桐光学園高等学校 入試対策
2024年度「桐光学園高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
「理由説明」にしても「記述」にしても、「桐光の国語」で勝利するための鍵は、「現代文」の「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「桐光の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提として為すべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる(桐光の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。
その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく(その際はマス目のない用紙を使うこと)。
速読
「現代文」全体で8000字程度を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
桐光に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「桐光の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。
「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。
今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。
が、桐光などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」をする他ない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は「敬語」も含めて理解しておかなくてはならない。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。また、「漢文」でも同様に「基本的事項」は定着させておくこと。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2024年度「桐光学園高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「漢字の書きとり」。小問なし(解答数5)。2分ほどで丁寧に終えたい。
大問二は「論説文」、出典は宇野重規「民主主義とは何か」所収の「民主主義の未来」(文字数約3400字)。小問は全7問(解答数9)。「選択肢」(「空所補充」、「不適切」、「内容合致」、「複数完全解答」あり)、「抜き出し」(1問)。問題文は4分程度で読み切り、設問を12分ほどで解きたい。
大問三は「小説」、出典は高橋久美子「ぐるり」所収の「自販機のモスキート、宇宙のビート板」(文字数約4600字)。小問は全7問(解答数7)。「選択肢」(「内容合致」あり)、「説明記述」(1問。「字数指定」なし。「50字ほど」の解答欄」)。問題文は5分ほどで読み切り、設問を18分程度で解きたい。
大問四は「古典」、出典は<甲>(古文)が兼好法師「徒然草」(文字数約340字)、<乙>(漢文)は荘子「荘子」(文字数約80字)。小問は全6問(解答数7)。「選択肢」(「内容解釈」、「換言」、「返り点判別」あり)、「抜き出し」(全3問。複数完全解答)。10分弱で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
「漢字問題」。4年連続で「書きとり」のみ。昨年度より難易度は上がり、本校としてはやや難解レベル。だが、失点は極力避けたい。
[問] 「漢字の書きとり」(全5問)
示されている各文の二重傍線部の「ひらがな」を「漢字」に直す。確認する。
(1)「図書館に展示場をへいせつする」=「併設」⇒悩むこと必死か?⇒「主になるものにあわせて設置、または設備すること」だ。
(2)「ひょうしょう状の授与」=「表彰」⇒これは書けなくてはいけない。
(3)「かんだいなご配慮」=「寛大」⇒「高校入試」の定番。
(4)「感情をせいぎょできない」=「制御」⇒「文脈」を正しく読み取ること。
