医大・医学部受験プロ家庭教師 日本医科大学 物理の入試対策と勉強法
医大・医学部受験専門プロ家庭教師が語る

日本医科大学 物理
入試対策と勉強法

特徴と時間配分

※本学は一般入試が前期と後期に行われます。下記は主に前期一般入試の傾向ですが、後期もおおむね同様の傾向と言えます。

 

出題範囲(分野)

2005年以来大問4題の構成が定着しています。本学の物理の特徴は、力学、電磁気、波動、熱力学の各分野からまんべんなくバランスよく出題されることです。たとえば電磁気なら、電磁誘導、電流計・電圧計、ホール効果・ローレンツ力、交流回路・コンデンサー、抵抗とコンデンサー、静電気、電磁力…といった流れです。したがって、上記の交流やホール効果などのややマイナーな分野も出ます。原子は2016年光電効果、2017年重水素の核融合、2018年X線が出題されています(前期大問4)。原子が出されるときは、波動の大問はなく、原子の大問4に1問くらい波動的要素が融合されています。原子の大問は基本的で典型題が多いのでその大問は満点が狙えるでしょう。難易度は八割程度が基本から標準レベルで、一部面倒な問題があります。半分くらいは典型的な設定で、残り半分くらいが物理的に慎重に読解するべき設定です。しかし、まったく見たことがないという設定ではないでしょう。

出題量と時間配分

理科2科目で120分です。物理は小問が20問前後です。1問を3分前後で解かなければなりません。ペア科目の化学がやや難であることを考慮すると、相当のスピードで物理の標準レベルまで処理できる生徒が有利となるでしょう。なお、本学は数値計算の大問もあるので、小数計算のスピ-ドと正確さを鍛えておく必要があります。

出題形式

大問4題、小問数は各大問が4~6問、合計20問が基本的スタイルです。穴埋め形式で結果のみを記述する形式です。誘導形式になっています。題意をイメージできるように基本的な図が記載されています。もちろん、与えられた図だけで解答できるわけではないので、各小問に適切な図解を加えながら解いていくことになります。

解答形式

すべて穴埋めの完成形式で、適切な文字式や数値を記述して埋めていきます。数値計算の問題もありますが、有効数字は指定されています(知り得る限りずっと2桁)。また、2015年大問1に「左側に正の加速度運動をしているときには負の値として記せ」とあるように、マイナス記号を付けて答える場合もあるので、速度、加速度、仕事、電荷などには細心の注意が必要です。

攻略のポイント

第1段階:まずは教科書レベルの定着が基本かつ重要
言うまでもないことですが、教科書の内容の定着が基本かつ重要です。近年の教科書は非常に充実しています。受験生たるもの、教科書は初めから最後まで熟読してすべての例題や問を解くことは当然のことと考えましょう。なにしろ「入試問題の出典」は原則教科書なのですから。あえて好みを言えば、第一学習社の教科書がおすすめです。
教科書にある公式は、単位・次元を含めてスラスラと出てくることが必要です。既卒生は手元に無い場合も考えられますが、必ず教科書は入手しましょう。入試の出題の基本枠・原点の確認のために、さらに、図表や口絵、写真に至るまで目を通せば、力のある受験生も思わぬ発見や収穫があるでしょう。教科書の例題を見た瞬間、解法が浮かび、すらすらと解けるのがこの基準です。本学の受験者は既にこのレベルは問題ない場合が多いでしょう。また、ダブルチェックの意味で、教科書傍用の問題集として定番の『セミナー物理基礎・物理(いわゆるセミナー物理)』または『エクセル物理・総合版』の基本例題・基本問題を演習しストレス無く解ける基準を固めましょう。
(ここで言う教科書とは「物理基礎」「物理」の両方である)

