昨年度は出題のなかった本校お得意の｢慣用的表現｣が本年度は復活、また、｢読み｣もやや曲者で、昨年度より難化した｡だが、このレベルが本校の｢標準｣だ。

注意すべきものとしては、
②｢ことわざのゴヨウを指摘され｣＝｢誤用｣⇒｢文脈｣を捉えよ､
④｢友のチュウゲンに従う｣＝｢忠言｣⇒｢同音異義語｣を見極めよ､
⑥｢現状にアンジュウして｣＝｢安住｣⇒｢意味｣を的確に把握せよ､
⑧｢彼は私にとってムニの親友｣＝｢無二｣⇒｢慣用表現｣に注意せよ、
⑨｢夜半過ぎ｣＝｢やはん｣⇒｢夜中｣という意味も押さえよ
⑩｢人家の灯り｣＝｢じんか｣⇒｢にんか｣ではない。

ひとつでも不安なものがあった諸君は、未だ本校の求める｢語彙レベル｣には達していないと心得て、精進せよ。

台湾で生まれ東京で育った女の子を主人公に、家族や故郷･台湾の一族との絆を丁寧に綴(つづ)った物語――忘れかけていた家族との懐かしい記憶や風景を思い出し、じんわりと温かな気持ちを､在日台湾人の作者が紡ぎ出している。

本文では、｢姉｣が日本語教師として働く様子や、その縁で結婚が決まった経緯、｢わたし｣が中国語を学び始めたことなどを描いている。時折、｢中国語｣と｢英語｣がはさまるという作者独特の文体で、やや読みづらいかも知れないが、内容は理解できるはず。

｢空所補充｣や｢説明記述｣で若干手強いものがある。以下、いくつかの｢設問｣を検証してみたい。

[問一]　｢語句の意味の選択肢｣(全２問/各４択)。｢総合的知識問題｣｡

波線部①｢いそしんだ｣､②｢嘆息する｣の｢言葉の意味｣をそれぞれ答える。どうだ？　｢いそしむ｣は知っていてほしい。｢熱心につとめ励む。精を出す｣ことだ。｢嘆息｣はさすがに馴染みがないかも。難関だ。｢嘆(なげ)いて、ため息をつく｣こと､知らなかった諸君は定着させておくこと。

よって、｢答え｣は､①＝選択肢(イ)｢まじめに作業に努めた｣､②＝(エ)｢ため息をもらす｣となる。無論、それぞれの｢言葉｣を知らなくても、｢文脈｣から判別するというチャレンジはしてみるべきだ。いずれにしても、本校では｢高度な語彙力｣が求められていることがここでも分かる。

＜時間配分目安：２問で１分＞

[問二]　｢空所補充の内容説明記述｣(｢30～40字以内｣指定)。

空所 　 　  Ａ   　　 には｢『姉』が力になりたいと考えている相手｣が入るが、｢どのような人だと考えられるか｣を｢三十字以上四十字以内｣で｢わかりやすく｣説明する。空所前後は｢わたしは 　  　 Ａ  　　 の力になりたいのよね｣となっている。｢手がかり｣を求めるために、｢同一場面｣の前後から｢状況｣を把握したい(｢小説｣は｢同一場面の直前直後に手がかり･ヒントあり｣が鉄則)。

直前から、｢わたし｣＝｢姉｣で、｢子どもに日本語を教えたいとよく話していた｣ことが分かる。では、どのような｢子ども｣なのか？　直後に｢薛莉莉(せつりり)ちゃんが､まさにそういう子どもだった｣とある。

｢指示語｣を開くと(｢指示語｣が出たら即開くこと)､｢そういう子ども｣＝｢父親が日本の中国料理店で働くことになり、突然日本で生活することになった日本語を一言も話せない子ども｣だ。もちろん、｢日本語を教えたい｣のは薛莉莉ちゃんに対してだけではないので、うまく一般化して｢わかりやすく｣まとめていきたい。

たとえば､｢親の都合だけで突然､日本で生活することになった日本語を一言も話せない子どもたち｡｣といった｢答え｣になる。｢同一場面｣から｢状況｣を読み取り、｢設問｣に応じて説明することが肝要。

＜時間配分目安：２分半＞

[問三]　｢内容説明選択肢｣(４択)。

傍線部①｢わたしたち姉妹がリビングのテーブルに陣取って薛莉莉ちゃんのための教材をつくっている｣について、｢ここでの『姉』と『わたし』の取り組み方｣を答える。

｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡が、ここでは｢取り組み方｣を問われているので、さすがに傍線部だけでは｢消去｣できない。｢同一場面｣から｢状況｣を読み解いていく。直前から、｢姉｣は毎日､｢薛莉莉ちゃんの教材作りにいそしんで｣おり、｢おたし｣も｢手伝い｣をしていて｢その作業はいやではなかったし｣､薛莉莉ちゃんが喜んでいたといわれると､｢嬉しくなって、はりきってしまう｣といったことが分かる。

