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法政大学第二高等学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2024年度「法政大学第二高等学校の国語」
攻略のための学習方法

記述

「法二の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。

では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。100字程度で書いてみる(法二の「長文記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。

次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。

ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく

解法

「空所補充」「脱文挿入」「選択肢」「記述」、その他の問題も含め「法二の国語」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない

そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。

そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。

そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

速読

本年度こそ減少したが(来年度以降の「共学化」で再び増加することも予想される)、これまでは大学入試にも匹敵する(否、それ以上の)ボリュームの問題文を読まなくてはならなかった。全体で9000字程度。解答時間は50分。

当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。

「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める

「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。法二に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。

知識

前述のとおり「直接出題」も多いが、「本文読解」等でも必然的に問われることになる法二の「総合的知識問題」。

いかなる「攻略法」があるのか?

「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。

先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。

さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されているし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。

なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。

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2024年度「法政大学第二高等学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問は「総合的知識問題」、小問は全4問(解答数10)。「『対義語』記述」、「『単語の意味・用法』判別」(文法)、「『同訓異字』の用法判別」、「漢字の読み」。4分ほどで終わらせたい。

大問は「論説文」、出典は信原幸弘「『覚える』と『わかる』――知の仕組みとその可能性」(文字数約4800字)。小問は全9問(解答数10)。「選択肢」(「空所補充」、「組み合わせ」、「不適切」、「総合的知識問題」あり)、「抜き出し」(3問)、「考察論述」(「80~100字以内」指定1問)。問題文は6分弱で読み切り、設問を20分強で解きたい。

大問は「小説」、出典は開高健「パニック」(文字数約6700字)。小問は全9問(解答数10)。「選択肢」(「空所補充」、「不適切」、「総合的知識問題」あり)、「抜き出し」(1問)、「説明記述」(「50~60字以内」指定1問)。問題文は7分強で読み切り、設問を13分弱で解きたい。

【大問一】

  • 時間配分:

「対義語の記述」・「単語の意味・用法判別」(口語文法)は5年連続、そして、一昨年度、「慣用句」から転換した「漢字の読み」が本年度も続き、さらに、「同訓異字の用法判別」が加わった。本年度の難易度は昨年度並み。本校志望者であれば何としても失点は避けたい。

[問一] 「対義語の記述」(全4問/「漢字2字」指定)
「吸収」・「妥結」・「進展」・「真実」の「対義語」をそれぞれ答える。
は平易で、「答え」=「虚偽」。しかし、他は意外に曲者だ。
「吸収」=「外部のものを内に吸い込む」ということは分かるが、その「対義語」となると困ってしまうだろう⇒「対義」は「中心から線状のものを四方八方に放出すること」=「放射」または「発散」、「妥結」=「双方が互いに折れ合って、話がまとまること」で、「対義」は「双方の意見が対立し物別れになること」=「決裂」。「進展」=「事態が進行して、新たな局面があらわれること」なので、「対義」は「着手した物事がゆきづまってはかどらないこと」=「停頓」または「停滞」。
尚、ひとつでも曖昧(あいまい)なものがあった諸君は確認しておくこと。

                                   <時間配分目安:1分半>

[問二] 「単語の意味・用法判別の選択肢」(全2問/各3択)
「口語文法」だ。示されているの傍線部の単語の中から、「一つだけ文法的な説明が異なるもの」を答える。それぞれチェックしていく。
(ア)「欠点はない」・(イ)「(彼は)来られないそうだ」・(ウ)「桃が傷まないように」⇒定番の「『ない』の判別」だ⇒基本的に「形容詞」の「ない」か「助動詞」の「ない」⇒前者は「自立語」で、後者は「付属語」⇒(イ)(ウ)は「付属語」で、(ア)が「自立語」だということは即判別できなくてはいけない。
よって、「答え」は(ア)
(ア)「ゲームばかりしている」・(イ)「敵ばかりいる」・(ウ)「5分ばかり遅れる」⇒「助詞」の「ばかり」の判別⇒「程度」(「ほど」と言い換えられる)か「限定」(「だけ」と言い換えられる)⇒無論、(ア)(イ)は「限定」で、(ウ)は「程度」なので、「答え」は(ウ)だと判別できるはず、本校では「口語文法」の習得が必須だ。

