｢愛国心｣について、｢科学的態度｣について、｢弱さや不便さに基づいた生き方について｣……､世の中の枠組みが大きく変化し、既存の考え方が通用しない歴史の転換期に、中高生に向けて｢これだけは伝えておきたい｣という知見を集めた未来へ向けての11のメッセージ。

本文では、｢自分の身体に訊く｣ように仕向ければ、人は外界からの情報入力に対して開放的、貪欲になり、｢もっとデータを｣という前のめりの構えになるが、それが｢学ぶ｣ということだと論じている。

やや難解な語句はあるものの｢中高生向け｣に書かれているので､内容は理解できるはずだ。設問は本校らしい｢端的｣なものばかり。的確に対応することが求められる。また、多様な｢総合的知識問題｣が随所に散りばめられている。

以下、いくつかの｢設問｣を確認してみたい。

 

[問一]　｢指示語換言説明記述｣(全４問。全て｢字数指定｣なし、各｢30字ほど｣の解答欄)。　　　　　　　　　傍線部①･③･④･⑦の｢それ｣は､それぞれ｢何を指すか｣を説明する。

｢指示語換言｣そのものはどこの学校でも定番だが、それだけを集めた｢設問｣というのはなかなかユニークだ。同じ｢指示語｣でも､｢指示する内容｣の捉え方、説明の仕方が異なる場合がある。そうしたことが的確に押さえられているかが問われる。

注意すべきものとして２つ考えてみたい。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　先ずは①の｢それ｣､段落冒頭だ。通常、｢指示語｣の｢指し示す部分｣は｢段落をまたがない｣｡が、｢段落の最初｣にある場合はまたがざるを得ない｡その際、その｢指し示す部分｣は｢前段落全ての内容｣というのが原則だ。そのことを理解しているかがポイントとなる。

確認する。①の｢前段落｣の内容をまとめると、｢僕(筆者)は書く以上は読んでほしいし、理解してほしいし、共感してほしい､書いている言葉が読者にしみ込むようであってほしい｣となる。そうした内容を①の｢それ｣に｢代入｣できるようにまとめていく。

たとえば、｢読者に読んでもらって、理解され共感されるように書くこと｡｣といった｢答え｣だ。

次に、⑦の｢それ｣｡一文の途中なので確認すると、｢こちらは相手の虚を衝いて話を始めたんですから、それを押し通すしかない｣となっている。したがって、｢それ｣＝｢相手の虚を衝いて始めた話｣だ。しかし、これだけでは｢相手｣とは？　｢話｣とは？　となってしまう。

判明する内容は全て説明する必要があるので、さらに、前文を確認する。｢高校生たちは『風水』なんて言われてもわかりません｣とある。つまり、｢相手｣＝｢高校生たち｣､｢話｣＝｢『風水』の話｣だ。以上をまとめる。

たとえば、｢高校生たちの虚を衝いて始めた『風水』の話｡｣といった｢答え｣となる。

｢字数｣などに応じて、｢指示語｣が直接的に｢指し示す部分｣以外でも｢説明｣を補足する必要があるということだ。いずれにしても、｢指示語｣の｢解法｣は徹底的に習得しておくことが肝要。

＜時間配分目安：４問全てで５分＞

 

[問二]　｢換言説明記述｣(｢15字以内｣指定)。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　傍線部②の｢ノイズ｣は､ここでは｢何を指すか｣を｢十五字以内｣で説明する。

｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という｢重要解法｣)で､｢手がかり｣を確認する。

｢世界は無数の『ノイズ【騒音･雑音】』に満たされている｣となっている。｢ノイズ｣＝｢騒音･雑音｣だと分かるが、これは単なる訳語なので｢答え｣にはならない。さらに、直後を読み進めると｢ノイズはカットして、自分にとってほんとうに意味のある情報だけを選択的に採り入れるように人間の知性は構造化されています｣とある。ということは……､

もう分かったはずだ。たとえば、｢自分にとっては意味のない情報｡｣といった｢答え｣になる。　　　　　　　　

前後の｢文脈｣を的確に把握することが重要だ。

＜時間配分目安：１分半＞

 

[問四]　｢内容説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢35字ほど｣の解答欄)。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　傍線部⑤の｢『あなたは私がこれからする話を最後まで注意深く読んでしまうであろう』というものになる｣という言葉には､｢筆者のどのような考えがあるか｣を説明する。

