<参> 基本解法(選択肢設問中心)~センター試験+私大中堅校レベル~
- 「国語」は本来縦書きですが、レイアウトの都合上、横書きとしました。御了承下さい。
予告通り、第3章は[基本解法(選択肢設問中心)](センター試験+私大中堅校対応)ということで筆を進めようとしていた矢先、巷間騒がしい。「センター試験、国語の平均点は過去最低」、2013.2.7、新聞各紙の見出しだ。2013年度「国語」の平均点は101.04、前年度比−17で過去最低という衝撃の結果だった。「鵺」の飛来か。様々な分析がなされているが、中でも槍玉に挙げられているのは大問1「評論」だ。出典は「近代批評の神様」とも言われた批評家・小林秀雄(1902~83)の「鐔」。センター試験に同氏の文章が出題されたのは、79年に始まった前身の共通1次試験を含めても初めてで、しかも、脚注だけで21個、「鐔」を示すイラストまで添えられるというただならぬ気配。駿台予備校によると、受験生からは「過去問の傾向と違い読み慣れていない文章で戸惑った」などの声があったというし、問題分析したベネッセによると「小林の文章は評論でありながら随筆風に展開されている。高校生にとっては難解だった」という(共に朝日新聞)。 確かに、そうかも知れない。が、8割以上を得点した生徒に尋ねてみると、「えっ、そう?」「別に」「いつもと同じだったけど」「本文は何でも、あまり関係ないから」……とのこと。 そう、まさにここに「鵺なる現代文」を捉える「解法」が潜んでいたということだ。
<参> 基本解法(選択肢設問中心)
~2013年度センター試験+私大中堅校レベル~
以下、「選択肢設問」の「基本的解法」のいくつかを紹介していく。
※無論、教材としては2013年度センター試験「国語」を採り挙げる。下のリンクからダウンロード可能。
http://www.dnc.ac.jp/modules/center_exam/content0562.html
① 「正しいもの」と「最も適当なもの」は全く異なもの?!
a) 先ずは、「内容読解選択肢設問」では何が問われているのかということだ。設問に注目する。センター試験では「最も適当なもの」を「選べ」とある。ここで重要なことは、「正解」は「最も適当なもの」であって、「正しいもの」ではないということだ。相対的であって絶対的ではないということだ。従って、「選択肢」には「正しいもの」は存在しないと考えなくてはいけない。ということは、「正しいもの」を「選択しよう」とすれば陥穽にはまり、混乱するばかりで「正解」に辿り着けないことになってしまう。故に、「選択する」のではなく「消去する」必要がある。「不適当なもの」を「消去」して、残った「よりマシなもの」=「最も適当なもの」が「正解」となる。この「消去法」が、センター試験に限らずどこの学校の入試問題でも「内容読解選択肢設問」の基本的「解法」だ。
b) では、「不適当なもの」を「消去する」方法は何か。何を「根拠」として「不適当」と断定するのか。最も重視しなければならないのが、「原意絶対優位の原則」だ。そもそも、「設問」そのものであれ「傍線部」であれ、その「原意」(本来の「意味」)を正しく理解していなければ考えようもない。「消去」の「根拠」も第一義的には「原意」に求めるべきであり、それによって容易く「消去」できる「選択肢」が多い。例えば、2013年度センター試験[大問1]の[問4]。 [傍線部C「もし鉄に生があるなら、水をやれば、文様透は芽を出したであろう。」とあるが、それはどういうことをたとえているか]という「比喩表現」を開く設問。当然、「比喩表現」の「原意」を「根拠」として「消去」することとなる。末尾から考慮するのが基本(「末尾消去の法則」)なので、先ずは傍線部の「芽を出した」に注目する。特に「出した」に注意。「原意」といってもそのままの意味なので容易い。傍線部の文末と各選択肢の文末が対応している訳だから、各選択肢の文末を確認し、「出した」の「原意」に合致しないものを「不適当なもの」として「消去」すればいい。各選択肢の文末は全て同じ「~ことをたとえている。」なので無視すると、選択肢①は「地金であり続けた」、選択肢②は「文様が出現した」、選択肢③は「美しい文様の始原となった」、選択肢④は「文様が彫られるようになっていった」、選択肢⑤は「彫り抜くことが可能になった」、各下線部で「出した」の「原意」に合致しない①③⑤はすぐに「消去」できる。更に、傍線部は「文様透は芽を出した」とあるので、②と④を比較して「文様が彫られるようになっていった」の④は「消去」できるはずだ。因って、②が「正解」となる(無論、念のために②の「説明」全体に誤りがないかどうかは確認する必要がある。「正しい」かどうかではないので要注意)。 この設問は典型的な「原意消去」の問題であったということだ。
② 「本文」よりも「設問文」が重要?!
