青山学院大学 教育人間科学部 教育学科の小論文
入試対策と勉強法
青山学院大学 教育人間科学部 教育学科の小論文
ここでは、青山学院大学の教育人間科学部教育学科を目指す方に対して、小論文の試験の出題傾向や試験合格のための勉強法、さらに、おすすめのテキストをご紹介いたします。なにから始めればいいのかわからない、効率的に勉強したい受験生は、ぜひ参考にしてください。
※本大学では2021年度に大幅な大学入試制度改革が実施されました。それに伴い一般の選抜は、一般選抜(全学部日程)・一般選抜(個別学部日程)・大学入学共通テスト利用入学者選抜という3つの選抜方法となっています。受験生は学部・学科ごとに定められたさまざまな選抜の組み合わせ方式から選択することになります。
本稿では、大学入学共通テスト(「外国語(英語)」と「国語」を選択)との組み合わせが課せられている「教育人間科学部教育学科」の「独自問題(小論文)」の説明となっています。
尚、準拠しているのは21年度の試験問題です(但し、一部22年度の情報も参照している)。
青山学院大学の教育人間科学部教育学科 小論文試験の出題傾向とは
出題範囲(分野)
2022年度の小論文の出題科目(範囲)としては「文書・図表などに基づいて読解・論述する問題を課す」となっています(本大学の試験概要)。20年度まで「教育人間科学部」の「独自問題」は、教育学科、心理学科ともに「国語総合」を出題科目(範囲)とする国語だったので、「小論文」はこれまでになかった新たなカテゴリーとなります。以下は基本的に21年度「小論文」の問題に就いての説明です。
「教育学科」の小論文は大問(設問)2題で、出題の意図・狙いには「人間と社会について、論理的に思考・判断し、自らの考えを適切に表現できる力を問う」と記されています。設問Ⅰは図や表を分析したうえで論述する出題で、2つの小問の問1は「提示された図や表から読み取れる内容についての200字以内の論述」、問2では「提示された図や表を比較分析した結果から考察される内容についての300字以内の論述」となっています(出題構成・特徴的な問題の例示等による)。同様に、設問Ⅱは「文章を読解したうえで論述する出題」で、「提示された文章を読み、内容的に簡潔に要約したうえで、記述・主張されていることに対して、その意義に触れつつ、複数の具体例を挙げながら自分の考えを800字以内の論述する」とされています。因みに、21年度は設問Ⅰの問1では新刊書籍の出版点数と書籍の販売部数を表した図、問2はインターネット上の経験(表)とそれに関連する家庭のルールの有無(図1)と啓発や学習の経験の有無(図2)が題材となっており、設問Ⅱは日常言語と論理学をテーマとした論説文(沢田允茂「現代論理学入門」)が課題文として示されています。
出題量と時間配分
2021年度の設問Ⅱの課題文の文章量は4000字弱です。他の私大上位校と比較して標準的ですが、要約記述(200字以内)と見解論述(600字以内)が求められています。設問Ⅰでは4点の図表の読み取りが必要となります。その上で読み取り説明論述(200字以内)と見解論述(300字以内)が課されています。
試験時間は90分です。トータルで1300字以内という論述・記述をこなさなくてはなりません。もちろん、全く時間に余裕はないでしょう。設問Ⅰを40分程度でこなし、残りの時間を設問Ⅱに当て、丁寧にまとめ上げていきましょう。
出題形式
2021年度の設問Ⅰの問1は1989~2018年にかけての新刊書籍の出版点数と書籍の販売部数を表した図(経年変化を示した折れ線グラフ)から、両者の推移の特徴を指摘した上でそこから読み取れることを200字以内で論述します。2つの論点を述べる必要があることをしっかりと意識して、グラフを正確に読み解いてまとめていきましょう。同問2は青少年(10~17歳)のインターネット上の複数の経験の有無を尋ねた結果をまとめた表(2014~19年それぞれの結果を示している)、それに関連する家庭のルールの有無(図1)と啓発や学習の経験の有無(図2)の調査結果を表した2つの棒グラフ(ともに2014~19年それぞれの結果)、以上の資料をもとにインターネット上のトラブルや問題行動に関連する行為の経年変化に基づいて、家庭のルールや啓発・学習の役割に就いて300字以内で論述します。表から経年変化の特徴を指摘した上で、図1、図2の連関を踏まえ自分自身の見解を論じていきます。