                                   <時間配分目安:1分弱>

[問三] 「同訓異字の用法判別の選択肢」(4択)
示されている「バットで打つタイミングをはかる」と「同じ『はかる』を用いている一文」を答える。「タイミングをはかる」=「計る」=「時間や数などを数える」の他に「考える」という意味がある。各文を確認したい。
(ア)「重さをはかる」=無論、「量る」⇒尚、「推量」の用法もある。
(イ)「自分の将来をはかる機会になった」=「計る」⇒「考える」という意味での用法。
(ウ)「コミュニケーション改善をはかる」=「図る」⇒「企てる。うまく処理する」の意味。
(エ)「水の深さをはかる」=「測る」⇒「長さ・高さ・深さ・広さ・程度を調べる。推測する」としての用法だ。
したがって、「答え」は(イ)になる。「同音異字」についても完璧に判別できるようにしておくことが不可欠。

                                   <時間配分目安:30秒>

[問四] 「漢字の読み」(全3問/「ひらがな」指定)
示されているの傍線部の「漢字の読み」を「ひらがな」で答える。本校としては標準レベルの良問だ。確認しよう。
「冊子を無料で頒布する」=「はんぷ」⇒流石(さすが)に知っているはず⇒「広く配ること」という意味も必須定着。
「別のもので代替する」=「だいたい」⇒これは高校入試の十八番。
「先人の業績を礼賛する」=「らいさん」⇒「れいさん」ではないので要注意⇒「すばらしいものとして、ほめたたえること」という意味も知らなくてはいけない。
尚、本校志望者は、「漢字の読み・書き」だけではなく、「慣用句」「故事成語」「ことわざ」「四字熟語」なども確実に習得しておくこと。

                                   <時間配分目安:1分強>

【大問二】

  • 時間配分:

「理解する」とはどういうことか? 空気を読む際、私たちの頭と感覚は何をどう察知しているのか?――「丸暗記」「身体で覚える」「まねる」といった学習の基本から「直観」「批判的思考」、そして、「知の可能性」までを探り論じている。
本文では、過度に緻密な計画は無用だが、適度な計画は効率の面でも成功率の面でも重要であり、「計画」と「アジャイル」(=状況の変化に対して素早く対応すること)の適切なバランスが肝要だと指摘している。さほど難解な語句はなく、内容はすぐに理解できるはず。「総合的知識問題」を含めて、本校としての「定番メニュー」が並んでいる。無論、最後には「長文説明記述(考察論述)」が控えている。以下、いくつかの「設問」を検討してみたい。

[問一] 「空所補充の語句組み合わせ選択肢」(4択)
本文中の空所        に「文脈上あてはまる語」の「組み合わせ」を答える。各選択肢の「語」は「接続詞」と「副詞」。「接続詞」では、「逆接」はともかく、それ以外には十分に注意する必要がある。「逆接」以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。また、「段落冒頭」の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので留意すること。各空所にあてはまる「語」を確認していく。
   には「逆接」の「接続詞」である「しかし」が入ると分かるはずだ。
   は「並立」の「接続詞」である「また」だと特定できる。
   は「例示」の「副詞」である「たとえば」だ。
   は「論じる必要のないほど、はっきりしているさま」を表す「副詞」である「もちろん」があてはまる。
よって、「組み合わせ」から判別すると、「答え」は(ウ)となる。「接続詞」や「副詞」などの「空所補充」は本校に限らず定番中の定番、絶対に失点してはならない。