「傍線部設問」には幾つかのタイプがあるので、それを見極めて合致した「解法」を用いる必要がある。「イコール(換言)設問」、「説明設問」、「だが設問」等があるが、最も頻出なのが「イコール(換言)設問」だ。典型的なものは[傍線部X「……」とあるが、それはどういうことか]といった設問だ。こうした設問では当然、傍線部の「内容」「原意」に合致しない選択肢を「消去」することとなる。その際、傍線部の「文脈」にも注意する。「文脈」のみを「根拠」として「消去」できる場合があるからだ。例えば、2013年度センター試験[大問1]の[問2]。 [傍線部A「日本人の鍔というものの見方も考え方も、まるで変って了った」とあるが、それはどういうことか]という「イコール(換言)設問」。 傍線部の「文脈」で注目すべきは「ものの見方も考え方も」という部分だ。つまり、ここでは「見方」と「考え方」というふたつの「説明」が必要だということだ。従って、各選択肢で「ふたつ」の「説明」がなされていないものは「消去」することとなる。傍線部文末の「まるで変って了った」は各選択肢文末の「~が求められるようになったということ」に対応しており全て同じなので無視すると、その前の部分が傍線部の「ものの見方も考え方も」に対応していることとなる。選択肢①は「実戦のための有用性と」「生き抜くための精神性とが」、選択肢②は「平俗な装飾品としての手ごろさが」、選択肢③は「手軽で生産性の高い簡素な形が」、選択肢④は「生命の安全を保証してくれるかのような安心感が」、選択肢⑤は「戦いの場で士気を鼓舞するような丈夫で力強い作りが」であり、「求められるようになった」ものが「ふたつ」「説明」されていない②③④⑤はすぐに「消去」できる。以上、終了だ(例によって、選択肢の「説明」全体に誤りがないかどうかは確認すること)。これは「文脈」のみで「正解」を導ける設問の典型だ。
③ 「各選択肢説明」を読めば読むほど間違いやすい?!