各選択肢は、前半に｢姉｣､後半で｢わたし｣の｢取り組み方｣が説明されている。
先ずは、｢わたし｣の方で｢消去｣していく。
(ア)｢義務感にかられている｣､(イ)｢手伝わなければいけないと感じている｣､(ウ)｢負担感を感じずに取り組んでいる｣､(エ)｢姉の気遣いに応えようとしている｣｡

｢わたし｣は｢いやではなかったし｣｢嬉しくなって、はりきってしまう｣のだから当然、(ウ)以外は｢消去｣できるはず。｢姉｣についての説明は、｢自分の仕事として｣｢まじめにしている｣となっている。｢いそしんで｣いたことと結びつくので問題はない。

したがって、｢答え｣は(ウ)でＯＫだ。
本問では無理だったが、時間節約と混乱防止を考えると、最初に｢原意消去｣を試みることは不可欠だと心得よ。

＜時間配分目安：２分＞

[問七-Ｃ]　｢空所補充の脱文挿入選択肢｣(４択)。

空所 　 　Ｃ　　 に｢入る表現｣を答える。空所前後は｢――だって 　 　Ｃ　　 ｡わざとおどけた口調で姉がいう｡｣となっている。ということは、空所には、｢ト書き｣にあるように｢おどけた口調｣で言った｢表現｣が入るはずだと分かる。｢おどけた｣で｢原意消去｣できそうだ。

各選択肢を照合する。
(ア)｢しつけが厳しかったもので｣､
(イ)｢わたし、日本語教師ですもの｣､
(ウ)｢日本語で苦労している母をずっと見てきましたから｣､
(エ)｢それは、伸一さんたちの言葉遣いが良くないからですわ｣｡

｢おどける｣＝｢こっけいな言動をする｣なのだから無論、(ア)(ウ)(エ)は｢消去｣だと分かるはずだ。

よって、｢答え｣は(イ)｡見事に｢一発消去｣だ｡やはり、｢原意消去｣は使える。尚、｢セリフ｣と｢ト書き｣は密接に関連しているので、常に一体のものとして読み取ることが肝要。

＜時間配分目安：１分＞

[問八]　｢内容説明記述｣(｢15～20字以内｣指定)。

傍線部④｢おねえちゃんがいたから、エミちゃんは日本語にはあまり苦労しなかった｣について、｢日本語を教えるだけでなく、姉がしてくれたこととして具体的に挙げられていること｣を､｢十五字以上二十字以内｣で説明する。

先ずは直前から、傍線部は｢母｣の言葉であり、｢エミちゃん｣とは｢わたし｣だとつかんでおきたい。その上で、｢わたし｣が｢日本語にはあまり苦労しなかった｣ことに関して、｢姉｣が｢日本語を教える｣こと以外にしてくれたこととは何かを｢具体的｣に読み解いていく。

すると、｢同一場面｣の８行前に｢わたしの連絡帳も姉が書いていたと話そうかどうしようか考えあぐねていた｣とあることに気づくはずだ。そう、｢姉｣が｢母｣の代わりに｢わたし｣の｢連絡帳を書いていた｣､｢具体的｣だ。あとは､｢過不足なく｣まとめればいい。たとえば、｢母の代わりに連絡帳を書いてくれたこと｡｣といった｢答え｣だ。｢文脈｣に即して必要な｢要素｣を捉えることが重要だ。

＜時間配分目安：２分＞

人は、なぜ｢孤独｣を怖れるのか？　｢孤独｣が寂しいからか？――｢孤独｣とは、社会と共生しながら、自分の思い描いた｢自由｣を生きることであると指摘し、人間を苛(さいな)む｢得体の知れない孤独感｣を分析している。

本文では、若者の多くが｢孤独｣を怖れるが、｢孤独感｣のあとには｢楽しさ｣があるので、そのことを知る余裕が大事だと論じている。｢哲学論｣なのでやや難解な語句もあるが、｢注｣を活用すれば内容は理解できるレベルだ。

｢換言説明｣と｢理由説明｣というオーソドックスな設問内容が連なっている。正攻法でこなしていきたい。いくつかを確認してみたい。

[問二]　｢理由説明記述｣(｢35～40字以内｣指定)。

傍線部②｢寂しさや孤独が、実は人間にとって非常に大事なものだ｣について、｢それはなぜか｣を｢三十五字以上四十字以内｣で説明する。先ずは､｢手がかり｣を｢傍線部(空所部)一文一部の原則｣(｢傍線部(空所部)｣が｢一文の一部｣の場合、｢傍線部(空所部)以外｣が重要な｢手がかり｣｢ヒント｣)に求める。直前に｢このように考えるだけで｣とあり、直後には｢ということがわかってくるはずだ｣とある。

