医大・医学部受験プロ家庭教師 兵庫医科大学 化学の入試対策と勉強法
医大・医学部受験専門プロ家庭教師が語る

兵庫医科大学 化学
入試対策と勉強法

特徴と時間配分

出題範囲(分野)

2021年の問題では、第1問は「浸透圧の実験に関する問題」であり、あまり見慣れない問題を含んでおり、実験の各プロセスの意味についての理解が必要でした。第2問は「新型コロナウイルス」に関連して、「コロイド」に関する大問になっていました。その中では、コロイドに関する基本的な知識だけではなく「ミセルの濃度や個数」を求める問題、「シャボン玉の断面の一部」を「分子モデル」を用いて作図する問題のような、あまり見慣れない問題も出題されています。
第3問は「有機化学」に関する問題であり、構造式や構造異性体の数の決定問題、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)に関する分子式・構造式や計算問題という内容でした。SBRに関する問題は有名ではあるものの、合成ゴムの問題自体手薄になりがちな問題といえます。以上から、かなり個性的な問題の出題があるといえ注意が必要と思います。 

出題量と時間配分

2021年の化学の試験時間は選択科目の2科目で120分でしたので、実質60分でした。この試験時間に対して大問が3問ありました。したがって、基本的には大問1問あたり約20分ずつの時間配分となりますが、大問ごとの問題量が同等とは限らないのでテストが開始された時点で一回すべての問題を見通し、各大問の問題量を確認した上で、解き始める前に大問ごとのだいたいの時間配分を設定した方が良いと思います。

出題形式

出題形式について、まず注意すべきは大問3問構成という点ですが、いわゆる小問集合の形態をとった大問はありません。各大問には共通したテーマがありますので、第1問から解き始めるよりも自分が得意なテーマの大問から解いた方が、結果的に高得点を期待できると思います。解く順番について工夫したいところです。

解答形式

回答形式は記述式です。ほとんどの計算問題において「有効数字2桁」と「計算の過程も記せ」という指示があります。こうした指示は、必ず守らなければなりません。また、化学の問題では構造式を書く問題は通常ですが、本学の2021年の問題では、「シャボン玉の断面」を「分子モデル」を用いて描く問題が出題されていました。お持ちの教科書にも、参考になる図が載っていると思いますので、このような図についても、理解して覚えておきたいところです。

攻略のポイント

医学部の化学の特長は、一般に難易度が高いことに加えて理論分野、無機分野、そして有機分野の高分子の範囲まで幅広く出題される点にあります。そして、この傾向は本学を含む私立大学医学部においてより顕著といえます。そのため、最終的には難易度の高い問題を正解できるようになる必要があるのですが、注意すべきことは「難易度の高い問題だけが出題されるわけではない」という点です。そのため、まずは高校化学のほぼ全範囲に対して、標準的なレベルの問題を解けるようになることが極めて重要と考えます。この段階にできるだけ早く達することが、医学部合格に向けての重要なポイントになると言えます。

この「標準的なレベルの問題」のイメージとして最も良い例は、高校で配布されることが多い化学の教科書準拠の問題集の問題になります。例えば『セミナー化学+化学基礎』(第一学習社)とか、『リードαの化学+化学基礎』(数研出版)のような問題集に掲載されている問題です。

これらの問題集の良い点としては、①概ね全範囲をカバーした内容になっている点
②別冊の解説本が付属されており、解説が詳しい点
③チェックテスト・基本例題・基本問題・発展例題・発展問題のようにレベル分けがなされており、レベルに応じた問題の選択をしやすい点、などを挙げることができます。

これらの問題集を使って、まずは高校の定期テストの対策として最初に「基本レベル」の問題をすべて解き終えておくことが理想的といえますが、受験生となった際にも一通り解き直す方がよいと思います。その際、間違えた問題は必ずチェックしておきできるようになるまで繰り返すことが重要です。そして、医学部受験対策として基本レベルの問題も出題されますが、最終的には「発展レベルまでが必要」という点に注意してください。別の言い方をすれば、医学部受験ではこうした問題集の「発展レベルの問題こそが主戦場」であり、基本レベルまでの問題は発展レベルの問題を理解するための単なる準備にすぎないということを理解しておきましょう。 

