シェアの推移で比べる「大学合格力」 変動の大きい5年間 医学部、東大、旧帝大 増える
シェアの推移で比べる「大学合格力」 変動の大きい5年間 医学部、東大、旧帝大 増える
首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)の全高校から、おもな大学や大学グループへの合格者数を、地域別、校種別に分け、地域ごとの合計の首都圏全体に占める割合(地域シェア)や、同じ地域内の校種別に占める割合(公私シェア)を求め、今春と5年前の2007年を比べた。
データは(株)大学通信が集めた資料から、安田教育研究所が集計、構成したものである。
◆首都圏のシェア軒並み拡大
下の表では、各大学の合格者数を全国と首都圏に分け、シェアの推移を調べた。
国公立大学は、難易度や地域で4つのグループに分けた。4グループ、24大学合計の合格者数を07年と比べると、全国では約200名の増加に止まる一方、首都圏の高校からの合格者数は1,400名以上の増加と、大幅に増えている。
この結果、07年→12年で首都圏のシェアは、東大などの「top4」で35%→39%、東北大などの「旧5帝大」で5%→8%、東京学芸大などの「都内6大学」で48%→53%、千葉大などの「近郊9大学」で27%→30%と、軒並み拡大している。
私大の2つのグループでも、大幅な増加がみられるが、とくに「早慶上理」は、全国の1,114名増に対して、首都圏の高校からの合格者数は4,955名増と大きかった。
全国に占めるシェアは、07年→12年で62%→71%と急伸している。
◆東大現役と東大現浪計
今春の全国の東大合格者数は3,108名(現浪計)で、5年前とほとんど変わっていない。このうち現役は、07年→12年で全国では2,073名→1,993名と減っているが、首都圏では946名→1,088名と142名も増えている。この結果、全国シェアは46%→55%と大幅に拡大している。
地域別にみると、東京と神奈川が42名増、千葉が34名増、埼玉は24名増と偏りが少ないようにみえるが、07年からの増加の割合( 増減比)では、千葉…59%増、埼玉…76%増と、千葉、埼玉の伸張が大きい。
公私別には、国立…13名減、公立…34名増、私立…121名増と、国立の減少と私立の増加が目立つ。また、増加数の85%を私立が占めている。
地域と公私をクロスすると、東京×私立が45名増と大きい。増減比では千葉×私立が104%増、埼玉×私立が100%増と、両県私立の健闘ぶりも目に付く。
首都圏全体の公私シェアは私立が75%と全体の4分の1を占めている。国立は14%→11%にダウン、13%→14%とアップした公立に抜かれている。
07年→12年で、現役合格者を増やした学校の順では、①栄光学園…21名増、②駒場東邦…19名増、③聖光学院…18名増、④渋谷教育学園幕張…13名増、⑤開成…11名増、⑥世田谷学園…10名増、⑦早稲田…9名増、⑧大宮、湘南…8名増など。
減らした順では、①桐蔭学園…10名減、②桜蔭…9名減、②浅野…9名減、④東京学芸大附属…7名減、④お茶の水女子大附属…7名減など。
現浪計では、首都圏の高校からの合格者数は1,590名と、近年では初めて全体の半数を超え、全国シェアは51%に。
5年前からの増加数は、現役と同じ142名で、浪人は増減がなかった。また、地域間、公私間の増減の模様も、現役と同様だった。
経済の低迷、震災や原発事故などの影響で、地方からの受験生が減り、力を蓄えてきた首都圏の学校の生徒が、東大合格を勝ち取っているようだ。
◆「top 4」+国公立大医学部
07 年→ 12 年の国公立大学医学部合格者数は、首都圏全体で779 名→ 1,183 名と、404 名(63%)の大幅増だった。昨年調べた06 年→ 11 年の増加数は220 名増。この5年間の増加数は、その約2 倍に達する。