                                <時間配分目安:全問で1分半>

[問二] 「空所補充の語句選択肢」(全2問/各4択) 「総合的知識問題」。「四字熟語」・「ことわざ」・「慣用句」
本文中の空所《 Ⅰ 》《 Ⅱ 》に入る「語」を答える。それぞれの空所部前後の「文脈」から、「答え」を特定してく。
「『机上の空論』とか『《 Ⅰ 》』という言葉があるように、現実と噛(か)み合わない上滑りの思考は、空転するばかりで役に立たない」⇒各選択肢は(ア)「馬耳東風」・(イ)「下手の長談義」・(ウ)「帯に短し襷(たすき)に長し」・(エ)「下手の考え休むに似たり」⇒「上滑りの思考は役に立たない」のだから、「答え」は(エ)になる⇒元来は囲碁や将棋での用法で「下手な人が考えるのは休んでいるようなもので、時間ばかりかかり何の効果もない」ということ。「以上、《 Ⅱ 》ために、少し込み入った話をしたが……」⇒各選択肢は(ア)「揚げ足を取る」・(イ)「厳密を期す」・(ウ)「口火を切る」・(エ)「鼻をあかす」⇒「込み入った話をした」のだから、「答え」は(イ)だ。
尚、ひとつでも曖昧(あいまい)な「語」があった諸君は猛省せよ。本校の「総合的知識問題」、完璧な対策が不可欠だ。

                                <時間配分目安:全問で1分弱>

[問四] 「条件付き換言表現抜き出し」(「10~15字」指定)
傍線部の「家具の配置換えを計画的に行う」ことを「筆者が別の言葉で表現している箇所」を、「十字以上十五字以内」で抜き出して答える。
「条件」は「この傍線部より後から抜き出す」こと。「抜き出し問題」では、「抜き出すべき内容」を捉えた上で「抜き出し範囲」を特定し探していく。本問の「内容」は設問どおりで、「家具の配置換えを計画的に行う」ことの「換言表現」になる。「範囲」は「同一意味段落」になる(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。ここでの「同一意味段落」は本文の最初から傍線部の2つ後の形式段落までだと判断できる。ただし、「条件」があるので、傍線部以降を丁寧に探していきたい。すると、傍線部の2つ後の段落に「そのような試行錯誤を図面上で行うことができるのは、……」という部分がある。「計画的に行う」という内容に合致していると考えられる。「字数」もOKそうだ。そして、「範囲」には他にふさわしい「候補」もない。
よって、「答え」は「試行錯誤を図面上で行うこと」(13字)となる。
尚、「抜き出し問題」では「候補」はひとつとは限らない。「範囲」を網羅的に確認し、全ての「候補」を確認してみることが肝要だ。

                                  <時間配分目安:2分ほど>

[問七] 「理由説明選択肢」(4択)
傍線部「絶対に失敗しない完全な計画を立てることは不可能なのである」について、「なぜか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「理由説明」なので、「不可能なのである」の「直接的理由」として結びつかない「理由説明」を「消去」することになる。各選択肢の「文末」⇒「だから」⇒「不可能なのである」と直接的に結びつくかどうかだ(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。照合してみる。
(ア)「失敗することには変わりがないから」、(イ)「可能性をゼロにすることは無理だから」、(ウ)「成功する確率を高めることは無理だから」、(エ)「緻密な計画自体が絶対に成り立たないものであるから」。
一瞬たりとも悩んではいけない。「不可能」の「理由」なのだから、「可能性をゼロにすることは無理だから」以外は「消去」できなくてはいけない。「同一意味段落」で他の部分を確認しても特に誤っていないと判断できる。
したがって、「答え」は(イ)だ。華麗なる「一発消去」だ。畏るべし! 「原意消去」。しっかりと使えるようにして大いに活用すべし。

                                   <時間配分目安:1分強>

[問八] 「語句の用法の不適切選択肢」(4択) 「総合的知識問題」
傍線部の「ジレンマ」の「用法」として「誤っているもの」を答える。この語句は高校入試では定番になっている。よって、「相反する2つの事の板ばさみになって、どちらとも決めかねる状態」のことだと知らなくてはならない。各選択肢の正誤判別をする。
(ア)「『すべてのクレタ人は嘘をつく』とクレタ人が言った、というジレンマ」⇒「クレタ人」が言った内容が「嘘」だろうが「真実」だろうが「板ばさみ」の状態にはなっていない=誤り⇒結果、(ア)が「答え」だ。
ちなみに、(イ)は「人と接したいのに、傷つくのが怖くて関係を築けない」、(ウ)「寛容な社会実現のために、不寛容に対しては不寛容にならざるを得ない」、(エ)「仕事と家庭を両立したいが、仕事を努力すればするほど家庭が崩壊していく」。
それぞれ「板ばさみ」なのは明らかだ。
尚、「パラドックス」の用法についても「高校入試」では頻出なので、「ジレンマ」との違いを明確に理解しておくことが必要だ。

