広尾学園高等学校 入試対策
2024年度「広尾学園高等学校の国語」
攻略のための学習方法
現代文の読解
例年、論説文が2つ出されている。文学的文章の出題はない。字数は総計7000~9000字前後。高校生レベルの文章で受験生にとってはやや難しい。
設問形式は計33問中、言語事項などを除いて、選択式18問・書き抜き1問・記述4問(2024年度)。記述はいずれも50~90字ほどの長文記述になっていて難しい。
記述問題
字数が多いので、かなり練習を積んでおかないと試験本番で混乱し、うまくまとめられない事態が懸念される。本校の長文読解は論説文だけなので、論理的文章を指定された字数で要約する訓練が必要ということになる。
おおよそは20~30字でひとつの事柄がまとまり、50~60で大きなまとまりを形成すると考えれば、使う部分を整理しやすいだろう。20~30字ほどで重要点を抜き出しておき、設問の指定にそって組み合わせて答えとするのである。
まずは長文読解の基本どおりに問題をこなしていこう。形式段落→意味段落の整理(その際、意味段落の内容をタイトルとしてつけてしまうとわかりやすい)・段落ごとのつながり・各段落の最初と最後に特に注意しながら要点と細部の区別・それらをまとめて要旨・要約へといたる。
記述問題はまとめる内容が整理できていないと何回も書き直して時間切れになる恐れがある。素材文を読みながら印・傍線で重要点を目立つようにしておき、関連する事柄は線で結んでおくなどすれば解答の際に役立つだろう。同程度の文量の問題を多くこなし、60字や120字くらいで要約する練習を繰り返して十分に慣れておきたい。
選択肢問題
素材文が難しめなので選択肢の文も難しくなってしまうが、内容自体は迷わせるような微妙なものは少なく、選びやすくはなっている。本文をしっかり理解できていれば得点源にできるだろう。
古文
600~800字ほどの素材文で例年4~5問の出題となっている。配点は2割ほどあるので無視はできない。
現代語訳はつかないが、難しい単語の注はついている。内容も古文の中では比較的やさしい、現代人にもわかりやすい文が使われている場合も多く、難易度は配慮されている。
とはいえ、学校でさっとなぞっただけの古文の学習では足りない。最重要単語や基本文法を頭にいれ、高校生初級レベルの古文の教材で勉強しておこう。古文に頭を慣らしておくだけでも、得点につながるはずである。
漢字
言語事項などの知識問題はあまり出題されない。漢字の読み4問・書き6問という形でほぼ定着している。読み書きともに難しい漢字も出されているので、中級程度の漢字をマスターし、できれば上級レベルまで手を伸ばしておきたい。
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2024年度「広尾学園高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
2問の論説文読解で約6700字・古文580字ほどで計7500字ほどの文量で、総解答数は33問。
3問の長文記述は難易度も高く計12~15分ほどは取られそうである。どうしても時間が足りなければ何問かは諦めるのも作戦であろう。
漢字10問は2~3分程度でさっさと済ませ、選択肢の問題を全てこなしてから、記述問題に時間いっぱい取り組む。
【大問一】漢字の読み書き
- 時間配分:3分
問一 ① ぼうはん ② ことさら(に) ③ にょじつ ④ かんば(しく)
問二 ① 伐採 ② 佳境 ③ 凝視 ④ 満喫 ⑤ 倣(う) ⑥ 妨(げる)
【大問二】論説文の読解
- 時間配分:18分
インタビュアーである筆者が人の語りの生々しさの所以を考察し、人生は個別の経験であるがゆえに受け手を触発するのだと述べている。
問一 実例として挙げられているAさんの語りについての分析が手掛かりになる。「かつては言葉にならなかった経験に言葉を当てはめようと探索」し、即興的に語りながら「当時の経験に没入し」「生きいきと想起している」のである。