地域別にみると、東京…224名増、神奈川…94名増、埼玉…55名増、千葉…31名増と東京の伸びが大きい。増減比では、埼玉の120%増(46 名→ 101 名)が目立つ。
公私別には、国立…29名増、公立…112名増、私立…318名増で、増加数の約7割を私立が生みだしている。増減比では、公立が98%増(130 名→ 226 名)と大幅。
地域と公私のクロスでは、東京×私立の167 名増、神奈川×私立の68 名増が大きい。増減比では、もともと合格者の少なかった埼玉×公立の139%、埼玉×私立の100%、神奈川×公立の137%が光る。
埼玉×公立で医学部を増やしたのは、浦和(県立)…10 名増、川越、大宮…7 名増など。埼玉×私立では、開智の12名増がダントツ。神奈川×公立では、湘南や横浜翠嵐が伸ばしている。
学校別には、豊島岡女子が12名→45名と、一気に33名も増やした。ほかに、開成…22名増、聖光学院…18名増、渋谷教育学園幕張…15名増、桜蔭…14名増、東京学芸大学附属…13 名増など。
東大より国公立大学医学部に、成績上位層が流れる学校もあるようだ。
「top4」(東大、一橋大、東工大、京都大)+国公立大医学部の増加数は、752 名。
医学部の増加を反映して、地域別には東京が421 名増と大きく伸ばしている。
公私別では、私立…554名(23%) 増、公立…209 名(25%)増に対して、国立は、11名(3%)減と、医学部合格者の増加を織り込んでも、上位層が薄くなりつつある様子がみえる。
地域と公私のクロスでは、東京×私立の312名増が大きく、神奈川×私立の122増、東京×公立の120 名が続いている。
公私のシェアは、東京以外では公立がダウン。東京では、国立の縮小分を、公立と私立で分け合っている。
◆ 一橋大、東工大+「 5 旧帝大」
「文低理高」傾向が続くなか、完全文系の一橋大は、地方からの志願者が減っているようだ。おかげで首都圏の高校からの合格者は、5年前より101名(21%)増えた。
地域別には、東京、神奈川が多く、公私別には私立が90 名(31%)増と大きい。東工大は全体で30名(4%)増と小幅。地域×公私では、東京×公立が26名増と最大。千葉×私立の17 名増が続いている。
驚くのは、「5旧帝大」(北大、東北大、名古屋大、大阪大、九大)の推移だ。首都圏全体の増加数は423名、増加率64%とかなりの規模。地域別には、東京の174名(69%)増と埼玉の127名(98%増)が大きく、公私別には、公立の217名(71%)増と私立の198名(58%)増が大きい。行先は、北大…122名増(全国シェア…9%→ 14%)、東北大…104 名増(同…11%→ 15 %)など。これも震災ショックだろうか。
◆「都内6大学」と「近郊9大学」
首都圏の高校から「都内6大学」(お茶の水女子大、東京外語大、東京農工大、電通大、東京学芸大、首都大学東京)へ合格した生徒の数は、5 年前より67 名(2%)減っている。
地域別には、千葉の77名(25%)減と、神奈川の38名(5%)減が大きい。埼玉と東京はほとんど動きがない。公私別には私立が71名減と、全体の減少数の9割以上を占めている。
地域と公私のクロスでは、千葉×私立と神奈川×私立が、ともに51 名減と大きい。このため、地域ごとのシェアでは、千葉と神奈川で、公立のシェアが拡大している。
減らした学校と大学を調べると、①西武学園文理…22 名減(内訳は首都大東京8名、お茶の水女子大5名など)、②桐蔭学園…20名減(首都大東京7名、東京農工大5名など)、③千葉(県立)…16名減(首都大学東京6名、東京外語大5名など)、④巣鴨…15名減(東京農工大7名、電通大5名など)、⑤渋谷教育学園幕張…14名減(東京学芸大11名減など)と、遠方から通学するケースが多く、震災の影響が大きいようだ。
一方、「近郊9大学」(横浜国大、千葉大、埼玉大、茨城大、筑波大、群馬大、新潟大、信州大、横浜市大)の合格者数は、5年前より699 名(15%)増加している。