「内容読解選択肢設問」に於いて、各選択肢の「内容」は仔細に検討する必要がある。それが定石だ。「なるほど」と思いがちだが、果たして本当にそうか。各選択肢の「字数」は今や100字前後は当たり前(センター試験でさえ150字以上の選択肢もある)。 仮に5択として、①から読み始め⑤まで読み通したら、①は忘れてしまうのが普通だ。しかも、各選択肢は紛らわしい(「紛らわす」ためにあるのだから当然だ)。混乱し、「正解」は遠退くばかりだ。では、どうする。「分かる」ということは「分ける」こと。要は「分ける」ことで単純化することだ。単純になればなるほど分かりやすくなることは、当然の道理だ。各選択肢の一文を「分ける」ことで単純化し、必要最小限の要素のみを比較、検討し、「消去」すればいいのだ。例えば、2013年度センター試験[大問1]の[問5]。 [傍線部D「私は鶴丸透の発生に立会う想いがした。」とあるが、それはなぜか]という「理由説明設問」。 「理由説明」では「直接的理由」での「消去」が最優先となる(これも「基本的解法」のひとつ)。 ここでは「想いがした」の「直接的理由」となるが、選択肢①「想像できたから」、選択肢②「感じられたから」、選択肢③「思い及んだから」、選択肢④「思い至ったから」、選択肢⑤「思いがしたから」であり、いずれも「想いがした」ことの「直接的理由」として「不適当」とは断定できず、「消去」は不可能。次なる「消去」の「根拠」は、「想い」の「内容」となる。傍線部では「鶴丸透の発生に立会う想い」とある。 下線部に注目し、各選択肢の「想い」の「内容」だけを検討する。選択肢①は「鶴丸透が当時の人々の心を象徴する文様として生まれたこと」、選択肢②は「鶴丸透を彫るなどの工夫をこらし、優雅な文化を作ろうとしていた」、選択肢③は「鶴丸透の構想を得たこと」、選択肢④は「鶴丸透に込められた親の強い願い」、選択肢⑤は「鶴丸透の出現を重ね見る」であり、下線部の「原意」から①②③④は「消去」できることになる。各選択肢の「内容」を如何に単純化し、惑わされないかがポイントとなる設問だ。
④ 「傍線部設問」→「傍線部」は無関係?!
a) 前述の②に於いて、「設問文」が重要であり「傍線部」の「原意」「内容」「文脈」等だけで選択肢の「消去」が可能な「設問」があると記したが、一方で、実は「傍線部」の「内容」とは無関係の「設問」も存在するので注意したい。「傍線部設問」の「だが設問」がその典型で、[傍線部X「~<A>~」とあるが、「~<B>~」はどういうことか]といった設問だ。問われているのは傍線部X「~<A>~」ではなく「~<B>~」なのだから、傍線部の「内容」「原意」からは「解」は導けないということだ。当然ではないかと思われるかもしれないが、「設問」で「傍線部」が指定されていると、どうしてもそこに拘ってしまうのだ(真面目な受験生ほど陥りやすい罠だ)。
b) 更に、「設問」の「解」が既に「傍線部」に記されており、全ての「選択肢」にその「解」が述べられていて「消去」できないといった不可思議な「設問」もある。例えば、2013年度センター試験[大問2]の[問3]。 [傍線部B「突然テレ臭くなって慌てて母の傍を離れた」のはなぜか]という「理由説明設問」。問われているのは「母の傍を離れた」理由であって、「直接的理由」は「傍線部」に「突然テレ臭くなって」と記されている。「直接的理由」に対応している各選択肢文末は全て同じで「自分を恥ずかしく感じたから。」となっている。「テレ臭くなって」と「自分を恥ずかしく感じた」は「原意」が繋がっているので、結局どれも「消去」できないということだ。「傍線部」のネタは尽きたので、いくら眺めていても進展はない。そこで、「傍線部一文一部の法則」の出番だ。これも「基本的解法」のひとつで、「傍線部」が一文の一部であった場合、その一文の「傍線部」以外が重要だというものだ。作問者が「ヒント」に「傍線部」を付さないというのは、ごく自然な人情だ。この「設問」も然り。 「傍線部」の直前に[「……帰るな、帰るなだ。」と常規を脱した妙な声で口走ったが、丁度『お伽噺』の事を思い出した処だったので、]とある。 「『お伽噺』の事を思い出した」ことが「突然テレ臭く」なった契機だということだ。従って、「お伽噺」に論及していない「選択肢」①③(②④⑤では「短編」として説明されている)は「消去」する。次に、「テレ臭く」なった「内容」を考慮する。「……帰るな、帰るなだ。」と「口走ったが、」とあり、「丁度『お伽噺』の事を思い出した処だったので、」に続いている。当然、注目すべきは「逆説」の接続助詞「が」だ。「帰るな」ということと、「思い出した」「お伽噺」は「逆説」になっているはずだ。案の定、「お伽噺」の最後の部分(本文74~75行目)は[するといつの間にか彼の心持は「早く帰れ早く帰れ。」という風になって来るのだった]となっている。 つまり、「帰るな」と「早く帰れ」という二律背反、矛盾した思いになっていることが、「テレ臭く」なった「内容」ということだ。ここで選択肢を吟味する。文末の「自分を恥ずかしく感じたから。」の直前が「恥ずかしさ」の「内容」だ。選択肢②は「経済的に自立できていない」、選択肢④は「感情に流されやすく態度の定まらない」、選択肢⑤は「いつまでも周囲に媚びる癖の抜けない」であり、無論、②⑤が「消去」できることになる。「傍線部一文一部の法則」を用いての2段階「消去」の設問だ。
⑤ 「ヴィジュアル式消去法」で二択になる?!