問二 「経験の切迫感は語りのいびつな手触り=語り方のぎくしゃくした交わらないリズム(十九字)を通して伝わる」のである。
問三 「語り」が「ぎくしゃくした交わらないリズム」を持つのには、現実の出来事や状況がけっして「理路整然」と生きられるものではないことが反映されている。
問四 母親が薬物を使用している・うつを患っている、Aさんは不安を持って見ている・長女としての責任も感じているという厳しい状況が複雑に重なっているわけである。
問五 冒頭で、インタビューの語りは人生の一部を「要約」したにすぎないと述べられている。
問六 人生が個別の経験であるがゆえに受け手を触発する語りとなるが、表裏一体で経験を語る難しさもあり、語ることができないこともまたその人の人生を表象するものとして尊重されるべきであると筆者は考えているのである。
【大問三】論説文の読解
- 時間配分:19分
共同体は、日常と非日常を交互に生きることで安定し活力を維持できると述べられている。
問一 直接には文の主語である「日々の暮らしの中で日常と非日常を交互に生きる」が答えとなるが、冒頭の段落にある「日常と非日常を繰り返すことで、活力を維持できる」がその効用まで書いてあるので、まとめて「知恵」とするのがよさそうである。
問二 「功利主義的個人主義」が社会に蔓延すると「無規制状態」になる。無規制状態とは「社会の価値が混乱し、個人の欲望が途方もなく肥大する」状況である、と書かれていることから、選択肢エが選べる。
問三 烏合の衆――規律も統制もないただの集まり。
問四 (1) マスコミュニケーションの発達にともない、専門家と呼ばれる人たちが多種多様の言説を展開し、それを鵜呑みにした大衆間で同調圧力が高まった。そのような人たちを「大衆人」と表現している。
(2) エ. 「大衆人」の例として、同調圧力を強いる自粛警察・イソジンを薦めた自治体の長・それらの頂点たる専門家の三者を挙げている。
問五 自分の研究分野しか知らない専門家が、専門外の分野についても支配的地位に立とうと権威として振る舞うことの弊害を表現した言葉であろう。大衆はそんな彼らの言葉を安易に信じて先導されてしまうのである。
問六 イ・ウはそれぞれの論であって「共通点」たりえず、エの「娯楽性」については両者とも論じていない。
【大問四】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
下僕に酒を飲ませたことで自分が斬られるはめになった僧侶の悲劇。
問一 ① 申しむつぶ(まうしむつぶ)――親しくつき合う
② かひがひし――働きぶりがしっかりしている
問二 A. ……奈良法師の兵士と多数会ったので、馬を引く下僕が立ち向かって「怪しい」と太刀を引き抜いて……
B. 僧侶が「(下僕は)酒を飲んで正気を失っております、お許しください」と言うと、兵士たちは嘲って去っていった……
C. 騒ぎを聞きつけた里人たちが出てきて、酔った下僕が「自分が山賊だ」と言って走って斬りまわるのを……
D. 馬が宇治大路の家に走り帰ると、僧侶の親戚である宇治の家の男が使用人たちを走らせて……
問三 失礼を働いたのはこちらだが、「なにぶん酔った男のしたことなので、『道理』を曲げて許していただきたい。」
問四 「私は酔っておりません。手柄を立てようとしたのに、抜いた太刀を無駄になさいました」と怒って、僧侶を滅多切りにした→よいところを見せようと思ったのに、僧侶に止められて腹を立てたのである。
問五 下僕に酒を飲ませた結果、僧侶は斬られてしまったのである→選択肢イ。
攻略ポイント
長文読解と記述対策が焦点であろう。
論説文の読解なので、論理の流れを把握して要約する力をつけることが目標となる。
記述は100字超の問題も出されるので、同程度の字数の問題を多くこなし、字数の感覚を得ておく。自然科学・人文科学などの論理的文章を読みながら要点に印をつけるなど、普段の読書も練習に組み込むことをお薦めする。
古文はやはり頭を慣らしておくことが大事なので、中学の教科書だけでなく、高校の教材を使って少しでも多くの古典に触れておくと良いだろう。