傍線部だけでは｢何が｣ということが不明なので、｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣で確認する。直前に｢これから後の話にいささか挑発的な見出しをつけるとすれば｣とある。

つまり、傍線部は｢これから後の話の挑発的な見出し｣となる。｢あなた(＝読者)は私の話を読んでしまう｣と｢見出し｣につけるということは、｢筆者｣には｢読者が私の話を読むはずだ｣という｢考え｣があると判断できる。なぜなのか？　

｢同一意味段落｣を確認する(｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡すると、次段落で､｢一般論をしてもダメ｣｢『あなたに特に関係のある話ではありません』で始まるものは､誰も聞いてくれません｣と指摘した上で、｢以下の話は『あなたに(すごく)関係のある話』です｣と述べている。

｢説明｣すべき内容はこれでそろった。あとは、｢指定字数｣に応じて｢過不足なく｣まとめればいい。たとえば、｢以下の話は一般論ではなく読者自身に関係があるので読むはずだという考え｡｣という｢答え｣になる。

記すべき｢必要要素｣を整理して説明することが肝要だ。

＜時間配分目安：２分＞

 

[問六]　｢語句の空所補充選択肢｣(全２問/４択)。本文中Ｄ･Ｅに｢あてはまる言葉｣を答える。

｢総合的知識問題｣｡各選択肢はおなじみの｢打ち消しの接頭語｣､｢無｣｢未｣｢非｣｢不｣だ。確実に得点をゲットしたい。

確認する。｢Ｄ関心｣＝(ウ)｢無｣､｢Ｅ言語的｣＝(イ)｢非｣となる。｢非言語的｣に関しては｢未知｣の諸君もいると思うが、｢消去法｣でも特定できるはず。｢ことばを手段として用いない｣ということなので覚えておきたい。本校ではあらゆる｢知識問題｣に精通しておく必要がある。

＜時間配分目安：１分以内＞

 

[問九]　｢語句の空所補充記述｣(｢漢字１字｣指定)。本文中Ｆに｢あてはまる言葉｣を答える。

｢総合的知識問題｣｡｢慣用句｣だ。空所部は｢木でＦを括(くく)るような解答｣となっている。｢木で○をくくる｣？⇒あっ、｢木で鼻をくくる｣(＝｢きわめてそっけない態度、冷淡な態度をとる｣こと)だ！　とピンときた諸君は｢慣用句マスター上級者｣だ。よって、｢答え｣は｢鼻｣｡

ただ、ここでは設問で｢参考｣にすべき｢慣用句｣として、｢Ｆにつく｣･｢Ｆにかける｣･｢Ｆをあかす｣･｢Ｆが高い｣が挙げられているので、｢上級者｣ならずとも分かるはず。いずれにしても、｢ことわざ｣｢慣用句｣｢故事成語｣は定番、徹底習得を！

＜時間配分目安：１分以内＞

 

[問十一]　｢脱文挿入の抜き出し｣(｢５字｣指定)。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　示されている｢脱文｣は、｢どの段落の前に入れるのが適当か｣を、｢その段落の初めの五字｣で答える。

驚くなかれ、｢脱文｣自体が162字という長さ。ともあれ､｢脱文挿入｣では、｢脱文｣の｢接続詞｣｢指示語｣｢内容｣に着目することが鉄則。

ここでは｢脱文｣に､｢ただし｣という｢補足(限定)｣の｢接続詞｣､｢そういう｣という｢指示語｣がある。これらが｢手がかり｣だ。｢脱文｣では｢ただし、そういう『歓待』を期待するためには条件がある｣となっている。つまり、｢脱文｣の｢前の段落｣では、｢何らかの『歓待』｣についての説明があり、その｢限定条件｣がこの｢脱文｣だということになる。

｢歓待｣という｢キーワード｣に着目して､各段落をたどっていくと、空所 Ｇ の３段落前に｢歓待【おもてなし】｣の説明がある。他の段落では｢歓待｣を確認できない。であれば、特定していいはずだ。念のために確認する。 Ｇ の３段落前に｢脱文｣を｢代入｣する。｢脱文｣の最後と次段落の最初は、｢身体が開放状態になった｣→｢身体が開放状態になるのは～｣となる。見事につながる。

したがって、｢答え｣は｢身体が開放｣となる。尚、｢脱文挿入｣では、必ず｢候補の部分｣に｢脱文｣を｢代入｣して､｢文脈｣｢内容｣などがつながることを確認してから特定すること。

