豊島岡女子学園中学校 入試対策
2018年度「豊島岡女子学園中学校の算数」
攻略のための学習方法
豊島岡の算数は他の女子校と一線を画した仕上がりになっている。
ほとんどの女子校においては,ある程度の「速さ」と「正確さ」があれば合格ラインを超えることは出来る。どちらかだけでも十分,という学校もたくさんある。中堅校の場合は「どれだけ出来るか」というよりは「どれだけ間違えないで進めるか」によって勝負が決まり,初めからミスの数も計算のうちに入っている。相手よりもミスを減らせばよいのであって,ノーミスは眼中にない。
しかし豊島岡の場合,この二つの要素に加えて「深さ」-難易度の高い問題に対処し,しかも正解できるという条件が加わってくる。受験勉強を真摯に続けていれば「速さ」や「正確さ」は身についてくる。本人の学力が落ちていくと言うことはあり得ないからだ。しかし「深さ」だけは最後まで持てない可能性がある。指導の中で時間をかけて問題を解説してもらい理解したとしても,「自分で一から解く力」を身につけるのは非常に大変なことだ。ここが最後の関門となる。普通の学校であれば「ここまでできていれば必要十分」という範疇を超えて解いていかなければいけない。
豊島岡の過去問をやらせてみて,たとえばある生徒が60%くらいの得点を取ったとしよう。基本的にはほぼパーフェクトと言える。スピードも正確さも申し分ない。生徒としては勉強法をたしなめられたり,注意を受けたりする箇所はほぼないわけだ。しかしそれでも合格点には10点以上不足していることと思われる。
なぜか。豊島岡の受験生たちはそれを超えて解けてしまうからである。当たり前のことを言っているようだが,これは相当な厳しさと言える。問題作成者がたまたま手心を加え少しでも問題をやさしくしようものなら,平均点は優に80点を超えてしまう(第2回・第3回のテストを含めると今まで何度も起こっていることだ)。平均が80点と言うことは,90%を目指さなくてはいけないことになる。これはどこの学校にもあり得ないことなのだ。
ただ,算数のテストとしてみた場合,その難度というのはきわめて正統的なものだ。
奇をてらった問題もなければ,途方もなく時間のかかる作業を含む問題もない。算数の入試問題としてオーソドックスに発展した形がそこにある。中学年から真面目に問題演習を積み重ね,数え切れないほどの解法を身につけてきた生徒のみがその問題への解き方を頭に浮かべることができるだろう。たいていの問題は典型題の先にあるものであり,一部の男子上位校のように「センスがなければ解けない」とか「ひらめきが必要だ」と言うことはない。あくまでも受験算数の頂点の一つとして受験生たちの挑戦を待っているのである。
また,豊島岡の場合,その難易度は他の科目にも波及している。やはり「深さ」がどの科目でも必要となる。そんな中で,ある程度実力アップの道筋がわかりやすい算数はましな方かもしれない。
分野別に二つほど。
「立体図形」は豊島岡克服のための重要な分野である。ここ数年は最期の大問として登場することが多く,そしてどの問題の難易度も高い。普通の学校であればいわゆる「捨て問」として処理してもいいレベルなのだ。しかし,この学校においては,「解くための」問題として存在している。
この分野の問題を手がける場合には,十分な時間をかけよう。「何分で解く」という答えだけを導く要領よりも「解くために必要な技術」を身につける時間を作りたい。
具体的に言うと,与えられた図以外の作図をこなせるようになっておきたい。本年度【大問6】においては,斜めから見た断面図が必要だった。これは,模範解答を見て納得したからと言って次に書けるものではない。フリーハンドで図が書けるように練習しなくてはいけない。立体図形の見取り図・展開図などをササっと書けるだろうか。作図できる能力をハイスペックで自分のものにしておきたい。
また,切断問題も多いことから,立体的視点もできれば養っておきたい。切断後に出来る立体のイメージを頭に浮かべて,それを手かがりに解法を考えつくということだ。これも容易ならないレベルの技術であるがいくつもの類似問題をこなしていきながらなんとか身につけてもらいたい。