地域別には、東京…221 名(16%)増、千葉…220名(20%)増、埼玉…192名(18%)増、神奈川…66 名(20%)増。
公私別には、私立が405 名(21%)増、公立は272名(11%)増、国立は22名(28%)増と私立が大きい。
クロスでは、埼玉×私立…135名(39%)増、東京×私立…130 名(16%)増、千葉×公立…124 名(16%)増が目に付く。
増加した学校の順では、①栄東…45 名増、②開智…40名増、③市川…30名増、④渋谷教育学園幕張…29名増、⑤銚子(市立)…25名増、⑥船橋(県立)…20名増、⑥小田原…20 名増、⑧浦和明の星女子…19 名増など。
私立からの国公立大学進学者が増えていることを感じさせる。
◆早慶上理とGMARCH
07年→12年で、全国の早慶上理合格者(件)数は、約1,100名(件)増えたが、首都圏からの合格者は、5 千名近く増えた。全国に占める首都圏のシェアは、62%から一気に71%まで拡大。とくに、上智…70%→81%、早稲田…71%→80%など、ふたつの大学で、合格者の8 割が首都圏の生徒で占められるようになった。
地域別には、東京…2,885 名(19%)増、神奈川…1,118 名(17%)増、埼玉…652 名(16%)増に対して、千葉は300 名(7%)増と、やや小幅な伸びに止まっている。
公私別には、私立…5,757名(26%)増、公立…2,777名(13%)増で、国立はほとんど変わりがなかった。
地域×公私では、東京×私立…1,906 名(18%)増、東京×公立…796 名(26%)増、神奈川×公立…597 名(23%)増、神奈川×私立…525 名(13%)増などが目立つ。
地域別の公私シェアでは、埼玉の私立が47%→51%と伸び、公立を逆転している。
GMARHの全国の合格者数は、8,600名近く増加。一方、首都圏の合格者も約8,500 名増え、全国シェアは62%から66%に伸びている。
大学別には、青山学院(約2,700 名増)、明治(約1,900名増)、立教(約1,600名増)の3 校が大幅に増えた。
地域別には、東京の4,770名(26%)増、神奈川の2,527名(26%)増が大きい。
公私別では、私立は5,7 5 7名(2 6%)増、公立は2,777名(13%)増と、私立の伸びが大きく、国立に動きはなかった。
クロスでは、東京×私立の3,8 3 3名(34%)増が大きかった。
一方、公私のシェアの変化は少なかった。
国公立大学志向が、上位私立高校でも顕著になったこと、「文低理高」で文系学部の多い私大の志願者が減っていること、さらに、震災の影響で地方からの受験者が減ったことなどで、早慶上理やGMARCHの合格者は、理系の一部を除いて大幅に増えている。
首都圏からの早慶上理+GMARCH合格者は9 万人近い数に達している。
◆成成明女、日東駒専、大東亜拓帝国
成成明女(成蹊、成城、明治学院、東京女子大、日本女子大、津田塾大)の合格者数は首都圏全体で1,708名(10%)増えている。地域別には、東京…1,100名(15%)増、神奈川…829名(20%)増に対して、埼玉と千葉では減少している。公私別には、私立が1,268名(14%)増、公立が466名(6%)増で、国立は減少している。
日東駒専は、首都圏全体では4,165名(12%)の増加。地域別には、東京…2,554名(20%)増、神奈川…1,896名(32%)増と大きく、逆に、埼玉では減少している。
公私別にみると、公立の伸びが2,280名(12%)増と大きく、合格者数の合計でも21,098名と、私立の16,833名を上回っている。
大東亜拓帝国でも、東京、神奈川の伸びが大きく、公私別には、公立が2,888名(29%)増と、広い範囲で公立校の合格実績が伸びていることが分かる。
情報提供:安田教育研究所