(5)「責任をてんかする」=「転嫁」⇒「同音異義語」に注意したい。
本校ではやはり、「高度な語彙力」が求められていると心得よ。
<時間配分目安:全問で2分ほど>
【大問二】
- 時間配分:
「民主主義」という制度の利点と弱点が人々にどのように認識され、どのようにその弱点を改良しようとしたのか、あるいはその改革はなぜ失敗してしまったのかをたどることにより、「民主主義」の本質とは何なのか、そして、その未来への可能性について論じている。
本文では、人間には言葉で意見を交わす能力があるのだから、その能力をどのように生かすかが、今後の「民主主義」のあり方に大きく関わってくると指摘している。難解な語句があるが、「※注」を使って「内容」を理解したい。「内容説明」、「内容合致」、「空所補充」、「抜き出し」など、多種多様な小問が並んでいる。ただ、難易度は高くないので、手際よく解き進めたい。以下、いくつか確認してみよう。
[問二] 「内容説明選択肢」(4択)
傍線部(2)「多くの人々は、それと自覚することなしに、平等化に貢献してしまうのです」について、「その説明」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」を最優先に考えること)。ここは「内容説明」なので、「平等化に貢献してしまう」という表現の「原意」と結びつかない「説明」を「消去」することになる。各選択肢の「文末」と照合する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。
(ア)「結果的に平等化へ向かっていく流れを生む、ということ」、(イ)「結果的に権力者を排除することになる、ということ」、(ウ)「階層化が消えることはない、ということ」、(エ)「平等化を妨げる壁を打破するために協力することになる、ということ」。
「平等化」に「貢献」するのだから、「結果的に平等化へ向かっていく流れを生む」以外は問題なく「消去」できるはずだ。「同一意味段落」で他の部分の説明を確認する(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。特に誤ってはいないことが分かる。
よって、「答え」は(ア)だ。見事な「一発消去」だ。「原意消去」は使える。完璧にマスターして使いこなせるようにせよ。
<時間配分目安:1分強>
[問三(1)] 「内容説明選択肢」(4択)
傍線部(3)「今日のテクノロジーの発展はどうでしょうか」について、「『今日のテクノロジーの発展』によって実現したもの」を答える。
本問は傍線部そのものを問われているわけではないので、流石(さすが)に「原意消去」は無理だ。そこで、「同一意味段落」に「根拠・手がかり」を求めると、傍線部の「問いかけ」に対して直後の形式段落で「応じている」ことが分かる。確認する。
「多くの人々が情報やデータにアクセスするのみならず、自ら発信することを可能にするSNSの技術」とある。まさに、「テクノロジーの発展」(=SNSの技術)により、「自ら発信すること」が「実現した」わけだ。ここで、各選択肢説明と照合する(短いので全文を対象としたい)。
(ア)「より多くの人々がアクセスできる環境」、(イ)「製品や作品を生み出すための巨大な資本」、(ウ)「個人が自ら情報を発信することが可能な社会」、(エ)「人間の労働をAIに代替させる政治」。
当然ながら、「答え」は(ウ)だと判別できるに決まっている。変則的ではあったが、結果は「一発消去」だ。設問内容に応じて臨機応変に対応することが肝要だ。
<時間配分目安:2分強>
[問四(2)] 「内容説明の抜き出し」(「12字」指定)
傍線部(4)の「コロナ危機」における「民主主義の問題を乗り越えるため」に、「筆者は何が大切であると考えているか」を「十二字」で抜き出して答える。
「抜き出し」では、「抜き出すべき内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞っていくことが鉄則だ。「内容」はそのままで、「筆者が考えているコロナ危機における民主主義の問題を乗り越えるために大切なこと」になる。「範囲」は「同一意味段落」。ここでは、傍線部から始まる3つの形式段落だと判断できる。丁寧に探していく。すると、2つ目の段落の中頃に「自由と民主主義にとっての鍵は国家と社会の緊張ある関係です。」という一文がある。まさに、「コロナ危機における民主主義の問題」での「大切なこと」の説明になっている。同じ「抜き出し範囲」に他に候補はない。