つまり、｢このように考える｣ことが、傍線部の｢理由｣＝｢答え｣に結びついているわけだ。
｢指示語｣なので開く。｢この｣は段落冒頭で、前段落全ての内容を指示している(｢指示語の基本的解法｣のひとつ)｡確認すると、｢『精神集中』は思考に近い『個人の活動』であって、気が散らない静かな環境が相応しい｣といった内容になっている。もちろん､｢個人｣とは｢人間｣だ。

あとは｢直接的理由｣を｢文末｣としてまとめていけばいい。たとえば、｢思考という個人の活動である精神集中には、気が散らない静かな環境が相応しいから｡｣といった｢答え｣だ。｢解法｣に則して｢文脈｣を読み取ることが肝要だと心得よ。

＜時間配分目安：２分半＞

[問三]　｢語句の空所補充抜き出し｣(｢４字｣指定)。

本文中に２ヵ所ある　 　　　 に｢入る同じ言葉｣を抜き出して｢四字｣で答える。｢抜き出し設問｣では､｢抜き出すべき内容｣を正確に捉えた上で､｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。それぞれの空所前後を確認していく。

最初の方は｢もしかして、人は　 　　　 を本能的に望んでいるのだろうか｣､後の方は｢　 　　　 がさらに進み、植えつけられたものがその人にとっての価値観になり、常識にもなる｣となっている。｢内容｣を捉えるために｢同一意味段落｣を読み取る(｢論説文｣は｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡

前者の直前から｢賑やかなところではなにも考えなくても良い｣ことを｢本能的に望んでいる｣ということ、後者の直後からは｢自分で考えなくなること｣が｢さらに進み、植えつけられたものがその人にとっての価値観になり、常識にもなる｣ということが分かる。つまり、両者の｢抜き出すべき内容｣は、｢なにも考えなくても良いこと｣｢自分で考えなくなること｣となる。共通しているのは｢考えない｣ということだ。

次に｢範囲｣だが、前者と後者の｢同一意味段落｣となる。丁寧に探していくと、前者の方の傍線部①の直前に｢典型的な『思考停止』であって｣という部分がある。｢字数｣も合致する。他にふさわしい表現もないので、｢答え｣は｢思考停止｣でいい。

｢抜き出し設問｣ではいかに｢範囲｣を絞り込めるかがポイントだ。また、｢抜き出し候補｣はひとつとは限らないので、必ず｢範囲全て｣を隈なく探すこと。

＜時間配分目安：２分半＞

[問八]　｢換言説明選択肢｣(４択)。

傍線部⑦｢寂しさがもしマイナスだとすれば、それはプラスあってのマイナスだと捉えることができる｣について、｢それはどういうことか｣を答える。先ずは｢原意消去｣といきたいが、その前に何か気づかないか？　４つの選択肢が２つにくくれるということだ。

(ア)(ウ)が｢マイナス｣､(イ)(エ)は｢プラス｣について説明しているのだ。傍線部は｢マイナス｣についての説明、その｢換言｣であれば無論、(イ)(エ)は｢消去｣だ。残りを｢原意｣で｢消去｣する。各選択肢の｢文末｣で照合したい(｢選択肢説明｣の最重要要素は｢文末｣で述べられている)｡
(ア)｢幸せなときがあったから｣､
(ウ)｢賑やかな状態を望んでいるから｣｡

｢プラスあってのマイナス｣なのだから、｢答え｣は(ア)だと判別できるはずだ。｢換言選択肢｣では、｢何についての説明｣なのかという視点での｢消去｣も可能だと肝銘せよ。

＜時間配分目安：１分半＞

[問九]　｢換言説明選択肢｣(４択)。

傍線部⑧｢その余裕があり、それが『美』でもある｣について、｢それはどういうことか｣を答える。ここはもちろん､｢キーワード｣である｢『美』でもある｣での｢原意消去｣からだ。各選択肢の｢文末｣を確認する。

(ア)｢姿勢が必要だ｣､
(イ)｢強さを得られる｣､
(ウ)｢魅力がある｣､
(エ)｢人物になれる｣｡

｢美｣であれば、(ウ)以外は｢消去｣可能だと判別できなくてはいけない。他の部分の説明も特に誤っていないので。
｢答え｣は(ウ)｡｢一発消去｣だ。｢原意消去｣のコツをマスターすべく、練習を重ねることが肝要だ。

＜時間配分目安：１分弱＞