                                   <時間配分目安:1分半>

[問九] 「条件付き具体例考察論述」(「80~100字以内」指定)
傍線部「計画とアジャイルの適切なバランスが何と言っても重要」について、「そのバランスが取れていない状態の具体例」を自分で考えて「八十字以上百字以内」で論述する。
「条件」は、「具体例は本文中に紹介されているもの以外で、自分で考える」こと。先ずは、本文において筆者が述べている「アジャイル」とは何か読み解いておく。波線部の3つ前の形式段落から、「何らかの行動をしようとするとき、事前にきちんと計画するのではなく、進行中の時々の状況に応じて適当にどうするかを決め、うまく行かなければ修正を行うといったことを繰り返して、行動全体を完遂する」ことだと分かるはずだ。そして、筆者は「アジャイル」は重要だが、「適度な計画」も必要だとも述べている。それが「計画とアジャイルの適切なバランス」ということになる。
したがって、何かをしようとする際に、あらかじめある程度の「計画」は立てておき、後は臨機応変に計画を変更して最終的には当初の目的を達成するということを、身近な「具体例」を挙げて論じていくことになる。
無論、「本文中に紹介されている具体例以外のもの」だ。尚、「具体例論述」は本校に限らず近年頻出している。「一般論」⇔「具体論」の相互の捉え方をしっかりと研鑚(けんさん)しておきたい。

                                   <時間配分目安:4分半>

【大問三】

  • 時間配分:

大量繁殖したネズミの処置を通して、保身に汲々(きゅうきゅう=ひとつのことに一心に努めて、他を顧みないさま)とする役人の無能と愚かさを痛烈に風刺し、組織の中にある人間について考究している短篇小説。
本文では、県庁山林課の「俊介」がネズミの大繁殖とそれによる林業や農業などへの大被害が発生する可能性を危惧している様子が描かれている。内容は理解できるはずだが、「地の文」や「会話」から組織内の人間関係や心情の機微を読み取るのは、中学生にはなかなか厄介かもしれない。以下、いくつかを検証する。

[問三] 「空所補充の表現選択肢」(4択)
本文中の空所【 X 】に「入る表現」を答える。
空所部分を確認する。「……にわかに【 X 】という不安と嫉妬を感じた。俊介は急に課内でけむたがれ、うとんじられた」となっている。
各選択肢は、(ア)「鼠害(ネズミによる被害)が発生するのではないか」、(イ)「本当は優秀なのでは」、(ウ)「だしぬかれはしないか」、(エ)「自分の考えは間違っていたのではないか」。「不安と嫉妬」を感じた直後に「けむたがれ、うとんじられた」のだから、「だしぬかれはしないか」以外はふさわしくないと判別できなくてはいけない。
よって、「答え」は(ウ)だ。「空所補充」では直前直後の「文脈」を正確に読み解くことが肝要だと心得よ。

                                   <時間配分目安:1分半>

[問五] 「心情説明選択肢」(4択)
傍線部の「いらだちと混乱の表情」とは「どのような感情から生じたものか」を答える。
先ずは「原意消去」をしたい。ここでは「心情説明」なので、「いらだちと混乱」の「原意」に結びつかない「心情」を「消去」していきたい。各選択肢の「文末」をチェックする。
(ア)「強い懸念」、(イ)「焦りと困惑」、(ウ)「焦り」、(エ)「不安」。「いらだち」と「混乱」という「2つの心情」だ。
であれば、「焦りと困惑」以外は「ひとつの心情」なのだから当然「消去」できる。念のために、「同一場面」で他の部分の説明を確認しても(「小説」「随筆」では「同一場面」に「手がかり・ヒント」がある)、特に誤ってはいないと分かる。
したがって、「答え」は(イ)になる。鮮やかな「一発消去」だった。「小説」でも「原意消去」は十分に活用できるということだ。
尚、「小説」での定番である「心情把握」は、「セリフ」⇔「ト書き」⇔「動作」⇔「情景」の連関で捉(とら)えるのが定石だ。

