「現実に根付いた自分と現実から切り離された自分をつなぎ合わせること」で、現実世界で活動しながらも「独立した意識」があるような感覚を持てる。
問三 記憶とは一見、時系列的なものに感じられるが、「ほかのエビデンスと関連付けることによって、ロジカルに推論されているものに過ぎない」のであるから、選択肢2が選べる。
問四 「普遍」の対義語としては「特殊・独特・特異」などが考えられる。
問五 「モデル」とは実世界の事象を抽象化したものである。人はこれまで様々な事象の性質や特徴を技術によってわかり易くモデル化してきたが、時間はいまだモデル化できていないのである。
問六 二行あとに自己意識の理解として「記憶の参照者」であると表現されている。
問七 アンドロイドに自己意識を持たせるうえで、まず自己意識とはなにかを考え、意識と記憶は現実の時間から切り離されていると述べた部分が前半、時間概念を捨てることで人は記憶と自己意識を獲得しているが、時間をモデル化できればその過程で人工的な意識の生成があるかもしれないと考察しているのが後半である。
問八 Ⅰ. 世界は固定した時間、自分は時間を司るものとしてモデル化される。「それゆえ」世界と自分が乖離しているように感じられる。
Ⅱ. 世界は固定した時間、自分は時間を司るもの、「つまり」固定化された時間と自分という時計……。
問九 動物は現実の時間と一致した世界を見ている=主観。一方、人は記憶を客観的(a)なものと信じ、机の上のコンピュータを客観的(b)な事実として記憶する。主観(c)から切り離されることで、記憶という「自分が客観(d)世界だと信じているもの」が作り出されている。
問十 2.三段落・四段落で書かれていることと合う。
【大問二】随筆文の読解
- 時間配分:15分
あじさいをめぐる自身の記憶をエッセイにした例を挙げ、修飾やきれい事ではなく、潔く恥をかく態度こそが書くということであると述べている。
問一 自分の本心を掘り下げ、恥ずかしいことでも虚飾なく提示してこそ読者に伝わる良い文章になるのだと、自身の例を挙げて示している。
問二 比喩であることを示している「明喩」であるから選択肢2を選ぶ。
問三 あじさいの花が集まっていると寂しいという意味だが、「集まる」では字数が決まらないので、「群れる」を使って「群れ(A)て淋しさ(B)勝りけり」とすればよい形になる。
問四 かつて想いを寄せていた男性のあじさいに何らかの思い出があるらしい雰囲気を筆者は感じ取り、自分が知らないことで置いてけぼりにされた淋しさ・孤独(実は嫉妬)を感じたのだと告白している。
問五 嫉妬などあろうはずがない→男とあじさいが……私とは関係ないと思っていた→どうやらちがった→嫉妬する嫌な自分を見てしまった→それが真実だ
問六 平安時代に書かれたので、『枕草子』が同時代である。
問七 表沙汰――世間・みんなに知られてしまうこと。
問八 不倫や恋愛遍歴など恥の連続をごまかすことなく正面から堂々と描いているのは「開き直り」とも思えるほどである。
問九 4
問十 5. 「自分の心を掘り下げていってみると、古代遺跡を発掘するのに似て思わぬものにつきあたる」と書かれていることと合う。
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:13分
世の中が乱れ、みなが逃げまどう中、ある夫婦も離ればなれになった。別れがたい気持ちが強かった二人は女の使っていた鏡を二つに割り、互いを探す目印とした。時がたち、女は親王に寵愛を受ける身分となっていたが、果たして鏡を手掛かりとして互いの境遇が知れるところとなった。女の男を想う気持ちを知った親王は、立派に装いを整えた女を男のもとに送り帰した。贅沢な暮らしを諦めてまでかつての約束を忘れなかった人以上に、親王の情け深い心は類まれではなかろうか。
問一 あひぐす――夫婦になる・連れ添う
問二 選択肢のなかで対義語になるのは、「高き(身分の高い人)」と「いやしき(下層階級の人)」である。
問三 「この人」は一人ではなく、「もろともあひ契りけり」とあるので二人のことである。
問四 「どのような人に心移りして約束を忘れてしまったのだろう」と嘆いている。
問五 短歌の内容は「鏡を割って約束したあのころの面影はどこにいって消えてしまったのだろうか」と、女の手がかりがなく時が経ってしまったことを悲しんでいる。
問六 親王の寵愛を受けているのであるから、豊かで華やかな暮らしということである。
問七 女が心ここにあらずという状態であることに気づいた「親王」がいぶかしんでお訊ねになると……。
問八 「袖をしぼる」は涙で濡れた袖を絞るという意味。「涙をお流しになって」
問九 短歌「約束した心に曇り(偽り)が無かったからだろうか、再びともに住むようになった」
問十 半分に割った鏡を市に出して、もう片方の持ち主を探す手がかりとしたのである。
【大問四】漢字の読み書き
- 時間配分:5分
1. 指揮 2. 倹約 3. おごそ(かな) 4. 功績 5. 彫(る)
6. したた(る) 7. こんりゅう 8. 施行 9. 貸借 10. 勧(める)
攻略ポイント
現代文・特に説明的文章の読解には十分な対策をしておくこと。テストの形式はクセのない一般的なものなので、過去問を含めて他の学校の問題も良い練習になるはずである。長文読解の場数を踏んでおこう。
記述問題がないのは時間的に助かるが、選択肢を考え分けるのに時間がかかる問題もあるので、それほどの余裕はない。手に負えないと感じた問題は諦めて、とにかく最後まで手を付けることである。
その上で残った余裕を古文に回す。
全体として、読解のスピードが必要となるので、意識して訓練しておかれたい。