そして、「発展レベルの問題」を終えた後であれば、受験予定医学部の「過去問を読む」ことは可能になっていると思いますので、できるだけ早くその過去問演習に入るべきと思います。「過去問を読む」とは「解ける」ことではなく、「問題と解説の意味を理解できる」ということを意味します。「解ける」ようになるまで過去問演習をしないという姿勢は、医学部対策においてあまり適当とはいえません。なぜなら、そのような姿勢では医学部過去問のレベルを知る時期がどうしても遅くなり、結果として医学部対策が遅れることになる可能性が高いからです。医学部過去問の演習を通して、その内容の範囲・レベルを知った後でこれまで使ってきた問題集では足りないと判断した部分があれば、その時点で初めてその「部分」に対してのみ追加の問題集を検討すれば良いと思います。その方が、その「追加の問題集」を利用する動機付けが明確となるので、勉強の効果は高まると考えます。そして時間があれば、追加した問題集の他の部分を演習してもよいと思います。

推奨テキスト

(1)『化学の新研究』 卜部吉庸著 (三省堂)
難関大学又は医学部を目指す受験生にとって化学を受験科目として使用するのであれば、この参考書は必須と考えます。その理由は、とにかく内容が豊富であり、「大学受験化学における最大範囲」を思わせる内容量になっているからです。実際には、この本に直接載っていない内容でも出題されることはありますが、それでも、「この本に載っていなければ、当然他の本にも載っていない」と思わせる安心感もあります。つまり、この本に直接載っていない内容であれば、たとえ出題されても解けない人が多いであろうというように、むしろ前向きに判断でき他の問題に注力できるということもあるでしょう。この本の内容をすべて読み切ることは難しいかもしれませんが、少なくとも辞書的な使い方をすることはできるでしょう。または、辞書的な使い方がメインであっても、特に苦手な項目についてだけは全ての内容をよく読むという使い方もできるでしょう。「大学受験化学における最大範囲」を感じるべく、この本を手元に置いておく価値はあると考えます。

(2)『学校の教科書準拠問題集』『セミナー化学の化学+化学基礎』(第一学習社)、『リードαの化学+化学基礎』(数研出版)など)
前述しましたように、『セミナー』『リードα』のような問題集はとてもよく出来た構成・内容になっていますので、もし抵抗がなければこれらの問題集を使ってみることをお勧めします。ただし、注意点が2点あります。1点目は、一般に「化学」分野は「化学基礎」分野を完全に含んでいるかのような見方をされることがありますが、常にそうとは限りません。実際、こうした問題集の「化学基礎」版には書かれてあった内容が、「化学」版には書かれていないということがあります。そのため、医学部受験生であれば必ず「化学基礎+化学」版を使うか、または「化学基礎」版と「化学」版の2冊を使う必要があります。2点目は、前述しましたように医学部受験生であれば、これらの問題集の「発展レベル」まで理解する必要があるということです。 以上の2点に注意してください。

(3)『大学過去問(赤本)』(教学社)
前述しましたようにできるだけ早く、受験予定校の過去問演習をやってみることが大切だと思います。「解ける」必要はありません。今後の勉強方針を決定するために、できるだけ早く「やってみる(≒問題と解説を読んでみる)」ことが重要になります。使用する過去問は、いわゆる『赤本』が良いと思います。前年の本がまだ出版されていない場合は、その前年の本で良いと思います。受験勉強においては、「敵を知る」、つまり「受験校を知る」ことがとても重要になります。できるだけ早めに、「やってみる」ようにして下さい。

 

テキストは相性があります。できれば書店で手にとって選びましょう。

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