秤(はかり)屋で働く｢小僧(仙吉)｣は、どうしても食べたかった鮨(すし)をおごってもらった見知らぬ男(貴族院議員Ａ)のことを｢神様｣だと考え日々を過ごすようになったが、単なる同情からおごった｢Ａ｣は淋しい､いやな気持ちになってしまったという物語。
本文は、｢Ａ｣が鮨をおごる前後の場面。大正時代の作品で、難解な語句が多く
(｢※注｣が17)、本校ならではの分かりづらい内容だ。また、｢設問｣でも｢漢字の魚名｣を判別させるなど、ユニークなものがある。以下、いくつかを検討してみる。

[問１]　｢漢字の魚名の空所補充選択肢｣(５択)
本文中の空所　Ｘ　にあてはまる｢赤身の魚の名前｣を答える。
前後から｢鮨ネタ｣だと分かるので、｢まぐろ｣で決定なのだが、果たして｢漢字｣を特定できるかということだ。｢答え｣は選択肢(イ)の｢鮪｣だ。
ちなみに、(ア)｢鯛｣＝｢たい｣(これは知っていて当然)､(ウ)｢鮃｣＝｢ひらめ｣(｢平｣で類推可能か)､(エ)｢鯖｣＝｢さば｣(｢靑｣から判断？)､(オ)｢鰯｣＝｢いわし｣(知ってるはず)｡
本校では、こうした｢知識｣も問われると心得よ。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問３]　｢心情説明選択肢｣(５択)
傍線部①｢彼はちょっと躊躇(ちゅうちょ)した｣について、この時の｢貴族院議員Ａの気持ち｣を答える。
｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡｢心情説明｣だが、先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡
各選択肢の｢文末｣で(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)、
｢躊躇｣の｢原意｣に結びつかない｢気持ち｣を｢消去｣する。
｢躊躇｣⇒｢決心が定まらず､ためらうこと｣なので、
選択肢(イ)｢心配｣、(ウ)｢尻込み｣、(エ)｢不安｣、(オ)｢気後れ｣は｢消去｣で、(ア)｢ためらい｣だけが残ると判別できなくてはいけない。(ア)は他の部分の説明も特に誤ってはいない。従って、｢答え｣だ。｢一発消去｣で即解決。
｢選択肢設問｣では｢原意消去｣を活用すること。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問５]　｢心情説明記述｣(｢41～60字以内｣指定)
傍線部③｢勢いよく手を延ばし｣と④｢その手をひく時、妙に躊躇した｣の２ヵ所から読み取れる｢小僧の気持ち｣を説明する。
先ずは、傍線部前後から｢状況｣をとらえたい(｢小説｣は｢同一場面の直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)｡どうしても｢鮨を食べたかった小僧｣はかねてから行きたかった｢鮨屋｣に意を決して入り、｢初めてじゃない｣とばかりに｢勢いよく手を延ばし｣て鮨のひとつをつまんだが、｢その手を引く時、妙に躊躇した｣｡直後､｢鮨屋の主｣の｢一つ六銭だよ｣という言葉で、｢小僧｣はつまんだ｢鮨をまた台の上に置いた｣のだ。ということは、傍線部③｢勢いよく手を延ばし｣＝｢どうしても食べたかった鮨をいよいよ食べようと意を決した｣､④｢その手をひく時、妙に躊躇した｣＝｢お金が足りないかもと心配になった｣のだと判断できるはず。ふたつの｢心情｣をバランスよくまとめていきたい｡
たとえば、｢どうしても食べたかった鮨をいよいよ食べようと意を決したが､お金が足りないかもしれないと心配になりためらったという気持ち。｣といった｢答え｣になる。
｢動作｣から｢心情｣を読み取る際は、｢セリフ｣｢ト書き｣にも着目すること。

＜時間配分目安：３分半＞

[問６]　｢語句の換言記述｣
傍線部⑤｢Ａはちょっと弱った｣について、｢『弱った』という言葉｣を｢ここでの意味が同じになるように『他の言葉』｣に置き換える。
直前直後の｢文脈｣を確認する。｢小僧｣に｢御馳走してやろう｣と考えていた｢Ａ｣が､｢小僧｣の店で秤を買った場面だ。直後に､｢秤を買う時、住所姓名を書く｣という｢規則のあることを彼は知らなかった｣､｢名を知らしてから御馳走するのはいかにも冷汗の気がした｣とある。つまり、｢Ａ｣は｢どうしたらいいのか悩んだ｣という状況での｢弱った｣という言葉だ。したがって、｢答え｣としては｢困った｣等の言葉になる。ひとつの｢言葉｣は様々な意味で用いられる場合があるのは当然だ。
よって、｢文脈｣から的確な｢意味｣をつかむことが重要になる。

＜時間配分目安：１分以内＞

｢鎖国｣のイメージがある｢江戸時代｣だが、実は｢海外のものを取り入れ､独自の発展をとげた時代だった｣と指摘し、現在の｢グローバリゼーション｣の問題点から｢真のグローバル｣とは何かを論じている。
本文では、｢自給率100%｣だった｢江戸時代｣の｢内発的発展｣を参考にして、日本は｢アメリカ化｣ではない｢グローバル化｣をどのようにして実践すべきかを考察している。｢公民｣や｢歴史｣の知識は必要だが、｢※注｣も活用して内容は理解できるはずだ。｢幅広い知識｣が多角的に問われたり、｢小問｣で｢本文内容｣を換言した別の｢文章｣が示されたり、｢長文選択肢説明｣があったりと、いかにも本校の面目躍如といった大問だ。
そして、最後には、｢長文自由論述｣が待ち構えている。
いくつかの｢設問｣を確認する。