＜時間配分目安：２分半＞

 

[問十四]　｢語句の空所補充選択肢｣(５択)。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｢総合的知識問題｣｡｢語句の意味｣だ。本文中の空所 Ｇ ～ Ｊ に｢あてはまる言葉｣を答える。

各選択肢の｢言葉｣は、(ア)｢奇跡｣､(イ)｢構造｣､(ウ)｢感情｣､(エ)｢論理｣､(オ)｢断片｣｡それぞれの｢語句の意味｣を踏まえ、各空所の｢文脈｣に即して特定していきたい。

確認する。

｢僕の言うことが実に Ｇ 的で｣｢言いたいことがすらすらと全部わかる｣　　　　　　　　　　　　　　　　　⇒｢言うこと｣が｢わかる｣ことになるので、｢論理(的)｣が相応しい。

｢教室内の全員が僕の話を理解するという Ｈ 的な瞬間が起きる｣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　⇒｢全員｣が｢理解する｣という｢瞬間｣であれば、まさに｢奇跡(的)｣で決まり。

｢まず教壇にいる僕から Ｉ 的な音声が聞こえてくる｣｢『うし……きこ……ますか』くらいしか聞こえない｣　　⇒無論、｢断片(的)｣だ。

｢虫食いだらけの暗号文を読解する話｣という別の事例を挙げた上で､｢やっていることは Ｊ 的には同じ｣　　　⇒｢別の事例｣と対比して｢同じ｣とするのなら､｢構造(的)｣になる。

｢答え｣を整理すると、 Ｇ ＝(エ)､ Ｈ ＝(ア)､ Ｉ ＝(オ)､ Ｊ ＝(イ)になる。｢自らの知識｣と｢文脈｣とを組み合わせて特定していくことが肝要だ。

＜時間配分目安：２分半＞

 

[問十七]　｢論旨説明記述｣(｢70字以内｣指定)。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｢筆者がこの文章を通して伝えたいこと｣を｢七十字以内｣で説明する。

典型的な｢論旨説明記述｣だ。｢論説文｣での｢論旨｣は、｢序論部分｣(頭括型)か､｢結論部分｣(尾括型)か､｢序論部分｣＋｢結論部分｣(双括型)で述べられている。本文は｢尾括型｣だと分かるはずだ(｢序論部分｣は｢問題提起｣だけになっている)｡そして、｢この文章｣の｢結論部分｣は最後の４段落だと特定できる。

確認する。

その最初の段落に｢僕がたどりついた結論は｣と始まる部分がある。｢たどりついた結論｣＝｢論旨｣で決定だ。そこには｢『自分の身体に訊く』ように仕向ければ、人は外界からの情報入力に対して開放的になり、貪欲になり、『もっとデータを』という前のめりの構えになる｡これが『学ぶ』ということだ｣とある。これを｢字数｣に応じて｢過不足なく｣まとめればいいわけだ。

たとえば、｢『学ぶ』ということは、外界からの情報入力に対し『自分の身体に訊く』ようにして、開放的で貪欲に『もっとデータを』と前のめりの構えになることだ。｣といった｢答え｣になる。

本校では定番の｢論旨説明記述｣､本年度はとても平易だったが、｢論旨｣がどこで述べられているのか(｢頭括型｣｢尾括型｣｢双括型｣)を特定することがポイントとなる。

＜時間配分目安：２分半＞

｢漢字の書きとり｣(全10問)。示されている文中の(カタカナ)を｢漢字｣に直す。

本校としては標準的な難易度。できれば｢全問正解｣といきたい｡

注意すべきものとしては､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(３)｢(シャソウ)の景色｣(＝｢車窓｣)⇒上位校では頻出、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(４)｢試合を見て(コウフン)した｣(＝｢興奮｣)⇒一画一画を丁寧に記さないと失点、　　　　　　　　　　　　(５)｢(カンソ)な住まい｣(＝｢簡素｣)⇒｢部首｣に注意、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(７)｢野菜の(ヒンピョウ)会｣(＝｢品評｣)⇒｢意味｣を捉えることが重要､　　　　　　　　　　　　　　　　　　(９)｢つり糸を(タ)らす｣(＝｢垂(らす)｣)⇒｢画数｣に要注意｡

｢トメ｣｢ハネ｣などにも十分配慮すること。

＜時間配分目安：２分＞