したがって、「答え」は「国家と社会の緊張ある関係」(12字)だと特定できる。
尚、「抜き出し候補」はひとつとは限らないので、「範囲」の全てを隈なく探すことが肝要だ。
<時間配分目安:2分半>
[問六] 「空所補充の語句選択肢」(全3問/各4択/複数完全解答)
「厳しい時代において、人は何を信じるのか」についての「筆者自身の主張」をまとめている3つの形式段落の中の空所 X ~ Z に「あてはまるもの」を答える。
それぞれの空所は各形式段落の冒頭で、3つの「主張」の「簡潔なまとめ」になっていることが分かる。そこで、各段落の「要点」から「答え」を特定していくことになる。それぞれを確認したい。
最初の段落=「政策決定過程をより透明度の高いものにしていく必要がある」⇒ X の「答え」=選択肢(イ)「公開による透明性」。
次の段落=「生き生きした当事者意識をもちたい」⇒ Y の「答え」=(ウ)「参加を通じての当事者意識」。
最後の段落=「責任を分かちもつことが重要」⇒ Z の「答え」=(エ)「判断に伴う責任」。
こうした「空所補充」では、それぞれの「空所」の関連性に着目することが肝要だ。
<時間配分目安:全問で5分程度>
【大問三】
- 時間配分:
夫婦、友達、親子、この地球に生きる私達の日常は奇跡のような出会いとすれ違いの積み重ねでできている――すれ違い交差する人たちから目が離せない、新たな世界を予感させる19編の短篇のひとつ。ちょっぴり切なくて、でも前を向いて歩いていけそうな、初夏の夜の「小夜子(こやこ)」と「大澤くん」の物語。
本文が作品全文だ。分かりやすい文章なので内容は理解できるはずだ。多彩な内容を問う「選択肢設問」と、「相違説明」の「説明記述設問」という大問構成だ。以下、いくつかを検証する。
[問一] 「様子説明選択肢」(4択)
傍線部(1)「コール音は三回半にしてみた」について、「この時の『小夜子』の様子」を答える。
先ずは「原意消去」からといきたいが、無論、傍線部だけでは無理だ。そこで、「傍線部一文一部の法則」に「手がかり」を求めたい(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法)。直前に「すぐに出るのも待っていたみたいで恥ずかしいから」とある。ここで各選択肢の「文末」をチェックしてみる。
(ア)「気持ちを落ち着かせている」、(イ)「(緊張で)電話を取ることができないでいる」、(ウ)「わざと少し時間を空けて電話に出ている」、(エ)「(不安で)電話に出るまでに時間がかかっている」。
「すぐに出る」のが「恥ずかしい」のだから、瞬時に「わざと少し時間を空けて」以外は「消去」だと判別できなくてはいけない。「同一場面」で他の部分の説明を確認する(「小説」では「同一場面」に「ヒント・手がかり」がある)。特に誤ってはいないと分かる。
したがって、「答え」は(ウ)だ。本問は「一発消去」ではなかったが、「原意消去」に拘(こだわ)ることには変わりない。
<時間配分目安:2分強>
[問三] 「心情説明選択肢」(4択)
傍線部(3)「ひどいショックを受けたはずなのに、小夜子はどこかほっとしていた」について、「この時の『小夜子』の心情」を答える。
先ずは「原意消去」をしたい。ここでは「心情説明」なので、「ほっとしていた」の「原意」に結びつかない「心情」を「消去」していきたい。各選択肢の「文末」をチェックする。
(ア)「安心もしている」、(イ)「安心している」、(ウ)「安堵している」、(エ)「安堵している」。
残念だが、どれもが「ほっとしていた」と結びつく。この段階では「消去」は無理だ。次に、傍線部前半の「ひどいショックを受けたはずなのに」で「消去」を試みたい。
選択肢の前半の最後と照合する。
(ア)「ひどく落胆したが」、(イ)「怒りを覚える一方で」、(ウ)「驚きを隠せないでいるが」、(エ)「落ち込みながらも」。
「ひどいショックを受けた」のだから無論、「ひどく落胆した」以外は「消去」だと判別できなくてはいけない。「同一場面」で他の部分の説明を確認しても、特に誤ってはいないと分かる。
したがって、「答え」は(ア)になる。本問は「2段階消去」だった。
尚、「小説」での定番である「心情把握」は、「セリフ」⇔「ト書き」⇔「動作」⇔「情景」の連関で捉(とら)えるのが定石だ。