さらに立体図形の問題にもかかわらず,図が書かれていないものもある。この場合は,一から自分で図を書いて問題を整理することになる。そのとき,最も適切な図を選択できるかどうか。立体図形の場合は,普通は見取り図から書くことが多いが問題によっては断面図で問題が解決するときもある。これも模範解答を見て納得,ではなくて自分自身がその図を選んで書けるよう訓練しておきたい。
繰り返すことになるが,ここでいう最後の大問「立体図形」は通常であれば「捨て問」といえる水準のものなのだ。しかしここを落とすと,他の問題をほぼ正解しない限り合格ラインに届かなくなる。では,他の分野が簡単かというとそんなことはないわけで,最後の設問ひとつに至るまでしっかり目を通して解き方またそのための技術を確認しておきたい。
「しらべる問題(場合の数ふくむ)」ではそつのない手順を繰り出せるかどうか。
しかし昨年平成29年度【大問5】では,すべての場合において調べておくという作業が必要とされ、ただただそつなく問題をこなしさえすればよいというものでもない。ときには愚直とも思える作業も必要となり、まさに臨機応変,その場での対応力が合否を分ける結果となる。
他にも「速さの問題」「割合と比」など重要な分野ではあるが,十分に解ける範囲であると言うことで割愛したい。
豊島岡の算数ではこれ以外にも,標準的難易度をもつ前半の一行問題を2・3分で完璧にこなしていかなくてはならないというスピード養成が必要となる。問題を解く速さに関しては,自覚的にスピードを上げるよう心がけることだ。マイペース,という耳あたりのよい言葉は捨ててもらいたい。鉛筆を動かす筋肉さえ早く動かすよう脳に伝達し,無駄のない思考で正解に到達できるよう鍛えていくしかない。姿勢を正して問題に相対し,問題文を読み終わったときにはもう正解までの道筋がたっていて,すでに手は作図や立式に入っているくらいに,イメージで言えば陸上の短距離の選手のような切れ味で問題にあたっていってもらいたい。
豊島岡の算数は確かに難しいものである。しかし受験生の相手は大学生や大人ではない。同じ小学6年生の女子なのだ。小学6年生として成熟した学力を持てるよう,残された時間を有効に使っていけば必ず合格までの道が見えてくる。
こころざしを高く持ち,豊島岡の校門をくぐる日を夢見て,難問に挑戦してもらいたい。
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2018年度「豊島岡女子学園中学校の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が6,小問が18。この分量は本年度も不変。
また、テスト形式は前半の小問(大問1・2)は基礎的なものまたは標準レベルまでのもの、中盤(大問3・4)は標準からやや難しめの問題、後半は難易度の高い勝負問題と比較的わかりやすい構成になっている。分量も時間に対して適切である。
本年度は後半の【大問6】が超難問であるにもかかわらず例年と変わらない受験者平均点・合格者平均点となっており、さすがに豊島岡の受験生は質が高い。
前半の基礎~標準的な問題をそつなくこなし,ほぼノーミスで通過して,後半のボリュームあふれる大問に挑戦していきたい。
【大問1】計算・割合・数列・平面図形の面積
- 難度:易
- 時間配分:5分
- ★必答問題
(1)は計算の工夫が必要で、うまくまとめないと時間がかかってしまう。
(2)は割合で基礎レベル。
(3)は学年が2つくらい下の生徒が解くのにちょうどよいレベル。
(4)は正方形の1辺が3cmと4cmの間にあるという事から個数を絞っていくと良い。
ここは全問正解で。
<時間配分目安:5分>
【大問2】不定方程式・規則性・食塩水・平面図形の求積
- 難度:標準
- 時間配分:10分
- ★必答問題
本年度はここで立ち止まってしまう問題がなくさらさら解けていくはずだ。多少なりとも頭をひねるとしたら(1)か。
(1)は豊子さんと春子さんの点数から5点の問題の数をしぼっていく。あとは5×x+4×y=100にあてはまる整数xを求めれば良い。ほんの少し時間はかかって良いので必ず正解したい。
(2)は典型的な規則性の問題。解説も不要だと思うが逆に必要なようでは危うい。基本まで立ち返ってしっかり復習しておきたい。