第2段階:次は入試物理の「標準」レベルの問題集を一冊マスターすること
『セミナー物理』 または『エクセル物理・総合版』の発展例題・発展問題がこのレベルに相当します。最低でも一冊を2周、できれば受験期も含めて3周以上して、大問の中盤くらいまではすらすら解けることが必要です。同時に1のレベルに上げた公式も、下記のようなものは何度も反復して自力で導出出来るようにしましょう。例えば、単振動、万有引力とケプラーの法則、力積と運動量保存則・エネルギー保存則、ドップラー効果、特に、光波の干渉、状態方程式とポアソンの公式などの近似計算があるものは何度も繰り返しましょう。公式の導出は標準以上の問題の攻略に大きな底力となるでしょう。

第3段階:次は何と言っても過去演習
「まんべんなくバランスよく」と言っても、衝突と運動量保存則、モーメント、コンデンサーとキルヒホッフの法則、ヤングの実験、気体の法則と熱力学第1法則などは、手を変え品を変え、設定に変化させながら繰り返し出題されています。したがって、本学が物理に求めるものは、「教科書の内容をまんべんなくバランスよく習得し、標準レベルまでの問題に数値計算を含めて、手早く正確に処理できること。頻出分野は多少の変化球にも対応できるように」と考えられます。過去問演習によって、一部の面倒な問題をスキップしても時間内に合格想定ラインを確保できる感覚を磨くことが、本学合格のカギとなるでしょう。

推奨テキスト

 

(1)『教科書』(各出版社)
第1段階用です。
教科書はなければ合格できないというものでもなく、これさえマスターすれば合格というものでもありません。しかし、教科書が入試の出典の原点であることは強調し過ぎということはありません。各種公式・法則の導出過程やさまざまなカラーの図式・写真などだけでも相当の価値があるでしょう。

(2)『セミナー物理基礎・物理(セミナー物理)』(第一学習社)
(3)『エクセル物理・総合版(エクセル物理)』(実教出版)
第1段階用です。
セミナー物理、エクセル物理は、定番の教科書傍用の問題集です。教科書の例題とともにこの基本例題、基本問題をマスターするのが第1の段階です。セミナー物理はとても良い問題集ですが、市販されていないのが難点です。入手が困難なら、エクセル物理で十分です。重問も大定番の市販問題集です。セミナーやエクセルの発展例題、発展問題が大丈夫なら、重問にトライしましょう。少しずつ入試問題も更新されていて、しっかりとした内容です。

(4)『物理のエッセンス(力学・波動および熱・電磁気・原子)』(河合出版)
(5)『良問の風』(河合出版)
(6)『名問の森』(河合出版)
(7)『漆原の物理・明快解法講座 四訂版 (大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
(8)『漆原の物理・最強の99題 四訂版 (大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
第2段階用です。
教科書と上記の二つの問題集を理解するために必要な「物理の思考回路」を磨くための参考書兼問題集が物理のエッセンスまたは明快解法講座です。エッセンスは文字通り、一言一句、エッセンスというべき内容が凝縮しています。名著と言えますが、エッセンスだけに行間を埋めてくれるチューターがいた方が良いかもしれません。明快解法講座は解法を徹底的にパターン化してくれるでしょう。エッセンスと明快解法講座はその意味で両極かもしれません。だからこそどちらも試してみれば、日医の物理を攻略するために必要な、物理的なものの見方、思考回路を開いてくれるでしょう。エッセンスは良問の風、名門の森、明快解法講座派は最強の99題を解きましょう。

(9)『Z会 物理 入試の核心 難関大編50題』(Z会)
(10)『物理標準問題精講』(旺文社)
(11)『難問題の系統とその解き方(難系)』(ニュートンプレス)
(12)『同新装第3版 』(ニュートンプレス)
(13)『実戦 物理重要問題集2022 物理基礎・物理』(数研出版)
第3段階用です。
余裕のある受験生や、東大、京大、東京医科歯科大、横浜市大、千葉大、慶大などの超難関校の医学部と併願する生徒は、過去問演習をやりながらこれらの問題集に取り組みましょう。また、苦手な単元や問題にぶつかった時は、類題を5題探してやると効果的です。類題の宝庫としては、同じ『入試の核心』シリーズの標準編100題を併用するのもオススメです。全部やるのは無理としても、類題演習のためにもあると良いでしょう。

 

テキストは相性があります。できれば書店で手にとって選びましょう。

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