<時間配分目安:2分強>
[問五] 「様子説明選択肢」(4択)
傍線部(5)「そんな気持ち悪いことを考えてしまう自分」について、「この時の『小夜子』の様子」を答える。
「指示語」があるので最優先で開いておく(「指示語」が出たら即開くこと)。直前から、「そんな気持ち」=「夜のプールに浮かべたビート板が、『小夜子』と『大澤くん』の二人だけを乗せて、このまま風まかせに流れていけばいいのにと思う気持ち」だと読み取れる。それを踏まえて、各選択肢の「文末」を確認したい。
(ア)「落ちそうになったときは大澤くんが助けてくれるだろうと期待している」、(イ)「大澤くんと二人きりでいられることを無邪気に喜んでいる」、(ウ)「(大澤くんが)そばにいる自分のことを忘れないでほしいと切望している」、(エ)「大澤くんもその感覚(一体感)に酔っているだろうと確信している」。
「二人だけを乗せて」「風まかせに流れていけばいいのにと思う」のだから、「二人きりでいられることを無邪気に喜んでいる」以外は「消去」できるはずだ。「同一場面」で他の部分の説明を確認し、特に誤ってはいないと判断できる。
したがって、「答え」は(イ)だ。やはり、「原意消去」は最強だ。
<時間配分目安:1分強>
[問六] 「違い説明記述」(「字数指定」なし
「50字ほど」の解答欄)。傍線部(6)「まぶしいな」・(7)「まぶしいね」について、「この場面での二人の違い」を説明する。
「この場面」の状況について、「同一場面」で確認していく。「白い月光」が差すバルコニーに寝転がった「大澤くん」は、月を見上げて「まぶしいな」と言っており、「小夜子」は隣に寝転がって、「今日の月と(大澤くんの)横顔をずっと覚えていよう」と思いながら「まぶしいね」と応じている状況が読み取れるはずだ。つまり、「大澤くん」は夜空を見上げて「白い月光」に対して言っているのに対して、「小夜子」は「月光」とそれに照らされた「大澤くん」の「横顔」に対して言っているという違いがあるわけだ。そうした「違い」を「過不足なく」まとめていきたい。
たとえば、「大澤くんは差し込む白い月光について、小夜子は月光とともに大澤くんの横顔に対しても言っているという違い。」(51字)といった「答え」になる。
尚、「相違説明記述」は本校に限らず頻出なので、「対比」をしっかりと説明するように繰り返し練習しておく必要がある。
<時間配分目安:3分半>
【大問四】
- 時間配分:
「問題文<甲>」(古文)は鎌倉時代末成立の「日本三大随筆」のひとつ(他は清少納言「枕草子」と鴨長明「方丈記」)。全244段から成り、兼好の思索や雑感、逸話を長短様々、順不同に語っている。本文は第七段「あだし野の露消ゆる時なく」。「問題文<乙>」(漢文)は約2300年前、中国の戦国時代中期に成立したとされる思想書。一切をあるがままに受け容れるところに真の自由が成立するという思想を、多くの寓話を用いながら説いている。
尚、「問題文<甲>」と「問題文<乙>」の内容は連関している。昨年度同様に「古文」も「漢文」も標準レベルだが、例年の「漢文」での「返り点記入」が出題されていない。いくつか検討してみよう。
[問二] [古文]「内容解釈選択肢」(4択)
<甲>の傍線部(2)「かげろふの夕を待ち、夏の蟬の春秋を知らぬもあるぞかし」について、「その解釈」を答える。
本校志望者であれば定着しているはずの「基本的古文単語」および「基礎的文語文法」の知識で解ける。一部の「品詞分解」をして「答え」を確認していく。
「かげろふの夕を待ち」=名詞「かげろふ」(とんぼ)+格助詞「の」+名詞「夕」(夕方)+格助詞「を」+タ行四段活用の動詞「待つ」の連用形「待ち」=「かげろうは日が暮れるのを待って(死に)。「夏の蟬の」=「夏を生きる蟬は」。「春秋を知らぬも」=「春も秋も知らないで(死んでしまう)ことが」。「あるぞかし」=ラ行変格活用の動詞「あり」の連体形「ある」+「強意」の係助詞「ぞ」+「念押し」の終助詞「かし」=「あることなのだよ」。整理すると「かげろうは日が暮れるのを待って死に、夏を生きる蟬は春も秋も知らないで死んでしまうのだよ」という現代語訳になる。
よって、「答え」は選択肢(エ)の「かげろうは日中に命を終え、蟬は夏しか生きられないのだよ」。
やはり、本校志望者であれば「古文単語」と「文語文法」は基本レベルを完全習得すべきだ。
<時間配分目安:1分半>