[問１]　｢語句の意味の選択肢｣(全３問/各５択)
波線部(ａ)｢一般化｣､(ｂ)｢漠然と｣､(ｃ)｢際限の無い｣について、｢本文中での意味｣を答える。
実はこの｢設問｣､それぞれの｢原意｣で瞬時に｢答え｣が判別できる。
(ａ)は選択肢(オ)の｢全体に通用させること｣
(ｂ)は(ウ)の｢はっきりとせず、とりとめなく｣
(ｃ)は(エ)の｢終わりなく続く｣となる。
が、真面目に忠実に｢設問｣の｢本文中での意味｣にこだわり過ぎると､他の選択肢に引きずられてしまう可能性がある。その意味で、本校らしい曲者だ。
無論、｢文脈｣を読み解くことは大切なのだが、｢語句の意味｣である以上、｢原意｣から外れては元も子もないということだ。注意せよ。

＜時間配分目安：１分半＞

[問４]　｢換言説明選択肢｣(５択)
傍線部②｢ラダックはグローバル化のなかで大きく変質します｣について、｢その説明｣を答える。
本校の真骨頂､｢長文選択肢説明｣｡(ア)～(オ)の各選択肢は｢100字前後｣にもなっている。
先ずは｢原意消去｣を試みたいが､各選択肢の文末は｢変質の結果｣を具体的に説明しているので無理だ。であれば、｢同一意味段落｣を確認するほかない(｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡ここでは、傍線部の段落から２段落後までだ。そこでは｢変質の過程｣が説明されており、最後に｢お金がないことに不幸を感じるようになる｣とある。これが｢変質の結果｣だ。
改めて各選択肢の文末を確認する。
(ア)｢故郷に戻らなくなった｣
(イ)｢お金を持つことを幸福と考えるようになった｣
(ウ)｢生活格差が生まれた｣
(エ)｢経済的に大きく成長した｣
(オ)｢お金がないことに不幸を感じるようになった｣
無論、｢答え｣は｢(オ)｣だ。段階的に｢解法｣を駆使していくことが肝要。

＜時間配分目安：２分半＞

[問７]　｢条件付き自由論述｣(｢81～100字以内｣指定)
｢理想的なグローバリゼーションとはどういうものか､あなた自身の考え｣を論述する。
｢条件｣は｢この文章に書かれている江戸時代のグローバリゼーションを参考にする｣こと。｢あなた自身の考え｣なので何を論じてもいいのだが、何でもいいとなると逆に困ってしまうはずだ。そこで、｢条件｣を｢手がかり｣にする。｢この文章｣で筆者は､｢江戸時代のグローバリゼーション｣は単に｢世界基準｣に合わせるのではなく、｢導入するものとしないものを分別しながら自らの道を行き｣､｢外圧によらず地域独自の発展を成し遂げた｣と論じている。そうした｢内容｣も踏まえつつ｢自らの考え｣を分かりやすくまとめていくこと。

＜時間配分目安：５分半＞

｢総合的知識問題｣｡
｢漢字の書きとり｣⇒｢貸す｣｢冒す｣(｢同訓異字｣に注意)｢専門｣｢状態｣｢簡潔｣。
｢ことわざ｣｢四字熟語｣⇒｢一寸の虫にも五分のたましい｣｢千里の道も一歩から｣｢早起きは三文の得｣｢七転八起｣｢三寒四温｣｢十人十色｣。
｢熟語の組み立て｣⇒｢絵画｣｢転校｣｢読書｣｢弱点｣の中から､｢両親｣と同じ組み立てのものを選択⇒無論、｢弱点｣だ。
これらは全問正解が必須。｢敬語｣｢文法｣だけを検証する。

[問３]　｢性質の異なる言葉の選択肢｣(全２問/各５択)
⑧⑨でそれぞれ示されている(ア)～(オ)の言葉の中で､｢性質の異なるもの｣を答える。
⑧は
(ア)｢いらっしゃる｣
(イ)｢めしあがる｣
(ウ)｢おめしになる｣
(エ)｢うかがう｣
(オ)｢なさる｣
｢敬語｣だとはすぐに分かるだろうが、判別できるか？(エ)は｢謙譲語｣で他は｢尊敬語｣なので､｢答え｣は｢(エ)｣｡
尚、｢うかがう｣は｢聞く｣｢訪れる｣の｢謙譲語｣｡
⑨は
(ア)｢小さい｣
(イ)｢思い｣
(ウ)｢やわらかい｣
(エ)｢正しい｣
(オ)｢早い｣
全て｢～い｣だ。言い切りが｢～い｣となれば｢形容詞｣､ということは｢活用｣する。
したがって、｢い｣を｢く｣などに置き換えてみて確認する。(イ)は｢思く｣となってしまう。ゆえに、｢形容詞｣ではない(｢名詞｣だ)｡よって、｢答え｣は｢(イ)｣｡
｢敬語｣｢文法｣は苦手な諸君も多いので、しっかりと復習しておくこと。

＜時間配分目安：30秒＞