｢成績や肩書に縛られずに生きる｣｢誰もが自分らしさを持っている｣｢リスクを恐れる必要はない｣｢個人で生きるか､組織に生きるか｣――国際ビジネスの最前線で活躍する著者自らの体験をもとに｢自分力｣の原点を論じている。

本文では、｢沈黙｣は｢金｣ではなく｢罪｣であり、｢人前で恥をかく経験｣は早いほどいいと、失敗を恐れずに積極的に発言することの重要性を指摘している。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　難解な語句は少なく、内容は分かりやすい。｢設問｣は｢空所補充｣の連続で、解答数もとても多いので一気呵成に解き進める必要がある。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｢正誤判別選択肢設問｣では、｢正解から不正解を引いた得点｣となるので要注意だ｡そして、最後に本校の｢新定番｣ともいえる｢長文自由作文｣が待ち構えている。

以下、いくつか確認する。

[問一]　｢漢字の書き取り｣(全５問)。破線部(Ａ)～(Ｅ)の｢カタカナ｣を｢漢字｣に直す。

基本的なものばかりなので、本校志望者は全問正解でいきたい。

注意すべきものとしては、

(Ａ)｢ゴゲンをたどれば｣(＝｢語源｣)⇒｢文脈｣からの判別がやや難しいか？　　　　　　　　　　　　　　　　(Ｂ)｢このことはネントウに置いた上で｣(＝｢念頭｣)⇒｢念頭に置く｣(＝｢覚えておいて心にかける｣こと)という慣用表現は覚えておきたい。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(Ｅ)｢ゼックした｣(＝｢絶句｣)⇒｢話の途中で言葉に詰まること｣だ。

本校の｢漢字の書き取り｣では、わざわざ｢ていねいに書きなさい｣という｢条件｣が明記されている。ということは、それだけ厳しく採点されるわけだ。一点一画を意識して記すこと。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問二]　｢語句の空所補充選択肢｣(全４問/８択)。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　本文中の　１　～　４　の空所に入れる｢適当な語｣を答える。

全て｢接続詞｣だ。本校に限らず定番の問題。｢接続詞｣では｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外だと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。

単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。

順に空所をチェックしていく。

　１　には｢逆接｣の(ア)｢けれど｣､　２　には｢例示｣の(エ)｢たとえば｣､　３　には｢転換｣の(カ)｢ところで｣､　４　には｢順接｣の(イ)｢そこで｣が入る｡

選択肢が多いので、いくつかの｢候補｣をしっかりと｢代入確認｣してから確定することが重要だ。尚、[問三]は｢副詞｣の｢空所補充選択肢｣(全４問/８択)だ。同様に｢代入確認｣を怠らないこと。

＜時間配分目安：２分＞

[問四]　｢ことわざの空所補充選択肢｣(４択)。本文中の　　①　　に入れる｢適当な日本のことわざ｣を答える。

｢傍線部(空所部)一文一部の原則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分｣だった場合、｢傍線部以外が重要｣ということ)で前後を確認する。

｢『　　①　　』と同じように、『沈黙』は奥ゆかしさの要素の一つとみなされている｣となっている。

各選択肢を確認する。(ア)｢雀百まで踊り忘れず｣､(イ)｢立つ鳥あとを濁さず｣､(ウ)｢鳶の子は鷹にならず｣､(エ)｢能ある鷹は爪を隠す｣｡

全ての｢ことわざ｣は当然、知っているはずだ。｢奥ゆかしさの要素の一つ｣なのだから、｢答え｣は(エ)となる。｢慣用句｣や｢故事成語｣も含めて、様々な｢知識｣は完璧にしておくこと。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問六]　｢見出しの空所補充選択肢｣(４択)。本文中の　　 ③ 　　に入る｢問題文後半｣の｢見出し｣を答える。

あまり馴染みのない問題で戸惑うかも知れないが、｢見出し｣なのだから、その部分の｢要点｣を簡潔に表したものだということは分かるはずだ。現に、｢問題文前半｣の｢沈黙は『金』ではなく『罪』｣という｢見出し｣はそうなっている。

では、｢問題文後半｣の｢要点｣は何か？　｢初め｣と｢終わり｣を確認する(通常､ひとつの内容でくくられた文章では、｢最初｣に｢問題提起｣､｢最後｣にそれに対応する｢要旨｣が述べられている)｡

｢初め｣に｢人前でミスをしたり意見を否定されたりすることは、ぜんぜん恥ずかしいことではない｣と指摘し、｢終わり｣で｢人前で恥をかく経験は一度してしまえば、次からは怖くなくなる｣とまとめられている。

