関西医科大学 物理
入試対策と勉強法
特徴と時間配分
※本学は一般入試が前期と後期に行われます。下記は主に前期一般入試の傾向ですが、後期もおおむね同様の傾向と言えます。
出題範囲(分野)
力学・電磁気・波動・熱力学・原子の5分野がすべて出題されます。原子以外は受験生がまず見たことない事象を考えさせる問題が出題されることが多いです。2021年力学は水中を水の抵抗力を受けながら落下する小球の問題、2020年は工具でねじを締める動作を摩擦のあるらせん状の斜面を動く物体の運動とする問題などです。2020年波動・光波は顕微鏡の焦点距離と倍率を決める問題など、波動は光波が多いので、光路差の近似計も含めて光波は完璧を目指しましょう。原子は典型的な問題の範囲なので難易度は低いですがあらゆる分野から出題されるので、学習漏れのないようにしておきましょう。
出題量と時間配分
理科2科目120分です。小問は誘導形式ですべて連続しているので、前の問題が解けないと後ろも解けないことが多いです。とりあえず大問ごとに解けるところまで解いて、残りを後回しにして後でもう一度解く方がいいでしょう。受験生のほとんどが初見であろうという設定の問題も多いので、いかに自分の土俵に落とし込むかが勝負です。落ち着いて問題文を読んで対応を考えましょう。
出題形式
2016年以降は大問4問となり安定しています。原子は大問1つとして出題されたりその他の分野に融合されたりしています。たとえば、2020年は大問4が原子・水素ボーアモデルの問題となり、熱力学の出題はありませんでした。それぞれの大問の中に連続した小問が4~6題入っています。穴埋め形式の問題もあります。
解答形式
すべて記述式です。穴埋め式で答えだけ書く問題もあれば、途中経過も書かされる問題もあります。さらには、化学や生物のような論述問題もあり、グラフの概形を描いたり、レンズの焦点を作図で求めたりする描図問題も出されます。多様な形式に正確に手早く対応できるか、多角的に試しているのでしょう。時間の余裕がない試験なので、経験と訓練がモノを言うでしょう。
攻略のポイント
医学部入試の激化にしたがい近年の物理の難化傾向は否定できませんが、本学の物理の問題はいろいろな意味で難しいです。問題の設定自体が見たこともないもので、事前の対策が立てようのない問題もあります。初めて見るタイプの問題であっても、出題者の誘導にしたがって既存知識を駆使しながら解き進んでいく応用力が必要とされるでしょう。つまり、繰り返しになりますが、「いかに自分の土俵に引き込むことができるか」、「いかに誘導に乗れるか」が勝負を分けるでしょう。しかしこの偏差値でここまでの要求をするわけですから、当然合格点は低くなります。全問解くことを目標とせず、とりあえず解ける問題をかたっぱしからとっていくことを考えましょう。また国立最上位校のようにどこから解いていいのか迷う問題はほとんどありません。難問といっても、出題者が解答のお膳立てをしてくれている場合がほとんどなので、誘導に乗って決断よく解いていきましょう。
第1段階:教科書の内容の定着が基本かつ重要
近年の教科書は非常に充実しています。受験生たるもの、教科書は初めから最後まで熟読してすべての例題や問を解くことは当然のことと考えましょう。なにしろ入試問題の出典は原則教科書なのですから。教科書にある公式は、単位・次元を含めてスラスラと出てくることが必要です。学校によってはほとんど教科書を使用しないケースもあり、既卒生は手元に無い場合も考えられますが、必ず教科書は入手しましょう。入試の出題の基本枠・原点の確認のために、さらに、図表や口絵、写真に至るまで目を通せば、力のある受験生も思わぬ発見や収穫があるでしょう。教科書の例題を見た瞬間、解法が浮かび、すらすらと解けるのがこの基準です。本学の受験者は既にこのレベルは問題ない場合が多いでしょう。しかし、ダブルチェックの意味で、教科書傍用の問題集として定番の『セミナー物理基礎・物理(いわゆるセミナー物理)』または『エクセル物理・総合版』の基本例題・基本問題を演習しストレス無く解ける基準を固めましょう。(教科書とは物理基礎・物理の両方のこと)
第2段階:次は入試物理の「標準」レベルの問題集を一冊マスターすること
『セミナー物理』または『エクセル物理・総合版』の発展例題・発展問題がこのレベルに相当します。最低でも一冊を2周、できれば受験期も含めて3周以上して、大問の中盤くらいまではすらすら解けることが必要です。同時に1のレベルに上げた公式も、下記のようなものは何度も反復して自力で導出出来るようにしましょう。例えば、単振動、万有引力とケプラーの法則、力積と運動量保存則・エネルギー保存則、ドップラー効果、特に、光波の干渉、状態方程式とポアソンの公式などの近似計算があるものは何度も繰り返しましょう。公式の導出は標準以上の問題の攻略に大きな底力となるでしょう。