[問三] [漢文]「返り点の付け方および解釈の組み合わせ選択肢」(4択)
〈乙〉の傍線部(3)「祝 聖 人 使 聖 人 寿」について、「返り点の付け方」と「解釈」の「正しい組み合わせ」を答える。
「訓読」が示されていないのでやや難解だが、「使役形」の「使」(しム)があるので、「使(ム) A(ヲシテ) B 」⇒「AヲシテBしム」という構文だと分かるはずだ。ということは、「使 聖 人 寿」は「聖」→「人」→「寿」→「使」の順に読むことになる。また、前半の「祝 聖 人」は「聖」→「人」→「祝」の順になる。よって、全体は「聖人を祝し聖人をして寿ならしめん」という「訓読」になる(ここでの「寿」は「長生きをする」という意味)。
故に「返り点」は「祝二 聖 人一 使二 聖 人 寿一」(*「二」・「一」が「返り点」)となる。また、「現代語訳」は「聖人を祝福し、聖人を長生きさせる」だ。
以上のことから、「答え」はその「組み合わせ」になっている選択肢(イ)になる。
「返り点」「書き下し文」は「漢文」の「基本のキ」で、当然ながら「再読文字」や「置き字」などについてもしっかりと習得しておくことが肝要。
尚、「書き下し文」では「付属語(助動詞・助詞)」を「平仮名」とし、当然、「歴史的仮名遣い」で表記すること。
<時間配分目安:1分半>
[問五] [漢文][古文]「同一内容読み取り選択肢」(4択)
<乙>の傍線部(5)の「寿ナレバ 則チ多シレ 辱(はぢ)」は<甲>にも同様の記述が見られるが、そこで述べられている「理由」を答える。
傍線部は「長生きすれば恥をかくことが多くなる」という意味だとすぐに分かるはずだ。「同様の記述」は<甲>の8行目の「命長ければ辱多し」だと判断できる。そして、直前に「住み果てぬ世に、みにくき姿を待ちえて何かはせん」とある。「何かはせん」の「か」「は」で「反語」だということに注意して「現代語訳」したい。「いつまでも住み続けることのできないこの世で、醜い姿を待ち迎えて、それが何になるのか、いや何にもならない」となる。これが「理由」だと分かる。
したがって、「容貌の衰えが隠しきれなくなるから」と説明されている選択肢(エ)が「答え」になる。
尚、「古文」と「漢文」の連関は本校の定番になっている。十分に練習しておくことが不可欠だと心得よ。
<時間配分目安:2分半>
攻略ポイント
●「多種多様な設問内容」。どう対処するか? 無論、「設問内容」に応じた「解法」の適用だ。基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておくことが重要。それによって、「得点力」を安定させたい。本校の「合格ライン」は6割弱(過去6年間の「SAコース」男女合計の「合格最低得点率」の平均は57.7%。本年度は下がって50.2%)。「解法」の応用で、「失点」「減点」を防いでいきたい。
●「字数指定なし」の「説明記述」。いかに「過不足なく」まとめ、「攻略」するか? 「裏ワザ」などないので、愚直に「記述」の「練習」を続ける他ない。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターし、「内容」の優先度が高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習する。本校では「20~100字程度」の「解答欄」と幅があるので、どのような「字数」にも対応できるように練習しておくことが肝要だ。
●「古文」「漢文」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容解釈」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。また、「古典常識」も「日本史」を含めてなじんでおくことが必要になる。「漢文」でも、「返り点」「訓点」「書き下し文」「基礎的句法」などの基本的知識は押さえておくこと。特に近年は「返り点記入」が頻出なので(本年度は「記入」ではなく「選択肢」だったが、難易度は不変だ)、特に入念に準備しておくこと。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は「現代文」で8000字程度(本年度は約8400字)。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。