                                   <時間配分目安:1分強>

[問六] 「内容説明の表現抜き出し」(「20~25字」の「はじめ」と「終わり」の「5字」指定)
線部の「俊介は用心ぶかくかまえた」との表現からは「俊介」の「課長」への強い不信感がうかがえるが、「課長が俊介に抱いている不信感がうかがえる表現」を、「二十字以上二十五字以内」で探し、「はじめ」と「終わり」の「五字」を抜き出して答える。
「抜き出すべき内容」は「課長が俊介に抱いている不信感」が分かる「表現」だ。「抜き出し範囲」は無論「同一場面」だ。ここでの「同一場面」は、傍線部の前の(中略)から後の(中略)までだと判断できるはず。少し長いが、「課長」の「セリフ」や「地の文」を中心に丁寧に探していくと、傍線部の3行後に「課長は警戒するように俊介の顔をちらりと見た」という部分がある。「課長が俊介に抱いている不信感」が見事に伝わってくる。
「指定字数」を考慮すると、「答え」は「課長は警戒」~「らりと見た」になる。
尚、「抜き出し問題」では如何に「範囲」を絞り込めるかが大きなポイントとなる。

                                  <時間配分目安:2分ほど>

[問九] 「内容および理由説明記述」(「50~60字以内」指定)
傍線部「ひょっとしてこの男なら愛せるかもしれない」について、「俊介は研究課長(農学者)をどのような人物であるととらえ、なぜそのように感じたのか」を「五十字以上六十字以内」で説明する。
本問は何気なさを装っているが、実は相当な難問だ。「内容」と「理由」の2つの要素が問われており、しかも通常は「理由」→「内容」のところが逆になっているのだ。「……なので、……ととらえている」ではなく、「……ととらえており、それは……だからだ」といった「文の構成」にする必要があるのだ。で、とにもかくにも「内容」と「理由」を「同一場面」から読み解かなくてはならない。「同一場面」は傍線部⑤の3行後の「ある夜……」で始まる形式段落から本文最後までだと分かる。そこでは先ず、「理由」となる「研究課長」の言動に対する「俊介」の思いが語られ、最後に「人物観」が述べられている。それらを的確に読み取って、「……ととらえており、それは……だからだ」という形式でまとめていきたい。
たとえば、「対話のできる人間だと好意的にとらえており、それは学者として知識や資料を与えてくれて、鋭く自分を追い詰めてくれたからだ。」(59字)といった「答え」になる。
「語順」も含めて「設問内容」に適切に即した「記述」の「構成」にする必要があると心得よ。

                                    <時間配分目安:4分>

攻略ポイント

●「共学化」によって「国語」は問題が難化したにもかかわらず、「受験者平均得点率」がアップしている(2016年度61.8%→22年度66.9%)。「共学化」以降の3科目合計の「合格最低得点率」は、本年度までの8年間の平均で59.3%(本年度はやや下がって56.7%)。多少の上下はあるとしても、来年度以降も合格ラインの高止まり傾向は続くと思われるので、とにかく「高得点」を目指し「得点力」を安定させるように万全の準備が不可欠だ。

●多彩で複雑な「選択肢設問」に代表される多様な「設問」はどう「攻略」するか? それは、いかに「解法」を的確に用いるかがポイントになる。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが必要だ。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておくこと(特に「原意消去」は必須ツールだ)。

「説明記述」の対策も不可欠だ。実直に「説明記述」の「練習」を続ける他はない。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先順位を特定し、高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習すること。また、「100字前後の長文説明記述(考察論述)」にも慣れておきたい。何としても「減点」は最小限に抑えたい。

●「高度な語彙力」が問われる多種多様な「総合的知識問題」も侮れない。「漢字」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「語句の意味」、そして、「口語文法」までをも確実に定着させること。

●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意が必要。問題文は従前7000字程度だったが、近年は増加傾向で、本年度は昨年度の約10000字からさらに増えて約11500字。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速800字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。

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