設問Ⅱの問1は課題文(沢田允茂「現代論理学入門」)の要約記述です(200字以内)。問2は課題文中の下線部に就いて(結論部分の後半で、日常言語と論理学とを関連づけることの難しさがもたらす私たちの困惑に言及している)、背景や意義に触れつつ、複数の具体例を挙げながら自分の考えを600字以内で論述します。課題文の論旨を的確に把握した上で、下線部の論点を整理して自らの見解を適切に論じていきましょう。その際、課されている2つの条件にしっかりと応ずることが肝要です。
今後も、「教育人間科学部教育学科」の「小論文」では設問Ⅰで図表から読み取れる内容説明論述と比較分析結果から考察される見解論述、設問Ⅱでは課題文の要約記述と論点が示された上での条件付き見解論述が求められることが予想できます。
青山学院大学の教育人間科学部教育学科 小論文試験を攻略するための勉強法
知識
小論文や図表分析と知識は無関係、とはもちろんなりません。2021年度の論理学に限らず今後は多種多様な分野からの課題文の出題が考えられます。そうした硬質な論説文(評論文)を理解し咀嚼する為には、難解な語句や頻出テーマに関するキーワードを読み解く語彙力が当然、必要になります。さらに、見解論述での誤字・脱字は確実に減点要素になります。したがって、漢字ひとつたりとも疎かにはできず、高度な語彙力を養成する必要があります。その為には、先ずは「己が実力」を把握することが重要です。そこで、共通テスト(センター試験)の漢字問題(要は「同音異字」「同訓異字」の判別)が基礎的語彙力のひとつのバロメーターとなります。最低10年分以上の過去問をこなしましょう。その結果次第で、具体的な学習を進めていきましょう。
尚、以下のサイトは漢字問題だけがまとめられていて便利です。
http://www.kanjijiten.net/center/index.html
読解
小論文といっても設問Ⅱでは課題文が示され、それに就いての設問として要約記述と見解論述があるのだから、その点では現代文の問題と捉えなくてはいけません。課題文の内容をいかに正確に読み取るかが最優先となります。基本は論説文(評論文)であって、そこで肝要になるのが、最重要解法である「Nの法則」の習得です。本文を序論・本論・結論に分け、論旨が述べられている序論部、結論部の対応関係および本論部での段落相互関係に着目して読解するという手法です。これを完璧に理解、定着させ、応用できるようになるまで問題練習を重ねることが重要です。
尚、読解に際しては出題の意図・狙いで指摘されている「人間と社会について論理的に思考・判断」するという視点を意識することが肝要です。
視点
図表や課題文があり、大まかな論点が提示されているとはいえ、それをなぞっただけでは単なる感想文になってしまいます。受験生各位の見解論述では当然、独自の視点が必要になります。幅広い議論の可能性を有している中で、如何に説得力のある視点を提起できるかが成否を分けます。そこで、常日頃から人間と社会全般に対して関心を向け、研ぎ澄まされた問題意識を持ち続けていることが重要になるでしょう。さまざまなメディアを通じて、日本や世界の社会的事象をキャッチすべくアンテナを張り巡らせておくことが肝要です。その際、未知の事象に関してはメモとしてまとめておきましょう。必ず求められる具体例のストックとなるはずです。
要約
設問Ⅱで課される要約の基本は形式段落の中心文をつないでいくことです。しかし、2021年度のように長い課題文(4000字弱)では字数的に困難です。そこで、論旨中心にまとめることを旨として、意味段落の「序論部」+「結論部」+α(「本論部」からの補足)という形でまとめていきましょう。
尚、今後は単なる主旨(論旨)要約ではなく限定的な論点・視点が提示される場合があるかも知れません。そうしたときは、そこに焦点を絞って主旨(論旨)をまとめる必要があります。先ずは、参考書などを活用して、あらゆる論点・視点を即座に把握できるようになるまで、現代文の解法に習熟しましょう。その上で、多くの問題集に記されている要約や問題文の要旨等を活用して記述練習を重ねましょう。その際、文法・文脈などの文章の基本や、内容が正確に伝わっているかどうか等に就いて添削指導を受けることが望ましいでしょう。
論述
300字や800字という制約の中で自らの見解を的確に論じるには、構成メモの作成が不可欠です。脳内イメージを可視化、客観的に捉える作業です。最重要な論旨、説得力溢れる説明に必要な論点(提示されているものも含め)や視点をアトランダムに記し、整理してチャート化します。その上で、見解を頭括型の論述としてまとめるべく各要素を取捨選択します。その際には、批判的スタンスの視点を特に意識し、カウンターとしての論点も用意しましょう。