各選択肢は、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(ア)｢頭の中を真っ白にしてみること｣､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(イ)｢『自分は絶対にこれをやりたい！』｣､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(ウ)｢人前で恥をかくことは怖くない｣､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(エ)｢『人前で恥をかく経験』の楽しさ｣｡

｢人前で恥をかく｣ことが｢テーマ｣なので､(ア)(イ)は即｢消去｣で問題ないはずで、その上で、さすがに｢楽しさ｣は不適切だと分かる。よって､｢答え｣は(ウ)。

馴染みのない問題でも、｢設問｣を的確に把握し臨機応変に対応することが肝要。

＜時間配分目安：１分＞

[問七]　｢脱文挿入選択肢｣(４択)。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　示されている｢一文｣を入れるのに｢適当なか所｣を､本文中の【あ】～【え】の中からに答える。

｢脱文挿入｣では｢接続詞、指示語、そして、内容｣を｢手がかり｣とする。ここでは、｢脱文｣に｢こうしたトレーニング｣という｢指示語｣がある。つまり、｢挿入｣する直前に｢トレーニング内容｣が説明されているわけだ。

各選択肢を確認する。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【い】の直前に、｢『実践→失敗→挫折→　        (＝｢反省｣､[問七]の｢答え｣)→新たな実践→新たな失敗→新たな挫折』を繰り返していくうちに、少しずつ公の場で発言できるようになっていきました｣とある。

まさに、｢トレーニング内容｣だ。したがって、｢答え｣は【い】だ。

｢選択肢｣ではない｢脱文挿入｣では、｢形式段落の最後｣に挿入するのが原則だということも心得ておくこと｡

＜時間配分目安：１分以内＞

[問十]　｢条件付き自由作文｣(｢字数指定｣なし、｢150字ほど｣の解答欄)。　　　　　　　　　　　　　　　　　傍線部｢新しい何かを手に入れている｣について、筆者のように、｢『失敗』をおそれず続けていくうちに、自分の中(内面)によい変化が起こったという経験｣について、｢自由に作文｣する。

｢条件｣は｢具体例をあげる｣こと(どうしても｢自分自身の経験｣として思い当たらなければ、人から聞いた話、本で読んだ話などでもかまわない)。いくら｢自由｣といっても、｢本文｣に関することを問われているのだから、先ずは｢手がかり｣｢ヒント｣を探す｡

｢傍線部(空所部)一文一部の原則｣で確認すると、｢あなたが勇気を出して質問｣すると｢必ずきちんと答えて｣くれて、｢質問する前｣と比べて｢新しい何かを手に入れている｣となっている。

さらにその後には、その｢何か｣とは､｢よそでは絶対に手に入らない貴重な情報｣かも知れないし､｢満足感｣だけかも知れないが、｢とにかく確実に新しい感動や知的刺激が手に入る｣とある。また、｢尻込みして質問しなければ、何も得られず成長は何もない｣ともある。

こうしたことを踏まえた上で、｢失敗｣を恐れず｢勇気｣を出して行った結果、｢自分の内面｣に｢よい変化が起こったという経験｣についての｢具体例｣をまとめていけばいい。ただ、｢評価は内容と表現の両面から行う｣と明記されているので、｢表記｣｢文法｣｢構成｣等にも十分に配慮すること。

尚、この｢設問｣は本校が求めている｢鑑賞力･想像力･創造力･表現力｣全てが網羅されているので、｢白紙｣のままというのは避けた方がいい。

＜時間配分目安：５～６分＞

瀕死の野良猫を助け飼っていた｢悟｣だったが、ある事情からその猫を手離し、新しい飼い主を探すことになる。｢ひとり｣と｢一匹｣は銀色のワゴンで｢最後の旅｣に出る――永遠の絆を描く心にしみる長編小説。

本文では、小学校時代の｢悟｣が突然の事故で両親を失い、可愛がっていた猫とも別れて叔母さんに引き取られていく姿を、同級生の｢幸介｣の目を通して描いている。

[問一]は｢語句の意味｣で｢神妙な顔｣｢所在なげに｣｢意固地｣などの｢選択肢設問｣､[問二]は｢慣用句｣で｢目(を伏せて)｣｢胸(にぽっかり穴が空いた)｣の｢空所補充記述設問｣､[問三]は３つの｢空所｣に対して８つの｢オノマトペ｣(擬態語)からの｢選択肢設問｣と、本校らしい｢総合的知識問題｣の３連続。