a) 「内容読解選択肢設問」では、各選択肢の「説明」を如何に単純化し混乱なく「消去」していけるかがポイント となることは前述の通り。そこで注目したいのが、各選択肢の「文の構成」だ。「字数」が多い「説明」でも、通常、読点等で3つ程度のブロックに分かれている。選択肢①「~<A>~、~<B>~、~<C>~。」といった具合だ。そして、各選択肢の各ブロック毎の「内容」は対応関係にある。従って、対応するひとつのブロックだけで各選択肢を比較、考慮し「消去」することが可能だ。例えば、各選択肢の<A>なら<A>のブロックだけで「消去」するということだ。当然、「字数」は減少し「内容」も限定されるので「消去」しやすくなる。その際、「たすきがけ」は厳禁だ。全ての選択肢で、共通するブロック毎に比較、考慮しなくてはいけない。選択肢①の<A>と選択肢②の<B>を比較するといった「たすきがけ」をすると間違う原因となる。また、「消去」していく順序は文末からが鉄則だ。この例では、<C>ブロックから「消去」を始め、<B>⇒<A>と絞り込んでいくこととなる。
b) ブロック毎に「消去」する際、各選択肢のブロック毎の「内容」が同じ選択肢があった場合、当然、それらは組み合わせて比較できることになる。これまでに採りあげた「設問」でもそうして例があったが、「内容」が共通するブロックは意外と多い。組み合わせればそれだけ「選択肢」が減少するわけで、単純化されることとなる。各ブロックの「内容」が同じかどうかは無論、読めば分かるのだが、実は読まずして瞬時に判明する。何故なら、「活字印刷」されているからだ。同じ「文言」は同じ「活字」だから一目で判断できる。つまりは「ヴィジュアル式消去法」だ。更に、ブロックの「内容」が全ての選択肢で同じという場合もある。比較のしようがないので、瞬時にしてそのブロックは無視できるということになる。例えば、2013年度センター試験[大問1]の[問2]。 前にも採りあげた「設問」だが、全ての選択肢の文頭は「鍔は応仁の大乱以前には」であり、文末が「求められるようになったということ。」となっている。同じだということは一目で分かるので、そもそも読む必要すらないということだ。
以上、「選択肢設問」の「解法」のいくつかを説明してきたが、理解してもらえただろうか。「解法」はまだまだ多数あり、しかも、受験生各位の進度に即応して習得してもらうものなので、一律に論じた本章にはやや無理があるという点は御了承願いたい。
ちらっと次章の「予告篇」。 第4章は[応用解法(記述設問中心)](私大上位校+国公立対応)。 ①「本文未読者」に向けて記述せよ?! ②「記述」にはタブーが存在する?! ③「積み上げ方式」でパーツを組み立てよ?! ④「制限字数」は最大のヒント?! ⑤全ての「記述」は20字で完結する?! ⑥「早稲田国語」はマルチで臨め?! ⑦「慶應小論文」は「本文」に拘泥するな?! 等の予定。