尚、序論・本論・結論は「1:3:1」が原則です。こうした構成メモの作成練習を繰り返しましょう。実際の論述練習では、添削指導を受けることが必須です。
推奨テキスト
ここからは、勉強に役立つテキストをご紹介します。テキストには相性がありますので、できるかぎり書店で手にとって確かめることをおすすめします。
ここではテキストを知識対策篇、読解力対策篇、要約記述対策篇、見解論述対策篇に分けてご紹介します。
知識対策篇
(1)『漢字 一問一答【完全版】』(東進ブックス)
(2)『現代文最重要語句(暗記いらずの)らくらく練習帳―熟語・慣用句・評論語句・外来語』(学研プラス)
(3)『新版完全征服 頻出現代文重要語700 三訂版』(ピアソン桐原)
(4)『ことばはちからダ! 現代文キーワード―入試現代文最重要キーワード20 (河合塾シリーズ)』(河合出版)
(5)『現代文キーワード読解[改訂版]』(Z会出版)
前項の共通テスト(センター試験)の漢字問題チェックで、5割未満の場合は(1)から、6割は(2)から、7割は(3)から、8割は(4)から始め、9割は(5)のみが目安です。反復練習して完全習得しましょう。特に(5)では、「キーワード編」のみならず「頻出テーマ編」も熟読し、完全に理解しましょう。
読解力対策篇
(1)『システム現代文 バイブル編(改訂新版)』(水王舎)
初級レベルです。「解法」って何? といった皆さんにお薦めの入門書です。根本を徹底的に解説しており、マスターすれば解法は一通り理解できます。
(2)『現代文読解力の開発講座(新装版)』(駿台文庫)
中級レベルです。文章を客観的に捉える術が丁寧に説明されており、中堅から難関私大へのステップアップ段階の一冊です。
(3)『現代文と格闘する(三訂版)』(河合出版)
上級レベルです。文章を読み繋ぐことを主眼として、その為のシンプルな視点を提案しています。「教育人間科学部教育学科」の小論文の課題文を確実に読解する一冊です。
※尚、(2)(3)には要約問題があるので必ずこなしましょう(要約問題の対策になる)。
要約記述対策篇
(1)『システム現代文 論述・記述編(改訂新版)』(水王舎)
初級レベルです。説明記述問題から要約問題までを明快に解説し、要約習熟の為に何を学習すればいいかが分かる一冊です。
(2)『得点奪取 現代文[三訂版]』(河合出版)
中級レベルです。記述問題から説明・要約問題までを明快に解説し、要約記述のポイン
トを確実に学ぶ為の一冊です。
(3)『[記述篇]現代文のトレーニング(改訂版)』(Z会出版)
上級レベルです。頻出テーマに沿った問題構成で、完成度も自ら把握できます。要約問題の総仕上げへ向かっては不可欠の一冊です。
(4)『上級現代文Ⅱ』(桐原書店)
最上級レベルです。これまでに演習してきた論述問題の考え方、解き方が定着しているかどうかをチェックできます。「教育人間科学部教育学科」の小論文の要約記述攻略へ最終段階の一冊です。
見解論述対策篇
(1)『吉岡のなるほど小論文講義10(改訂版)』(桐原書店)
初級レベルです。「小論文とは何か?」「どのように文章を組み立てたらよいのか?」という基礎・基本を体系的に解説しています。入門から基礎力養成の一冊です。
(2)『資料と課題文を攻略して合格答案を書くための 小論文のオキテPRO』(KADOKAWA)
中級レベルです。入試で戦える解き方が身につきます。小論文のオキテを習得でき、「教育人間科学部教育学科」の小論文で必出の図表読み取りのポイントもつかめる一冊です。
(3)『小論文を学ぶ――知の構築のために』(山川出版社)
上級レベルです。読みと書きの技術論、小論文に必要な知の構築、実践演習を通じての知の習得の3部構成で、小論文で8割以上の得点ゲットをターゲットに据える一冊です。
(4)『小論文 テーマ別課題文集 21世紀を生きる〈改訂版〉』(駿台文庫)
最終レベルです。主要頻出テーマごとの論点整理、キーワード解説が充実です。万全を期すための一冊です。
(5)『文藝春秋オピニオン○○✕✕年の論点100』(文藝春秋/毎年11月発売)
毎年の日本の様々な争点が多角的に提起されており、論点・視点の捉え方を習得できます。時事対策にも活用できます。また、言及すべき具体例のストックにもなる一冊です。
(6)『青山学院大学教育人間科学部教育学科「独自問題(小論文)」(過去問)』
実践レベルです。2021年度以降の小論文は確実にこなし、解法をトレースしましょう。
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