いかに､これら前半で失点しないかが勝負となる。以下、他の３問を検討してみたい。

[問四]　｢理由説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢120字ほど｣の解答欄)。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　傍線部①｢すると悟が突然号泣した｣について、｢それまで泣いていなかった『悟』がここで突然大泣きを始めた理由｣を説明する。

｢理由説明｣なので、｢直接的理由｣が｢最重要ポイント｣となる。

先ずは、直前直後から｢状況｣を確認する(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡｢悟｣の｢両親｣が交通事故で突然亡くなり、その｢お通夜｣の席に｢幸介｣がやって来た｢状況｣だ。そして、｢悟｣が｢母親｣から頼まれた｢あぶらとり紙｣を､｢悟｣のかわりに買ってきた｢幸介｣がそれを取り出し、｢おばさんの言ってたあぶらとり紙｣と｢悟｣に言った直後に、｢号泣｣していることが分かる。

また、ここまでの｢悟｣は｢心ここにあらずという感じ｣で、｢初めて泣いた｣ともある。　　　　　　　　　　　　

ということは、｢突然訪れた両親の死｣という｢衝撃的な現実｣を実感できずに｢呆然｣としていた｢悟｣が、｢母親に頼まれていた『あぶらとり紙』｣を｢級友｣の｢幸介｣に差し出されたことで、その｢死｣を現実のこととして受け止めざるを得なくなり、一気に｢悲しみの感情｣があふれ出てきたことが読み取れるできるはずだ。

したがって、こうした内容を､｢直接的理由｣を｢文末｣として説明していきたい。　　　　　　　　　　　　　　たとえば、｢交通事故で突然訪れた両親の死という衝撃的な現実を実感できずに心ここにあらずという感じだったが、母親に頼まれていたあぶらとり紙を級友の幸介に差し出され、その死を現実のものとして受け止めざるを得なくなり、一気に悲しみの感情があふれ出てきたから。｣といった｢答え｣となる。

｢小説｣では｢同一場面｣を丁寧に読み取ることが肝要。また、｢説明記述｣では、｢最重要ポイント｣(｢理由説明｣では｢直接的理由｣)を｢文末｣にすること。

＜時間配分目安：３分＞

[問七]　｢理由説明選択肢｣(４択)。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　傍線部④｢同時に、悟が少し遠くに行ってしまったような気もした｣について、｢幸介｣が｢このように感じた理由｣を答える。

｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣を試みたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡

｢理由説明｣なので、｢直接的理由｣での｢消去｣だ。｢少し遠くに行ってしまったような気もした｣ことの｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣する。

各選択肢の文末を確認する(選択肢の説明でのポイントは｢文末｣だ)｡

(ア)｢悟一人だけが涙も流さずに立ちつくしていたから｣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(イ)｢自分とくらべると大人びて見えたから｣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(ウ)｢自分には声をかけてくれないから｣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(エ)｢悟と自分の境遇がかけ離れたものになったと思ったから｣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

｢遠くに行ってしまったような気もした｣のだから､無論、(イ)(エ)以外は｢消去｣できなくてはいけない。

次に｢傍線部(空所部)一文一部の原則｣を確認すると、直前に｢立派だな｣とある。｢幸介｣が｢悟｣のことをこのように思っているということは、｢大人びて見えたから｣が相応しいと分かるはずだ。他の部分の説明も特に誤っていないので、｢答え｣は(イ)になる。

ここでは、｢原意消去｣の上での｢段階的消去｣になったわけだ。

＜時間配分目安：１分半＞

[問九]　｢一文の空所補充選択肢｣(４択)。本文中の　　 ⑥ 　　に入る｢一文｣を答える。

空所自体が｢一文｣なので｢傍線部(空所部)一文一部の原則｣は使えない。そこで、直前直後の｢文脈｣を確認する｡

直前に｢めったに会わない遠い親戚なんか子供にとって他人と一緒だ｣､直後に｢どうして大人はそんなこともわからないのか｣とある。各選択肢をチェックする｡

(ア)｢親戚なんか家族じゃないんだ｣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(イ)｢子供にとっては友達が家族だ｣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(ウ)｢猫だってだいじな友達なんだ｣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(エ)｢友達のほうがよっぽど近くだ｣｡

これでは｢消去｣のしようがない？　確かにそうかもしれない。が、細部に着目したい。前文の｢遠い親戚｣について、直後で｢疑問｣を呈している｡であれば、｢遠い｣に対応している｢近く｣となっている(エ)が｢答え｣だと判別したい。

｢文脈｣では｢対の関係｣はとても重要だ。

＜時間配分目安：１分＞