渋谷教育学園幕張高校 入試対策
2015年度「渋谷教育学園幕張高校の国語」
攻略のための学習方法
論理的な思考力を付けて、本問のような論説文の入試問題で高得点を取るにはどうしたらよいか。いくつかのポイントをあげておこう。
第一に『文章を書く』ということである。何も考えなしに闇雲に文章を書いてみても、入試問題における論説文対策にはあまり効果が期待できないだろう。おすすめは「論説文の要旨をまとめる」ということである。受験生にとって一冊の論説文〈岩波新書など〉を読んで要旨をまとめると言っても、その様なことを行う時間的余裕はないはずである。そこで提案したいのは、論説問題の文章をまとめてみよう、ということである。それも、文章でまとめるのではなく、『箇条書き』で『単語』としてまとめていくということである。そうすれば、文章を書くという時間的な負荷も軽減され、なおかつコンパクトに論説文の内容、論旨の流れなどが手に取るように理解できるはずである。
第二に『論点を明確にする』ということである。『論点』を『筆者の主張』と置き換えてもよい。つまり、筆者は何がいいたいのかということを明確に把握するということである。具体的には、本文中で筆者が繰り返している部分や、「つまり」や「したがって」という接続詞でつないでいるような箇所は要注意である。
また、第三者の意見を引用することは自身の立場・主張を際立たせるために良く行われる手法である。本文でも筆者は『大澤氏』の考えを引き合いに出して、賛同できる部分やその考えに対し補正や修正を加えているのである。そのような第三者の考えを引用する場合にも、その中のキーセンテンスを見つけるべきである。
次に、小説に関する設問についてのアプローチを考えてみよう。
まずは、心情の読み取りである。直截的に「私は……と思う」とは描写されない。人物の心の中は、情景描写であったり、その人物の一挙手一投足に現われる。そのような表現をしている部分を選び出し、人物と人物の間の精神的葛藤や同調する部分をしっかり理解しよう。そのような作業を行うことなく、小説に描かれている『人物』の内面の本質的な部分を理解するのには時間がかかるであろう。さらに、注目すべきは『会話』である。会話のやり取りを読み進めるうちに、人物同士が相手に対してどのように感じているか、心理的駆け引きは行われているのか、といった事柄も見えてくる。全体的な内容をしっかり理解するには、そのような面の理解と分析が不可欠である。
いずれにしても、学校で扱う小説や過去問で挑戦する小説の問題に対して、人物の心情を中心に読み進める癖をつけるように心掛けること。これをうまくマスターすれば合格点は取れる筈である。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2015年度「渋谷教育学園幕張高校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問１は、哲学的分野に関する論説文の総合問題である＜１９分＞。『走れメロス』という極めて著名な作品を通しての問題である。漢字、語句、文学史などの知識問題を始め、５０字程度の記述問題もある。
大問２は、吉行淳之介の小説を題材にした問題である＜１８分＞。主に、心情把握や内容理解を問う問題である。記述問題（５０字程度）もあるので、事前にしっかりとした準備は必要である。
大問３は、古文に関する説明文総合問題である＜１１分＞。古典文法、文学史、俳句内容理解など基本的知識問題が主である。
【大問１】
- 時間配分：19分
哲学的分野に関する論説文である。出典は、『「待つ」ということ』（鷲田清一著）。受験生の大半が読んでいるか、少なくともそのタイトルは一度は耳にしたことがあるであろう。『走れメロス』である。
本文では同作品は、待たせる身のつらさを描いた作品であり、待たせるつらさは「信頼されている」ことに起因すると説く。そして、「待たれる」ことは自分と他者との間における「信頼関係」が成り立っていなければならないが、本当にそうなのか、と疑問を呈する。
問一は漢字である＜２分＞。
完答したところである。（３）「たいせき」は書けるだろうか。
問二は慣用句である＜１分＞。
この言葉は常識としてしっかり押さえておきたい。
問三は語句問題である＜１分＞。
これも常識の範囲の問題であり、完答は当然と考えてもらいたい。ここで時間を取られてはいけない。
問四は内容把握記述問題である＜２分＞。