(3)は食塩水の消去算。解いた事が必ずあるであろう応用問題で、AとBについての式をたてて、着実に正解したい。もちろん基本的な問題とは言いがたいが、豊島岡受験生にとっては基本的だ。
(4)も色のついた部分のうち1つが「おうぎ形の弧2つプラス6cm」とまとめれば良い。おうぎ形の中心角はそれぞれ60度なので計算はしやすいはずだ。
ここも全問正解でいきたい。
<時間配分目安:10分>
【大問3】場合の数
- 難度:標準
- 時間配分:5分
- ★必答問題
(1)は基本的な問題がまだ続いているような感じを受ける。3つの数の和が5になるような組み合わせを順序よく考え、それぞれの並べ方を調べれば良い。
(2)では答えの一部に(1)の結果を利用することによって、二度手間が省けるようになっている。1の位が「1」の場合は(1)で計算済みなので、1の位が「3」「5」の場合を調べれば良い。ここもできれば両問とも当てておきたい。
<時間配分目安:5分>
【大問4】速さ
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
- ★必答問題
ここは(2)までは確実に当てておきたい。(3)も正解できるにこした事はないが【大問6】の次に難しい設問であり、失点した場合はしっかりと復習しておこう。
(1)は家から図書館までを「1」、図書館から公園までを「2」とおいて、
A1+A2=20、A1+B2=22、A2+B1=23…というように式を立てていくと、消去算の考え方から(2)までは求められるようになっている。
(3)では(2)までの結果から、AとBの速さの比を求め、本格的に比1あたりの距離を求めていく問題となっている。
(2)までは標準的だが(3)は難問に属する。初の失点も許そう。
<時間配分目安:8分>
【大問5】平面図形
- 難度:やや難
- 時間配分:6分
平面図形における、底辺と高さの関係を駆使し、辺の比を求めていく問題で本年度の合否を大きく分けた問題となった。【大問4】までの得点と【大問5】をあてて合格ラインを突破しておきたい。
(1)は補助線を引くことで三角形BHDと三角形AFHの面積が等しいことをうまく使っていこう。
(2)は(1)が解けないと求められないので問題演習を積み、平面図形の問題に強くなっておきたい。
<時間配分目安:6分>
【大問6】立体図形
- 難度:難
- 時間配分:8分
最後に超難問が控えていた。昨年度に続き立体図形の総合的難問だ。それでも昨年度は(1)に基本的な問いを見たが今年はどれも難しい。よほどの実力者でもない限り挑戦は無謀に終わるだろう。時間がどれだけあっても解法に向かう問題ではないので、【大問5】までの正答数を胸に前半から復習していこう。
<時間配分目安:8分>
攻略のポイント
テスト時間は50分で100点満点。
受験者平均は約61.3%,合格者平均は74.8%と問題の質から見れば大変に高い数字であることがわかる。ここから合格にはやはり70点の得点が期待されるものの,これをクリアするのは容易ではない。
1問5点ないし6点の点数配分から見て,18問中12・3問の正解が必要となる。
【大問1】・【大問2】はできるだけ速く正確に解いて全問正解を目指したい。
【大問3】・【大問4】ではせいぜい設問1つまでの失点にとどめたい。
【大問5】・【大問6】はどちらも難問なので、できれば【大問5】で正解をもぎ取り、最後の立体図形が捨て問と出来れば理想的である。
豊島岡の入試問題を攻略するための方法としては、
・女子校全体に必要とされる「速読即解」の力は普段の勉強の中で身につけておきたい。どんな問題にもていねいにあたる態度,それを忘れてはいけない。
・質の高い問題が解けるようになることは一朝一夕に成立することではない。1歩1歩の積み重ねである。難易度を急に上げるのではなく教えていただいている先生方のアドバイスを聞いて問題を選択してもらおう。
・算数だけに偏らず,どの科目にもまんべんなく時間が注げる余裕と勉強量を誇りたい。
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