第3段階:次は何と言っても過去演習
設定・題意が見えにくい問題を誘導に乗ってゴールに向かう教育効果の高い、よく考えられた良問が本学の物理です。特に近年はその傾向が強いです。試験場の受験生にとっては相当の圧迫と感じるでしょう。習うより慣れよです。観念的な対策では効果はありません。過去問をじっくりと解きなおして本学の物理が受験生に求めているものを体感でつかみ取りましょう。満点を取る必要はないのです。また、全問解く時間もありません。6割以上、7割前後を想定目標にして、今の自分自身との距離感を把握しましょう。やや本末転倒の感もありますが、同様の傾向を持つ東大や慈恵医科大の物理も解いてみるとよいでしょう。「全問解く時間のない試験、設定が見慣れない、題意が見えにくい、小問の誘導に乗って標準レベルの問題を拾ってゴールを目指す」、これが指針です。
推奨テキスト
(1)『教科書』(各出版社)
第1段階用です。
教科書はなければ合格できないというものでもなく、これさえマスターすれば合格というものでもありません。しかし、教科書が入試の出典の原点であることは強調し過ぎということはないでしょう。入試の基準としての教科書は、手の届くところにキープしましょう。各種公式・法則の導出過程やさまざまなカラーの図式・写真などだけでも相当の価値があるでしょう。
(2)『セミナー物理基礎・物理(セミナー物理)』(第一学習社)
(3)『エクセル物理・総合版(エクセル物理)』(実教出版)
第1段階用です。
セミナー物理、エクセル物理は、定番の教科書傍用の問題集です。教科書の例題とともにこの基本例題、基本問題をマスターするのが第1の段階です。セミナー物理はとても良い問題集ですが、市販されていないのが難点です。入手困難ならエクセル物理で十分です。
重問も大定番の市販問題集です。セミナーやエクセルの発展例題、発展問題が大丈夫なら、重問にトライしましょう。少しずつ入試問題も更新されていて、しっかりとした内容です。
(4)『物理のエッセンス(力学・波動および熱・電磁気・原子)』(河合出版)
(5)『良問の風』(河合出版)
(6)『名問の森』(河合出版)
(7)『漆原の物理・明快解法講座 四訂版 (大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
(8)『漆原の物理・最強の99題 四訂版 (大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
第2段階用です。
教科書と上記の二つの問題集を理解するために必要な「物理の思考回路」を磨くための参考書兼問題集が物理のエッセンスまたは明快解法講座です。エッセンスは文字通り、一言一句、エッセンスというべき内容が凝縮しています。名著と言えますが、エッセンスだけに行間を埋めてくれるチューターがいた方が良いかもしれません。明快解法講座は解法を徹底的にパターン化してくれます。エッセンスと明快解法講座はその意味で両極かもしれません。だからこそどちらも試してみれば、日医の物理を攻略するために必要な、物理的なものの見方、思考回路を開いてくれるでしょう。エッセンスは良問の風、名門の森、明快解法講座派は最強の99題を解きましょう。
(9)『Z会 物理 入試の核心 難関大編50題』(Z会)
(10)『物理標準問題精講』(旺文社)
(11)『難問題の系統とその解き方(難系)』(ニュートンプレス)
(12)『同新装第3版 』(ニュートンプレス)
(13)『実戦 物理重要問題集2022 物理基礎・物理(重問)』(数研出版)
第3段階用です。
余裕のある受験生や、東大、京大、東京医科歯科大、横浜市大、千葉大、慶大などの超難関校の医学部と併願する生徒は、過去問演習をやりながらこれらの問題集に取り組むとよいでしょう。また、苦手な単元や問題にぶつかった時は、類題を5題探してやると良いでしょう。類題の宝庫としては、同じ『入試の核心』シリーズの標準編100題を併用するのもオススメです。全部やるのは無理としても、類題演習のためにもあると良いでしょう。
テキストは相性があります。できれば書店で手にとって選びましょう。
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