字数としては５０字前後。待たせる身のつらさは、待たされる側との間で『信頼関係』が存在することが大前提であろう。しかし、「待たせる身のつらさ」は「待つ側」の期待感に約束通り果たせないことに対する自身の「ふがいなさ」なのである。
問五は内容把握選択肢問題である＜２分＞。
「寓話」の持つ本問上での意味を考え、適切な選択肢を選ぶ。「寓話」とは教訓的な話を表したたとえ話のことである。
問六は内容理解選択問題である＜２分＞。
「そのような次元」とは、「待っていると意識することなくじっと待つ」次元のことであり、これを手掛かりに正解を考える。
問七は文章内容把握記述問題である＜４分＞。
メロスは約束通り辿り着くことを諦めかけ、友はメロスが来ないのではないかと疑った。そのような２人が、お互いの疑念を披歴し、再度分りあえ更なる信頼の絆（＝抱擁）を築くことができたのである。
問八は文章内容把握選択問題である＜２分＞。
「それ」とは「待つ、待たれるという関係の渦中にある」ということである。すなわち、「期待されたり、期待したり」、「裏切られたり、裏切ったり」という太宰を取り巻く人間関係を疎ましく思うようになっていったのである。
問九は文学史問題である＜６分＞。
単純に、作品名と作者（本問では太宰作品に限定しているが）を結びつけるのではなく、各作品の冒頭部分とその作品名を選択させる問題である。すべての作品を読んでいなければ正解できないという訳でもない。Ｅの中に『爵位があるから、貴族だというわけにはいかないんだぜ』という個所から『斜陽』と推察できる。
また、『人間失格』の冒頭はＡである。選択肢に列挙されている５作品のうち、『斜陽』と『人間失格』は一読の価値があるであろう。
【大問２】
- 時間配分：18分
小説の読解問題である。
出典は『花束』（吉行淳之介著）。
問一は漢字問題である＜１分＞。
（ａ）は悲惨ということである。
（ｂ）は「匂い」ということである。
問二は心情把握選択問題である＜２分＞。
魚川の不安な気持ちとためらいの気持ちを本文から読み取ること。
問三は表現理解記述問題である＜４分＞。
「堅牢」という言葉の持つイメージは、「強固でしっかりしていて何ものをも寄せ付けない」というものである。したがって、杉子が人妻として住む「堅牢な洋館」に、魚川は気おされてしまったのである。
問四は心情把握記述問題である＜４分＞。
長年思い続けてきた杉子へ久し振りに電話をする機会を持てたことへの「期待感」と杉子の反応に対する「不安感」がある。
問五は内容把握選択問題である＜２分＞。
杉子が魚川の電話に「弾みのない、鬱陶しそうな声」で答えたのは何故かを考えること。
問六は心情理解選択問題である＜２分＞。
木崎の母親の魚川に対する態度から、魚川を受け入れようとしているか否かを考えてみる。
問七は心情理解選択問題である＜２分＞。
杉子に受け取ってもらえなかった「花束」は、杉子にずっと恋心を抱きつつも、ついにその想いがかなわなかった魚川の恋心を表している。つまり「情けなさ」であろう。
問八は文学史選択問題である＜１分＞。
知識問題としての文学史問題である。
【大問３】
- 時間配分：11分
古文を扱った説明文読解問題である。
出典は『「おくのほそ道」をよむ』（長谷川櫂著）
問一は古語解釈問題＜１分＞。
「音信」とは便りのこと。
問二は古典文法選択問題＜２分＞。
敬語については受験生も学習に苦労している分野の一つであろう。事前の入念な下調べと確認が必要である。
問三は文学史の選択問題＜２分＞。
選択肢の「Ｃ おくのほそ道」を選択するのはそれ程難しくはないであろう。
問四は古文内容把握選択問題＜２分＞。
本文の「ちかいし」とは、「祈る」という意味である。「この矢を外さないでくれ」と祈ったのである。
問五は現代語訳選択問題＜１分＞。
本文の「暮れば」とは、「日が暮れたので」という意味である。
問六は俳句内容理解選択問題＜３分＞。
（１）Ⅰは「夏座敷」不自然でわざとらしく感じられる。それに対してⅡはわざとらしさはない。
（２）いきいきと動く感じを受ける。
攻略ポイント
全体的に、現代文（評論・小説）の読解、古文読解が中心である。設問内容としては内容把握・心情把握をしっかり行えるようにして欲しい。
また、漢字、文学史、語句。古典文法などの知識問題は確実に得点できるように事前準備を怠らないように。
さらに、４０～５０字の記述問題も全得点に占める比重が高いので、短時間で自分の考えを本文に沿って文章に纏め上げる能力も身に付けなければならない。
対策としては、とにかく記述式問題集で徹底的に演習を繰り返すことである。この対策を怠ると、本番で徒に時間だけが過ぎてしまい、満足のゆく答案に仕上げることができないであろう。